LogicalDomains1.3 ソフトウェアを使用してアクティブなドメインの移行を行うには、ソース論理ドメイン、ソースマシン、およびターゲットマシンに特定の一連の要件および制限が課せられます。以降の節では、各リソースタイプに対するこれらの要件および制限について説明します。
ソースシステムおよびターゲットシステムの primary ドメインに暗号化装置が割り当てられていると、移行処理が高速になります。Logical Domains 1.3 では、ソースシステムとターゲットシステムの両方の primary ドメインに仮想 CPU を追加することで、移行を高速に実行できます。
次に、移行を実行する場合の CPU に対する要件および制限を示します。
ソースマシンおよびターゲットマシンには、同じ周波数で動作する同じタイプのプロセッサが搭載されている必要があります。
ターゲットマシンには、ドメインによって使用されるストランドの数に対応できる十分な空きストランドが存在する必要があります。また、移行されるドメインにはフルコアが割り当てられている必要があります。ソースのストランドの数がフルコアより少ない場合、移行されたドメインの再起動後までドメインに追加のストランドを使用することはできません。
移行後、ターゲットドメインが再起動されるまで、ターゲットドメインでの CPU の動的再構成 (DR) は無効になります。再起動が完了すると、そのドメインでの CPU の DR が可能になります。
移行前にドメインが 1 つのストランドに縮小できるように、ソースドメインのストランドを 1 つのみにするか、またはゲスト OS で CPU の DR をサポートしている必要があります。ゲストドメインが CPU の DR による削除が失敗する状態の場合、移行の試みも失敗することがあります。たとえば、ゲストドメイン内の CPU にバインドされた処理、またはソース論理ドメインに構成されたプロセッサセットによって、移行処理が失敗する可能性があります。
ターゲットマシン上に、ソースドメインの移行に対応できる十分な空きメモリーが存在する必要があります。さらに、移行が終了するまで次に示すいくつかのプロパティーが維持される必要があります。
同じ数、同じサイズのメモリーブロックを作成できる必要があります。
メモリーブロックの物理アドレスが一致する必要はありませんが、移行が終了するまで同じ実アドレスが維持される必要があります。
ターゲットマシンには、ソースドメインの移行に対応できる十分な空きメモリーが存在する必要があります。また、ターゲットマシンの使用可能メモリーのレイアウトとソースドメインのメモリーのレイアウトに互換性がある必要があります。互換性がないと、移行は失敗します。
特に、ターゲットマシンのメモリーが複数の小さいアドレス範囲に分割されているのに、ソースドメインには単一の大きいアドレス範囲が必要な場合、移行は失敗します。次の例は、この場合について示したものです。ターゲットドメインの 2 つのメモリーブロックに、2G バイトの空きメモリーがあるとします。
# ldm list-devices memory MEMORY PA SIZE 0x108000000 1G 0x188000000 1G |
ソースドメイン ldg-src にも 2G バイトの空きメモリーがありますが、これは単一のメモリーブロックに配置されています。
# ldm list -o memory ldg-src NAME ldg-src MEMORY RA PA SIZE 0x8000000 0x208000000 2G |
このようなメモリーレイアウトの場合、移行は失敗します。
# ldm migrate-domain ldg-src dt212-239 Target Password: Unable to bind 2G memory region at real address 0x8000000 Domain Migration of LDom ldg-src failed |
物理デバイスが関連付けられている仮想デバイスは移行できます。ただし、物理デバイスに直接アクセスするドメインは移行できません。たとえば、I/O ドメインは移行できません。
ソースドメインが使用するすべての仮想 I/O (VIO) サービスが、ターゲットマシン上で使用可能である必要があります。つまり、次に示す状態になっている必要があります。
ソース論理ドメインで使用されている各論理ボリュームは、ターゲットホスト上でも使用可能で、同じストレージを参照している必要があります。
ソースによって起動デバイスとして使用されている論理ボリュームがターゲット上に存在するにもかかわらず、同じストレージを参照していない場合、移行は正常に実行されたように見えますが、マシンから起動デバイスにアクセスできないため、このマシンは使用できません。ドメインを停止し、構成の問題を修正したあとで、ドメインを再起動する必要があります。この操作を行わない場合、ドメインが矛盾した状態のままになる可能性があります。
ソースドメインの各仮想ネットワークデバイスに対して、ターゲットホスト上に仮想ネットワークスイッチが存在し、ソースホスト上でそのデバイスが接続されている仮想ネットワークスイッチと同じ名前が指定されている必要があります。
たとえば、ソースドメインの vnet0 が switch-y という名前の仮想スイッチサービスに接続されていた場合、ターゲットホスト上に switch-y という名前の仮想スイッチサービスを提供する論理ドメインが存在する必要があります。
これらのスイッチが同じネットワークに接続されていなくても移行は実行されますが、スイッチが同じネットワークに接続されていない場合、移行されたドメインでネットワークの問題が発生する可能性があります。
ソースドメインによって使用されていた、自動的に割り当てられる範囲内の MAC アドレスは、ターゲットホストで使用可能である必要があります。
仮想コンソール端末集配信装置 (vcc) サービスがターゲットホスト上に存在し、1 つ以上のポートが空いている必要があります。移行時には明示的なコンソール制約は無視されます。ターゲットドメイン名をコンソールグループとして使用し、制御ドメインの最初の vcc デバイスで使用可能なポートを使用して、ターゲットドメインのコンソールが作成されます。デフォルトのグループ名と競合する場合、移行は失敗します。
NIU ハイブリッド I/O リソースを使用するドメインを移行できます。NIU ハイブリッド I/O リソースを指定する制約は、論理ドメインの必須要件ではありません。使用可能な NIU リソースが存在しないマシンにこのようなドメインを移行した場合、制約は維持されますが、この制約が満たされることはありません。
Logical Domains 1.3 では、暗号化装置をバインドしたゲストドメインが暗号化装置の動的再構成 (DR) をサポートしているオペレーティングシステムを実行している場合、そのゲストドメインを移行できます。
次の Solaris OS バージョンでは、暗号化装置の DR がサポートされています。
Solaris 10 10/09 OS 以上
OpenSolaris 2009.06 OS 以上
Solaris 10 5/08 OS とパッチ ID 142245-01 以上
移行の開始時点で、Logical Domains Manager は、ソースドメインが暗号化装置の DR をサポートしているかどうかを判断します。サポートしている場合、Logical Domains Manager はドメインからの暗号化装置の削除を試行します。移行の完了後、移行したドメインに暗号化装置が再度追加されます。
ターゲットマシンで暗号化装置の制約を満たすことができない場合でも、移行処理は正常に完了する場合があります。このような場合、ドメインの暗号化装置の数が移行処理前よりも減少する可能性があります。
ソースホストまたはターゲットホスト上でアクティブな遅延再構成処理が実行されている場合、移行を開始できません。移行の進行中、遅延再構成処理はブロックされます。
マシンでの移行が終了するまで、移行中のドメインのマシン記述 (MD) が変更されるような操作はブロックされます。このような操作には、このドメイン自体でのすべての操作のほか、マシン上のほかのドメインでのバインド、停止などの操作も含まれます。