Solaris のインストール (上級編)

付録 D カスタム JumpStart の設定例

次の例は、架空のサイト用にカスタム JumpStart インストールを設定する方法を示しています。この例には、SPARC 搭載システムと x86 搭載システムの両方が含まれています。

サイトの設定例

この例で使用するサイトの設定を図 D-1 に示します。

図 D-1 サイトの設定例

Graphic

このサイトの状況を次に説明します。


注 -

マーケティングシステムの周辺装置は、Solaris ブートフロッピーディスクにある sysidcfg ファイルに事前構成されています。


インストールサーバーの作成

これらのグループは Solaris ソフトウェアをネットワーク上でインストールする必要があるため、server-1 を両方のグループのインストールサーバーにします。setup_install_server コマンドを使用して、SPARC 版と Intel 版の Solaris CD を (/export/install ディレクトリの) server-1 のローカルディスクにコピーします。

なお、Solaris CD は空のディレクトリにコピーしなければならないため、SPARC 版と Intel 版の Solaris CD イメージは別のディレクトリ (sparc_2.7 ディレクトリと x86_2.7 ディレクトリ) にコピーします。

SPARC 版の Solaris CD を server-1 の CD-ROM ドライブに挿入します。


server-1# cd /CD_mount_point/Solaris_2.7/Tools
server-1# ./setup_install_server /export/install/x86_2.7

Intel 版の Solaris CD を server-1 の CD-ROM ドライブに挿入します。


server-1# cd /CD_mount_point/Solaris_2.7/Tools
server-1# ./setup_install_server /export/install/sparc_2.7

マーケティングシステム用のブートサーバーの作成

システムは、異なるサブネット上のインストールサーバーからはブートできません。したがって、server-2 をマーケティンググループのサブネット上のブートサーバーにします。setup_install_server コマンドを使用して、Intel 版の Solaris CD から (/export/boot ディレクトリの) server-2 のローカルディスクにブートソフトウェアをコピーします。

Intel 版の Solaris CD を server-2 の CD-ROM ドライブに挿入します。


server-2# cd /CD_mount_point/Solaris_2.7/Tools
server-2# ./setup_install_server -b /export/boot

setup_install_server コマンドのオプションは、次のとおりです。

-b

setup_install_server が Solaris CD から /export/boot ディレクトリにブート情報をコピーするよう指定する

JumpStart ディレクトリの作成

これでインストールサーバーとブートサーバーを設定しました。次に、JumpStart ディレクトリを server-1 に設定します (ネットワーク上の任意のシステムを使用できます)。このディレクトリには、Solaris ソフトウェアのカスタム JumpStart インストールに必要なファイルが入っています。このディレクトリを設定するには、/export/install にある Solaris CD イメージの 1 つからサンプルディレクトリをコピーします。


server-1# mkdir /jumpstart
server-1# cp -r /export/install/sparc_2.7/Solaris_2.7/Misc/jumpstart_sample /jumpstart

JumpStart ディレクトリの共有

ネットワーク上のシステムが rules ファイルやプロファイルをアクセスできるようにするために、/jumpstart ディレクトリを共有します。このためには、/etc/dfs/dfstab ファイルに次の行を追加します。

share -F nfs -o ro,anon=0 /jumpstart

次に、コマンド行で shareall コマンドを使用します。


server-1# shareall

エンジニアリンググループのプロファイルの作成

エンジニアリングシステムの場合、eng_prof ファイルを /jumpstart ディレクトリに作成します。eng_prof ファイルのエントリは次のようになっていて、エンジニアリンググループのシステムにインストールされる Solaris ソフトウェアを定義しています。

1 install_type  initial_install
2	system_type   standalone
3	partitioning  default
4	cluster       SUNWCprog
5	filesys       any 50 swap

1. アップグレードではなく、初期インストールによりインストールするよう指定します。

2. エンジニアリングシステムが、スタンドアロンシステムであることを指定します。

3. JumpStart ソフトウェアが、デフォルトのディスクパーティションを使用して、エンジニアリングシステムに Solaris をインストールするよう指定します。

4. 開発者ソフトウェアグループをインストールするよう指定します。

5. エンジニアリンググループの各システムが、50M バイトのスワップ領域を持つよう指定します。

マーケティンググループのプロファイルの作成

マーケティングシステムの場合、marketing_prof ファイルを /jumpstart ディレクトリに作成します。marketing_prof ファイルのエントリは次のようになっていて、マーケティンググループのシステムにインストールされる Solaris ソフトウェアを定義しています。

 [アップグレードではなく、初期インストールによりインストールするよう指定します。]  install_type  initial_install
 [マーケティングシステムが、スタンドアロンであることを指定します。] 	system_type   standalone
 [JumpStart ソフトウェアが、デフォルトのディスクパーティションを使用して、マーケティングシステムに Solaris をインストールするよう指定します。] 	partitioning  default
 [エンドユーザーソフトウェアグループをインストールするよう指定します。] 	cluster       SUNWCuser
 [オーディオツールのデモソフトウェアパッケージを各システムに追加するよう指定します。] 	package       SUNWaudmo

rules ファイルの更新

次に、rules ファイルにルールを追加しなければなりません。Solaris インストールプログラムは、カスタム JumpStart インストール中、これらのルールを使用して、各システムに正しいインストール (プロファイル) を選択します。

このサイトでは、各部署は独自のサブネットとネットワークアドレスを持っています。エンジニアリング部はサブネット 255.222.43.0、マーケティング部はサブネット 255.222.44.0 にあります。この情報を使用すれば、エンジニアリングシステムとマーケティングシステムのインストール方法を制御できます。/jumpstart ディレクトリ中の rules ファイルを編集して、サンプルのルールをすべて削除し、次のように入力します。


network 255.222.43.0 - eng_prof -
network 255.222.44.0 - marketing_prof -

これらのルールは、基本的に、255.222.43.0 ネットワーク上のシステムが eng_prof プロファイルを使用してインストールされることと、255.222.44.0 ネットワーク上のシステムが marketing_prof プロファイルを使用してインストールされることを示しています。


注 -

サンプルのルールでは、どのシステムが eng_prof または marketing_prof を使用してインストールされるかをネットワークアドレスを使用して識別できます。この他にも、ホスト名、メモリーサイズ、またはモデルタイプをルールのキーワードとして使用できます。rules ファイルで使用できるキーワードのリストについては、表 8-2 を参照してください。


rules ファイルのチェック

rules ファイルとプロファイルを適切に設定した後は、check スクリプトを実行して、これらのファイルを確認します。


server-1# cd /jumpstart
server-1# ./check

エラーが見つからなければ、check スクリプトは rules.ok ファイルを作成します。

ネットワーク上でインストールするためのエンジニアリングシステムの設定

/jumpstart ディレクトリと必要なファイルを設定した後は、インストールサーバー (server-1) で add_install_client コマンドを使用して、インストールサーバーから Solaris をインストールできるようにエンジニアリングシステムを設定します。


注 -

add_install_client の代わりに、ホストマネージャを使用してもシステムを設定できます。



server-1# cd /export/install/sparc_2.7/Solaris_2.7/Tools
server-1# ./add_install_client -c server-1:/jumpstart host-eng1 sun4m
server-1# ./add_install_client -c server-1:/jumpstart host-eng2 sun4m

.
.

add_install_client コマンドの指定項目

-c

サーバー (server-1) と JumpStart ディレクトリへのパス (/jumpstart) を指定する

host_eng1

エンジニアリンググループのシステム名 

host_eng2

エンジニアリンググループの別のシステム名 

sun4m

server-1 をインストールサーバーとして使用するシステムのアーキテクチャを指定する (この場合は、SPARCstation 5 システム用のプラットフォームグループ)

ネットワーク上でインストールするためのマーケティングシステムの設定

次に、ブートサーバー (server-2) で add_install_client コマンドを使用して、ブートサーバーからブートして、インストールサーバー (server-1) から Solaris をインストールするようにマーケティングシステムを設定します。


server-2# cd /marketing/boot-dir/Solaris_2.7/Tools
server-2# ./add_install_client -s server-1:/export/install/x86_2.7
-c server-1:/jumpstart host-mkt1 i86pc
server-2# ./add_install_client -s server-1:/export/install/x86_2.7
-c server-1:/jumpstart host-mkt2 i86pc
.
.

add_install_client コマンドの指定項目

-s

インストールサーバー (server-1) と Solaris ソフトウェアへのパス (/export/install/x86_2.7) を指定する

-c

サーバー (server-1) と JumpStart ディレクトリへのパス (/jumpstart) を指定する

host_mkt1

マーケティンググループのシステム名 

host_mkt

マーケティンググループの別のシステム名 

i86pc

このブートサーバーを使用するシステムのプラットフォームグループを指定する (この場合は x86 システムのプラットフォーム名)  

エンジニアリングシステムのブートと Solaris ソフトウェアのインストール

すべての設定が完了した後は、各システムの ok (PROM) プロンプトで次の boot コマンドを使用して、エンジニアリングシステムをブートできます。


ok boot net - install

システムは自動的に Solaris オペレーティング環境をインストールします。

マーケティングシステムのブートと Solaris ソフトウェアのインストール

次に、Solaris ブートフロッピーディスクを挿入して、システムに電源を入れて、マーケティングシステムをブートできます。システムは自動的に Solaris オペレーティング環境をインストールします。