Sun Cluster Geographic Edition EMC Symmetrix Remote Data Facility 向けデータ複製ガイド

EMC Symmetrix Remote Data Facility 複製を使用するシステムでのクラスタへのサービスの回復

テイクオーバーが正常に完了すると、二次クラスタ cluster-newyork が保護グループの主クラスタになり、この二次クラスタ上でサービスがオンラインになります。元の主クラスタ (cluster-paris) が回復したところで、フェイルバックと呼ばれる処理を行なって元の主クラスタ上でふたたびサービスをオンラインにすることができます。

Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアでは、次の 2 種類のフェイルバックがサポートされています。

元の主クラスタが再起動したあとで、新しい主クラスタ (cluster-newyork) を主クラスタのままにして、元の主クラスタ (cluster-paris) を二次クラスタとして使う場合は、スイッチオーバーやテイクオーバーを実行することなく、保護グループを再同期し、再検証します。

この章では、次のトピックについて説明します。

Procedure保護グループの構成を再同期させて再検証する

次の手順を実行して、元の主クラスタ cluster-paris 上のデータと現在の主クラスタ cluster-newyork との間でデータの再同期と再検証を行います。

始める前に

保護グループの構成の再同期と再検証を行う前、cluster-newyork ではすでにテイクオーバーが発生しています。現在のクラスタの役割は次のとおりです。

  1. 元の主クラスタ cluster-paris を現在の主クラスタ cluster-newyork と再同期させます。

    この操作により、cluster-paris の独自の構成は削除され、cluster-newyork の構成がローカルに複製されます。パートナーシップ構成と保護グループ構成の両方を再同期させます。

    1. cluster-paris で、パートナーシップを再同期させます。


      phys-paris-1# geops update partnershipname
      
      partnershipname

      パートナーシップの名前を指定します


      注 –

      複数の保護グループを再同期させている場合でも、この手順は 1 回実行するだけで済みます。


      パートナーシップの同期については、『Sun Cluster Geographic Edition のシステム管理』「パートナーシップの再同期」を参照してください。

    2. cluster-paris で、各保護グループを再同期させます。

      cluster-newyork 上の保護グループの役割は primary であるため、この手順により cluster-paris 上の保護グループの役割は secondary になります。


      phys-paris-1# geopg update protectiongroupname
      
      protectiongroupname

      保護グループの名前を指定します

      保護グループの同期についての詳細は、「EMC Symmetrix Remote Data Facility 保護グループの再同期」を参照してください。

  2. cluster-paris 上で、個々の保護グループのクラスタ構成を検証します。


    phys-paris-1# geopg validate protectiongroupname 
    
    protectiongroupname

    単一の保護グループを識別する一意の名前を指定します

    詳細は、「EMC Symmetrix Remote Data Facility 保護グループを検証する方法」を参照してください。

  3. cluster-paris で、各保護グループを有効にします。

    cluster-paris の保護グループの役割は secondary であるため、geopg start コマンドは cluster-paris でアプリケーションを再起動しません。


    phys-paris-1# geopg start -n -e local protectiongroupname
    
    -e local

    コマンドの範囲を指定します。

    範囲を local と指定すると、ローカルクラスタだけがコマンドの対象となります。

    -n

    データ複製を、当該保護グループに使用してはならないことを指定します。このオプションを省略すると、データ複製は保護グループと同時に始まります。

    protectiongroupname

    保護グループの名前を指定します。

    保護グループの役割は secondary であるため、データの同期化は現在の主クラスタである cluster-newyork から二次クラスタ cluster-paris へと行われます。

    geopg start コマンドの詳細は、「EMC Symmetrix Remote Data Facility 保護グループを有効にする方法」を参照してください。

  4. 保護グループの構成に問題がないことを確認します。

    まず、cluster-newyork 上の保護グループの状態が OK であることを確認します。cluster-newyork 上の EMC Symmetrix Remote Data Facility デバイスグループの EMC Symmetrix Remote Data Facility ペア状態が Synchronized の場合、保護グループのローカルの状態は OK です。


    phys-newyork-1# geoadm status
    

    出力の保護グループセクションを参照してください。

    次に、複製リソースグループ protectiongroupname-rep-rg 内のすべてのリソースの状態が OK であることを確認します。


    phys-newyork-1# clresource status -g protectiongroupname-rep-rg
    

ProcedureEMC Symmetrix Remote Data Facility 複製を使用するシステム上でフェイルバックスイッチオーバーを実行する方法

この手順は、元の主クラスタ cluster-paris のデータが現在の主クラスタ cluster-newyork のデータと再同期されたあとで、アプリケーションを元の主クラスタで再起動するときに使用します。


注 –

フェイルバックの手順はパートナーシップ内のクラスタにのみ適用されます。ここでの手順はパートナーシップごとに 1 回実行するだけで済みます。


始める前に

フェイルバックスイッチオーバーを実行する前に、cluster-newyork ではテイクオーバーが発生していました。クラスタの役割は次のとおりです。

  1. RDF1 役割が Split 状態でないようにする必要があります。

    クラスタで完全なサイト障害が発生した場合、回復を完了するにはこの作業が必要です。

    1. cluster-paris で、元の主クラスタは、データ複製の役割と状態を表示します。


      phys-paris-1# smrdf -g devicegroup query
      
    2. 役割が RDF1 で、Split 状態にある場合は、デバイスグループをフェイルオーバーします。


      phys-paris-1# smrdf -g devicegroup failover
      
  2. 元の主クラスタ cluster-paris を現在の主クラスタ cluster-newyork と再同期させます。

    この操作により、cluster-paris の独自の構成は削除され、cluster-newyork の構成がローカルに複製されます。パートナーシップ構成と保護グループ構成の両方を再同期させます。

    1. cluster-paris で、パートナーシップを再同期させます。


      phys-paris-1# geops update partnershipname
      
      partnershipname

      パートナーシップの名前を指定します


      注 –

      パートナーシップ内の複数の保護グループに対してフェイルバックスイッチオーバーを実行している場合でも、この手順はパートナーシップごとに 1 回実行するだけで済みます。


      パートナーシップの同期については、『Sun Cluster Geographic Edition のシステム管理』「パートナーシップの再同期」を参照してください。

    2. 元の主クラスタである cluster-paris 上の保護グループが有効であるかどうかを判定します。


      phys-paris-1# geoadm status
      
    3. 元の主クラスタの保護グループがアクティブなときは、この保護グループを停止します。


      phys-paris-1# geopg stop -e local protectiongroupname
      
    4. 保護グループが停止したことを確認します。


      phys-paris-1# geoadm status
      
    5. cluster-paris で、各保護グループを再同期させます。

      cluster-newyork の保護グループのローカルな役割は現在 primary であるため、この手順によって cluster-paris の保護グループのローカルな役割が確実に secondary になります。


      phys-paris-1# geopg update protectiongroupname
      
      protectiongroupname

      保護グループの名前を指定します

      保護グループの同期についての詳細は、「EMC Symmetrix Remote Data Facility 保護グループの再同期」を参照してください。

  3. cluster-paris 上で、個々の保護グループのクラスタ構成を検証します。

    保護グループがエラー状態でないことを確認します。エラー状態の保護グループを起動することはできません。


    phys-paris-1# geopg validate protectiongroupname 
    
    protectiongroupname

    単一の保護グループを識別する一意の名前を指定します

    詳細は、「EMC Symmetrix Remote Data Facility 保護グループを検証する方法」を参照してください。

  4. cluster-paris で、各保護グループを有効にします。

    cluster-paris の保護グループの役割は secondary であるため、geopg start コマンドは cluster-paris でアプリケーションを再起動しません。


    phys-paris-1# geopg start -e local protectiongroupname
    
    -e local

    コマンドの範囲を指定します。

    範囲を local と指定すると、ローカルクラスタだけがコマンドの対象となります。

    protectiongroupname

    保護グループの名前を指定します。


    注 –

    データを現在の主クラスタ (cluster-newyork) から現在の二次クラスタ (cluster-paris) に同期させる必要があるため、フェイルバックスイッチオーバーを実行するときに、-n オプションは使用しないでください。


    保護グループの役割は secondary であるため、データの同期化は現在の主クラスタである cluster-newyork から二次クラスタ cluster-paris へと行われます。

    geopg start コマンドの詳細は、「EMC Symmetrix Remote Data Facility 保護グループを有効にする方法」を参照してください。

  5. データが完全に同期したことを確認します。

    cluster-newyork の保護グループの状態が OK になると、データは完全に同期しています。cluster-newyork 上の EMC Symmetrix Remote Data Facility デバイスグループの RDF ペア状態が Synchronized の場合、保護グループのローカルの状態は OK です。

    cluster-newyork の保護グループの状態が OK であることを確認するには、次のコマンドを使用します。


    phys-newyork-1# geoadm status
    

    出力の保護グループセクションを参照してください。

  6. 両方のパートナークラスタ上で、保護グループが有効になったことを確認します。


    # geoadm status
    
  7. どちらか一方のクラスタで、各保護グループについて cluster-newyork から cluster-paris へのスイッチオーバーを実行します。


    # geopg switchover [-f] -m cluster-paris protectiongroupname
    

    詳細は、「EMC Symmetrix Remote Data Facility 保護グループを主クラスタから二次クラスタにスイッチオーバーする方法」を参照してください。

    cluster-paris は、元の役割である、保護グループの主クラスタに戻ります。

  8. スイッチオーバーが正常に実行されたことを確認します。

    保護グループが cluster-paris 上で primary となり、cluster-newyork 上で secondary となったこと、および、「データ複製」と「リソースグループ」の状態が両方のクラスタで OK であることを確認します。


    # geoadm status
    

    各 EMC Symmetrix Remote Data Facility 保護グループのアプリケーションリソースグループとデータ複製の実行時ステータスを確認します。


    # clresourcegroup status -v protectiongroupname
    

    検査するデータ複製デバイスグループの Status フィールドと Status Message フィールドを参照してください。これらのフィールドについては、表 2–1を参照してください。

    データ複製の実行時ステータスについての詳細は「EMC Symmetrix Remote Data Facility データ複製の実行時状態の検査」を参照してください。

ProcedureEMC Symmetrix Remote Data Facility 複製を使用するシステム上でフェイルバックテイクオーバーを実行する

元の主クラスタ cluster-paris 上でアプリケーションを再起動し、元の主クラスタ上の現在のデータを使用するには、次の手順を実行します。この場合、現在主クラスタとして機能している二次クラスタ cluster-newyork の更新データはすべて破棄されます。

フェイルバックの手順はパートナーシップ内のクラスタにのみ適用されます。ここでの手順はパートナーシップごとに 1 回実行するだけで済みます。


注 –

元の主クラスタ (cluster-paris ) でデータの使用を再開する場合、cluster-newyork でのテイクオーバー操作のあと、決してデータを新しい主クラスタ (cluster-newyork ) から元の主クラスタ (cluster-paris) に複製しないでください。新しい主クラスタと元の主クラスタの間でデータの複製を行わないようにするために、geopg start コマンドを使用するときには常に、-n オプションを使用しておく必要があります。


始める前に

クラスタが次の役割を持つことを確認します。

  1. RDF1 役割が Split 状態でないようにする必要があります。

    クラスタで完全なサイト障害が発生した場合、回復を完了するにはこの作業が必要です。

    1. cluster-paris で、データ複製の役割と状態を表示します。


      phys-paris-1# smrdf -g devicegroup query
      
    2. 役割が RDF1 で、Split 状態の場合は、デバイスグループをフェイルオーバーします。


      phys-paris-1# smrdf -g devicegroup failover
      
  2. 元の主クラスタ cluster-paris を元の二次クラスタ cluster-newyork と再同期させます。

    この操作により、cluster-paris の独自の構成は削除され、cluster-newyork の構成がローカルに複製されます。

    1. cluster-paris で、パートナーシップを再同期させます。


      phys-paris-1# geops update partnershipname
      
      partnershipname

      パートナーシップの名前を指定します


      注 –

      パートナーシップ内の複数の保護グループに対してフェイルバックテイクオーバーを実行している場合でも、この手順はパートナーシップごとに 1 回実行するだけで済みます。


      パートナーシップの同期については、『Sun Cluster Geographic Edition のシステム管理』「パートナーシップの再同期」を参照してください。

    2. 元の主クラスタである cluster-paris 上の保護グループが有効であるかどうかを判定します。


      phys-paris-1# geoadm status
      
    3. 元の主クラスタの保護グループがアクティブなときは、この保護グループを停止します。


      phys-paris-1# geopg stop -e local protectiongroupname
      
    4. 保護グループが停止したことを確認します。


      phys-paris-1# geoadm status
      
    5. cluster-paris で、各保護グループを再同期させます。

      cluster-newyork の保護グループのローカルな役割は現在 primary であるため、この手順によって cluster-paris の保護グループのローカルな役割が確実に secondary になります。


      phys-paris-1# geopg update protectiongroupname
      
      protectiongroupname

      保護グループの名前を指定します

      保護グループの再同期についての詳細は、「保護グループを再同期させる方法」を参照してください。

  3. cluster-paris 上で、個々の保護グループの構成を検証します。

    保護グループがエラー状態でないことを確認します。エラー状態の保護グループを起動することはできません。


    phys-paris-1# geopg validate protectiongroupname 
    
    protectiongroupname

    単一の保護グループを識別する一意の名前を指定します

    詳細は、「EMC Symmetrix Remote Data Facility 保護グループを検証する方法」を参照してください。

  4. cluster-paris 上で、データ複製を行わずに、二次クラスタの役割が割り当てられている各保護グループを有効にします。

    cluster-paris の保護グループの役割は secondary であるため、geopg start コマンドは cluster-paris でアプリケーションを再起動しません。


    注 –

    この保護グループでデータ複製を使用しないことを指定する -n オプションを使用します。このオプションを省略すると、データ複製は保護グループと同時に始まります。



    phys-paris-1# geopg start -e local -n protectiongroupname
    
    -e local

    コマンドの範囲を指定します。

    範囲を local と指定すると、ローカルクラスタだけがコマンドの対象となります。

    -n

    データ複製を、当該保護グループに使用してはならないことを指定します。このオプションを省略すると、データ複製は保護グループと同時に始まります。

    protectiongroupname

    保護グループの名前を指定します

    詳細は、「EMC Symmetrix Remote Data Facility 保護グループを有効にする方法」を参照してください。

    -n オプションが cluster-paris で使用されているため、cluster-newyork から cluster-paris への複製は開始されません。

  5. cluster-paris 上で、各保護グループのテイクオーバーを開始します。


    phys-paris-1# geopg takeover [-f] protectiongroupname
    
    -f

    ユーザーに確認することなく、強制的にコマンドを実行します

    protectiongroupname

    保護グループの名前を指定します

    geopg takeover コマンドについての詳細は、「EMC Symmetrix Remote Data Facility サービスを二次クラスタへ即時にテイクオーバーを強制する方法」を参照してください。

    この時点で、cluster-paris の保護グループの役割は primary であり、cluster-newyork の保護グループの役割は secondary です。アプリケーションサービスは現在、cluster-paris でオンラインです。

  6. cluster-newyork で、各保護グループを有効にします。

    手順 4 の終わりで、cluster-newyork の保護グループのローカル状態は Offline です。保護グループのローカル状態の監視を開始するには、cluster-newyork の保護グループを有効にする必要があります。

    cluster-newyork の保護グループの役割は secondary であるため、geopg start コマンドは cluster-newyork でアプリケーションを再起動しません。


    phys-newyork-1# geopg start -e local [-n] protectiongroupname
    
    -e local

    コマンドの範囲を指定します。

    範囲を local と指定すると、ローカルクラスタだけがコマンドの対象となります。

    -n

    保護グループを有効にしたときにデータ複製を開始しないようにします。

    このオプションを省略した場合、データ複製サブシステムは保護グループと同時に起動されます。

    protectiongroupname

    保護グループの名前を指定します。

    geopg start コマンドの詳細は、「EMC Symmetrix Remote Data Facility 保護グループを有効にする方法」を参照してください。

  7. テイクオーバーが正しく実行されたことを確認します。

    保護グループが cluster-paris 上で primary となり、cluster-newyork 上で secondary となったこと、および、「データ複製」と「リソースグループ」の状態が両方のクラスタで OK であることを確認します。


    # geoadm status
    

    注 –

    手順 5 でデータ複製が開始されるのを防ぐために -n オプションを使用した場合、「データ複製」ステータスは OK 状態になりません。


    各 EMC Symmetrix Remote Data Facility 保護グループのアプリケーションリソースグループとデータ複製の実行時ステータスを確認します。


    # clresourcegroup status -v protectiongroupname
    

    検査するデータ複製デバイスグループの Status フィールドと Status Message フィールドを参照してください。これらのフィールドについては、表 2–1を参照してください。

    データ複製の実行時ステータスについての詳細は「EMC Symmetrix Remote Data Facility データ複製の実行時状態の検査」を参照してください。