Sun Java Enterprise System 5 Update 1 技術の概要

次元 1: インフラストラクチャーサービスの依存関係

分散型のエンタープライズアプリケーションの対話型ソフトウェアコンポーネントには、基本となるインフラストラクチャーサービスが必要です。これに基づいて、分散しているコンポーネント間で相互に通信したり、それぞれの動作を調整したり、セキュリティー保護されたアクセスを実装することなどが可能になります。ここでは、これらのインフラストラクチャーサービスを提供するためにいくつかの Java ES コンポーネントが果たす主な役割について説明します。

インフラストラクチャーサービスレベル

分散型のソフトウェアシステムを設計する場合、そのほとんどがカスタム開発コンポーネントで構成されるか、または追加設定の必要ない Java ES コンポーネントで構成されるかにかかわらず、多数のインフラストラクチャーサービスを組み込む必要があります。これらのサービスは、多数のレベルで機能します。

ソリューションアーキテクチャーのインフラストラクチャーサービスの依存関係を、図 2–2 に示します。この図に示されているレベルは、図 1–1 のインフラストラクチャーサービス層を詳細化したものです。図 2–2 のサービス階層とサービス間の依存関係が、ソリューションの論理アーキテクチャーの重要な次元を構成します。これらのインフラストラクチャーサービスは、JavaESシステムサービスコンポーネント(「システムサービスコンポーネント」を参照) の主な論理的根拠になります。

一般的に、次の図に示したサービスは、大きく3つのグループに分けられます。下位レベルのプラットフォームサービス、上位レベルのアプリケーションサービス、およびミドルウェアサービスのグループです。なお、ミドルウェアサービスという名前は、ほかの 2 つのグループの間にあることから付けられたものです。

図 2–2 次元 1: インフラストラクチャーサービスレベル

最下位レベルのオペレーティングシステムプラットフォームサービスから最上位レベルの統合サービスまでの分散型サービスインフラストラクチャーのレベルを示す図。

次に、さまざまなインフラストラクチャーサービスレベルについて説明し、関連する場合には Java プログラミング言語のアーティファクトの参考情報も示します。図 2–2 に示された各サービスレベルについて、最下位レベルから順に説明します。

図 2–2 に示したサービスレベルは、最下位レベルのオペレーティングシステムサービスから最上位レベルのアプリケーションサービスや統合サービスまで、インフラストラクチャーサービス間の依存関係を反映しています。通常、各サービスはその下にあるサービスに依存し、その上にあるサービスをサポートします。ただし、図 2–2 は、インフラストラクチャーサービスの厳密な階層を表しているわけではありません。上位レベルのサービスは、中間のレベルに依存せずに、下位レベルのサービスと直接対話することができます。たとえば、一部の実行時サービスは、中間にあるサービスレベルを介さずに、プラットフォームサービスに直接依存する場合があります。さらに、監視サービスや管理サービスなどのその他のサービスレベルも、ここでの概念的な説明に含まれることがあります。

Java ES インフラストラクチャーサービスコンポーネント

Java ES コンポーネントは、図 2–2 に示した分散型インフラストラクチャーサービスレベルを実装したものです。システムサービスコンポーネントのさまざまなレベル内における位置関係を、次の図に示します。

図 2–3 Java ES システムサービスコンポーネント

分散型のインフラストラクチャーサービスのさまざまなレベルにおける Java ES システムサービスコンポーネントの位置付けを示す図。


注 –

図の中で影付きのボックスの部分は、Java ES に含まれていないコンポーネントを示します。ユーザーの共同作業コンポーネントは、Java ES の一部ではありませんが、多くの場合 Java ES コンポーネントとともに配備され、Java ES アーキテクチャー内で使用されます。これらのコンポーネントは Sun Java Communications Suite の一部であり、このマニュアルでは例示目的でのみ参照されています。また、オペレーティングシステムプラットフォームも正式には Java ES の一部ではありませんが、Java ES コンポーネントがサポートされているオペレーティングシステムプラットフォームを示すために図に含まれています。


Java ES インフラストラクチャーサービスの依存関係

一般に、図 2–3 に示した各 Java ES システムサービスコンポーネントは、インフラストラクチャー内でその下にあるコンポーネントに依存し、その上にあるコンポーネントをサポートします。それらの依存関係とサポートの関係は、論理アーキテクチャーを設計する上で重要な要素です。

次の表に、Java ES システムサービスコンポーネント間の具体的な関係を示します。この表では図 2–3 と同様に、最上位から順に記載しています。

表 2–1 Java ES システムサービスコンポーネント間の関係

構成要素 

依存するコンポーネント 

サポートするサーバー 

Portal Server 

Application Server または Web Server 

Access Manager 

Directory Server 

対応するチャネルを使用するように設定されている場合: Calendar Server、Messaging Server、および Instant Messaging [Calendar Server、Messaging Server、および Instant Messaging コンポーネントは、Sun Java Communications Suite の一部として利用可能です。]

なし 

Access Manager 

Application Server または Web Server 

Directory Server 

Portal Server 

シングルサインオン用に設定されている場合: Calendar Server、Messaging Server、および Instant Messaging 

Application Server 

Message Queue 

Directory Server (管理オブジェクト用) 

Portal Server 

Access Manager 

Message Queue 

Directory Server (管理オブジェクト用) 

Application Server 

Web Server 

Access Manager (アクセス制御用) 

Portal Server 

Access Manager 

Directory Server 

なし 

Portal Server 

Access Manager 

Calendar Server 

Messaging Server 

Instant Messaging 

Service Registry 

Java DB 

Applcation Server に基づくコンポーネント 

Java DB 

なし 

Service Registry