Solaris ネーミングの管理

デフォルトの FNS 名前空間

FNS では、次の 7 つの名前空間が提供されます。

組織単位の名前空間

組織単位の名前空間では、エンタープライズのサブ単位をネーミングするために階層になった名前空間が提供されます。各組識単位名は組織単位を表す「組織単位コンテキスト」と結合されています。組織単位名は、接頭辞 org/orgunit/、または _orgunit/ によってネーミングされます。短縮形別名の org/ は、内部コンテキストだけで使用され、複合名の途中では使用されません。「エンタープライズ内のネーミングに対する初期コンテキストのバインド」および、「複合名の例」を参照してください。

NIS+ 環境

NIS+ 環境では、組織単位は NIS+ のドメインおよびサブドメインに対応します。

NIS+ では、組織単位は必ずドメインおよびサブドメインにマップされます。それぞれの NIS+ ドメインおよびサブドメインに組織単位を与える必要があります。ドメインまたはサブドメインに論理、組織ユニットを与えることはできません。つまり、NIS+ ドメインまたはサブドメインを小規模な組織単位に分割することはできません。そのため、NIS+ ドメイン doc.com. と 2 つのサブドメイン sales.doc.com. および manf.doc.com. がある場合は、これら 3 つのドメインに対応する 3 つの FNS 組織単位を持つ必要があります。

組織単位は、ドットで区切られた右から左への複合名を使用してネーミングされます。ここでは、各原子要素がより大きな単位内の組織単位をネーミングします。たとえば、org/sales.doc.com. という名前は、doc.com. という名前のより大きな単位内にある sales をネーミングします。この例では、sales は、doc.com. の NIS+ サブドメインです。

組織単位名は、完全指定の NIS+ ドメインまたは相対名の NIS+ 名のどちらかになります。完全指定名には終端にドットが付きますが、相対名には付きません。そのため、終端のドットが組織名にある場合は、その名前は完全指定の NIS+ ドメイン名として処理されます。終端にドットがない場合は、その組織名は最上部の組織階層に対して相対的に解釈処理されます。たとえば、orgunit/west.sales.doc.com. は、west 組織単位をネーミングする完全指定名で、_orgunit/west.sales は、同じサブドメインをネーミングする相対的な名前です。

NIS 環境

NIS 環境では、NIS ドメインに対応する組織単位は各エンタープライズ 1 つずつあります。この orgunit には、orgunit/domainname という名前が付けられ、ここでの domainname は NIS ドメイン名です。たとえば、NIS ドメイン名が doc.com である場合は、組織単位は org/doc.com です。

NIS 環境では、空の文字列を組織単位の省略形として使用できます。したがって、org// は、org/domainname に相当します。

ファイルベースの環境

エンタープライズレベルのネームサービスがファイルベースであるときには、1 つだけの FNS 組織単位が存在し、サブ単位はありません。ファイルベースのネーミングで許容される唯一の組織単位は org// です。

サイトの名前空間

サイトの名前空間では、物理的位置でそのまま識別される地域名前空間が提供されます。たとえば、これらのオブジェクトには、キャンパスにある建物、ある階のマシンやプリンタ、建物内の会議室とその使用スケジュール、隣接するオフィスにいるユーザーなどがあります。サイト名は、接頭辞 site/ または _site/ で識別されます。

Solaris 環境では、サイトは複合名を使用してネーミングされます。複合名では、各原子名がより大きなサイト内のサイトを表わします。サイト名の構文は、ドット区切りの右から左であり、もっとも一般的な位置記述からもっとも特定の位置記述に配列された構成要素が含まれます。たとえば、_site/pine.bldg5 は、建物 5 にある Pine 会議室を表わし、site/bldg7.alameda は、あるエンタープライズの Alameda にある建物 7 を表わします。

ホストの名前空間

ホストの名前空間では、コンピュータをネーミングするための名前空間が提供されます。ホスト名は、接頭辞 host/ または _host/ で識別されます。たとえば、host/deneb は、deneb という名前のマシンを識別します。

ホストは、「hostname」コンテキストでネーミングされます。ホストコンテキストには、フラットな名前空間があり、ホストコンテキストへのホスト名のバインドが含まれます。「ホストコンテキスト」では、そのホストで見つかったファイルやプリンタなどの、マシンに相対的なオブジェクトをネーミングできます。

Solaris 環境では、ホスト名は Solaris のホスト名に対応します。単一のマシンに対する別名で同じコンテキストが共有されます。たとえば、mail_server という名前がマシン deneb および altair の別名である場合、denebaltair の両方で、mail_server に作成されたコンテキストが共有されます。

ネットワーク資源は、必要に応じてホストに関連付けてネーミングする必要があります。たいていの場合、組織、ユーザー、サイトなどの構成要素に関連して資源をネーミングした方がわかりやすくなります。ホスト名に依存すると、ユーザーは、あいまいで変更される可能性のある情報を覚えなくてはならなくなります。たとえば、ハードウェアの変更、ファイルスペースの使用、ネットワークの再構成などのために、ユーザーのファイルがあるサーバーから他のサーバーに移動されてしまう場合もあります。さらに、ユーザーは、同じファイルサーバーを共有することが多くなり、ファイルがホストに関連付けてネーミングされた場合に混乱を招きます。しかし、ファイルがユーザーに関連付けてネーミングされた場合は、このような変更はファイルのネーミング方法に影響しません。

ホスト名を使用した方が適切な場合もあります。たとえば、資源が特定のマシンだけで使用可能であり、他の構成要素に関連付けてその資源をネーミングする論理的方法がない場合には、ホストに関連付けてネーミングする意味があります。または、ファイルシステムでは、ファイルが多くのユーザーに共有されている場合、格納されているマシンに関連付けてファイルをネーミングする意味があります。

ユーザーの名前空間

ユーザーの名前空間では、コンピュータ環境内のユーザーをネーミングするための名前空間が提供されます。ユーザー名は、接頭辞 user/ または _user/ で識別されます。

ユーザーは、「ユーザーコンテキスト」でネーミングされます。ユーザーコンテキストには、単一レベルの名前空間があり、「ユーザーコンテキスト」へのユーザー名のバインドが含まれます。ユーザーコンテキストでは、ユーザーに関連するファイル、サービス、資源などのオブジェクトをユーザーに関連付けてネーミングすることができます。

Solaris 環境では、ユーザー名は Solaris ログイン ID に対応します。たとえば、_user/inga は、ログイン ID が inga のユーザーを識別します。

ファイルの名前空間

ファイルの名前空間 (またはファイルシステム) では、ファイルをネーミングするための名前空間が提供されます。ファイル名は、接頭辞 fs/ または _fs/ で識別されます。たとえば、fs/etc/motd という名前では、/etc ディレクトリに格納されているファイル motd が識別されます。

ファイルの名前空間については、「FNS ファイルネーミング」で詳しく説明し、ファイルのコンテキストについては、「ファイルコンテキストの管理」で説明します。

サービスの名前空間

サービスの名前空間では、エンタープライズ内のオブジェクトに使用される、または関連するサービスのための名前空間が提供されます。このようなサービスには、電子カレンダ、FAX、メール、印刷などがあります。サービス名は、接頭辞 service/ または _service/ で識別されます。

Solaris 環境では、サービスの名前空間は階層になっています。サービス名は、スラッシュ (/) で区切られた左から右の複合名です。サービスの名前空間を使用するアプリケーションは、この階層属性を利用し、そのアプリケーションのサブツリーを獲保します。たとえば、プリンタサービスはサービスの名前空間のサブツリー printer を獲保します。

FNS は、サービス名またはリファレンスタイプが選択される方法を指定します。これらは、サービスの名前空間を共有するサービス提供者によって決定されます。たとえば、カレンダサービスは、サービスのコンテキストにある名前 _service/calendar を使用してカレンダサービスをネーミングし、名前 calendar にバインドされたものを決定します。

サービス名およびリファレンスの登録

米国 Sun Microsystems, Inc. は、service の名前空間の最初のレベルにある名前の登録を行います。新規名を登録するには、電子メールのリクエストを fns-register@sun.com まで送信するか、または書面で次の住所までご郵送ください。


FNS Registration
Sun Microsystems, Inc.
901 San Antonio Road.
Palo Alto, CA 94303
U.S.A.

名前の使用目的についての簡単な説明と、その名前にバインドされるリファレンスのフォーマットの説明をお書き添えください。

プリンタの名前空間

プリンタの名前空間では、プリンタをネーミングするための名前空間が提供されます。プリンタの名前空間は、サービスの名前空間に関連 (従属) します。つまり、プリンタのサービスは、サービスの名前空間のサービスの一部です。プリンタ名は、接頭辞 service/printer または _service/printer で識別されます。たとえば、service/printer/laser1 では、laser1 という名前のプリンタが識別されます。