Sun WBEM SDK 開発ガイド

用語集

この用語集では、Solaris WBEM のマニュアルで使用されている用語について説明します。これらの用語は開発者の間ではよく使用されていますが、WBEM 環境独自のものや、異なる意味で使用されているものもあります。

Backus-Naur Form (BNF)

プログラミング言語の構文を指定するメタ言語。

CIM Object Manager Repository

CIM Object Manager (Common Information Model Object Manager) によって管理される主要な格納領域。この Repository には、管理対象オブジェクトを表現するクラスとインスタンスの定義、およびそれらの間の関係が格納される。

CIM スキーマ

各管理環境で発生する管理対象オブジェクトの表現に使用されるクラス定義の集まり。

「コアモデル」、「共通モデル」、「拡張スキーマ」も参照。

CIM は、メタモデルと標準スキーマに分類される。メタモデルは、スキーマを構成するエンティティの種類を示すと共に、管理対象オブジェクトを表すオブジェクトにそれらのエンティティをどのように結合できるかを定義する。

DMTF (Distributed Management Task Force)

パーソナルコンピュータ (PC) の使用、理解、構成、および管理の簡易化を行なっている業界のコンソーシアム。

IDL (Interface Definition Language)

ある言語で記述されたプログラムまたはオブジェクトが、認識できない言語で記述された別のプログラムと通信できるようにする言語の総称。

MOF (Managed Object Format)

クラスとインスタンスを定義するコンパイラ型言語。MOF コンパイラ (mofcomp) は、.mof テキストファイルを Java クラスにコンパイルし、そのデータを CIM Object Manager Repository に追加する。MOF を使用するとコードを記述する必要がないため、CIM Object Manager Repository を簡単にかつ速く変更できる。

MOF ファイル

MOF (Managed Object Format) 言語を使用するクラスとインスタンスの定義が入ったテキストファイル。

Solaris スキーマ

CIM スキーマを Sun の Solaris 用に固有に拡張したスキーマ。Solaris スキーマには、一般的な Solaris オペレーティング環境に存在する管理対象オブジェクトを表現するクラスとインスタンスの定義が含まれる。

Simple Network Management Protocol (SNMP)

インターネット参照モデルのプロトコルの 1 つで、ネットワーク管理に使用される。

Unified Modeling Language (UML)

ソフトウェアシステムを説明するために使用される表記言語。ボックスと線を使用してオブジェクトと関係を表す。

Unicode

多くの既知の文字をコード化できる 16 ビットの文字セット。Unicode は、文字のコード化における標準として全世界的に使用されている。

UTF-8

Unicode 文字データの変換形式としての機能を果たす 8 ビットの変換形式。

Win32 スキーマ

CIM スキーマの Microsoft 固有の拡張機能。Win32 スキーマには、一般的な Win32 環境に存在する管理対象オブジェクトを表現するクラスとインスタンスの定義が含まれる。

インジケーション

インスタンスの作成、変更、または削除、インスタンスへのアクセス、プロパティの変更またはプロパティへのアクセスなどのアクションの結果として実行されるオペレーション。インジケーションは、指定された時間の経過からも起きる。インジケーションの結果、通常はイベントが発生する。

インスタンス

特定のクラス、または特定のイベントから作成された管理対象オブジェクトを表す。インスタンスには、実際のデータが含まれる。

インスタンスプロバイダ

システム固有のクラスおよびプロパティ固有のクラスのインスタンスをサポートするプロバイダ。インスタンスプロバイダは、データの検索、変更、削除、列挙をサポートできる。インスタンスプロバイダは、メソッドの呼び出しも行うことができる。

「プロパティプロバイダ」も参照。

インタフェースクラス

オブジェクトセットへのアクセスに使用されるクラス。インタフェースクラスには、列挙範囲を表す abstract クラスを使用できる。

「列挙」と「スコープ」も参照。

オーバーライド

派生クラス内のプロパティ、メソッド、または参照が、継承ツリー内の親クラス内または指定された親クラス内の類似した構成体を上書きすること。

オブジェクトパス

ネームスペース、クラス、およびインスタンスへのアクセスに使用される定形の文字列。システム上の各オブジェクトは、ローカルに、またはネットワーク上でそれ自体を識別する一意のパスを持つ。オブジェクトパスは、概念的には URL (Universal Resource Locator) に似ている。

拡張スキーマ

CIM スキーマの 3 つめの層であり、Solaris や UNIX などのプラットフォーム固有の CIM スキーマの拡張機能を含む。

「共通モデル」と「コアモデル」も参照。

仮想関数テーブル (Virtual Function Table: VTBL)

関数ポインタ (クラスの実装など) のテーブル。VTBL 内のポインタは、オブジェクトがサポートするインタフェースのメンバーを指す。

管理アプリケーション

管理環境内の 1 つ以上の管理対象オブジェクトから発生する情報を使用するアプリケーションまたはサービス。管理アプリケーションは、CIM Object Manager およびプロバイダから CIM Object Manager API を呼び出すことによってこの情報を検索する。

管理情報ベース

管理対象オブジェクトのデータベース。

管理対象オブジェクト

CIM クラスのインスタンスとして表現される、ハードウェアコンポーネントまたはソフトウェアコンポーネント。管理対象オブジェクトについての情報は、プロバイダおよび CIM Object Manager から提供される。

管理リソース

管理アプリケーションを使用して管理されるハードウェアコンポーネントまたはソフトウェアコンポーネント。例として、ハードディスク、CPU、オペレーティングシステムなどがあります。管理リソースは WBEM クラスの中に記述されます。

「管理対象オブジェクト」も参照。

関連クラス

2 つのクラス間、または 2 つのクラスのインスタンス間の関係を表現するクラス。関連クラスのプロパティには、2 つのクラスまたはインスタンスを指すポインタ (参照) が含まれる。WBEM クラスはすべて、1 つ以上の関連に含めることができる。

キー

クラスのインスタンスに一意の識別子を提供するために使用されるプロパティ。キープロパティは、キー修飾子によって示される。

キー修飾子

クラス内のプロパティ (そのクラスのキーの一部として機能する) に付加される必要がある修飾子。

共通モデル

CIM スキーマの 2 つめの層であり、ドメイン固有であるがプラットフォームには依存しない一連のクラスを含む。ここでのドメインは、管理関連のデータ (システム、ネットワーク、アプリケーションなど) を意味する。共通モデルは、コアモデルを元に作成されたもの。

「拡張スキーマ」も参照。

クラス

類似したプロパティを持ち、類似した目的を果たすオブジェクトの集まり。

継承

クラスとインスタンスが親クラス (スーパークラス) からどのように派生するかを表す関係。クラスは、新しいサブクラス (子クラスとも言う) を生成できる。サブクラスは、その親クラスのメソッドとプロパティをすべて含む。継承は、WBEM 環境内で WBEM のクラスが実際の管理対象オブジェクトのテンプレートとしての役割を果たすために必要な機能の 1 つである。

コアモデル

CIM スキーマの最初の層であり、最上位レベルのクラス、およびそれらのプロパティと関連を含む。コアモデルは、ドメインにもプラットフォームにも依存しない。

「共通モデル」と「拡張スキーマ」も参照。

サブクラス

スーパークラスから派生するクラス。サブクラスはそのスーパークラスのすべての機能を継承するが、新しい機能を追加することも、あるいは既存の機能を定義し直すこともできる。

サブスキーマ

スキーマの一部であり、特定の編成によって所有される。サブスキーマには、Win32 スキーマ、Solaris スキーマなどがある。

参照

参照修飾子によって示される特殊な文字列のプロパティであり、ほかのインスタンスを指すポインタであることを示す。

修飾子

クラス、インスタンス、プロパティ、メソッド、またはパラメータを表現する情報を含む。修飾子には、3 つのカテゴリがあり、CIM (Common Information Model) によって定義されるもの、WBEM (標準の修飾子) によって定義されるもの、および開発者によって定義されるものに分類される。標準の修飾子は、CIM Object Manager によって自動的に付加される。

修飾子フレーバ

CIM 修飾子の属性の 1 つで、修飾子の使用を制御する。修飾子フレーバは、修飾子が派生クラスと派生インスタンスに影響するかどうか、および派生クラスまたは派生インスタンスが修飾子の本来の値を上書きできるかどうかを指定する規則について記述する。

集約関係

1 つのエンティティがいくつかのほかのエンティティの集合から構成されている関係。

推移的な依存性

少なくても 3 つの属性を持つ関係、R (A, B, C)。この場合、A は B を決定し、B は C を決定するが、B は A を決定しない。

スーパークラス

サブクラスの継承元であるクラス。

スキーマ

特定の環境における管理対象オブジェクトについて説明するクラス定義の集まり。

スコープ

CIM 修飾子の属性の 1 つであり、どの CIM 要素がその修飾子を使用できるかを示す。スコープを定義できるのは Qualifier Type の宣言内だけであり、修飾子内では変更できない。

静的クラス

定義が永続的な WBEM クラス。定義は、明示的に削除されるまで CIM Object Manager Repository に格納される。CIM Object Manager は、プロバイダの支援を受けずに静的クラスの定義を提供できる。静的クラスは、静的インスタンス、動的インスタンスのどちらでもサポートできる。

静的インスタンス

CIM Object Manager Repository に永続的に格納されるインスタンス。

選択的な継承

下位クラスが上位クラスのプロパティを削除または上書きできること。

多重度

特定のエンティティの属性に適用できる値の数。

多相性

名前またはインタフェースを変更することなく、派生クラス内のメソッドとプロパティを変更できること。たとえば、サブクラスは、そのスーパークラスから継承されたメソッドまたはプロパティの実装を再定義できる。そのため、プロパティまたはメソッドは、スーパークラスがインタフェースクラスとして使用される場合でも再定義される。

したがって、LogicalDevice クラスは変数の状態を文字列として定義し、値として「オン」または「オフ」を返すことができる。LogicalDevice の Modem サブクラスは、「オン」、「オフ」、および「接続中」を返すことによって、状態を再定義 (オーバーライド) できる。LogicalDevice がすべて列挙される場合、その時点でモデムの役割を務める LogicalDevice はすべて、状態プロパティに対して「接続中」の値を返すことができる。

単一クラス

単一インスタンスだけをサポートする WBEM クラス。

動的インスタンス

必要時にプロバイダから提供されるインスタンスであり、CIM Object Manager Repositoty には格納されない。動的インスタンスは、静的クラス、動的クラスのどちらからも提供される。クラスのインスタンスを動的にサポートすることにより、プロバイダは最新のプロパティ値を提供できる。

動的クラス

必要に応じて実行時にプロバイダから定義が提供されるクラス。動的クラスはプロバイダ固有の管理対象オブジェクトを表現するのに使用され、CIM Object Manager Repository に永続的に格納されることはない。代わりに、動的クラスを提供するプロバイダがその場所についての情報を格納する。アプリケーションが動的クラスを要求する場合、CIM Object Manager はそのプロバイダを見つけて要求を送る。動的クラスがサポートするのは、動的インスタンスだけである。

ドメイン

プロパティまたはメソッドが属するクラス。たとえば、状態が Logical Device のプロパティの場合、Logical Device ドメインに属すると考えられる。

トリガー

クラスインスタンスの状態変化 (作成、削除、更新、アクセスなど)、およびプロパティの更新またはアクセスが発生すること。WBEM の実装には、トリガーを表現する明示的なオブジェクトは存在しない。トリガーは、システムの基本オブジェクトに対するオペレーション (クラス、インスタンス、およびネームスペースの作成、削除、変更) が起るか、または管理環境内のイベントによっては特定の指定をしなくても動作する。

名前付き要素

メタスキーマ内でオブジェクトとして表現できる実体。

ネームスペース

クラス、インスタンス、およびほかのネームスペースを含むことができる、ディレクトリに似た構造。

範囲

参照プロパティによって参照されるクラス。

必須プロパティ

値が必要なプロパティ。

標準スキーマ

システム、ネットワーク、またはアプリケーションの現在のオペレーション状態を表現する各種のクラスの編成と関連付けを行う、概念的な共通の枠組み。標準スキーマは、CIM (Common Information Model) では DMTF (Distributed Management Task Force) によって定義される。

フレーバ

「修飾子フレーバ」を参照。

プロパティ

クラスインスタンスの特性を示すために使用される値。プロパティ名は数字で開始することはできず、空白を含めることもできない。プロパティ値は、有効な MOF (Managed Object Format) のデータ型でなければならない。

プロパティプロバイダ

さまざまなソース (Solaris オペレーティング環境、Simple Network Management Protocol (SNMP) デバイスなど) のデータとイベント通知にアクセスするために管理対象オブジェクトと通信を行うプログラム。プロバイダは、統合と解釈を行うためにこの情報を CIM Object Manager に送る。

別名

MOF (Managed Object Format) ファイルの別の場所にあるオブジェクトに対するクラス宣言またはインスタンス宣言内のシンボリック参照。別名は、インスタンス名およびクラス名と同じ規則に従う。別名は、一般に比較的長いパスのショートカットとして使用される。

メソッド

あるクラスの動作について述べた関数。クラスにメソッドを組み込んでも、メソッドの実装を保証することにはならない。

メタスキーマ

CIM (Common Information Model) の公式の定義であり、このモデルの内容、使用法、および意味の説明に使用される用語を定義する。

メタモデル

管理対象オブジェクトを表現するエンティティと関係について説明する CIM コンポーネント。たとえば、クラス、インスタンス、関連など。

列挙

オブジェクトリストの取得を意味する Java 用語。Java は、オブジェクトリストを列挙するメソッドが含まれる Enumeration インタフェースを提供する。このリスト上の列挙される個々のオブジェクトは、要素と呼ばれる。