日本語入力システムの概要とセットアップ

第 6 章 ATOK12 への移行

この章では、日本語入力システム ATOK8 または cs00 から ATOK12 に切り替える場合に、以前の日本語入力環境をできるだけ維持するための手順や制約事項について説明します。

Solaris 上で ATOK8 から ATOK12 に移行する場合、ATOK8 の使用環境の一部を ATOK12 の使用環境に反映することができます。

ATOK12 に移行しても継続して使用できるのは、次の 2 点です。

cs00 から ATOK12 に移行する場合も、cs00 用のユーザー辞書に登録した単語を継続して使用できます。

ATOK8 の辞書に登録した単語を ATOK12 で使用する

atok12migd コマンドを実行すると、ATOK8 の辞書に登録した単語を ATOK12 で使用できる形式に変換し、ATOK12 の辞書とマージして使用できます。

atok12migd は、ATOK8 システムにもともと含まれている単語はマージしないで、ユーザーが登録した単語だけを ATOK12 の辞書にマージします。ATOK8 と ATOK12 の両方の辞書に登録されている単語はマージしません。また、マージ元の ATOK8 の辞書の中身が、マージ処理によって破壊されたり変更されたりすることはありません。

atok12migd コマンドの形式は次のとおりです。

sun% atok12migd [-h xxx] atok8_dic atok12_dic

各引数は次のとおりです。

atok8_dic :   ATOK8 の辞書ファイルです。システム辞書とユーザー辞書のどちらでも指定できます。特に型を指定しなくても自動的に判別して処理します。
atok12_dic :  ATOK12 の辞書ファイルです。
-h xxx : 品詞を指定し、マージする単語を品詞によって限定します。指定には、ATOK8 の品詞番号を使用します。複数の品詞を指定する場合は + で区切ります。品詞番号については表 6-1 を参照してください。
-k xxx : 単語の種類を指定し、マージする単語を限定します。引数として指定できるのは、autousr です。auto を指定すると、自動登録単語のみがマージされます。usr を指定すると、ユーザー登録単語のみがマージされます。引数を指定しないと、自動登録単語とユーザー登録単語が両方ともマージされます。
-n xxx :  辞書セット番号を指定し、マージ先の辞書を選択します。辞書セット番号は、1 〜 10 の数字で指定します。辞書セット番号を指定しないと、環境設定ファイルで「基本辞書セット No」に設定された辞書セットがマージ先辞書セットになります。

atok12migd は、ja 以外のロケールでは動作しません。ja 以外のロケールで実行する場合は、次のように LC_ALLja を指定して実行してください。

sun% env LC_ALL=ja atok12migd atok8_dic atok12_dic


注 -

atok12dicm コマンドや辞書メンテナンス用単語ファイルなどで使用する品詞番号とは異なりますので、注意してください。


品詞指定の例 :

 1 一般名詞
 2+3 固有人名と固有地名
 6+7+11+12 名詞サ変と名詞ザ変と連体詞と接続詞
 all すべての品詞 ( 1. 一般名詞 〜 33. 副詞 )

表 6-1 ATOK12 の品詞番号と種類

1  

4  

10 

13 

16 

19 

22 

25 

28 

31 

一般名詞  

固有組織 

名詞ザ変 

単漢字 

感動詞 

数詞 

サ行五段 

ハ行五段 

ラ行五段 

カ変動詞 

形容詞 

2  

5  

11 

14 

17 

20 

23 

26 

29 

32 

固有人名  

固有一般  

名詞形動 

連体詞 

接頭語 

カ行五段 

タ行五段 

バ行五段 

ワ行五段 

サ変動詞 

形容動詞 

3  

6  

12 

15 

18 

21 

24 

27 

30 

33 

固有地名  

名詞サ変 

独立語 

接続詞 

接尾辞 

ガ行五段 

ナ行五段 

マ行五段 

一段動詞 

ザ変動詞 

副詞 

詳細については、atok12migd(1) のマニュアルページを参照してください。

ATOK8 の環境設定ファイルを ATOK12 で利用する

atok12migs コマンドを実行すると、ATOK8 の環境設定ファイル内のキーやローマ字変換の設定内容が ATOK12 で使用できる形式に変換されます。これが ATOK12 のスタイルファイルになります。

変換済みのスタイルファイルを ATOK12 カスタマイザで追加・選択すると、ATOK8 のキー設定やローマ字設定を ATOK12 でも使用できます。

atok12migs コマンドの形式は次のとおりです。

sun% atok12migs [-k] [-r] atok8_ucf atok12_sty

各引数は次のとおりです。

atok8_ucf :   ATOK8 の環境設定ファイルです。
atok12_sty :  ATOK12 のスタイルファイルです。
-k :  キーに関する操作環境の設定内容だけを変換します。
-r :  ローマ字に関する操作環境の設定内容だけを変換します。

atok12migs は、ja 以外のロケールでは動作しません。ja 以外のロケールで実行する場合は、次のように LC_CTYPEja を指定して実行してください。

sun% env LC_CTYPE=ja atok12migs atok8_ucf atok12_sty

詳細については、atok12migs(1) のマニュアルページを参照してください。

cs00 の辞書に登録した単語を ATOK12 で利用する

cs00 辞書から ATOK12 へ単語を移行する場合も、cs00 から ATOK8 への移行の場合と同様に、cs00toatok8 を使用します。cs00toatok8 は、cs00 のユーザー辞書を ATOK8 で利用するための変換フィルタです。このフィルタを使用して作成した単語ファイル (ATOK8 では「単語リスト」と呼びます) は、ATOK8 の辞書メンテナンスツールのほか、ATOK12 辞書ユーティリティでも使用できます。

次に、この変換手順を説明します。

  1. udicmsdtudicm (Solaris CDE 上の場合) 、または udicmtool (日本語 OpenWindows 上の場合) を用いてユーザー辞書から単語リストのファイルを作成します。

    • udicm を使用する場合

      次を実行します。

      sun% udicm show cs00_u.dic > cs00_u.list
      

      cs00_u.list には cs00 のユーザー辞書名を、cs00_u.list には単語リストのファイル名をそれぞれ指定します。

    • sdtudicm または、udicmtool を使用する場合

      cs00 ユーザーズガイド』を参照してください。

  2. cs00 の単語リストのファイルを ATOK8 の辞書メンテナンスで使用するテキスト形式の単語ファイルに変換します。

    sun% cs00toatok8 cs00_u.list > atok8.list
    

    cs00_u.list には手順 1 で得られた cs00 の単語リストのファイル名を、atok8.list には ATOK8 のテキスト形式の単語ファイルのファイル名を指定します。

  3. ATOK12 辞書ユーティリティを使用して、手順 2 で得られたファイルの内容を ATOK12 の辞書に登録します。

    1. ATOK パレットから ATOK12 辞書ユーティリティを起動します。

    2. ATOK12 辞書ユーティリティの「一括処理」ボタンを押し、「単語一括処理」を選択します。

    3. 以下の例を参考に入力します。

      ATOK 辞書

      標準辞書

      単語ファイル

      /home/user/atok8.list

      単語ファイル形式

      ATOK

      出力ファイル

      /home/user/atok12usr.unreg

      atok8.list には、手順 2 で指定した ATOK8 のテキスト形式の単語ファイルのファイル名を指定します。

      /home/user には、ユーザーのホームディレクトリを指定します。

    4. 「登録」ボタンを押します。

これで、登録は完了です。