SunOS 5.0 から 5.8 のカーネルは、プロセスを優先順位によってディスパッチします。スケジューラ (またはディスパッチャ) は、スケジューリングクラスの概念をサポートしています。クラスは、実時間 (RT)、システム (sys)、またはタイムシェアリング (TS) として定義されます。各クラスには、プロセスをディスパッチするための固有のスケジューリング方式があります。
カーネルは、最も優先順位が高いプロセスを最初にディスパッチします。デフォルトでは、実時間プロセスが sys や TS のプロセスよりも優先されますが、管理者は TS と RT のプロセスの優先順位が重なり合うように設定することもできます。
図 8-4 に SunOS 5.0 から 5.8 のカーネルから見たクラスの概念を示します。
最も優先順位が高いのはハードウェア割り込みで、これはソフトウェアでは制御できません。割り込みを処理するルーチンは、割り込みが生じるとただちに直接ディスパッチされ、その際には現在のプロセスの優先順位は考慮されません。
実時間プロセスは、ソフトウェアでは最も高い優先順位をデフォルトで持ちます。RT クラスのプロセスは、優先順位とタイムカンタム (time quantum) 値を持ちます。RT プロセスは、厳密にこれらのパラメタに基づいてスケジュールされます。RT プロセスが実行可能である限り、SYS や TS のプロセスは実行できません。固定優先順位スケジューリングでは、クリティカルプロセスを完了まで事前に指定した順序で実行できます。この優先順位は、アプリケーションで変更されない限り変わりません。
RT クラスのプロセスは、有限無限を問わず親プロセスのタイムカンタムを継承します。有限タイムカンタムを持つプロセスは、タイムカンタムの有効時間が切れるか、プロセスが終了するか、ブロッキングされるか (入出力イベントを待つ)、またはより高い優先順位を持つ実行可能な実時間プロセスに横取りされるまで実行されます。無限タイムカンタムを持つプロセスは、プロセスが終了するか、ブロッキングされるか、または横取りされるまで実行されます。
SYS クラスは、ページング、STREAMS、スワッパなどの特殊なシステムプロセスをスケジュールするために存在します。あるプロセスのクラスを SYS クラスに変更できません。プロセスの SYS クラスは、プロセスの開始時にカーネルによって確立された固定優先順位を持っています。
優先順位が最も低いのは、タイムシェアリング (TS) クラスです。TS クラスのプロセスは、各タイムスライスを数百ミリ秒として動的にスケジュールされます。TS スケジューラは、頻繁にコンテキストスイッチングを行なって、各プロセスに実行する機会を平等に与えます。これは、各プロセスのタイムスライスの値とプロセスの履歴 (プロセスが最後に休眠したのはいつか) に基づき、CPU の利用率を考慮して行われます。デフォルトのタイムシェアリング方式では、優先順位の低いプロセスに長いタイムスライスを与えます。
子プロセスは fork(2) を通じて、親プロセスのスケジューリングクラスと属性を継承します。プロセスのスケジューリングクラスと属性は、exec(2) を実行しても変わりません。
各スケジューリングクラスは、異なったアルゴリズムによってディスパッチされます。クラスに依存するルーチンは、カーネルによって呼び出され、CPU のプロセススケジューリングが決定されます。カーネルはクラスに依存し、待ち行列内から最も優先順位の高いプロセスを取り出します。各クラスは、自分のクラスのプロセスの優先順位値を計算しなければなりません。この値は、そのプロセスのディスパッチ優先順位変数に入れられます。
図 8-5 に示すように各クラスのアルゴリズムは、それぞれ独自の方法によってグローバル実行待ち行列に入れる最も優先順位の高いプロセスを指定します。
各クラスには、そのクラスのプロセスに適用される優先順位レベルのセットがあります。クラス固有のマッピングによって、この優先順位がグローバル優先順位のセットに割り当てられます。グローバルスケジューリング優先順位のセットへの対応は 0 で始まったり連続したりしている必要はありません。
デフォルトでは、タイムシェアリング (TS) プロセスのグローバル優先順位の値は -20 から +20 までの範囲で、カーネルの 0 から 40 までに割り当てられており、一時的な割り当ては 99 まであります。実時間 (RT) プロセスのデフォルトの優先順位は 0 から 59 までの範囲で、カーネルの 100 から 150 までに割り当てられます。カーネルのクラスに依存しないコードは、待ち行列内のグローバル優先順位の最も高いプロセスを実行します。