組織は、強力な機能を備えると同時に、コストを削減し管理を簡素化するためのサービスの配備を必要としています。サービスのアーキテクチャーには、ユーザーが日常業務の遂行に不可欠な情報に、複数の方法でのアクセスを可能にするためのセキュリティーとスケーラビリティーの要件を追加する必要があります。Communications Suite では、企業の総所有コストの予算内でスケーラブルなメッセージング、カレンダ、インスタントメッセージングを提供することによりこれらのニーズに対応します。
Communications Suite により、配備と保守が容易で、完全な機能を持つアーキテクチャーの開発が可能になります。最も重要なことは、Communications Suite アーキテクチャーによって各サービス要素にセキュリティーが組み込まれることです。これらの要素には、ネットワークインフラストラクチャー、動作環境、および Communications Suite コンポーネント製品そのものが含まれます。
Messaging Server は、優れた信頼性と生産性の向上を促進するとともに、管理と運用コストを低減します。Messaging Server は、確定したトランザクションを使用するため、メッセージはディスクに格納されるまで受信済みとして認識されません。この信頼性機能は、メールメッセージの損失や破損を防止します。さらに、Message Store は、卓越したパフォーマンスとデータ統合を実現するために、追記型データストアと 2 段階インデックスを採用するカスタム設計のデータベースを中心に構築されます。
Calendar Server は、オープンで相互運用可能かつ高性能な、業界最高レベルの時間管理およびリソース管理ソリューションです。Calendar Server によって、ほかのソリューションに比べて低い総所有コストで、必要な機能を得ることができます。Calendar Server のアーキテクチャーは、柔軟で拡張可能なので、垂直方向 (システムごとの CPU の数を増大させる) と水平方向 (ネットワークにサーバーを追加する) の両方向で拡張性があります。
Instant Messaging ソフトウェアは、プロジェクトのライフサイクルを短縮し、新しいサービスを手ごろな価格で配備できるように Java Enterprise System と緊密に統合されています。さらに、Instant Messaging は、Portal Server、Access Manager、Messaging Server、および Calendar Server と連携して動作します。この統合によって、ユーザーは、安全かつスケーラブルなフル装備の通信およびコラボレーションサービスのプラットフォームを、単一のベンダーから入手できます。Instant Messaging に含まれる定評ある Java API は、複数のプラットフォームのサポート、プラットフォームの拡張性、リアルタイム通信およびコラボレーション機能のカスタマイズとともに、統合を容易にするオープンな標準を提供します。これらの機能は、既存のアプリケーションに組み込まれたり、あるいは新しいアプリケーションの基盤となります。また、XMPP による相互運用性は、パートナー企業や顧客との間でリアルタイム通信を実現したいと考えている企業に大きなメリットをもたらします。というのも、それらのパートナー企業や顧客の多くは、それぞれ独自のインスタントメッセージングシステムを構築しているからです。
Communications Express は通信およびコラボレーション用の Web ベースの統合クライアントであり、インターネットサービスプロバイダ、企業、および OEM のニーズを満たします。Communications Express はカレンダ、メール、およびアドレス帳に対する統合ユーザーインタフェースを備えており、あるクライアントモジュールから別のクライアントモジュールへとアクセス先を変更しても、ユーザー資格の再認証を行う必要がありません。メールとカレンダ間の通信は、両方のアプリケーションが 1 つの Web コンテナ内に配備されるため、自動的に確立されます。また、Access Manager を使用して、シングルサインオン機構を提供することもできます。カレンダアプリケーションとメールアプリケーションは、同一のアドレス帳を共有します。Communications Express の「オプション」タブで指定されたユーザー設定を、すべてのモジュールが共有します。
従来、Communications Suite コンポーネントは、大規模な、通信事業者クラスの配備に使用されてきました。大規模配備で要求されるのと同じ信頼性を企業で利用することができます。
次の表に、Communications Suite の利点をまとめます。
表 1–1 Communications Suite が組織に対して提供する利点
主な機能 |
利点 |
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高いパフォーマンスおよびスケーラビリティー |
効率的な通信が可能になり、企業と ISP の両方のサービス品質が向上します。 |
豊富なセキュリティー機能 |
通信とデータの整合性および従業員、顧客、パートナーのプライバシーを保護し、業界の規則を遵守します。 |
Messaging Server、Calendar Server、および Instant Messaging は、1 つのサーバーで複数の企業のメッセージをホストし、あるいは企業 IT が組織内の複数の部門をホストできるようにして、必要なサーバー数を削減し、TCO を低減します。 |
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スケーラブル、堅牢、さらに拡張可能なコンポーネント |
一体化した通信サービスの配備が可能になり、電話サービスとともに、電子メール通知、ファックス、ポケットベルなどの技術も提供可能になります。 |
予定管理、作業とリソースの管理のための拡張可能なコラボレーションプラットフォーム |
Calendar Server で時間とリソースの管理が改善され、ユーザーの生産性が向上します。 |
会議や予定のグループスケジュール機能 |
Calendar Server で組織全体のチームコラボレーションや通信が改善します。 |
ハイパーリンクで予定または作業の情報を共有 |
Calendar Server では作業または予定に関連した情報の交換によってコラボレーションを促進します。 |
複数クライアントのサポート |
Web ベースのクライアント、複数のリッチクライアント (Evolution やMicrosoft Outlook など)、Web 対応のデバイス (携帯電話や PDA など) といった、広範囲に渡るクライアントやデバイスからのアクセスを可能にします。 |
オープン、モジュール方式、および標準ベースのアーキテクチャー |
顧客は、カスタマイズされ、パーソナライズされたソリューションを配備できます。 |
クラスタソフトウェアを使用すると、Messaging Server、Calendar Server、および Instant Messaging で高可用性が実現できるように設定できます。Messaging Server は、Sun Cluster および Veritas Cluster Server の両方のソフトウェアをサポートしています。Calendar Server および Instant Messaging は、Sun Cluster ソフトウェアをサポートしています。クラスタソフトウェアの使用時に、プライマリシステムが保守目的でオフラインとなっている場合、あるいは障害によりダウンしている場合に、Messaging Server、Calendar Server、または Instant Messaging のセカンダリホストがユーザーにサービスを提供します。
Sun Cluster を使用しなくても、Messaging Server には、サーバープロセスとサービスの可用性の状態を継続的にチェックする組み込み監視機能が装備されています。Messaging Server は、必要に応じてプロセスとサービスを自動的に再起動することができます。レポートと分析を選択した場合、Messaging Server は障害と回復操作のログを記録します。
Instant Messaging では、冗長性を提供するためにサーバープールを使用することがあります。サーバープールでは、複数の Instant Messaging サーバーが単一ドメインに対するインスタントメッセージングサービスを提供します。サーバーに障害が発生すると、プール内の別のサーバーが余分な負荷を処理します。
さらに、冗長コンポーネントを使用することにより、可用性の高い構成で Communications Suite 製品を配備できます。この種の配備により、サービスの稼働時間を高レベルにすることができます。このように可用性の高い配備を行うには、サービスアーキテクチャーの各コンポーネントで冗長性が必要になります。このようなコンポーネントには、二重のデータストアサーバー、二重のネットワークインタフェースカード、および二重のシステム記憶装置が含まれます。
このガイドでは、Communications Suite の高可用性配備における Sun Cluster の利用に関する詳細は取り扱っていません。このトピックに関する詳細については、Sun Cluster、Messaging Server、Calendar Server、および Instant Messaging のマニュアルを参照してください。
Communications Suite 製品と Portal Server をインストールすると、ポータルページでポートレットを作成することにより、メッセージングサービスやカレンダサービスにアクセスできます。たとえば、メッセージング情報、カレンダスケジュール、アドレス帳情報の要約を提供するために、これらのポートレットを作成できます。Portal Server の統合には、Portal Server、Calendar Express、Messaging Express、Communications Express クライアント間のシングルサインオン機能が含まれます。
Sun Java System スキーマ 1 とスキーマ 2 の両方の環境で、Communications Express を実行できます。スキーマ 2 を使用している場合は、Access Manager 認証を使用して Communications Express にシングルサインオンすることができます。
また、Portal Server は Instant Messaging のメッセージアーカイブをサポートします。さらに、ユーザーは、Portal Server デスクトップを使用して、Messenger Express、Calendar Express、Instant Messenger クライアントを利用することができます。
Portal Server の次の 2 つのコンポーネントは、Communications Suite の基本配備に対する追加機能を提供します。
Portal Server デスクトップ:ユーザーが作成したポートレットから Communications Suite アプリケーションにアクセスし、起動できるようにします。
Sun Java System Portal Server Secure Remote Access: これにより、リモートエンドユーザーは、インターネットを介して特定の組織のネットワークやそのサービスに安全に接続できます。エンドユーザーは、Secure Remote Access ゲートウェイを介して、Web ベースの Portal Server デスクトップにログインすることで Secure Remote Access にアクセスします。Portal Server に設定された認証モジュールで、エンドユーザーが認証されます。エンドユーザーのセキュリティー保護されたセッションが Portal Server との間で確立されると、エンドユーザーの Portal Server デスクトップへのアクセスが有効になります。
このガイドでは、ポータル環境における Communications Suite の配備については取り扱っていません。詳細については Portal Server のマニュアルを参照してください。