ONC+ 開発ガイド

マルチスレッド自動モード

マルチスレッド自動モードでは、RPC ライブラリはスレッドを作成し、管理することができます。サービス開発者が新規インタフェース呼び出し、rpc_control() を呼び出し、svc_run() を呼び出す前にサーバをマルチスレッド自動モードにします。このモードでは、プログラマはサービスプロシージャがマルチスレッド対応であることを確認するだけで十分です。

rpc_control() の使用によって、アプリケーションでグローバル RPC 属性を設定できます。現在はサービス側の操作しかサポートしていません。 表 4-8 は、自動モード用に定義された rpc_control() 操作を示します。追加の情報については、rpc control(3N) マニュアルページを参照してください。

表 4-8 rpc_control() ライブラリルーチン

RPC_SVC_MTMODE_SET()

マルチスレッドモードの設定 

RPC_SVC_MTMODE_GET()

マルチスレッドの取得 

RPC_SVC_THRMAX_SET()

最大スレッド数の設定 

RPC_SVC_THRMAX_GET()

最大スレッド数の取得 

RPC_SVC_THRTOTAL_GET ()

現在アクティブなスレッドの合計数 

RPC_SVC_THRCREATES_GET()

RPC ライブラリ作成のスレッドの累積数 

RPC_SVC_THRERRORS_GET()

RPC ライブラリ内の thr_create エラー数 


注 -

表 4-8 の get 演算は、RPC_SVC_MTMODE_GET() 以外はすべて、自動マルチスレッドモードにだけ適用されます。マルチスレッド・ユーザ・モードまたはデフォルトのシングル・スレッド・モードで使用する場合には、演算の結果は定義されません。


デフォルトでは、RPC ライブラリが一度に作成できるスレッドの最大数は 16 です。サーバが 16 以上のクライアント要求を同時に処理する必要がある場合には、スレッドの最大数を指定して設定する必要があります。このパラメータは、サーバによっていつでも設定することができ、これによってサーバ開発者はサーバによって使用されるスレッドリソースの上限を設定できます。例 4-34 は、マルチスレッド自動モードに作成された RPC プログラムの例です。この例では、スレッドの最大数は 20 に設定されています。

マルチスレッドのパフォーマンスは、関数 svc_getargs() が、NULLPROCS 以外のプロシージャによって呼び出されるごとに、引き数 (この場合には xdr_void())がない場合でも改善されていきます。これはマルチスレッド自動モードとマルチスレッドユーザモード両方の場合においでてす。詳細は、rpc_svc_calls(3N) マニュアルページを参照してください。

例 4-34 は、マルチスレッド自動モードでのサーバを示したものです。


注 -

RPC マルチスレッド対応アプリケーションを作成する場合は常に、スレッドライブラリ内でリンクしなければなりません。コンパイルコマンドで -lthread を指定して、スレッドライブラリを最後にリンクするようにしなければなりません。


次のように入力して例 4-34 のプログラムを作成します。

$ cc time_svc.c -lnsl -lthread


例 4-34 マルチスレッド自動モードに対するサーバ

		#include <stdio.h>
		#include <rpc/rpc.h>
		#include <synch.h>
		#include <thread.h>
		#include "time_prot.h"

		void time_prog();

		main(argc, argv)
		int argc;
		char *argv[];
		{
		int transpnum;
		char *nettype;
		int mode = RPC_SVC_MT_AUTO;
		int max = 20;      /* スレッド最大数を 20 に設定 */

		if (argc > 2) {
			fprintf(stderr, "usage: %s [nettype]¥n", argv[0]);
			exit(1);
		}

		if (argc == 2)
			nettype = argv[1];
		else
			nettype = "netpath";

		if (!rpc_control(RPC_SVC_MTMODE_SET, &mode)) {
			printf("RPC_SVC_MTMODE_SET: failed¥n");
			exit(1);
		}
		if (!rpc_control(RPC_SVC_THRMAX_SET, &max)) {
			printf("RPC_SVC_THRMAX_SET: failed¥n");
			exit(1);
		}
		transpnum = svc_create( time_prog, TIME_PROG, TIME_VERS,
 			nettype);

		if (transpnum == 0) {
			fprintf(stderr, "%s: cannot create %s service.¥n",
			argv[0], nettype);	
			exit(1);
		}
		svc_run();
	}

	/*
	 * サーバのディスパッチプログラムです。RPC サーバライブラリは、
	 * サーバのディスパッチャルーチン time_prog () を実行するスレッドを
	 * 作成します。RPC ライブラリがスレッドを廃棄した後に行われます。
	 */

	static void
	time_prog(rqstp, transp)
		struct svc_req *rqstp;
		SVCXPRT *transp;
	{

		switch (rqstp->rq_proc) {
			case NULLPROC:
				svc_sendreply(transp, xdr_void, NULL);
				return;
			case TIME_GET:
				dotime(transp);
				break;
			default:
				svcerr_noproc(transp);
				return;
		}
	}
	dotime(transp)
	SVCXPRT *transp;
	{
	
		struct timev rslt;
		time_t thetime;
	
		thetime = time((time_t *)0);
		rslt.second = thetime % 60;
		thetime /= 60;
		rslt.minute = thetime % 60;
		thetime /= 60;
		rslt.hour = thetime % 24;
		if (!svc_sendreply(transp, xdr_timev,(caddr_t) &rslt)) {
			svcerr_systemerr(transp);
		}
	}

例 4-35 は、サーバに対するtime_prot.h ヘッダファイルを示します。


例 4-35 マルチスレッド自動モード : time_prot.h ヘッダファイル

		include <rpc/types.h>

		struct timev {
			int second;
			int minute;
			int hour;
		};

		typedef struct timev timev;
		bool_t xdr_timev();

		#define TIME_PROG ((u_long)0x40000001)
		#define TIME_VERS ((u_long) 1)
		#define TIME_GET ((u_long) 1)