Solaris DHCP の管理

DHCP クライアントシステムとネームサービス

Solaris システムでは、次のネームサービスがサポートされています。 DNS、 NIS、 NIS+、およびローカルファイル (/etc/inet/hosts) これらのネームサービスを使用するためには、ある程度の事前構成が必要です。 使用するネームサービスを指定するために、ネームサービススイッチ構成ファイル (nsswitch.conf(4) を参照) を正しく設定する必要があります。

ネームサービスのクライアントとしてシステムを構成しないと、DHCP クライアントシステムでネームサービスを使用することはできません。

次の表は、DHCP に関連する問題をネームサービスごとに要約したものです。この表には、各ネームサービスに対してクライアントを設定する上で役立つマニュアルへのリンクが示されています。

表 1–4 DHCP クライアントシステムに対するネームサービスクライアント設定情報

ネームサービス  

クライアントの設定に関する注意 

NIS 

Solaris DHCP を使ってクライアントシステム上に Solaris オペレーティング環境をインストールする場合には、構成マクロに NISservs オプションと NISdmain オプションを指定すれば、NIS サーバーの IP アドレスと NIS ドメイン名をクライアントに渡すことができます。これによって、クライアントは自動的に NIS クライアントになります。

DHCP クライアントシステムで Solaris オペレーティング環境がすでに動作している場合、DHCP サーバーが NIS 情報をクライアントに送信しても、クライアントシステムが自動的に NIS クライアントとして構成されるわけではありません。 

DHCP クライアントシステムに NIS 情報を送信するように DHCP サーバーが構成されている場合には、クライアントで次の dhcpinfo コマンドを実行すれば、これらの値を見ることができます。

# /sbin/dhcpinfo NISdmain

# /sbin/dhcpinfo NISservs

NIS ドメイン名と NIS サーバーの値は、システムを NIS クライアントとして構成するときに使用します。 

Solaris DHCP クライアントシステムを NIS クライアントとして設定する場合には、『Solaris ネーミングの設定と構成』の「NIS サービスの構成」に示されている標準的な方法を使います。


注 –

スクリプトを作成すれば、dhcpinfoypinit を使って、DHCP クライアントシステムにおける NIS クライアントの構成を自動的に行うことができます。


NIS+ 

予約されていない IP アドレス (アドレスは常に同じであるとは限らない) を DHCP クライアントシステムが受け取る場合には、非標準的な方法で DHCP クライアントシステムを NIS+ クライアントとして設定する必要があります。これについては、NIS+ クライアントとしての DHCP クライアントの設定を参照してください。この手順が必要な理由は、NIS+ ではサービス要求を認証するためのセキュリティ手段が使用されるためです。セキュリティ手段は IP アドレスによって異なります。

DHCP クライアントシステムに IP アドレスが手動で割り当てられている (クライアントのアドレスは常に同じ) 場合には、NIS+ クライアントを標準的な方法で設定できます。これについては、『Solaris ネーミングの設定と構成』の「NIS+ クライアントの構成」を参照してください。

/etc/inet/hosts

ネームサービスとして /etc/inet/hosts を使用する DHCP クライアントシステムには、/etc/inet/hosts ファイルを設定する必要があります。

DHCP クライアントシステム自身の /etc/inet/hosts ファイルには、そのホスト名が DHCP ツールによって追加されます。 ただし、同じネットワークにある他のシステムの /etc/inet/hosts ファイルには、このホスト名を手動で追加する必要があります。さらに、DHCP サーバーシステムが名前を解決するために /etc/inet/hosts を使用する場合は、このシステムにもクライアントのホスト名を手動で追加する必要があります。

DNS  

DHCP クライアントシステムが DNS ドメイン名を DHCP から取得する場合には、クライアントシステムの /etc/resolv.conf ファイルは自動的に構成されます。/etc/inet/hosts ファイルを使用するシステムで DNS を実際に使用するためには、/etc/nsswitch.conf ファイルの hosts 行に dns を追加する必要があります。これについては、『Solaris ネーミングの設定と構成』を参照してください。

クライアントシステムでローカル名の解決に NIS または NIS+ を使用する場合は、次の点に注意してください。  

  • NIS – NIS サーバーで DNS 転送が可能な場合は (デフォルトでは可能)、NIS クライアントシステムでも DNS を使用できます。 この場合には、DNS クライアントとしての設定は必要ありません。NIS サーバーで DNS 転送が可能でない場合は、DNS クライアントになると、クライアントシステムで DNS を使用することができます。DNS クライアントになる方法については、『Solaris ネーミングの設定と構成』の「DNS クライアントの構成」を参照してください。クライアントが DNS ドメイン名を DHCP サーバーから取得する場合には、DNS クライアントに必要な /etc/resolv.conf ファイルは自動的に構成されます。したがって、この場合には、nsswitch.conf ファイルの構成だけが必要です。

  • NIS+ – nsswitch.conf ファイルを編集すれば、DNS を使用するように NIS+ クライアントシステムを構成することができます。編集方法については、『Solaris ネーミングの設定と構成』の「/etc/nsswitch.conf ファイルの修正」を参照してください。

クライアントホスト名の登録

DHCP サービスで使用する IP アドレスのホスト名を DHCP サーバーが生成するようにすると、DHCP サーバーがこれらのホスト名を NIS+、/etc/inet/hosts、または DNS ネームサービスに登録できます。 ホスト名の登録を NIS で行うことはできません。NIS には、NIS マップの更新や伝達をプログラムで行うためのプロトコルが備わっていないからです。


注 –

DNS サーバーと DHCP サーバーが同じシステムで動作している場合のみ、DHCP サーバーは、生成したホスト名を DNS に登録することができます。


DHCP クライアントがそのホスト名を指定し、DHCP サーバーが動的な更新をすることができるように DNS サーバーが構成されている場合には、DNS サーバーと DHCP サーバーが異なるシステムで動作していても、DHCP サーバーがクライアントに代わって DNS を更新することができます。この機能の使用方法については、DHCP サーバーによる動的 DNS 更新の有効化 を参照してください。

次の表は、DHCP クライアントシステムのホスト名の登録についてネームサービスごとに示したものです。

表 1–5 ネームサービスへのクライアントホスト名の登録

 

ホスト名を登録する人またはもの 

ネームサービス 

DHCP が生成したホスト名 

DHCP クライアントが指定したホスト名 

NIS 

NIS 管理者 

NIS 管理者 

NIS+ 

DHCP ツール 

DHCP ツール 

/etc/inet/hosts

DHCP ツール 

DHCP ツール 

DNS 

DHCP ツール (DNS サーバーが DHCP サーバーと同じシステムで動作している場合) 

DNS 管理者 (DNS サーバーが異なるシステムで動作している場合) 

DHCP サーバー (動的 DNS 更新が可能に構成されている場合) 

DNS 管理者 (DHCP サーバーがそのように構成されていない場合) 

Solaris DHCP クライアントは、DHCP 要求に特定のホスト名を指定できます。ただし、DHCP クライアントがそのように構成されている必要があります。構成方法については、特定のホスト名に応答するように Solaris クライアントを有効にする方法を参照してください。Solaris 以外のクライアントでこの機能がサポートされているかどうかについては、それぞれのマニュアルを参照してください。