NIS+ が提供する相互運用性とは、NIS からの移行と、NIS サービスによって提供されていた DNS とを継続して併用できることを意味します。 NIS+ には、NIS からの移行に役立つ、NIS 互換モードと情報転送ユーティリティがあります。TNIS 互換モードを使用すると、Solaris 2.x のソフトウェアを実行する NIS+ サーバは、NIS クライアントからの要求に応じる一方で、NIS+ クライアントからの要求にも引き続き応じることができます。情報転送ユーティリティにより管理者は、NIS のマップと NIS+ のテーブルを同期させることができます。
NIS 互換モードの設定に必要な手順は、標準 NIS+ サーバで使用する手順と若干異なります。また、NIS 互換モードは、NIS+ 名前空間内のテーブルとセキュリティ上の関連を持っています。手順の違いとセキュリティとの関連については、『Solaris ネーミングの設定と構成』および『Solaris ネーミングの管理』を参照してください。
NIS+ サーバが NIS 互換モードで実行されている場合、NIS のクライアントコンピュータは、 NIS+ のクライアントコンピュータとは異なる方法で、NIS+ 名前空間にアクセスします。次にこの違いを示します。
NIS+ サーバ上で rpc.nisd に -Y -B オプションを付けて実行している場合、NIS+ サーバ内で解決できない、NIS のクライアントマシンからのホスト要求を DNS に転送することができます。しかし、NIS+ クライアントからのこのような要求は転送されません。NIS+ クライアントマシンの DNS 要求の転送は、/etc/resolv.conf ファイルと /etc/nsswitch.conf ファイルの構成によって制御されます。詳細については、『Solaris ネーミングの管理』 を参照してください。
許可を持つ NIS+ の管理者は、passwd コマンドを使用して、パスワードの有効期限やロックの設定など、パスワードに関連するすべての管理業務を実行できます。NIS+ クライアントのユーザは、passwd コマンドを使用して、自分自身のパスワードを変更できます。
ローカルサブネット上のすべてのサーバが応答しなくなった場合でも、NIS+ クライアントマシンは、そのドメインの複製サーバのどれかと通信できれば、そのネームサービスの呼び出しに応答を得ることができます。NIS クライアントマシンは、サーバ名が設定されていないと、そのサブネットの外部にあるネットワーク上の情報にアクセスすることができません。サーバ名は、ypset によって、または Solaris 2.x の NIS クライアントの場合には ypset サブネットの外部にあるネットワーク上の情報にアクセスする によって設定されます。
NIS クライアントマシンは、受信中のデータが、承認された NIS サーバから送信されたものかどうかについては確認できません。これに対して、承認された NIS+ クライアントでは、承認された NIS+ サーバからデータが送信されていることを確認できます。
NIS のもとでは、サーバが応答しなくなると、NIS の yp_match() 呼び出しは、サーバが応答して要求に応じるまで、この呼び出しを試行し続けます。NIS+ の API (アプリケーションプログラムインタフェース) では、このような事態が発生すると、アプリケーションに対してエラーメッセージを返します。
Solaris 2.3 以降のリリースでは、NIS 互換モードで DNS 転送をサポートします。Solaris 2.2 リリースでは、DNS 転送を可能にする「パッチ (patch #101022-06)」が提供されています。DNS 転送を可能にするパッチは、Solaris 2.0 と 2.1 では利用できません 。
NIS+ ドメインは、Internet に直接接続することはできませんが、ネームサービススイッチによって、NIS+ クライアントマシンを Internet に接続することはできます。クライアントは、そのスイッチ構成ファイル (/etc/nsswitch.conf) を設定して、NIS+ テーブルだけでなく、DNS ゾーンファイル、または、NIS マップ-の情報を検索することもできます。