JFP ユーザーズガイド

第 4 章 日本語対応 SunOS のシステム環境設定

この章では、システムで定義済みの SunOS の日本語環境を、システム管理者が必要に応じて変更する場合の方法と注意事項を説明します。

システムロケールの設定

ユーザーが個々のロケールを設定する場合と同様に、そのシステムのロケールも設定できます。このシステムロケールは、ユーザーがロケールを明示的に設定しないときのデフォルトロケールとして使われたり、ロケールに依存して機能するデーモンのロケールとして使われたりします。

インストール時に「言語とロケールの選択 (Select Language and Locale)」画面で選択したロケールが、システムロケールとして設定されます。システムロケールは以下のファイルで設定されます。このファイルの LANG の値を変更することによって、システムロケールを変更できます。詳細は、init(1M) を参照してください。


sun% more /etc/default/init
    :
TZ=Japan
LANG=ja

電子メールの送受信に関する設定

in.comsat の設定

JFP は、複数バイト言語国際化のために拡張された in.comsat (/usr/SUNWale/sbin/in.comsat) を提供しています。第 5 章「国際化 SunOS コマンドの利用」「メール到着の通知」の例のように、到着した日本語メールをコード変換して Solaris CDE や OpenWindows のコンソールウィンドウなどに表示するためには、以下のように install_comsat を実行する必要があります。


sun# /usr/SUNWale/sbin/install_comsat ja

詳細は、install_comsat(1M)inetd(1M) のマニュアルページを参照してください。install_comsat(1M)のマニュアルページを参照するには、環境変数 MANPATH または man(1) のオプション -M の引数に /usr/SUNWale/man が含まれている必要があります。

日本語プリンタに関する設定

JFP は、LP 印刷サービスを使用して、ドットマトリックス漢字プリンタ (EPSON VP-5085 、 NEC PC-PR201)、日本語ページプリンタ (Canon LASERSHOT)、日本語 PostScript プリンタで日本語テキストを印刷するために、これらの変換フィルタ群を提供します。

日本語 dumb プリンタのサポート

JFP では、LP 印刷サービスを使用して、ドットマトリックス漢字プリンタ (EPSON VP-5085、 NEC PC-PR201)、日本語ページプリンタ (Canon LASERSHOT) で日本語テキストを印刷できます。

EPSON VP-5085 用のデータベースは EPSON ESC/P の ESC/P24-J84 に準拠したコントロールコード、NEC PR201 用のデータベースは NEC 201PL に準拠したコントロールコードを使用しています。このため、これらのコントロールコードをサポートする他のプリンタでも日本語テキストを印刷できます。

提供されるファイル

JFP では、日本語 dumb プリンタをサポートする目的で、以下のファイルを提供しています。

表 4-1 日本語 dumb プリンタのサポート用に提供されるファイル
 プロセッサの種類 キーボードの種類
/usr/share/lib/terminfo/c/canon-ls-a408Canon LASERSHOT A408 用の terminfo データベース (Canon LASERSHOT の LIPS に準拠)
/usr/share/lib/terminfo/e/epson-vp5085EPSON-VP5085 用の terminfo データベース (EPSON ESC/P の ESC/P24-J84 に準拠)
/usr/share/lib/terminfo/n/nec-pr201NEC PR201 用の terminfo データベース (NEC 201PL に準拠)
/usr/lib/lp/text/jprconv 日本語テキスト印刷フィルタ
/usr/lib/lp/text/jprconv.conf 日本語テキスト印刷フィルタ用設定ファイル
/etc/lp/fd/jprconv.fd 日本語テキスト印刷フィルタ記述子ファイル
/usr/lib/lp/model/jstandard 日本語プリンタ・インタフェースプログラム

lp のプリンタ固有オプション

日本語プリンタ・インタフェースプログラムでは、標準のインタフェースプログラムのほか表 4-2 に示すプリンタ固有のオプションが追加されています。その他のオプションは標準インタフェースプログラムと同じです。詳細は、lp(1) のマニュアルページを参照してください。

表 4-2 lp のプリンタ固有オプション

オプション 

内容 

x=cols

左マージンを cols カラムに設定する

landscape

用紙を横長にして印刷する (Canon LASERSHOT にのみ有効) 

プリンタ固有のオプションの使用例を以下に示します。


sun% lp -o x=30 textfile.txt
sun% pr -2 -l46 -w170 -t textfile.txt | lp -o nobanner -o landscape

jprconv フィルタ固有のオプション

以下のフィルタ固有のオプションが lp を通して利用可能です。

表 4-3 jprconv フィルタ固有のオプション

オプション 

内容 

-y PCK

指定したファイルの文字コードを PCK に指定 

-y eucJP

指定したファイルの文字コードを eucJP に指定 

-y UTF-8

指定したファイルの文字コードを UTF-8 に指定 

フィルタ固有のオプションの使用例を以下に示します。


sun% lp -y PCK textfile.pck

制限事項

日本語テキスト印刷フィルタを使用する場合、次の制限事項があります。

制限事項

日本語 PostScript プリンタのサポート

JFP では、日本語 PostScript プリンタで日本語テキストを印刷できます。日本語 PostScript プリンタに日本語テキストを印刷する方法は 2 通りあります。1 つは、jtops(1) を使ってクライアント側で PostScript に変換し、プリンタサーバーに渡す方法であり、もう 1 つは、サーバー側で変換する方法です。ここでは、サーバー側で変換する場合のプリンタの設定方法について説明します。

提供されるファイル

JFP は、日本語 PostScript プリンタをサポートするために以下のファイルを提供します。

表 4-4 日本語 PostScript プリンタのサポート用に提供されるファイル

/usr/share/lib/terminfo/c/canon-ls-a408

Canon LASERSHOT A408 用の terminfo データベース (Canon LASERSHOT の LIPS に準拠)

/usr/lib/lp/postscript/jpostprint

日本語テキストを日本語 PostScript に変換するフィルタ 

/usr/lib/lp/postscript/jpostprint.conf

上記フィルタの設定ファイル 

/etc/lp/fd/jpostprint.fd

上記フィルタの記述子ファイル 

jpostprint フィルタ固有のオプション

lp では、以下のフィルタ固有のオプションを利用できます。

表 4-5 jpostprint フィルタ固有のオプション

オプション 

内容 

-o length=len

1 ページの行数を len に指定

-P page-list

page-list で指定するページ範囲を印刷

-y group

1 ページあたり 2 個の論理ページで印刷 

-y group=n

1 ページあたり n 個の論理ページで印刷

-y portrait

縦長で印刷 

-y landscape

横長で印刷 

-y magnify=n

n 倍に拡大して印刷

-y PCK

指定したファイルの文字コードを PCK に指定 

-y eucJP

指定したファイルの文字コードを eucJP に指定 

-y UTF-8

指定したファイルの文字コードを UTF-8 に指定 

フィルタ固有のオプションの使用例を以下に示します。


sun% lp -P 2,3 -y PCK textfile.pck

制限事項

プリンタの追加方法

日本語テキストを印刷するには、プリンタを正しく追加する必要があります。プリンタの追加方法は、ローカルプリンタとして追加するかリモートプリンタとして追加するかによって異なります。

まず、各プリンタに共通する手順を説明します。


注 -

IA システム上にプリンタデバイスが存在しない場合は、『Solaris 8 デバイスの構成 (Intel 版)』を参照して、あらかじめプリンタデバイスを正しく作成しておく必要があります。


  1. システムの電源を切ります。

  2. システムとプリンタをプリンタケーブルで接続します。

  3. システムの電源を入れ、Solaris を起動します。

  4. スーパーユーザーになります。

  5. まだ起動していなければ、Solaris CDE または OpenWindows を起動します。

次に、各プリンタに固有の手順を説明します。

ローカルプリンタとして追加する場合

この説明では、プリンタ名を vp5085、プリンタタイプを epson-vp5085、デバイス名を /dev/term/a と仮定しています。

以下に手順を示します。

  1. dtterm などの端末エミュレータを起動し、以下を実行します。

    sun# lpadmin -p vp5085 -v /dev/term/a -T epson-vp5085 -I None ¥
    -i /usr/lib/lp/model/jstandard
    sun# lpadmin -d vp5085
    sun# accept vp5085
    sun# enable vp5085
    

    なお、terminfo (-T) と content (-I) は使用するプリンタによって異なります。以下の表を参考にしてください。

    表 4-6 プリンタタイプ
     コントロールコード terminfo (-T) content (-I)
     Canon LASERSHOT canon-ls-a408 None
     EPSON ESC/P epson-vp5085 None
     NEC 201PL nec-pr201 None
     日本語 PostScript PS postscript

  2. 次のように入力して、印刷フィルタを登録します。

    日本語 dumb プリンタの場合 :


    sun# cd /etc/lp/fd
    sun# lpfilter -f jprconv -F jprconv.fd
    

    日本語 PostScript プリンタの場合 :


    sun# cd /etc/lp/fd
    sun# lpfilter -x -f postprint
    sun# lpfilter -f jpostprint -F jpostprint.fd
    
  3. 必要に応じて、インタフェースプログラムの構成を変更します。


    sun# cd /etc/lp/interfaces
    sun# vi vp5085
    

    たとえば、常にバナーページを印刷しない場合は、インタフェースプログラムを編集して、「Default nobanner」の「nobanner="no"」の部分を「nobanner="yes"」に変更します。


    :
    #
    # Default nobanner
    #   nobanner="no"   : banner page will be printed as default
    #   nobanner="yes"  : banner page will not be printed as default
    #
    nobanner="yes"
    :
  4. 手順 1 でデバイス名 (lpadmin コマンドのオプション -v の引数) として /dev/bpp0 以外を指定した場合は、次のように入力して、stty オプションを設定します。


    sun# lpadmin -p vp5085 -o "stty=-opost"
    
  5. システムをリブートします。


    sun# sync;sync;sync;reboot
    

リモートプリンタとして追加する場合

  1. dtterm などの端末エミュレータを起動し、以下を実行します。


    sun# lpadmin -p vp5085 -s hiraki¥!vp5085
    
  2. /etc/printers.conf ファイルを確認します。

    printers.conf ファイルの該当するサーバー部分に以下のように「Solaris」が入っていることを確認します。


    vp5085:¥
    :bsdaddr=hirari,vp5085,Solaris:

    以上の手順を終了すると、lp コマンドを使用して、追加したリモートプリンタに出力できます。

ネットワークプリンタとして追加する場合

  1. ネットワークプリンタとして登録します。

    以下の例は、日本語 PostScript プリンタをネットワーク経由で接続した場合の例です。プリンタ側には、あらかじめ以下のように設定されていると仮定します。


    Host Name : nwpr2
    Printer Name : pspr
    プリンタ側の設定方法については、各プリンタのマニュアルを参照してください。


    sun# lpadmin -p pspr -I postscript -T PS -v /dev/null ¥
    -i /usr/lib/lp/model/netstandard -o dest=nwpr2:pspr ¥
    -o protocol=bsd
    sun# accept pspr
    sun# enable pspr
    
  2. 次のように入力して、テキストファイル印刷フィルタを登録します。


    sun# cd /etc/lp/fd
    sun# lpfilter -x -f postprint
    sun# lpfilter -f jpostprint -F jpostprint.fd
    
  3. 必要に応じて、インタフェースプログラムの構成を変更します。


    sun# cd /etc/lp/interfaces
    sun# vi vp5085
    

    たとえば、常にバナーページを印刷しない場合は、インタフェースプログラムを編集して「Default nobanner」の「nobanner="no"」の部分を「nobanner="yes"」に変更します。


    :
    #
    # Default nobanner
    #   nobanner="no"   : banner page will be printed as default
    #   nobanner="yes"  : banner page will not be printed as default
    #
    nobanner="yes"
    :
  4. システムをリブートします。


    sun# sync;sync;sync
    sun# reboot
    

JIS X 0212、ユーザー定義文字、ベンダー定義文字の印刷サポート

JFP では、日本語 dumb プリンタや日本語 PostScript プリンタでの日本語テキストの印刷をサポートしています。日本語テキストには、JIS X 0212、ユーザー定義文字、ベンダー定義文字を含めることができます。これらの文字を印刷するためには、そのフォントをプリンタサーバー上に正しくインストールする必要があります。ここでは、これらのフォントのインストール方法について説明します。

ユーザー定義文字とベンダー定義文字の定義領域については、第 2 章「日本語ロケール」を参照してください。また、ユーザー定義文字の作成方法については、第 14 章「ユーザー定義文字の登録 (Solaris 外字ツール)」を参照してください。

日本語 dumb プリンタで使用する場合

ユーザー定義文字のフォントとしては sdtudctool(1) で出力される PCF フォント、JIS X 0212 とベンダー定義文字のフォントとしては SUNWjxcft に含まれる24 ドットの PCF フォントだけが使用できます。

フォントのインストール方法

プリンタサーバー上で次のように操作します。

  1. SUNWjxcft パッケージがインストールされているかどうかを確認します。


    sun# pkginfo SUNWjxcft
    
  2. SUNWjxcft パッケージがインストールされている場合は、次のようなメッセージが表示されます。


    SUNWjxcft Japanese X Window System common (not required) fonts
    
  3. ここで SUNWjxcft が見つからなかった場合は、次のコマンドを実行します。


    sun# pkgadd -d <Solaris CD>/Product SUNWjxcft
    

    上記 <Solaris CD> には、Solaris CD のインストールイメージがあるディレクトリを指定します。

  1. sdtudctool でユーザー定義文字フォントを作成します。

  2. 作成したフォントをインストールします。


    sun% cd $HOME/.Xlocale/$LANG/fonts/UDC/Bitmaps
    sun% su
    sun# mkdir -p /usr/openwin/lib/locale/$LANG/X11/fonts/UDC/Bitmaps
    sun# cp UDC24.pcf /usr/openwin/lib/locale/$LANG/X11/fonts/UDC/Bitmaps
    

日本語 PostScript プリンタで使用する場合

ユーザー定義文字のフォントとしては sdtudctool(1) で出力される Type1 フォント、 JIS X 0212 とベンダー定義文字のフォントとしては SUNWjcs3f に含まれる Type1 フォントだけが使用できます。

フォントのインストール方法

プリンタサーバー上で次のように操作します。

  1. SUNWjcs3f パッケージがインストールされているかどうかを確認します。


    sun# pkginfo SUNWjcs3f
    
  2. SUNWjcs3f パッケージがインストールされている場合は次のようなメッセージが表示されます。


    SUNWjcs3f Japanese JIS X0212 Type1 fonts for printing
    
  3. ここで SUNWjcs3f が見つからなかった場合は、次のコマンドを実行します。


    sun# pkgadd -d <Solaris CD>/Product SUNWjcs
    

    上記 <Solaris CD> には、Solaris CD のインストールイメージがあるディレクトリを指定します。

  1. sdtudctool でユーザー定義文字フォントを作成します。

  2. 作成したフォントをインストールします。


    sun% cd $HOME/.Xlocale/$LANG/fonts/UDC/Type1
    sun% su
    sun# mkdir -p /usr/openwin/lib/locale/$LANG/X11/fonts/UDC/Type1
    sun# cp UDC*.pfa /usr/openwin/lib/locale/$LANG/X11/fonts/UDC/Type1
    

jpostprint を起動し、クライアント側で PostScript ファイルに変換することにより、プリンタサーバーとは異なった独自の外字を印刷することもできます。


sun% /usr/lib/lp/postscript/jpostprint <テキストファイル名>

この場合は、$HOME/.Xlocale/$LANG/fonts/UDC/Type1 にある外字フォントが使用されます。

日本語キーボードのサポート

JFP は、次の日本語キーボードをサポートしています。

 プロセッサの種類 キーボードの種類
 SPARC

日本語タイプ 4 キーボード 

日本語タイプ 5 キーボード 

日本語タイプ 6 キーボード 

 IA

106 キーボード 

J3100 キーボード 

日本語タイプ 4、5、6 キーボード

日本語タイプ 5 キーボードの制限事項については、U.S. タイプ 5 キーボードと同じです。

日本語キーボードについては、 SunOS の「各国語キーボードサポート」機能により、自動的に対応するキーテーブルが読み込まれます。