最も一般的に使用されるリソースレコードのタイプを 表 27-4 に列挙します。通常、表 27-4 に並んだ順で入力しますが、必須というわけではありません。
表 27-4 一般的に利用されるリソースレコードのタイプ
タイプ |
説明 |
---|---|
SOA |
権限の開始 |
NS |
ネームサーバー |
A |
インターネットアドレス (名前からアドレス) |
PTR |
ポインタ (アドレスから名前) |
CNAME |
正規名 (ニックネーム) |
TXT |
テキスト情報 |
WKS |
既知サービス |
HINFO |
ホスト情報 |
MX |
メール交換 |
例 27-1 に SOA リソースレコードの構文を示します。
name class SOA origin person-in-charge ( serial number refresh retry expire ttl)
権限の開始 (SOA) レコードでゾーンの開始を指定します。次の SOA レコードでそのゾーンは終了します。次に SOA レコードのフィールドについて述べます。
ゾーン名を指定します。ゾーン名の後にはドットを付ける必要があります。たとえば、doc.com. は正しいですが、一方、doc.com は誤りです。
アドレスのクラスです。たとえば、IN は、インターネットを示し、最も一般的に用いられるクラスです。
リソースレコードのタイプを示します。
データファイルがあるホスト名のフィールドです。ホスト名の後にはドットを付ける必要があります。たとえば、dnsmaster.doc.com. は正しいですが、dnsmaster.doc.com は誤りです。
ネームサーバーの責任者のメールアドレスのフィールドです。たとえば、kjd.nismaster.doc.com. です。この名前も終わりにドットを付ける必要があります。
データファイルのバージョン番号のフィールドです。データを変更するたびにこの番号を増やしてください。副サーバーは serial フィールドを使って、最後にマスターサーバーからデータファイルをコピーしたときから変更があったかどうかを検出します。
更新が必要かどうかを見るために副ネームサーバーがどのくらいの頻度で主ネームサーバーをチェックすべきかを秒で指定します。たとえば、7200 は、2 時間を意味します。
リフレッシュのためのチェックに失敗した後、副サーバーがどのくらいの時間再試行するかを秒で指定します。
リフレッシュが頻繁に行われない場合に、データの期限が切れる前に、副ネームサーバーがそのデータを使用する上限の時間を秒で指定します。
リソースレコードの time-to-live フィールドで使用されるデフォルトの秒数を指定します。このデフォルト値はリソースレコードで ttl が指定されていないときに適用されます。
SOA は各ゾーンに 1 つだけ指定してください。 例 27-2 に SOA リソースレコードの例を示します。
;name class SOA origin person-in-charge doc.com. IN SOA dnsmaster.doc.com. root.nismaster.doc.com. ( 101 ;Serial 7200 ;Refresh 3600 ;Retry 432000 ;Expire 86400) ;Minimum )
例 27-3 に、ネームサーバー (NS) リソースレコードの構文を示します。
domainname [optional TTL] class NS name-server-name
ネームサーバーレコードには、対象としているドメインを受け持つサーバーの名前を指定します。name フィールドには、指定したネームサーバーからサービスを受けるドメインを指定します。もし、name フィールドが指定されない場合、そのデフォルトは最後に指定された名前になります。そのドメインの主マスターサーバーと副マスターサーバーのそれぞれに 1 つの NS レコードが必要です。例 27-4 に NS リソースレコードの例を示します。
;domainname [TTL] class NS nameserver doc.com 90000 IN NS sirius.doc.com.
例 27-5 に、アドレス (A) リソースレコードの構文を示します。
machinename [optional TTL] class A address
アドレス (A) レコードでは、対象としているマシンのアドレスを指定します。name フィールドは、ホスト名のフィールドです。address は、IP アドレスです。各マシンのアドレスに 1 つの A レコードが必要です。ルーターやゲートウェイには 2 つ以上のエントリが必要で、IP アドレスを含む別々のエントリがネットワークインタフェースに必要です。
;machinename [TTL] class A address sirius IN A 123.45.6.1
例 27-7 に、ホスト情報 (HINFO) リソースレコードの構文を示します。
[optional name] [optional TTL] class HINFO hardware OS
ホスト情報 (HINFO) リソースレコードでは、ホスト固有のデータを指定します。ハードウェアとこのホストで動作しているオペレーティングシステムを指定します。マシン名や hardware フィールドのエントリに空白を含めるには、エントリを引用符で囲む必要があります。name フィールドでは、ホスト名を指定します。名前が指定されなければ、in.named での最後のホストがデフォルトになります。各ホストに1 つの HINFO レコードが必要です。例 27-8 に HINFO リソースレコードの例を示します。
;[name] [TTL] class HINFO hardware OS IN HINFO Sparc-10 UNIX
HINFO フィールドにはネットワーク上のマシンについての情報があるので、多くのサイトで、この情報はセキュリティ上危険であると考えられ、現在はほとんど使われていません。
例 27-9 に、既知サービス (WKS) リソースレコードの構文を示します。
[Optional name] [ TTL] class WKS address protocol-list-of-services
既知サービス (WKS) レコードには、指定されたアドレスの特定のプロトコルでサポートされるよく知られたサービスが記述されます。サービスのリストとポート番号はサービスデータベースで指定されたサービスのリストから得られます。各プロトコルの各アドレスに 1 つの WKS レコードが必要です。 例 27-10 に WKS リソースレコードの例を示します。
;[name] [TTL] class WKS address protocol-list-of-services altair IN WKS 123.45.6.1 TCP ( smtp discard rpc sftp uucp-path systat daytime netstat qotd nntp doc.com )
WKS レコードはオプションです。セキュリティ上の理由から、ほとんどのサイトでは現在この情報は提供していません。
例 27-11 に、正規名 (CNAME) リソースレコードの構文を示します。
nickname [optional TTL] class CNAME canonical-name
正規名 (CNAME) リソースレコードでは、正規名に対するニックネームまたは別名を指定します。ニックネームは一意である必要があります。他のすべてのリソースレコードは、ニックネームではなく正規名と結びつけるようにする必要があります。ニックネームの作成と他のリソースレコードでの使用はしないでください。ニックネームは、マシン名が変更されたけれども古い名前でのアクセスを許可する移行期に特に有用です。 また、ニックネームはメールサーバーなど特定の目的で使用するマシンを識別するためにも使用できます。例 27-12に CNAME リソースレコードの例を示します。
;nickname [TTL] class CNAME canonical-name mailhost IN CNAME antares.doc.com
例 27-13 に、ポインター (PTR) リソースレコードの構文を示します。
special-name [optional TTL] class PTR-real-name
特別名でドメイン内の他の場所を指すことが、ポインタレコードによって可能になります。例では、PTR は、アドレス (特別名) の実名への変換のために、主に in-addr.arpa. レコードで使用されます。アドレスを解釈するときは、ドメインが完全指定であれば、指定する必要があるのはマシンの識別番号だけです。 PTR の名前付けは、ゾーンに対して一意である必要があります。PTR レコードによって特別なドメインであるin-addr.arpa.ドメインに対する逆ポインタが設定 (例 27-14) されます。
;special name [TTL] class PTR-real-name 1 IN PTR sirius.doc.com.
例 27-15 に、メール交換 (MX) リソースレコードの構文を示します。
name [optional TTL ] class MX preference-value mailer-exchanger
メール交換リソースレコードは、あるドメインまたはドメイン内の特定のマシンにメールを配信するマシンを指定するために使用します。対象としている名前に対して複数の MX リソースレコードがあるかもしれません。 例 27-16 では、 Seismo.CSS.GOV (完全指定のドメイン名) は、 Munnari.OZ.AU にメールを配信するメールゲートウェイです。ネットワーク上の他のマシンは、Munnari に直接メールを配信できません。 Seismo と Munnari は、専用接続を持っている場合も、異なるトランスポートメディアを使用している場合もあります。優先値フィールドで、メールプログラムが従うべき順を指定します。単一のマシンに複数の方法でメールが配信される場合に指定します。値が 0 (ゼロ) は最優先であることを意味します。同じ名前に対して複数の MX リソースレコードがある場合、そのレコードの優先値は同じであることも、同じでないこともあります。
メールをルーティングするために、MX レコードでワイルドカードであるアスタリスク ( * ) を名前に使うこともできます。あるドメイン宛のメールはリレー経由で配信されることを単に示すサーバーがネットワーク上にはよくあります。 例 27-16 では、 foo.com ドメイン内のホスト宛のすべてのメールは RELAY.CS.NET. を経由して送られます。これを指定するには、ワイルドカードを用いて MX リソースレコードを作成し、*.foo.com のメール交換は RELAY.CS.NET. により行われると指定します。アスタリスクは foo.com の任意のホストまたはサブドメインに一致します。 しかし、 foo.com 自体には一致しません。
;name [TTL] class MX preference mailer-exchanger Munnari.OZ.AU. IN MX 0 Seismo.CSS.GOV. foo.com. IN MX 10 RELAY.CS.NET. *.foo.com. IN MX 20 RELAY.CS.NET.