モバイル IP の動作では、インターネット上の経路指定は、データパケット発信元アドレスから独立したものと想定されています。しかし、中間ルーターは、トポロジとして正しい発信元アドレスを確認します。中間ルーターが確認する場合は、逆方向トンネルを設定しなければなりません。モバイルノードの気付アドレスからホームエージェントに逆方向トンネルを設定することによって、IP データパケットはトポロジとして正しい発信元アドレスを確保します。モバイルノードは、登録時に外来エージェントとホームエージェントの間に逆方向トンネルを要求できます。逆方向トンネルは、モバイルノードの気付アドレスで始まり、ホームエージェントで終わるトンネルです。図 1–4 に逆方向トンネルを使用するモバイル IP トポロジを示します。
専用アドレスを持ち、インターネットを経由してグローバルに経路指定できないモバイルノードには、逆方向トンネルが必要です。Solaris モバイル IP は、専用アドレスを持つモバイルノードのみをサポートします。Solaris モバイル IP がサポートしない機能については、Solaris モバイル IP 実装の概要を参照してください。
外部との接続が必要でない場合、ネットワークでは専用アドレスを使います。専用アドレスは、インターネットを通る経路指定ができません。専用アドレスを持つモバイルノードは、逆方向トンネルを経由する通信ノードとだけ通信できます。専用アドレスが指定された通信ノードは、同じホームエージェントの管理ドメインに属さなければなりません。同じ外来エージェントに登録された時に同じ気付アドレスを使用する、専用アドレスが指定された 2 つのモバイルノードのネットワークトポロジを 図 1–5 に示します。
専用アドレスが指定された 2 つのモバイルノードが同じ管理ドメインに属しているので、ホームエージェントはこの 2 つのモバイルノードの間にデータパケットをどのようにして経路指定するかを識別します。また、外来エージェントの気付アドレスとホームエージェントの IP アドレスは、グローバルに経路指定できるアドレスでなければなりません。
同じ外部ネットワーク上にあり、同じ IP アドレスを持つ、専用アドレスが指定された 2 つのモバイルノードを持つことは可能です。各モバイルノードが異なるホームエージェントを持つ時にのみこれは、可能になります。また、各モバイルノードが共通の 1 つの外来エージェントの異なる通知サブネット上にある場合にのみ可能になります。図 1–6 は、このような状況を表わすネットワークトポロジを示しています。
専用アドレスが指定された 2 つのモバイルノードは同じ IP アドレスを持ち、これらのモバイルノードは異なるホームエージェントドメインに属しているので、2 つのノードは互いに通信し合うことはできません。しかし、各ノードは逆方向トンネルを経由し、対応するホームエージェントの管理ドメイン内のノードと通信することができます。例えば、図 1–6 のモバイルノード 2 は、通信ノード 2 に伝達できます。