Solaris ネーミングの管理

第 22 章 FNS ポリシー

この章では、FNS ポリシーについて説明します。

FNS および XFN のポリシーの概要

XFN は、フェデレートされた名前空間にあるオブジェクトをネーミングするためのポリシーを定義します。これらのポリシーは、次のような目的を持っています。

FNS ポリシーで指定されるもの

FNS ポリシーには、すべての XFN ポリシーと Solaris 環境用の拡張機能が含まれます。

現在、コンピュータ環境は世界的な規模となり、広範囲なサービスを提供しています。ユーザーは、どのレベルのコンピュータ環境のサービスにもアクセスできます。FNS ポリシーは、グローバル、エンタープライズ、アプリケーションの 3 つのレベルのサービスに共通の枠組みを提供します。

FNS は、ネームサービスをどのように調整して使用するかについて次のようなポリシーをアプリケーション側に提供します。

FNS ポリシーで指定されないもの

FNS ポリシーでは、次のものは指定されません。

エンタープライズ名前空間のポリシー

FNS ポリシーでは、エンタープライズ内の名前空間のタイプおよび配列と、アプリケーションが名前空間を使用する方法が指定されます。たとえば、名前空間が他のどの名前空間と関連するかが指定されます。ここで説明する FNS ポリシーには、XFN ポリシーへの拡張機能があります。これらは、注釈によって明確に定義されます。

デフォルトの FNS エンタープライズ名前空間

FNS エンタープライズのポリシーでは、名前空間内でのエンタープライズのオブジェクトの配列が処理されます。各エンタープライズのオブジェクトは、独自の名前空間を持っています。

デフォルトでは、FNS には 7 つのエンタープライズオブジェクトと対応する名前空間があります。

図 22-1 は、エンタープライズの名前空間が配列される方法を示しています。

図 22-1 FNS ポリシーが配列するもの

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ユーザーやホストなどの名前空間には、フェデレートされた名前空間で複数回表示されるものもあります。

これらの名前空間に適用されるポリシーは、表 22-2 に要約しています。

エンタープライズ名前空間の識別子

エンタープライズ名前空間は、フェデレートされた名前空間の原子名によって参照されます。

XFN では、先行する下線 (_) 文字を使用して、エンタープライズ名前空間の識別子が示されます。たとえば、_site となります。FNS では、下線 (_) なしの識別子の使用もサポートされます。下線なしの名前は、XFN ポリシーの範疇には入りません。site および printer のコンテキストも、XFN ポリシーの範疇には入りません。これらの原子名は、表 22-1 に挙げられています。

表 22-1 エンタープライズでのエンタープライズ名前空間の識別子

名前空間 

XFN 識別子 

FNS 識別子 

解釈処理 

組織 

_orgunit

orgunit または org

組織単位をネーミングするためのコンテキスト 

サイト 

_site

site

サイトをネーミングするためのコンテキスト 

ホスト 

_host

host

ホストをネーミングするためのコンテキスト 

ユーザー 

_user

user

ユーザーをネーミングするのためのコンテキスト 

ファイルシステム 

_fs

fs

ファイルをネーミングするためのコンテキスト 

サービス 

_service

service

サービスをネーミングするためのコンテキスト 

プリンタ 

 

printer

プリンタをネーミングするためのコンテキスト (サービスの名前空間に従属) 


注 -

XFN の用語では、先行する下線のある名前は、「正規」名前空間識別子です。下線のない名前は、Solaris 環境用に「カスタマイズ」された名前空間識別子です。これらのカスタマイズされた名前空間識別子に printer を追加しても、Solaris 以外の環境では認識されません。正規の名前空間識別子は、他の環境でも常に認識され、互換性があります。


構成要素の区切り文字

XFN 構成要素の区切り文字 (/) で、名前空間識別子を区切ります。たとえば、名前空間識別子 orgunit を組織単位名 west.sales とともに作成すると、複合名は orgunit/west.sales となります。

デフォルトの FNS 名前空間

FNS では、次の 7 つの名前空間が提供されます。

組織単位の名前空間

組織単位の名前空間では、エンタープライズのサブ単位をネーミングするために階層になった名前空間が提供されます。各組識単位名は組織単位を表す「組織単位コンテキスト」と結合されています。組織単位名は、接頭辞 org/orgunit/、または _orgunit/ によってネーミングされます。短縮形別名の org/ は、内部コンテキストだけで使用され、複合名の途中では使用されません。「エンタープライズ内のネーミングに対する初期コンテキストのバインド」および、「複合名の例」を参照してください。

NIS+ 環境

NIS+ 環境では、組織単位は NIS+ のドメインおよびサブドメインに対応します。

NIS+ では、組織単位は必ずドメインおよびサブドメインにマップされます。それぞれの NIS+ ドメインおよびサブドメインに組織単位を与える必要があります。ドメインまたはサブドメインに論理、組織ユニットを与えることはできません。つまり、NIS+ ドメインまたはサブドメインを小規模な組織単位に分割することはできません。そのため、NIS+ ドメイン doc.com. と 2 つのサブドメイン sales.doc.com. および manf.doc.com. がある場合は、これら 3 つのドメインに対応する 3 つの FNS 組織単位を持つ必要があります。

組織単位は、ドットで区切られた右から左への複合名を使用してネーミングされます。ここでは、各原子要素がより大きな単位内の組織単位をネーミングします。たとえば、org/sales.doc.com. という名前は、doc.com. という名前のより大きな単位内にある sales をネーミングします。この例では、sales は、doc.com. の NIS+ サブドメインです。

組織単位名は、完全指定の NIS+ ドメインまたは相対名の NIS+ 名のどちらかになります。完全指定名には終端にドットが付きますが、相対名には付きません。そのため、終端のドットが組織名にある場合は、その名前は完全指定の NIS+ ドメイン名として処理されます。終端にドットがない場合は、その組織名は最上部の組織階層に対して相対的に解釈処理されます。たとえば、orgunit/west.sales.doc.com. は、west 組織単位をネーミングする完全指定名で、_orgunit/west.sales は、同じサブドメインをネーミングする相対的な名前です。

NIS 環境

NIS 環境では、NIS ドメインに対応する組織単位は各エンタープライズ 1 つずつあります。この orgunit には、orgunit/domainname という名前が付けられ、ここでの domainname は NIS ドメイン名です。たとえば、NIS ドメイン名が doc.com である場合は、組織単位は org/doc.com です。

NIS 環境では、空の文字列を組織単位の省略形として使用できます。したがって、org// は、org/domainname に相当します。

ファイルベースの環境

エンタープライズレベルのネームサービスがファイルベースであるときには、1 つだけの FNS 組織単位が存在し、サブ単位はありません。ファイルベースのネーミングで許容される唯一の組織単位は org// です。

サイトの名前空間

サイトの名前空間では、物理的位置でそのまま識別される地域名前空間が提供されます。たとえば、これらのオブジェクトには、キャンパスにある建物、ある階のマシンやプリンタ、建物内の会議室とその使用スケジュール、隣接するオフィスにいるユーザーなどがあります。サイト名は、接頭辞 site/ または _site/ で識別されます。

Solaris 環境では、サイトは複合名を使用してネーミングされます。複合名では、各原子名がより大きなサイト内のサイトを表わします。サイト名の構文は、ドット区切りの右から左であり、もっとも一般的な位置記述からもっとも特定の位置記述に配列された構成要素が含まれます。たとえば、_site/pine.bldg5 は、建物 5 にある Pine 会議室を表わし、site/bldg7.alameda は、あるエンタープライズの Alameda にある建物 7 を表わします。

ホストの名前空間

ホストの名前空間では、コンピュータをネーミングするための名前空間が提供されます。ホスト名は、接頭辞 host/ または _host/ で識別されます。たとえば、host/deneb は、deneb という名前のマシンを識別します。

ホストは、「hostname」コンテキストでネーミングされます。ホストコンテキストには、フラットな名前空間があり、ホストコンテキストへのホスト名のバインドが含まれます。「ホストコンテキスト」では、そのホストで見つかったファイルやプリンタなどの、マシンに相対的なオブジェクトをネーミングできます。

Solaris 環境では、ホスト名は Solaris のホスト名に対応します。単一のマシンに対する別名で同じコンテキストが共有されます。たとえば、mail_server という名前がマシン deneb および altair の別名である場合、denebaltair の両方で、mail_server に作成されたコンテキストが共有されます。

ネットワーク資源は、必要に応じてホストに関連付けてネーミングする必要があります。たいていの場合、組織、ユーザー、サイトなどの構成要素に関連して資源をネーミングした方がわかりやすくなります。ホスト名に依存すると、ユーザーは、あいまいで変更される可能性のある情報を覚えなくてはならなくなります。たとえば、ハードウェアの変更、ファイルスペースの使用、ネットワークの再構成などのために、ユーザーのファイルがあるサーバーから他のサーバーに移動されてしまう場合もあります。さらに、ユーザーは、同じファイルサーバーを共有することが多くなり、ファイルがホストに関連付けてネーミングされた場合に混乱を招きます。しかし、ファイルがユーザーに関連付けてネーミングされた場合は、このような変更はファイルのネーミング方法に影響しません。

ホスト名を使用した方が適切な場合もあります。たとえば、資源が特定のマシンだけで使用可能であり、他の構成要素に関連付けてその資源をネーミングする論理的方法がない場合には、ホストに関連付けてネーミングする意味があります。または、ファイルシステムでは、ファイルが多くのユーザーに共有されている場合、格納されているマシンに関連付けてファイルをネーミングする意味があります。

ユーザーの名前空間

ユーザーの名前空間では、コンピュータ環境内のユーザーをネーミングするための名前空間が提供されます。ユーザー名は、接頭辞 user/ または _user/ で識別されます。

ユーザーは、「ユーザーコンテキスト」でネーミングされます。ユーザーコンテキストには、単一レベルの名前空間があり、「ユーザーコンテキスト」へのユーザー名のバインドが含まれます。ユーザーコンテキストでは、ユーザーに関連するファイル、サービス、資源などのオブジェクトをユーザーに関連付けてネーミングすることができます。

Solaris 環境では、ユーザー名は Solaris ログイン ID に対応します。たとえば、_user/inga は、ログイン ID が inga のユーザーを識別します。

ファイルの名前空間

ファイルの名前空間 (またはファイルシステム) では、ファイルをネーミングするための名前空間が提供されます。ファイル名は、接頭辞 fs/ または _fs/ で識別されます。たとえば、fs/etc/motd という名前では、/etc ディレクトリに格納されているファイル motd が識別されます。

ファイルの名前空間については、「FNS ファイルネーミング」で詳しく説明し、ファイルのコンテキストについては、「ファイルコンテキストの管理」で説明します。

サービスの名前空間

サービスの名前空間では、エンタープライズ内のオブジェクトに使用される、または関連するサービスのための名前空間が提供されます。このようなサービスには、電子カレンダ、FAX、メール、印刷などがあります。サービス名は、接頭辞 service/ または _service/ で識別されます。

Solaris 環境では、サービスの名前空間は階層になっています。サービス名は、スラッシュ (/) で区切られた左から右の複合名です。サービスの名前空間を使用するアプリケーションは、この階層属性を利用し、そのアプリケーションのサブツリーを獲保します。たとえば、プリンタサービスはサービスの名前空間のサブツリー printer を獲保します。

FNS は、サービス名またはリファレンスタイプが選択される方法を指定します。これらは、サービスの名前空間を共有するサービス提供者によって決定されます。たとえば、カレンダサービスは、サービスのコンテキストにある名前 _service/calendar を使用してカレンダサービスをネーミングし、名前 calendar にバインドされたものを決定します。

サービス名およびリファレンスの登録

米国 Sun Microsystems, Inc. は、service の名前空間の最初のレベルにある名前の登録を行います。新規名を登録するには、電子メールのリクエストを fns-register@sun.com まで送信するか、または書面で次の住所までご郵送ください。


FNS Registration
Sun Microsystems, Inc.
901 San Antonio Blvd.
Palo Alto, CA 94303
U.S.A.

名前の使用目的についての簡単な説明と、その名前にバインドされるリファレンスのフォーマットの説明をお書き添えください。

プリンタの名前空間

プリンタの名前空間では、プリンタをネーミングするための名前空間が提供されます。プリンタの名前空間は、サービスの名前空間に関連 (従属) します。つまり、プリンタのサービスは、サービスの名前空間のサービスの一部です。プリンタ名は、接頭辞 service/printer または _service/printer で識別されます。たとえば、service/printer/laser1 では、laser1 という名前のプリンタが識別されます。

後続スラッシュの意味

後続の / は、次のネーミングシステムにあるオブジェクトをネーミングします。あるネーミングシステムから他のネーミングシステムに移動するときに必ず必要となります。たとえば、名前 org/east.sales/service/printer では、orgeast.sales の間のスラッシュは、上で説明した構成要素の区切り文字であり、組織名 (sales/) の最後の要素に続くスラッシュは、service 名前空間を組織単位名前空間から区切ります。したがって、org/west.sales/service/printer では、west.sales という組織単位の printer サービスがネーミングされます。

FNS 予約名

FNS は、表 22-1 に挙げたすべての原子名をそれ自身の使用のために名前空間識別子として獲保します。たとえば、_orgunitorg_sitesite などです。この制限事項は、「エンタープライズ名前空間の構造」にある名前空間の配列で定義されているように、名前空間識別子が現れるコンテキストに適用されます。それ以外の場合は、FNS は、他のコンテキストではこれらの原子名の使用を制限します。

たとえば、原子名 service は、user/fatima/service/calendar のように、ユーザー名に相対的な名前空間識別子として使用され、ユーザー fatima のサービスの名前空間のルートであることを意味します。FNS では、名前 user/ がバインドされるコンテキストは、名前空間識別子にではなく、ユーザー名に指定されるため、user/service のようにユーザー名として名前 service を使用することが禁止されるわけではありません。この場合、service は明確にユーザー名として解釈されます。一方で、/user/mikhail を使用すると、ユーザー mikhail とファイル (またはサブディレクトリ) /user/mikhail の区別がつきにくくなるため、user という名前のディレクトリは作成しないでください。

複合名の例

この項では、FNS ポリシーに従う名前の例を示します。これらのポリシーについては、表 22-2 を参照してください。

組織名、サイト名、ユーザー名、ホスト名、ファイル名、サービス名 (calendarprinter など) の名前は、例として使用されています。これらの名前は、FNS ポリシーでは指定されません。

組織に関連する名前を作成する

組織の名前空間 (_orgunitorgunit、または org) に関連付けることのできる名前空間は、userhostservicefs、と site です。

以下に例を示します。

ユーザーに関連する名前を作成する

user の名前空間に関連付けることができる名前空間は、service および fs です。

ホストに関連する名前を作成する

hosts の名前空間に関連付けることができる名前空間は、service および fs です。

サイトに関連する名前を作成する

sites の名前空間に関連付けることができる名前空間は、service および fs です。

サービスおよびファイルに関連する名前を作成する

ファイル (fs) またはサービス (service) の名前空間に関連付けることができる名前空間はありません。たとえば、/services/calendar/orgunit/doc.com などの名前は作成できません。つまり、ファイルまたはサービスの名前空間に関連付けた複合名は作成できません。もちろん、/user/esperanza/service/calendar のように、他の名前空間に関連付けてファイル名またはサービス名を作成することは可能です。

エンタープライズ名前空間の構造

FNS ポリシーでは、エンタープライズ名前空間の構造が定義されます。この構造の目的は、統一性のある名前を簡単に作成することです。このエンタープライズ名前空間構造には、2 つの主要なルールがあります。

表 22-2 は、エンタープライズ名前空間を配列するための FNS ポリシーのまとめです。図 22-2 に、これらの FNS ポリシーに従う名前空間の配置の例を示します。

表 22-2 フェデレートされたエンタープライズ名前空間用のポリシー

名前空間 

識別子 

従属する名前空間 

親コンテキスト 

名前空間編成 

構文 

orgunit

_orgunit

org

サイト、ユーザー、ホスト、ファイルシステム、サービス 

エンタープライズのルート 

階層 

ドット区切り、右から左 

site

_site

サービス、ファイルシステム 

エンタープライズのルート、組織単位 

階層 

ドット区切り、右から左 

user

_user

サービス、ファイルシステム 

エンタープライズのルート、組織単位 

フラット 

Solaris ログイン名 

host

_host

サービス、ファイルシステム 

エンタープライズのルート、組織単位 

フラット 

Solaris ホスト名 

service

_service

アプリケーション固有 

エンタープライズのルート、組織単位、サイト、ユーザー、ホスト 

階層 

/ 区切り、左から右 

fs

 

_fs

なし 

エンタープライズのルート、組織単位、サイト、ユーザー、ホスト 

階層 

/ 区切り、左から右 

printer

なし 

サービス 

階層 

/ 区切り、左から右 

図 22-2 エンタープライズ名前空間の例

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エンタープライズの名前空間は、組織単位の周辺に構成されます。適切な名前空間識別子とオブジェクト名を使用して組織単位名を作成して、サイト、ホスト、ユーザー、ファイル、サービスの名前は、組織単位に関連付けてネーミングできます。

図 22-2 では、エンタープライズの sales 組織の西部事業部のユーザー myoko は、名前 orgunit/west.sales/user/myoko を使用してネーミングされます。

名前空間識別子 user を使用して、orgunit 名前空間から user 名前空間への移行を表していることに注意してください。同様に (適切な名前空間識別子を使用して)、ファイル名およびサービス名も、サイト、ユーザー、またはホストの名前に関連付けてネーミングできます。サイト名は、組織単位名に関連付けてネーミングできます。

簡単に均質な名前を作成することは、この構造を使用して達成されます。たとえば、エンタープライズ (orgunit/west) 内の組織単位名が分かれば、user の名前空間識別子とユーザーのログイン名で名前を作成して orgunit/west/user/josepha などの名前を作成し、エンタープライズに関連付けてユーザーをネーミングできます。

このユーザーのファイルシステムにあるファイルをネーミングするときには、orgunit/west/user/josepha/fs/notes などの名前を使用できます。

エンタープライズのルート

エンタープライズのルートコンテキストは、エンタープライズ名前空間のルートレベルにあるオブジェクトをネーミングするためのコンテキストです。エンタープライズのルートは、グローバルの名前空間でバインドされます。

エンタープライズのルートをネーミングする方法には、次の 2 つがあります。

3 つのドットを使用してエンタープライズのルートを識別する

.../rootdomain/ を使用して、エンタープライズのルートを識別できます。

org// を使用してエンタープライズのルートを識別する

org// を使用して、エンタープライズのルートを識別できます。本質的に org// は、.../domainname/ に対する別名または機能的に相当するものです。org// を使用するときは、二重のスラッシュによって、ルートのエンタープライズコンテキストとそれに関連する名前空間が識別されます。

たとえば、org//site/alameda では、エンタープライズのルートに関連する Alameda サイトがネーミングされます。

反対に、org/ または orgunit/ (一重のスラッシュ) では、エンタープライズのルートに必ずしも相対的にネーミングされていない組織のコンテキストを示します。たとえば、org/sales/site/alameda のようになります。

エンタープライズのルートの従属するコンテキスト

次のオブジェクトは、エンタープライズのルートに関連付けてネーミングできます。

エンタープライズのルートと組織的なサブ単位

組織のサブ単位は、エンタープライズのルートに関連付けてネーミングできます。

組織ルート名の場合は、orgunit または _orgunit のどちらかの名前空間識別子を使用して、従属する組織単位コンテキストに名前を作成できます。

たとえば、.../doc.com がエンタープライズ名である場合、組織単位にネーミングするためのコンテキストのルートは、.../doc.com/orgunit/ であり、組織単位名は .../doc.com/orgunit/sales.../doc.com/orgunit/west.sales のようになります。または、 org//orgunit/sales でも同じ結果を得ることができます。

次のオブジェクトは、組織単位名に関連付けてネーミングできます。

エンタープライズのルートとサイト

サイトは、XFN ポリシーから拡張されています。

サイトは、次のものに関連付けてネーミングできます。

エンタープライズのルートとユーザー

ユーザーは、次のものに関連付けてネーミングできます。

エンタープライズのルートとホスト

ホストは、次のものに関連付けてネーミングできます。

エンタープライズのルートとサービス

サービスは、次のものに関連付けてネーミングできます。

エンタープライズのルートとファイル

ファイルの名前空間は、次のものに関連付けてネーミングできます。

エンタープライズのルートとプリンタ

プリンタのコンテキストは、XFN ポリシーの拡張です。

プリンタの名前空間は、サービスのコンテキストでネーミングできます。プリンタのコンテキストは、名前空間識別子の printer を使用して、次のものに関連したサービスのコンテキストでネーミングされます。

エンタープライズ内のネーミングに対する初期コンテキストのバインド

初期コンテキストは、クライアントのユーザー、ホスト、およびアプリケーションがエンタープライズ名前空間の任意のオブジェクトに (結果的に) ネーミングできる開始点です。

図 22-3 に示すネーミングシステムは、初期コンテキストのバインドが影付きでイタリックになっている点を除いて図 22-2 に挙げたネーミングシステムと同一です。これらの初期コンテキストは、解決する名前を決定するユーザー、ホスト、またはアプリケーションの観点から示されています。

図 22-3 初期コンテキストのエンタープライズバインドの例

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XFN では、「初期コンテキスト関数」の fn_ctx_handle_from_initial() が提供され、クライアントは初期コンテキストのオブジェクトを名前解決の開始点として得ることが可能になります。初期コンテキストには、名前空間識別子に対するフラットな名前空間があります。これらの初期コンテキスト識別子のバインドについては表 22-3 に要約し、その後の節でさらに詳細に説明しています。これらの名前は、必ずしもすべての初期コンテキストに表示されるわけではありません。たとえば、スーパーユーザーがプログラムを起動したときには、ホストとクライアントに関連するバインドのみが初期コンテキストに表示され、ユーザーに関連するバインドは表示されません。

表 22-3 エンタープライズ内のネーミングに対する初期コンテキストのバインド

名前空間 

識別子 

バインド 

myself, _myself, thisuser

名前解決しようとするユーザーのコンテキスト 

myens, _myens

名前解決しようとするユーザーのエンタープライズのルート 

myorgunit, _myorgunit

ユーザーの主要な組織単位のコンテキスト。たとえば、NIS+ 環境では、主組織単位はユーザーの NIS+ ホームドメインとなる 

thishost, _thishost

名前解決しようとするホストのコンテキスト 

thisens, _thisens

名前解決しようとするホストのエンタープライズのルート 

thisorgunit, _thisorgunit

ホストの主要な組織単位のコンテキスト。たとえば、NIS+ 環境では、主組織単位はホストの NIS+ ホームドメインとなる 

user, _user

ホストと同じ組織単位にいるユーザーがネーミングされるコンテキスト 

host, _host

ホストと同じ組織単位にいるホストがネーミングされるコンテキスト 

org, orgunit, _orgunit

ホストのエンタープライズにある組織単位の名前空間のルートコンテキスト。たとえば、NIS+ 環境では、これは NIS+ ルートドメインに対応する 

site, _site

サイトの名前空間が構成された場合、最上位の組織単位にあるサイトの名前空間のルートコンテキスト 

XFN 用語では、接頭辞として使用される下線は、「正規」名前空間識別子と呼ばれます。この下線がなく、org および thisuser が追加された名前は、Solaris 用にカスタマイズされた名前です。Solaris カスタマイズの名前空間識別子は、他の Solaris 以外の環境で認識されるとは限りません。正規名前空間識別子は、他の環境でも必ず認識されるため移植性があります。


注 -

現在実装されている FNS では、初期コンテキストにある名前およびバインドの追加や修正はサポートされません。


初期コンテキストのバインドは、基本的に次の 3 つに分けられます。

ユーザーに関連するバインド

FNS では、XFN 初期コンテキスト関数が呼び出されたときに、プロセスに関連付けられたユーザーが存在するものと仮定されます。この関連付けは、プロセスの実効ユーザー ID (euid) に基づいています。プロセスに対するユーザーの関連付けがプロセスの途中で変更されることはありますが、元のコンテキストハンドルは変更されません。

FNS では、名前解決を要求するユーザーに関連する初期コンテキストにある次のバインドが定義されます。

myself

初期コンテキストにある名前空間識別子 myself (あるいは同義語の _myself または thisuser のどちらか) は、要求を行うユーザーのコンテキストで解決されます。ユーザー jsmith が所有するプロセスが名前解決を要求したときの例を示します。

myorgunit

FNS では、各ユーザーがエンタープライズの組織単位に関連するものと仮定されます。1 人のユーザーを複数の組織単位に関連させることはできますが、組織の名前空間での位置または組織内でのユーザーの役割によって、主な組織単位が必ず 1 つ必要です。

myens

FNS では、各ユーザーがエンタープライズに関連するものと仮定されます。これは、myorgunit を保持する名前空間に対応します。

名前空間識別子 myens (および _myens) は、要求を行うユーザーが所属するエンタープライズのルートとして初期コンテキストで解決されます。たとえば、jsmith が要求を行い、jsmith の NIS+ ホームドメインが east.sales である場合、それは doc.com. のルートドメイン名を含む NIS+ 階層にあります。名前 myens/orgunit/ は、doc.com の最上部の組織単位で解決されます。


注 -

myorgunit または myself/service などのユーザーに関連する複合名を使用するときは、これらのバインドはプロセスの実効ユーザー ID に依存するため、ユーザー ID 設定プログラムに注意してください。ユーザー ID を root に設定して、呼び出し元に代わってシステムリソースにアクセスするプログラムでは、通常は fn_ctx_handle_from_initial() を呼び出す前に seteuid(getuid()) を呼び出してください。


ホストに関連するバインド

XFN 初期コンテキスト関数が呼び出されたときには、特定のホストでプロセスが実行中です。FNS では、プロセス実行中のホストに関連する初期コンテキストにある次のバインドが定義されます。

thishost

名前空間識別子 thishost (または _thishost) は、プロセス実行中のホストのホストコンテキストにバインドされます。たとえば、プロセスがマシン cygnus で実行中である場合、thishostcygnus のホストのコンテキストにバインドされ、名前 thishost/service/calendar はマシン cygnus のカレンダのサービスを参照します。

thisorgunit

FNS では、ホストは組織単位に関連付けられていると仮定します。1 つのホストを複数の組織単位に関連付けることができますが、主となる組織単位が必要です。NIS+ 名前空間では、組織単位はホストのホームドメインに対応します。

名前空間識別子 thisorgunit (または _thisorgunit) は、プロセス実行中のホストの主要な組織単位に解決されます。たとえば、ホストがマシン cygnus であり、cygnus の NIS+ ホームドメインが west.sales である場合は、thisorgunitwest.sales として組織単位コンテキストで解決され、名前 thisorgunit/service/fax は組織単位 west.sales の FAX サービスを参照します。

thisens

FNS では、ホストがエンタープライズに関連するものと仮定されます。これは、thisorgunit を保持する名前空間に対応します。

名前空間識別子 thisens (または _thisens) は、プロセス実行中のホストのエンタープライズのルートで解決されます。たとえば、NIS+ で、ホストのホームドメインが sales.doc.com である場合、名前 thisens/site/doc.com. のサイトの名前空間のルートで解決されます。

短縮形のバインド

FNS では、初期コンテキストにある次の短縮形バインドを定義し、短い名前を使用して、共通に参照される特定の名前空間を参照できます。

user

名前空間識別子 user (または _user) は、プロセス実行中のホストの組織単位にある username コンテキストとして初期コンテキストにバインドされます。これにより、同じ組織単位にいる他のユーザーをこのコンテキストからネーミングできます。

初期コンテキストから、名前 user および thisorgunit/user は同じコンテキストで解決されます。たとえば、プロセス実行中のホストがマシン altairであり、altaireast.sales 組織単位にある場合は、名前 user/medicieast.sales にいるユーザー medici がネーミングされます。

host

名前空間識別子 host (または _host) は、プロセス実行中のホストの組織単位にある hostname コンテキストとして初期コンテキストにバインドされます。これにより、同じ組織単位にいる他のホストをこのコンテキストからネーミングできます。

初期コンテキストから、名前 host および thisorgunit/host は同じコンテキストで解決されます。たとえば、プロセス実行中のホストがマシン sirius であり、sirius が east.sales 組織単位にある場合は、名前 host/siriuseast.sales にあるマシン sirius がネーミングされます。

org

名前空間識別子 org (または orgunit、_orgunit) は、プロセス実行中のホストが所属するエンタープライズの組織のルートコンテキストとして初期コンテキストでバインドされます。

初期コンテキストから、名前 org および thisens/orgunit は同じコンテキストで解決されます。たとえば、プロセス実行中のホストがマシン aldebaran であり、aldebaran がエンタープライズ doc.com にある場合は、名前 org/east.salesdoc.com. にある組織単位 east.sales がネーミングされます。

site

名前空間識別子 site (または _site) は、プロセス実行中のホストが所属するエンタープライズの最上位の組織単位のサイトネーミングシステムのルートに対する初期コンテキストにバインドされます。

初期コンテキストから、名前 site および thisens/site は同じコンテキストで解決されます。たとえば、プロセス実行中のホストがマシン aldebaran であり、aldebaran がエンタープライズ doc.com にある場合は、名前 site/pine.bldg-5doc.com. の建物 5 にある会議室 pine がネーミングされます。

FNS およびエンタープライズのレベルのネーミング

FNS では、基本ネーミング操作の単一の簡単なインタフェースで、複数のネームサービスをフェデレートする方法が提供されます。FNS は、次の 3 つのエンタープライズレベルのネームサービスで機能するように設計されています。

FNS ポリシーと NIS+ との関連

FNS および NIS+ に関連する内容説明の概要については、「FNS と NIS+ のネーミング」を参照してください。NIS+ およびその用語を調べる場合は、このマニュアルのパート I「ネーミングの紹介」および用語集を参照してください。一般的な NIS+ 環境の構造を学ぶときに便利です。

FNS では、NIS+ サーバー上のドメインレベルの org_dir NIS+ ディレクトリにある FNS テーブルに、エンタープライズのオブジェクトに対するバインドが格納されます。FNS テーブルは NIS+ テーブルに類似しています。これらの FNS テーブルには、次のエンタープライズ名前空間に対するバインドが格納されます。

NIS+ ドメインと FNS 組織単位

FNS では、優先 Solaris エンタープライズのネームサービスである NIS+ 内の組織、ユーザー、ホストのエンタープライズオブジェクトがネーミングされます。NIS+ ドメインは、ユーザーおよびマシンの論理コレクションとそれらについての情報で構成され、エンタープライズ内の階層組織構造のフォームを反映するように配列されます。

FNS は、NIS+ ドメインを FNS 組織にマッピングして、NIS+ で実行されます。組織単位名は、NIS+ ドメイン名に対応しており、完全指定された形式の NIS+ ドメイン名または NIS+ ルートに関連した NIS+ ドメイン名のどちらかを使用して識別されます。最上位の FNS 組織名前空間は、NIS+ ルートドメインにマップされ、初期コンテキストから名前 org/ を使用してアクセスされます。

NIS+ では、ユーザーおよびホストに「ホームドメイン」の概念があります。ホストまたはユーザーのホームドメインは、それらの関連付けられた情報を保持する NIS+ ドメインです。ユーザーまたはホストのホームドメインは、直接 NIS+「主体名」を使用して決定できます。NIS+ 主体名は、原子ユーザー (ログイン) 名または原子ホスト名と、NIS+ ホームドメイン名からなります。たとえば、ホームドメイン doc.com. を持つユーザー sekou には NIS+ 主体名 sekou.doc.com が付けられ、マシン名 vega には NIS+ 主体名 vega.doc.com が付けられます。

ユーザーの NIS+ ホームドメインは、ユーザーの FNS 組織単位に対応します。同様に、ホストのホームドメインは、その FNS 組織単位に対応します。

組織名の後のドット

組織名の後のドットは、その名前が完全指定の NIS+ ドメイン名であることを示します。このドットがない場合は、その組織名は NIS+ ルートドメインに関連付けて解決される NIS+ ドメイン名です。

たとえば、NIS+ ルートドメインが doc.com. であり、サブドメイン ales.doc.com. を含む場合は、次の名前で同じ組織が参照されます。

表 22-4 NIS+ での相対および完全指定の組織名の例

相対名 

完全指定名 

org/

org/doc.com.

org/sales

org/sales.doc.com.

manf という名前だけを含む NIS+ ドメインは存在しないため、名前 org/manf. (ドット付き) はありません。

NIS+ ホストと FNS ホスト

NIS+ 名前空間のホストは、ホストのホームドメインの hosts.org_dir テーブルにあります。FNS 組織にあるホストは、対応する NIS+ ドメインの hosts.org_dir テーブル内のホストに対応します。FNS では、hosts テーブル内の各ホストにコンテキストが提供されます。

NIS+ ユーザーと FNS ユーザー

NIS+ 名前空間にいるユーザーは、ユーザーのホームドメインの passwd.org_dir テーブルのリストに入っています。FNS 組織にいるユーザーは、対応する NIS+ ドメインの passwd.org_dir テーブル内のユーザーに対応します。FNS では、passwd テーブル中の各ホストにコンテキストが提供されます。

NIS+ セキュリティと FNS

FNS の fncreate コマンドを使用して、コマンドが実行されたホストのドメインに関連付けられた NIS+ 階層に FNS テーブルとディレクトリを作成します。fncreate を実行するには、そのドメインの NIS+ オブジェクトの読み取り、作成、変更、削除を許可する資格を得て、認証された NIS+ 主体になる必要があります。fncreate で作成した FNS テーブルの「所有者」になります。この許可を得る 1 つの方法は、ドメインの管理者特権を持つ NIS+ グループのメンバーになることです。

fncreate を実行する前に、NIS_GROUP 環境変数をドメインに対する NIS+ 管理グループ名に設定する必要があります。個別のユーザーが、ユーザーに関連する FNS データを変更可能かどうかを指定できます。

NIS+ セキュリティの説明については、第 6 章「セキュリティの概要」を参照してください。

FNS ポリシーと NIS の関連

FNS および NIS に関連する概要と内容説明については、「FNS と NIS のネーミング」を参照してください。

FNS では、NIS をネームサービスとして使用する基本的なネーミングおよび属性の操作用に XFN インタフェースが提供されます。

FNS では、NIS マスターサーバー (および存在する場合は NIS スレーブサーバー) /var/yp/domainname ディレクトリにある FNS マップのエンタープライズオブジェクトへのバインドが格納されます。FNS マップは、構造と機能の面で FNS マップと類似しています。これらの NIS マップでは、次のエンタープライズ名前空間に対するバインドが格納されます。

FNS ポリシーとファイルベースのネーミングの関連

FNS とファイルに関連する概要および内容説明については、「FNS とファイルベースのネーミング」を参照してください。

FNS では、ローカルのファイルをネームサービスとして使用する基本的なネーミングおよび属性の操作用に XFN インタフェースが提供されます。

FNS では、通常各マシンに NFS マウントされた /var/fn ディレクトリにあるファイル内のエンタープライズオブジェクトに対するバインドが格納されます。これらの FNS ファイルでは、次のエンタープライズ名前空間に対するバインドが格納されます。

FNS ポリシーの対象となるクライアントアプリケーション

FNS ポリシーの 1 つの目的は、ファイルシステム、およびカレンダマネージャ、印刷ツール、ファイルマネージャ、メールツールなどの DeskSet ツール、またこれらのツールをサポートする RPC、電子メール、印刷サブシステムなどのサービスなどの、共通して使用されるツールに一貫性を持たせることです。


注 -

これらの例のいくつかは、現在 Solaris 環境には導入されていませんが、FNS の使用方法を示すためにここに挙げます。


アプリケーションの例 - カレンダサービス

ここでは、カレンダサービスというアプリケーションを変更して、FNS ポリシーを使用する方法について説明します。この例では、ユーザーから FNS 複合名が提示され、承認される手順を示します。

DeskSet のカレンダサービスは、一般的なクライアントサーバーアプリケーションです。カレンダサーバーは、複数のマシンで動作し、ユーザーのカレンダを保持します。カレンダマネージャ (cm) は、デスクトップで動作し、適切なサーバーにコンタクトして必要なカレンダを入手します。

カレンダサービスは、次のような簡単なレジストリまたは検索のモデルを使用して FNS を利用します。

  1. cm では、ユーザーからの複合名を承認して、カレンダが要求されたオブジェクト名を構成するためのツールが使用されます。

    オブジェクトは、ユーザー、サイト、ホスト、または組織の名前になります。たとえば、ユーザーが名前 kuanda を入力すると、カレンダマネージャで複合名 user/kuanda が生成されます。このツールは、DeskSet アプリケーションのグループ間で共有できます。

  2. cm は、XFN インタフェースを使用して、接尾辞 /service/calendar を含む名前を作成し、カレンダ名を入手します。

  3. このカレンダ名は、プロセスの初期コンテキストに関連付けて解決されます。

    続いて、名前 user/kuanda/service/calendar が解決されます。同様に、ユーザーがサイト名 pine.bldg-5 を入力した場合は、cm で名前 site/pine.bldg-5/service/calendar が生成され解決されます。

    印刷やメールなどの他のサービスでも、類似の方法で FNS ポリシーを利用できます。

FNS ファイルシステム名前空間

FNS では、ファイル名はユーザー、ホスト、組織、サイトとの関係から設定できます。この場合実際には、オブジェクトの名前の後にエンタープライズの名前空間識別子 fs を指定し、その後にファイル名を指定します。たとえば、Sales 部門の、budget というファイルなら、org/sales/fs/budget/draft96という名前になります。

初期コンテキストは、ルートディレクトリの /xfn の下にあります。したがって、以下のように入力して参照できます。


% more /xfn/org/sales/fs/budget/draft96

アプリケーションからこのディレクトリへアクセスする方法は、他のディレクトリの場合とまったく同様です。アプリケーションを修正したり、XFN API を使用したりする必要はありません。

NFS ファイルサーバー

NFS は Sun Microsystems, Inc. の製品で、分散ファイルシステムの一種です。オブジェクトのファイルは、通常1つ以上のリモート NFS ファイルサーバーにあります。最も単純なのは、エクスポートされた NFS ファイルシステムに名前空間識別子 fs が対応するという図 22-4 のような場合です。

図 22-4 NFS ファイルシステム - 単純な場合

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しかしオブジェクトのファイルシステムの中には、複数の (重なり合う場合もある) リモートマウントで構成され、FNS によって管理される仮想ディレクトリ構造にまとめられているものもあります。

図 22-5 は、3 つの異なるファイルサーバーをまとめて、組織のファイルシステムを 1 つ作成している例です。project ディレクトリと lib サブディレクトリは同じファイルサーバー上に常駐していますが、src サブディレクトリの常駐先は別です。しかしユーザー、およびアプリケーションの側からは 1 つのシームレスな名前空間に見えるので、複数のサーバーを使用していることを意識する必要はありません。

図 22-5 NFS ファイルシステム - 複数サーバーで構成されている場合

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オートマウンタ

効率を上げるため、FNS ディレクトリのマウントには必要に応じてオートマウンタが使用されます。/etc/auto_master 構成ファイルには、デフォルトでは以下のような行が含まれます。


/xfn -xfn

これは、「FNS 名前空間が、XFN の指定どおり /xfn の下にマウントされる」という意味です。

オートマウンタは、FNS によって指定されたディレクトリのマウントに使用されるため、FNS ディレクトリのサブディレクトリは、マウントされるまで表示できません。たとえば、sales 組織のファイルシステムが複数のファイルシステムで構成されているとします。以下の ls コマンドは最近アクセスして現在もマウントされている 2 つのファイルシステムだけを表示します。


% ls /xfn/org/sales/fs
customers products

完全なリストを表示するには、fnlist コマンドを使用します。


% fnlist org/sales/fs
Listing `org/sales/fs':
products
goals
customers
incentives

FNS プリンタの名前空間

printer コンテキストは、XFN ポリシーには含まれていません。FNS に提供されているのは、プリンタバインディングを保存するためです。

FNS では、FNS 名前空間にプリンタバインディングを保存するための機能が提供されています。この機能によって、プリントサーバーは自分自身のサービスをユーザーに知らせることができ、ユーザーはクライアント側の管理がなくてもプリンタのブラウズおよび選択ができます。

プリンタバインディングは、組織、ユーザー、ホスト、サイトごとに存在する printer コンテキストに格納されます。したがって、組織、ユーザー、ホスト、サイトは、それぞれ専用の printer コンテキストを所有できます。

printer コンテキストは、個々の複合名の service コンテキストの下に作成されます。例を以下に示します。


org/doc.com./service/printer

ホストのプリンタ名が deneb である場合、printer コンテキストは以下のように作成されます。


host/deneb/service/printer/laser

グローバル名前空間のポリシー

グローバルネームサービスには、固有の適用範囲があります。ここでは、グローバルネームサービスを使用するオブジェクトをネーミングするためのポリシーについて説明します。

ネーミングに関しては、エンタープライズは、グローバル名前空間にあるエンタープライズのルートをバインドして、フェデレートされたグローバル名前空間にリンクします。これにより、エンタープライズ外部のアプリケーションおよびユーザーがそのエンタープライズ内部のオブジェクトをネーミングできます。たとえば、エンタープライズ内部のユーザーは、他のエンタープライズにいる同僚にファイルのグローバル名を渡すことができます。

DNS および X.500 のコンテキストは、エンタープライズをネーミングするためのグローバルレベルのネームサービスを提供します。FNS では、DNS と X.500 コンテキストの両方がサポートされます。FNS がない場合、DNS および X.500 では、限定された部分のエンタープライズ名前空間だけに外部からアクセスできます。FNS では、カレンダマネージャなどのサービスを含むエンタープライズ名前空間全体に外部からアクセスできます。

グローバルネーミングに対する初期コンテキストのバインディング

原子名「...」(3 つのドット) は、各 FNS クライアントの初期コンテキストに表示されます。原子名「...」は、グローバル名が解決されるコンテキストにバインドされます。

表 22-5 グローバルネーミングに対する初期コンテキストバインド

原子名 

バインド 

. ..

DNS または X.500 の名前を解決するためのグローバルコンテキスト 

/ ...

3 つのドットの同義語 

グローバル名は、完全指定のインターネットドメイン名か、または X.500 の識別名になります。

DNS のフェデレーティング

完全指定の DNS 名は、必ずグローバルコンテキストで使用できます。DNS 名がグローバル名前空間で見つかると、リゾルバライブラリを使用して解決されます。リゾルバライブラリは、DNS 名前解決メカニズムです。一般的 DNS 名は、インターネットのホストアドレスまたは DNS ドメインレコードで解決されます。グローバルコンテキストで DNS 名が検出されると、名前は DNS リゾルバに引き渡されて解決されます。結果は、XFN リファレンス構造に変換され、要求者に返されます。

DNS ドメインの内容は、表示できます。しかし、表示操作は、インターネットでの連結性とセキュリティなどの実用上の理由によって限定されることもあります。たとえば、DNS ドメインのグローバルルート表示は、一般的にルート DNS サーバーではサポートされません。しかし、ルートの下にあるたいていのエンティティは、表示操作をサポートします。

DNS ホストおよびドメインは、DNS リソース名と関連付けられたネームサービス (NS) のリソースレコードの有無によって確認されます。

DNS は、端末以外のネーミングシステムのように機能し、他のネーミングシステムをフェデレートするために使用されます。

たとえば、エンタープライズネーミングシステムは、FNS 名 .../doc.com/ がそのエンタープライズの FNS 名前空間のルートを参照するような DNS にある doc.com にバインドできます。

エンタープライズのネーミングシステムは、適切なテキスト (TXT) レコードをそのドメインの DNS マップに追加して、DNS ドメインにバインドされます。そのドメインに対する FNS 名には後に続くスラッシュ (/) が含まれ、TXT リソースレコードは、エンタープライズのネーミングシステムへのリファレンスを構成するために使用されます。

DNS に関する一般的な情報については、in.named(1M) のマニュアルページか、または『Solaris ネーミングの設定と構成』の DNS についての章を参照してください。

X.500/LDAP のフェデレーティング

X.500 は、グローバルのディレクトリサービスです。ここでは、情報が格納され、情報を表示して検索する機能と同様に、名前で情報を検索する機能が提供されます。

X.500 の情報は、ディレクトリ情報ベース (DIB) に格納されます。DIB にあるエントリは、ツリー構造で配列されます。各エントリは名前付きオブジェクトで、定義された属性のセットを含んでいます。各属性には、定義済みの属性タイプと 1 つまたは複数の値があります。

エントリは、ルートから名前付きエントリまでのパスでツリー内の各エントリから選択された属性の連結である「識別名」によって明確に識別されます。たとえば、図 22-6 に示す DIB を使用すると、c=us/o=doc は、合衆国にある doc 組織の識別名となります。X.500 ディレクトリのユーザーは、DIB にあるエントリと属性を問い合わせたり、変更したりすることができます。

図 22-6 X.500 ディレクトリ情報ベースの例

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FNS は、名前空間をグローバル X.500 名前空間の下にシームレスに接続して表示するために必要なサポートを提供し、X.500 をフェデレートします。

たとえば、FNS は、X.500 の下の doc 組織にエンタープライズネーミングシステムをリンクします。初期コンテキストから始まって、doc 組織の sales 組織単位を識別する FNS 名は次のようになります

.../c=us/o=doc/orgunit/sales

エンタープライズ内の名前は、単純にグローバルの X.500 名上に連結されます。FNS 名が初期コンテキストで名前「...」を使用して、グローバル名が後に続くことを示すことに注意してください。

FNS 名の名前解決は、次のように行われます。X.500 名がグローバル名前空間で見つかると、X.500 名前解決メカニズムを使用して解決されます。次の 3 つの結果が考えられます。