IP ネットワークマルチパスの管理

マルチパスデーモン

in.mpathd マルチパスデーモンは、グループに属するすべてのインタフェースから検査信号を送信することによって障害や回復を検出します。グループに属するインタフェースに検査用 IP アドレスがあれば、デーモンは検査信号の送信を開始し、そのインタフェースに障害がないかどうかを判断します。連続する 5 つの検査信号に対し応答がない場合は、そのインタフェースに障害が発生しているものとみなします。検査頻度は、障害検出時間によって異なります。デフォルトの障害検出時間は 10 秒です。つまり、検査頻度は 2 秒に 1 回の割合です。ネットワークで同期が発生するのを防ぐため、検査は定期的には実行されません。連続する 5 つの検査信号に応答がないと、in.mpathd は、そのインタフェースに障害が発生したとみなし、障害経路の迂回が行われ、ネットワークアクセスを障害のあるインタフェースからグループの別の正常なインタフェースへ移します。待機インタフェースが構成されている場合は、IP アドレスと、ブロードキャストやマルチキャストメンバーシップの障害経路の迂回用に待機インタフェースが選択されます。待機インタフェースが構成されていない場合は、最小の IP アドレスをもつインタフェースが選択されます。関連情報については、in.mpathd(1M) のマニュアルページを参照してください。

次の 2 つの例は、一般的な構成と、インタフェースに障害が発生したときに構成がどのように変化するかを示しています。hme0 インタフェースに障害が発生すると、すべてのアドレスが hme0 から hme1 に移されます。


例 1-1 インタフェースに障害が発生する前のインタフェース構成


hme0: flags=9000843<UP,BROADCAST,RUNNING,MULTICAST,IPv4> mtu 1500 index 2
     inet 19.16.85.19 netmask ffffff00 broadcast 19.16.85.255
     groupname test
hme0:1: flags=9000843<UP,BROADCAST,RUNNING,MULTICAST,DEPRECATED,IPv4,NOFAILOVER> mtu 1500 
     index 2 inet 19.16.85.21 netmask ffffff00 broadcast 129.146.85.255
hme1: flags=9000843<UP,BROADCAST,RUNNING,MULTICAST,IPv4> mtu 1500 index 2
     inet 19.16.85.20 netmask ffffff00 broadcast 19.16.85.255
     groupname test
hme1:1: flags=9000843<UP,BROADCAST,RUNNING,MULTICAST,DEPRECATED,IPv4,NOFAILOVER> mtu 1500 
     index 2 inet 19.16.85.22 netmask ffffff00 broadcast 129.146.85.255
hme0: flags=a000841<UP,RUNNING,MULTICAST,IPv6,NOFAILOVER> mtu 1500 index 2
     inet6 fe80::a00:20ff:feb9:19fa/10
     groupname test
hme1: flags=a000841<UP,RUNNING,MULTICAST,IPv6,NOFAILOVER> mtu 1500 index 2
     inet6 fe80::a00:20ff:feb9:1bfc/10
     groupname test


例 1-2 インタフェースに障害が発生した後のインタフェース構成


hme0: flags=19000842<BROADCAST,RUNNING,MULTICAST,IPv4,NOFAILOVER,FAILED> mtu 0 index 2
        inet 0.0.0.0 netmask 0 
        groupname test
hme0:1: flags=19040843<UP,BROADCAST,RUNNING,MULTICAST,DEPRECATED,IPv4,NOFAILOVER,FAILED> 
        mtu 1500 index 2 inet 19.16.85.21 netmask ffffff00 broadcast 129.146.85.255
hme1: flags=9000843<UP,BROADCAST,RUNNING,MULTICAST,IPv4> mtu 1500 index 2
        inet 19.16.85.20 netmask ffffff00 broadcast 19.16.85.255
        groupname test
hme1:1: flags=9000843<UP,BROADCAST,RUNNING,MULTICAST,DEPRECATED,IPv4,NOFAILOVER> mtu 1500 
        index 2 inet 19.16.85.22 netmask ffffff00 broadcast 129.146.85.255
hme1:2: flags=1000843<UP,BROADCAST,RUNNING,MULTICAST,IPv4> mtu 1500 index 6
        inet 19.16.85.19 netmask ffffff00 broadcast 19.16.18.255
hme0: flags=a000841<UP,RUNNING,MULTICAST,IPv6,NOFAILOVER,FAILED> mtu 1500 index 2
        inet6 fe80::a00:20ff:feb9:19fa/10 
        groupname test
hme1: flags=a000841<UP,RUNNING,MULTICAST,IPv6,NOFAILOVER> mtu 1500 index 2
        inet6 fe80::a00:20ff:feb9:1bfc/10 
        groupname test

上記の例では、障害が発生したことを示す FAILED フラグが hme0 に設定されています。また、hme1:2 が新しく作成されているのがわかります。hme0 の構成は hme1:2 に引き継がれました。これによって、アドレス 19.16.85.19 は、hme1 からアクセスできるようになります。19.16.85.19 に対応するマルチキャストメンバーシップはこの後もパケットを受信できますが、パケットは hme1 を通して受信されます。アドレス 19.16.85.19hme0 から hme1 に障害経路の迂回が行われるとき、hme0 にはダミーアドレス 0.0.0.0 が作成されます。ダミーアドレスは、回復した経路への復帰時に削除されます。ダミーアドレスは、hme0 を引き続きアクセスできる状態に保つために作成されます。hme0 がなければ、hme0:1 は存在できません。

同様に、IPv6 アドレスが hme0 から hme1 へ移されています。IPv6 では、マルチキャストメンバーシップはインタフェースインデックスに関連付けられています。マルチキャストメンバーシップも hme0 から hme1 に移されます。in.ndpd が構成を行うすべてのアドレスも移されます (上記の例には示されていません)。

in.mpathd デーモンは引き続き、障害が発生した NIC hme0 を通して検査を行います。(デフォルトの障害検出時間 10 秒の間に) 10 回の応答を連続して受け取ると、インタフェースが回復したとみなし、回復した経路への復帰を行います。回復した経路への復帰が行われると、元の構成が再び確立されます。

障害や回復の検出時にコンソールに出力されるエラーメッセージについては、in.mpathd(1M) のマニュアルページを参照してください。