この章では、デスクトップ管理タスクフォース (DMTF)、そのグループの運営管理、およびデスクトップ管理インタフェース (DMI) について説明します。
DMTF は、8 社の共同成果として 1992 年 5 月に設立されました。その 8 社とは、Digital Equipment Corporation、Hewlett-Packard、IBM、Intel、Microsoft、Novell、SunSoft、および SynOptics です。DMTF の目的は、デスクトップの管理のための基本的な解法を提供することです。
DMTF は、デスクトップ PC やサーバー上の管理可能な製品と管理アプリケーションとの間での通信を処理するための標準インタフェースを開発しました。
この標準インタフェースは、DMI と呼ばれます。DMI の詳細は、http://www.dmtf.org の『DMI Specification Version 2.0』を参照してください。
DMI の特徴は次のとおりです。
特定のオペレーティングシステム、ハードウェアプラットフォーム、または管理プロトコルに依存しない
ベンダーが容易に採用できる
非常に簡単なものから非常に複雑で拡張可能なものまで、幅広い範囲の製品に適応できる
既存の管理プロトコルとリモートプロトコルにマップできる
コンポーネントインストルメンテーションや管理アプリケーションの動的なインストールや削除
MIF データに対する全実行時アクセスの管理
各 MIF ファイル内に、少なくとも 1 つのグループ (コンポーネント ID グループ) が必ず存在することを保証する
必要に応じた、コンポーネントインストルメンテーションの起動の管理
コマンドの分割。管理アプリケーションが、1 つのコマンドで構成要素に対して 1 つ以上の属性値を要求した場合、SP は属性ごとにコンポーネントインストルメンテーションにコマンドを送る
コマンドをコンポーネントインストルメンテーションに順番に渡し、確実に完了するまで実行されるようにする。特定のコンポーネントインストルメンテーションに対する複数の要求を待ち行列に入れる
登録機能とフィルタ機能に基づいて、インジケーションを管理アプリケーションに対して転送したり、そのインジケーションの転送前に、受け取ったインジケーションにタイムスタンプ情報を付加したりする
MIF データベースに対する構成要素のインストールや削除時に、インジケーションを受け取るように登録されている、すべての登録された管理アプリケーションへインジケーションを送信
管理アプリケーションからは、ID 1 の構成要素として認識される。構成要素として、標準の ComponentID グループをサポートしている必要がある。さらに、DMI SP は、登録機能と標準のグループのフィルタ機能をサポートしている必要がある。また、構成要素と同様に、ComponentID グループ以外のほかのグループを定義できる
SEA 製品に含まれている DMI に基づいた解法を、いくつかの方法で使うことができます。たとえば、DMI を SNMP サブエージェントとして扱うこともできます。さらに、SP と直接やりとりするように、DMI ベースの管理アプリケーションを記述することもできます。
SNMP サブエージェントモードでは、SNMP 要求は DMI 要求にマップされ、DMI SP と通信が行われます。ダイレクトモードでは、管理アプリケーションは、DMI を使って SP と直接通信できます。
図 5-1 に、DMI と Enterprise Agents との関係を表すアーキテクチャ全体を示します。
DMI SP は、DMI の核となるものです。管理アプリケーションとコンポーネントインストルメンテーションは SP を通じて通信を行います。SP は、管理アプリケーションから指定された構成要素に対する要求を調整したり、仲介したりします。SP は、コンポーネントインタフェース (CI) と管理インタフェース (MI) のランタイム管理を行います。ランタイム管理には、構成要素のインストール、MI レベルと CI レベルの登録、要求の順序管理と同期、CI のイベント処理、一般的なフロー管理やこれらの管理に必要なすべての動作などがあります。
図 5-2 に、1 つのシステム内に存在する要素、または直接接続されている要素を示します。管理アプリケーションは DMI のブラウザとしても使えます。
DMI SP は、次の 4 つのモジュールで構成されています。
SEA の MI の機能には、次のようなものがあります。
管理アプリケーションは、MI を介して DMI と通信を行います。管理アプリケーションは、DMI の Get、Set、および List コマンドを実行することによって、システム内の構成要素についての情報を要求します。また、イベント通知と適正なフィルタ機能を SP に登録します。
イベントが生成されると、DMI SP は、その登録テーブルとフィルタテーブルを調べます。フィルタプロセスを通過したイベントは、DMI SP によって転送されます。イベントは、これらのイベントを受信できるように SP に登録されているすべての管理アプリケーションに転送されます。
構成要素は、CI を通じて DMI と通信を行います。構成要素のサブエージェントは、装置やアプリケーションなどのそれぞれの構成要素を管理するためにエンドユーザーによって作成されます。CI によって提供される機能には、次のようなものがあります。
イベントの送信 - コンポーネントインストルメンテーションは、SP にインジケーションブロックが送信され、処理されます。DMI マッパーは、DMI インジケーションを SNMP トラップに変換します。
構成要素は、DMI SP 要求に応じて、そのサブエージェントによってさまざまな属性値に対して Get や Set 処理を行います。
SEA の MIF データベースの機能には、次のようなものがあります。
SP には、1 つの MIF データベースが関連付けられています。それぞれの構成要素には、管理可能な特性を記述するための MIF ファイルがあります。構成要素がシステムに最初にインストールされるとき、MIF が MIF データベースに登録されます。SP は、MIF データベースへのすべてのアクセスを制御します。
MIF データベースに対する MIF の修正機構は提供されていません。MIF に変更が必要な場合は、インストールを解除してから標準のテキストエディタツールを使って変更してインストールし直す必要があります。
MIF データベースから MIF のインストールや削除を行う場合、SP によって、すべての登録された管理アプリケーションにインジケーションが発行されます。
DMI SP をインストールすると、起動時にスクリプトファイルが DMI SP を呼び出します。DMI SP は、次のようなオプションを使って起動されます。
dmispd [-h] [-c config_dir] [-d debug_level]
表 5-1 IDMI SP 呼び出しの引数
引数 |
定義 |
---|---|
-h |
コマンド行の使用方法を表示する |
-c confid_dir |
dmispd.conf 構成ファイルを含むディレクトリのフルパス |
-d debug_level |
デバッグモードでは、プロセスはデーモンとして動作せずに、表示画面にトレースメッセージを表示する。debug_level (1〜5) に応じて、特定の情報を印刷する |
SEA パッケージに含まれている DMI API ライブラリは、DMI を使って管理アプリケーションを開発するためのプロシージャを含む C のライブラリです。またこのライブラリは、ユーザーがサブエージェントを作成するためのコンポーネントインタフェースを提供します。これには、構成要素を管理するためのコンポーネントインストルメンテーションも含まれます。さらに、DMI API によって、MIF データベースへの構成要素のインストールと SP のコンポーネントインタフェースの呼び出しプロセスが単純になります。
このユーティリティは、DMI MIF ファイルを SNMP フォーマットに変換し、マップ構成ファイルを生成します。サンの Net Manager、Enterprise Manager などのネットワーク管理アプリケーションは、MIB を使って DMI ベースの構成要素 MIF を管理できます。マッパープロセスを実行するときは、マップファイルを使います。マップファイルは、SNMP ベースの MIB 変数を DMI ベースの MIF 属性にマップするときに使われます。
miftomib "[mifname=] [value value ...]" mifpathname [mibpathname]表 5-2 MIF から MIB への変換コンパイラの引数
引数 |
定義 |
---|---|
mifname |
生成される MIB オブジェクトの名前 |
value |
スペースで区切られた 1 つ以上の整数 |
mifpathname |
MIF ファイル |
mibpathname |
生成された MIB ファイル |
マッパーは、DMI 管理アプリケーションとして動作する SNMP サブエージェントです。マッパーは、管理インタフェースを使って DMI SP に管理要求を送ります。また、SP を通じて構成要素からのイベントを処理し、それらをマスターエージェントに渡します。そのため、DMI の利用可能な構成要素は、ほかの SNMP で管理されている構成要素と同じように見えます。図 5-3 に、マッパーと構成要素の通信方法を示します。
次の節では、動作中のサブエージェントの作業について説明します。
サブエージェント自身を SP に登録します。これによって、MIF データベースへのアクセスや、構成要素からのインジケーションなどのサービスが SP によって提供されます。
マップ用の変換テーブルを作成します。変換テーブルは、各構成要素に対して作成されたマップファイルを読み込むことによって作成されます。マッパーが最初に起動されたときに変換テーブルが構築されます。そのあとで、新しい構成要素がインストールされ SP に登録されると、DMI SP はそのマッパーにイベントを送信します。次にマッパーが、新しいマップファイルのエントリをマップテーブルに追加します。
マスターエージェントとサブエージェントとの接続を確立します。また、サブエージェント自身をマスターエージェントに登録します。
SNMP と DMI とのマップと、SNMP OID の DMI オブジェクトへの動的な変換に使われる変換テーブルを構築します。
マッパーは、次のようなオプションによって呼び出されます。
snmpXdmid -s hostname [-h] [-c config_dir] [-d debug_level]表 5-3 DMI SP 呼び出しの引数
引数 |
定義 |
---|---|
-h |
コマンド行の使用方法を表示する |
-s hostname |
SP が動作しているホストの名前。デフォルトではそのローカルホスト名 |
-c config_dir |
構成ファイル snmpXdmid.conf を含むディレクトリのフルパス |
-d debug_level |
デバッグモードでは、プロセスはデーモンとして動作せずに、表示画面にトレースメッセージを表示する。debug_level (1〜5) に応じて、特定の情報を印刷する |