タイムシェアリング方式の目的は、対話型プロセスには良い応答性能、CPU 時間を多く使用するプロセスには良いスループットを提供することです。スケジューラは、切り替え自体に時間がかかりすぎない頻度で CPU の割り当てを切り替え、応答性能を良くします。タイムスライスは通常、数百ミリ秒です。
タイムシェアリング方式は、優先順位が動的に変更され、割り当てられるタイムスライスの長さは異なります。スケジューラは、CPU をほんのわずかだけ使用して休眠しているプロセスの優先順位を上げます (プロセスは、端末からの読み取りやディスク読み取りなどの入出力操作を開始すると休眠します) 。頻繁に休眠するのは、編集や簡単なシェルコマンドの実行など、対話型タスクの特性です。一方、休眠しないで CPU を長時間使用しているプロセスの優先順位は下げられます。
デフォルトのタイムシェアリング方式では、優先順位が低いプロセスに長いタイムスライスが与えられます。優先順位が低いプロセスは、CPU を長時間使用する傾向があるからです。他のプロセスが CPU を先に取得しても、優先順位の低いプロセスが CPU を取得すれば長時間使用できます。ただし、タイムスライス中に優先順位が高いプロセスが実行可能になると、そのプロセスが CPU を横取りします。
グローバルプロセス優先順位とユーザ指定優先順位は、昇順になります。つまり、優先順位が低い数値のプロセスが最初に実行されます。ユーザ優先順位は、設定されている値の、負の最大値から正の最大値までの値になります。プロセスはユーザ優先順位を継承します。ユーザ優先順位のデフォルト初期値は 0 (ゼロ) です。
「ユーザ優先順位限界」は、設定されているユーザ優先順位の最大値です。ユーザ優先は、この限界値以下の任意の値に設定できます。適当なアクセス権を持っていると、ユーザ優先順位限界を上げることができます。ユーザ優先順位限界のデフォルト値は 0 (ゼロ) です。
プロセスのユーザ優先順位を下げて、CPU の使用率を減少させたり、適当なアクセス権を持っている場合は、ユーザ優先順位を上げてサービスを受けやすくしたりできます。ユーザ優先順位はユーザ優先順位限界より大きく設定できないので、この値がどちらもデフォルト値の 0 になっている場合は、ユーザ優先順位を上げる前にユーザ優先順位限界を上げなければなりません。
管理者は、グローバルなタイムシェアリング優先順位とは独立にユーザ優先順位の最大値を設定します。たとえば、デフォルトの設定では、ユーザは -20 から +20 までの範囲だけにユーザ優先順位を設定できますが、60 種類のタイムシェアリングのグローバル優先順位が設定できます。
スケジューラは、タイムシェアリングのパラメタテーブル ts_dptbl(4) 内の設定可能なパラメタを使用して、タイムシェアリングプロセスを管理します。このテーブルには、タイムシェアリングクラスに固有の情報が収められています。