IP ネットワークマルチパスの管理

検査用 IP アドレスの構成

マルチパスグループのすべての物理インタフェースを構成する際には、検査用 IP アドレスを指定する必要があります。検査用 IP アドレスは、障害や回復の検出に必要です。検査用 IP アドレスが指定されていないと、その物理インタフェースは障害経路の迂回には使用されません。in.mpathd だけが検査用 IP アドレスを使用します。通常のアプリケーションでは、このアドレスを使用しないようにしてください。インタフェースに障害が発生しても、このアドレスに関しては障害経路の迂回は行われません。IPv4 では、検査用 IP アドレスを構成する際には、通常のアプリケーションが検査用 IP アドレスを使用しないように設定してください (2 つのインタフェースでマルチパスインタフェースグループを構成するにはを参照)。

ここでは、次のインターネットプロトコルに対する検査用 IP アドレス構成の概念について説明します。

IPv4 検査用アドレス

in.mpathd マルチパスデーモンは、障害や回復を検出するための検査用 IP アドレスを必要とします。この IP アドレスは、ルーティング可能なアドレスでなければなりません。つまり、このアドレスのネットワークアドレス (ネットワーク接頭子) がリンク内のすべてのルーターから認識可能でなければなりません。検査用 IP アドレスの構成には、ifconfig コマンドの -failover オプションを使用します。検査用 IP アドレスを設定する構文は次の通りです。


# ifconfig interface-name addif ip-address <other-parameters> -failover up

<other-parameters> には、実際の構成に必要なオプションを指定します。詳細は、ifconfig(1M) のマニュアルページを参照してください。IPv4 検査用アドレスの設定手順については、2 つのインタフェースでマルチパスインタフェースグループを構成するにはを参照してください。

たとえば、アドレスが 19.16.85.21、ネットマスクおよびブロードキャストアドレスがデフォルト値で、かつ検査用に使用できる論理インタフェースを新規に作成するには、次のように指定します。


# ifconfig hme0 addif 19.16.85.21 netmask + broadcast + -failover up

注 –

この検査用 IP アドレスをアプリケーションから使用できないように IPv4 検査用アドレスを deprecated と指定する必要があります (2 つのインタフェースでマルチパスインタフェースグループを構成するにはを参照)。


アドレスの障害経路の迂回属性を有効にする場合は、failover (ダッシュ (-) をつけない) を指定します。


注 –

マルチパスグループのすべての検査用 IP アドレスには、同じネットワークアドレスを使用する必要があります。つまり、すべての検査用 IP アドレスは 1 つの IP サブネットに属していなければなりません。


IPv6 検査用 IP アドレス

リンクローカルアドレスが物理インタフェースに結び付けられているので、IPv6 検査用 IP アドレスを構成するには、リンクローカルアドレス自体を使用します。したがって、IPv6 では、別個の IP アドレスは必要ありません。IPv6 の場合、-failover オプションの構文は次の通りです。


# ifconfig interface-name inet6 -failover

IPv6 検査用 IP アドレスの設定手順については、2 つのインタフェースでマルチパスインタフェースグループを構成するにはを参照してください。

マルチパスグループですべてのグループのインタフェースに IPv4 と IPv6 の両方が結合される場合には、別個の IPv4 検査用アドレスは必要ありません。in.mpathd デーモンは、IPv6 リンクローカルアドレスを使ってインタフェースを調べることができます。IPv6 リンクローカルアドレスは、IPv6 を結合すると自動的に作成されます。

アドレスの障害経路の迂回属性を有効にするには、failover (ダッシュ (-) をつけない) を指定します。


注 –

有効な IPv6 検査用 IP アドレスは、リンクローカルアドレスだけです。


アプリケーションによる検査用 IP アドレス使用の防止

検査用 IP アドレスを構成したら、このアドレスが通常のアプリケーションで使用されないようにする必要があります。検査用 IP アドレスに対して障害経路の迂回処理が行われないため、アプリケーションから検査用 IP アドレスを使用できるようにすると、検査用 IP アドレスを使用したアプリケーションは障害迂回の処理時に異常終了します。検査用 IP アドレスが通常のアプリケーションに使用されるのを防ぐには、ifconfig コマンドを使って検査用 IP アドレスを deprecated と指定します。このオプションは次の構文により指定します。


ifconfig interface-name deprecated

アドレスを deprecated と指定すると、このアドレスをアプリケーションが明示的に指定しない限り、IP はこのアドレスを通信のソースアドレスとして選択しません。このようなアドレスに明示的に指定するのは、in.mpathd だけです (2 つのインタフェースでマルチパスインタフェースグループを構成するにはを参照)。

ネームサービス (DNS、NIS、NIS+) にはリンクローカルアドレスは登録されませんので、アプリケーションはリンクローカルアドレスを通信に使用しません。したがって、IPv6 検査用 IP アドレスを deprecated と指定する必要はありません。


注 –

IPv6 リンクローカルアドレスは deprecated と指定しないでください。


アドレスの deprecated 属性を無効にするには、-deprecated オプションを使用します。


注 –

IPv4 検査用アドレスは、ネームサービスデータベース (DNS、NIS、または NIS+) に入れないでください。IPv6 では、検査用 IP アドレスとしてリンクローカルアドレスが使用されますが、このアドレスは通常、ネームサービスデータベースに入れられません。