Solaris のインストール (上級編)

はじめに

このマニュアルでは、ネットワークに接続または接続されていない SPARCTM および x86 搭載システムに SolarisTM オペレーティング環境をインストールする方法を説明します。大規模な企業サイトなどで使用する Solaris 上級インストール機能を中心に説明します。上級インストール機能には、ネットワークインストールの設定やカスタム JumpStartTM を使用する自動インストールなどがあります。ローカル CD-ROM から 1 つのシステムをインストールする場合は、『Solaris 2.6 インストールの手引き』を参照してください。


注 -

このマニュアルには、システムハードウェアやその他の周辺機器を設定するための説明は記載されていません。



注 -

「x86」は、Intel 8086 系のマイクロプロセッサの総称です。この中には、Pentium プロセッサ、Pentium Pro プロセッサ、AMD 社や Cyrix 社製の互換マイクロプロセッサも含まれます。このマニュアルでは、「x86」をこれらの 8086 系のマイクロプロセッサを搭載するプラットフォームの総称として使用します。「Intel 版」は、製品名を使用します。


対象読者

このマニュアルは、多数のシステムに Solaris オペレーティング環境をインストールする際に、その手間と時間を短縮したいと考えているユーザーのために書かれています。このマニュアルを理解するには、UNIX のシステム管理を 1〜2 年以上経験したことがあり、できればコンピュータサイエンスの学士またはそれに相当する知識をもっていることが望ましいです。

関連情報

表 P-1 に、Solaris ソフトウェアをインストールする際に参考となる関連情報の一覧を示します。

表 P-1 関連情報

プラットフォーム 

関連マニュアル 

説明 

SPARC/x86 

Solstice AdminSuite 2.3 管理者ガイド

ネットワークインストールを設定する場合に使用できる SolsticeTM ホストマネージャなどのアプリケーションが解説されています。

 

Solaris のシステム管理

システムファイルのバックアップ方法が解説されています。 

SPARC 

Solaris 2.6 ご使用にあたって (SPARC 版)

Solaris 2.6 リリースに関する、バグ、既知の問題、サポートが中止されたソフトウェア、パッチなどが解説されています。 

また、サポートされるハードウェア情報やデスクトップシステム用 Solaris のインストール手順も解説されています。 

 

Solaris 2.x への移行

Solaris 2.x へ移行する際の問題点、たとえば Solaris ソフトウェアをインストールする前の Solaris 1.x (SunOSTM 4.x) ファイルのバックアップや Solaris ソフトウェアをインストールした後のファイルの復元方法などが解説されています。

x86 

Solaris 2.6 ご使用にあたって (Intel 版)

Solaris 2.6 リリースに関する、バグ、既知の問題、サポートが中止されたソフトウェア、パッチなどが解説されています。 

 

Solaris 2.6 情報ライブラリ (Intel 版)

デバイス構成情報が解説されています。デスクトップシステム用 Solaris のインストール手順も解説されています。 

 

ドライバー・アップデートおよびハードウェア互換リストの入手方法

サポートされるハードウェア情報が解説されています。 

改訂履歴

表 P-2 改訂履歴

リリース 

日付 

説明 

Solaris 2.6 

1997 年 10 月 

新規: Solaris Web Start のインストール方法

Solaris Web Start はブラウザベースのユーティリティで、ユーザーはこれに従って Solaris ソフトウェアと同梱のアプリケーションを選択したり、インストールしたりできます。また、グラフィカルユーザーインタフェース (GUI) により、ファイルシステムの構成が容易になります。このユーティリティは使用しなくてもかまいません。ユーザーは任意の時点でこのユーティリティを終了し、Solaris の従来のインストール方法で作業を継続できます。 

 

 

新規: ディスク容量再配置機能を利用するアップグレード

Solaris 対話式インストールプログラムのアップグレードオプションには、現在のファイルシステムがアップグレードに十分なディスク容量を持っていない場合に、ディスク領域を再配置する機能が追加されました。デフォルトでは、アップグレードが成功するように、自動配置機能がディスク容量の再配置を決定しようとします。自動配置機能によりディスク容量が決定できない場合には、どのファイルシステムを移動または変更するかをユーザーが指定して、再度自動配置を実行します。

カスタム JumpStart を使用する場合、backup_medialayout_constraint の 2 つの新しいアップグレードプロファイルキーワードを使用して、ディスク容量の再配置を実行できます。

 

 

変更: アップグレードプロファイルのテスト

Solaris の以前のリリースでは、初期オプションを使用するプロファイルをテストできるだけでした。Solaris 2.6 リリースでは、アップグレードオプションを使用するプロファイルを pfinstall コマンドによりテストできます。これにより、システムをアップグレードする前に、プロファイルが希望通り動作するかを確認できます。これは特に、ディスク容量を再配置するアップグレードプロファイルを作成する場合に役立ちます。

アップグレードプロファイルをテストするには、アップグレードしようとしているシステム上で pfinstall -D コマンドを実行しなければなりません (システムのディスク構成と現在インストールされているソフトウェアが対象です)。ディスク構成ファイルを使用してアップグレードプロファイルをテストできません。

また、初期プロファイルをテストする手順は、Solaris 2.6 リリースで変更されました。 

 

 

新規: 8 ビット英語ロケールの選択

Solaris 2.6 のインストール時、システムのデフォルトロケールを選択する際に、英語ロケールとして C ロケール (7 ビット) の他に、8 ビットロケール (en_US) が選択可能になりました。ロケール選択のプロンプトを表示しないようにするには、ロケール情報を事前に構成します。

 

 

新規: sysidcfg(4) によるシステム構成情報の事前構成

以前のリリースでは、Solaris インストールプログラムの始めの部分で、システムに関する構成情報 (周辺装置、ホスト名、IP アドレス、ネームサービスなど) をネームサービスのデータベースから取得しようとしていました。情報が見つからない場合は、インストールプログラムがプロンプトを表示しました。このプロンプトを表示しないようにするには、ネームサービスのシステム構成情報を事前構成する必要がありました。 

Solaris 2.6 の sysidcfg(4) ファイルを使用すると、キーワードのセットを使用してシステム構成情報を事前構成することもできます。1 つまたは複数のキーワードを指定して、システム構成情報をいくつかのレベルに分けて事前構成するように選択できます。

 

 

新規: インストール時のシステムのブートデバイスの変更

Solaris 2.6 リリースでは、インストール時にシステムのブートデバイスを変更できます。システムのブートデバイスとは、インストールされたルートファイルシステムがブートするディスクスライスのことです。また、新しいブートデバイスを変更した場合、インストールプログラムはシステムの EEPROM を更新できます。 

これにより、システムは自動的にブートできます (SPARC 搭載システムのみ)。以前のリリースでは、インストール時にシステムのブートデバイスを変更すると、手作業でシステムの EEPROM を変更し、新しいブートデバイスから自動的にブートできるようにする必要がありました。 

この新しい機能は、Solaris 対話式インストールプログラムで、およびカスタム JumpStart の新しい boot_device プロファイルキーワードにより使用できます。

 

 

変更: Solaris CD-ROM のレイアウト

Solaris CD-ROM のレイアウトが Solaris 2.6 リリースで変更されました。スライス 0 は、より直感的で、拡張性を持たせるために再編成されました。ここには、制御ファイルと、トップレベルの Solaris_2.6 ディレクトリだけが含まれます。

この制御ファイルは、以前の Solaris CD-ROM にあった制御ファイル (.cdtoc.slicemapfile、および .install_config) と同じです。Solaris_2.6 ディレクトリには、Solaris 2.6 ソフトウェア製品の最小構成をインストールするのに必要なツール、ソフトウェア、および構成のすべてが含まれます。

 

 

新規: ディスク容量計画

このマニュアルにはディスク容量の計画を立てるための付録が含まれます。この付録に、各ソフトウェアグループに含まれるパッケージのリストがあります。 

 

 

変更 (x86): ソフトウェアのブート

Solaris ブートフロッピーディスクは、Solaris Device Configuration Assitant (構成用補助) フロッピーディスクに置き換えられました。Configuration Assistant (構成用補助) プログラムは、Solaris ソフトウェアの新しいブートシステムの一部です。システム内のどのハードウェアを使用するのかを決定し、各デバイスが使用する資源を定義し、ブートするデバイスを選択できるようにします。Configuration Assistant (構成用補助) は、ハードウェア構成が変更された場合、再実行しなければなりません。 

 

 

変更 (x86): kdmconfig プログラムによる周辺装置の自動構成

x86 搭載システム上で、マウス、グラフィックスアダプタ、およびモニターを自動的に構成するように、kdmconfig プログラムが更新されました。OWconfig ファイルがすでにシステム上にある場合、kdmconfig はそこから使用可能な情報を取り出します。さらに kdmconfig は、Configuration Assistant (構成用補助) プログラムが devinfo ツリーに残した情報も取り出して、デバイスの自動識別に使用します。特定のデバイス (それが未知のデバイスでないかぎり) に関してプローブにより返されるメーカー情報やモデル情報などの属性値は、OWconfig ファイルにある対応する属性値よりも優先されます。

   

新規: root_device プロファイルキーワード

アップグレードプロファイルを作成するとき、システム上で複数のルートファイルシステムがアップグレード可能な場合、root_device を指定しなければなりません。root_device プロファイルは、アップグレードされるルートファイルシステム (および /etc/vfstab ファイルによってマウントされるファイルシステム) を指定します。

初期プロファイルについては、root_device がシステムのルートディスクを指定し、変数を rootdevice に設定します。カスタム JumpStart インストール時にシステムのルートディスクが決定される方法も、Solaris 2.6 リリースで変更されました。

   

変更 (SPARC): ハードウェアサポートの停止

SPARCserverTM 6xx システムはサポートされません。

マニュアルの注文方法

SunDocsTM プログラムでは、米国 Sun Microsystems, Inc. の 250 冊以上のマニュアルを扱っています。このプログラムを利用して、マニュアルのセットまたは個々のマニュアルをご注文いただけます。

マニュアルのリストと注文方法については、米国 SunExpressTM, Inc. のインターネットホームページ http://www.sun.com/sunexpress にあるカタログセクションを参照してください。

表記上の規則

このマニュアルでは、次のような字体や記号を特別な意味を持つものとして使用します。

表 P-3 表記上の規則

字体または記号 

意味 

例 

AaBbCc123

コマンド名、ファイル名、およびディレクトリ名を示します。または、画面上のコンピュータ出力を示します。 

.login ファイルを編集します。

ls -a を使用してすべてのファイルを表示します。

system%

AaBbCc123

ユーザーが入力する文字を、画面上のコンピュータ出力とは区別して示します。 

system% su

password:

AaBbCc123

変数を示します。実際に使用する特定の名前または値で置き換えます。 

ファイルを削除するには、rm filename と入力します。

『 』 

参照する書名を示します。 

『コードマネージャ・ユーザーズガイド』を参照してください。 

「 」 

参照する章や節を示します。また、ボタンやメニューなど、強調する単語を囲む場合にも使用します。 

第 5 章「衝突の回避」を参照してください。 

コード例は次のように表示されます。

[ ] は省略可能な項目を示します。上記の場合、filename は省略してもよいことを示します。

ただし AnswerBook2TM では、ユーザーが入力する文字と画面上のコンピュータ出力は区別して表示されません。

一般規則