Sun Java Communications Suite 5 配備計画ガイド

メッセージングトポロジ要素の理解

この節では、メッセージングトポロジにおける最も一般的な要素について説明します。基本的な要素について理解を深めることで、独自のトポロジの設計が容易になります。

この節の内容は次のとおりです。

メッセージングトポロジのコンポーネント

「メッセージングトポロジの設計」で、メッセージングトポロジのコンポーネントである Messaging Server、Directory Server、およびクライアントの 3 つについて簡単に説明しました。この節では、基本的なメッセージングトポロジにおけるそのほかのコンポーネントについて説明します。

Messaging Server: ユーザーのメールボックスを収容して管理します。また、「インターネット接続 MTA」と「MTA リレー」で説明されているように、Messaging Server の MTA 部分だけを含むサーバーとしても機能します。

クライアント: 多くの場合 Messaging マルチプレクサを通じて、Messaging Server からメッセージングサービスにアクセスします。

Directory Server:Messaging Server により名前とエイリアスの検索に使用されます。ダイレクト LDAP 検索によりメッセージがどこにルーティングされるかが決められます。

Messaging マルチプレクサ: メッセージ取得のために適切なメッセージングサービスにクライアントを接続します。

インターネット接続 MTA: インターネットからのメッセージをルーティングし、ファイアウォールを越えてリレーします。通常、Messaging Server ホストはこの機能を実行するように設定されます。

MTA リレー: インバウンド MTA は、着信メッセージを適切な Messaging Server 内の有効なアドレスにルーティングします。発信 MTA はクライアントからの発信メッセージを受け取り、LDAP にクエリーを行なって送信先を検索し、メッセージを適切なサーバーに送信するか、ファイアウォールを越えてインターネットに向けて送信します。通常、Messaging Server ホストはこの機能を実行するように設定されます。

DNS サーバー: サーバー名を IP アドレスに解決し、ネットワーク内の適切なアドレスにメッセージが届くようにします。

ファイアウォール: 内部サイトのインターネットアクセスを制限します。組織内の部門間にもファイアウォールを設置することが考えられます。

MTA によるメッセージングシステムの保護

MTA を使えば、Messaging Server 配備を保護できるほか、サイトに出入りするメッセージトラフィックのフローを制御することができます。

インターネット接続 MTA は組織外のサイトからのメッセージを受信する単一窓口です。インターネット接続 MTA は、ファイアウォールを越えて受信 MTA、通常は別の Messaging Server に着信メッセージを送信します。

次に、インバウンド MTA はディレクトリのクエリーを行なって、組織内のメッセージの送信先を判断します。インターネット接続 MTA は、ファイアウォールの外部ウォールと内部ウォールの間に位置するファイアウォールの非武装地帯 (DMZ) に配置され、インバウンド MTA 以外のサーバーについての情報にはアクセスしません。

送信 MTA は、クライアントから送信されたメッセージを受け取ります。アウトバウンド MTA は LDAP のクエリーを行なって送信先を検索し、メッセージを適切なサーバーに送信するか、ファイアウォールを越えてインターネットに向けて送信します。これにより、ユーザーのためにメッセージを取得するというメッセージングサーバーとしての機能から MTA が解放されます。図 12–5 にこの概念を示します。

図 12–5 メッセージングトポロジ内の MTA

この図は、Messaging Server トポロジにおけるメールリレーを示します。

MMP の使用

MMP により、Messaging Server ホストのレイアウトをエンドユーザーから隠すことができます。その結果、メールボックスが配置されているサーバーを特定することなく、ユーザーに汎用的な MMP またはロードバランサを割り当てることができます。メッセージアクセスクライアントは、受信メッセージを取得するときに MMP を指定します。

そのようなクライアント接続と認証の際に、MMP はディレクトリ内のユーザー情報の検索を行い、ユーザーのメッセージがどこにあるかを判断します。次に、MMP はクライアントを特定のサーバーに接続します。次の図は、Messaging Server に対する IMAP4 と POP3 接続のプロキシとして MMP が機能する仕組みを示します。図 12–6 は、Messaging Server 環境においてマルチプレクサがどのように機能するかを示します。

図 12–6 MMP の概要

この図は、マルチプレクサ (MMP) がクライアントとサーバー間の共通ポイントとして機能する仕組みを示します。

複数の MMP の手前にロードバランサを配置します。MMP は通常、複数個存在します。

MMP SMTP プロキシの使用

MMP には、メッセージを受け取るが転送はしないように設計された SMTP プロキシが含まれています。この設計のため、MMP SMTP プロキシを DNS MX レコードのターゲットとして使用したり、そのほかの方法でインターネット上の任意の発信元から着信するメールを受信するために使用したりしてはいけません。Messaging Server では、メッセージ転送機能に MMP SMTP プロキシを使用できません。

Messaging Server では、エンドユーザークライアントからのメッセージの送信に MMP SMTP プロキシを使用できません。ただし、MMP の多重化機能は、POP 接続や IMAP 接続を正しいバックエンドストアに割り当てるために必要ですが、SMTP 送信には必要ありません。標準に従うメールクライアントに対しては MX レコードにより、また、標準に従わないメールクライアントに対しては単純なロードバランサによって、SMTP 送信を分散できます。

MMP SMTP プロキシは次の場合にのみ使用してください。

  1. MTA が SSL/TLS 処理によって妨げられている場合で、MMP SMTP プロキシでそのメッセージ送信プロセスのオフロードを行いながら、標準の SMTP STARTTLS を引き続きサポートできるとき。

  2. MMP で POP や IMAP に SSL ハードウェアアクセラレータを使用している場合で、それを SMTP 送信にも利用すると効果が期待できるとき。

  3. 「POP before SMTP」メカニズムを使用する必要があるため、MMP SMTP プロキシが必須になる場合。

  4. 必要な機能が MMP SMTP プロキシにはあり、バックエンド MTA にはない場合。

  5. 配備にプロキシが必要な場合。この場合は、MMP SMTP プロキシを使用してください。このプロキシは、MTA が持っているセキュリティー機能と SMTP 拡張機能を保持するように特別に設計されており、それを安全に行うためにカスタム SMTP 拡張機能 (XPEHLO) を使用します。


注 –

MMP SMTP プロキシは、バックエンドとしての Messaging Server の SMTP サーバーでのみ動作します。


ゲートウェイの使用

組織には、旧バージョンのメッセージングシステムがメッセージング処理の専用メソッドとして存在する場合があります。ユーザーを移行させるまで、両方のメッセージング戦略を残しておかなければなりません。これらの旧バージョンのシステムにアクセスする場合には、SMTP ゲートウェイを使用できます。これは、新規のシステムと旧バージョンのシステム間で SMTP 接続を有効にするものです。通常、旧バージョンのシステムは、受信 MTA がメッセージをルーティングできるように、SMTP 接続をサポートしています。