スケーラビリティーは、既存のユーザーまたは増大したユーザーベースからの追加負荷にシステムが対応できるように、システムに容量を追加する能力です。通常、スケーラビリティーは追加リソースを必要としますが、配備アーキテクチャーの設計変更や、追加リソースの追加に要する時間によるサービスの喪失は考慮の対象となりません。
可用性と同様に、スケーラビリティーはシステム全体よりも、システムが提供する各サービスで重要視されます。ただし、他のサービスが依存する Directory Server のようなサービスのスケーラビリティーは、システム全体に影響する可能性があります。
配備の成長の予定がビジネス要件に明確に示されていない限り、スケーラビリティー要件を QoS 要件として指定する必要は必ずしもありません。ただし、ソリューションライフサイクルの配備設計フェーズでは、システムのスケーラビリティーを確保するために何らかの許容範囲を配備アーキテクチャーに必ず追加する必要があります。 これは、スケーラビリティーについての QoS 要件が指定されていない場合にも当てはまります。
スケーラビリティー要件を決定するためのシステムの成長予測には、実行できない可能性のある予測、見積もり、推測なども含まれます。スケーラブルなシステムの要件を決定する際の鍵は、次の 3 つです。
高パフォーマンス設計の戦略: パフォーマンス要件を指定する際に、時間の経過とともに増す可能性のある負荷を処理できるだけの潜在処理能力を盛り込みます。また、予算の制約の範囲内で最大の可用性を設計します。この戦略を採用することで、成長を吸収し、システムの規模を柔軟に拡張するための効果的なマイルストーンを設定できます。
段階的な配備: 段階的な配備は、リソースの追加予定を立てる上で役立ちます。システムの規模拡大について明確な目標を設定します。通常、達成期限は、スケーラビリティーの評価を行う特定の日を考慮した、負荷に基づいた要件です。
広範なパフォーマンス監視: パフォーマンスの監視は、システムへのリソースの追加時期を決定する上で役立ちます。パフォーマンス監視要件により、保守やアップグレードを担当するオペレータおよび管理者にガイドラインを示すことができます。
次の表は、スケーラビリティー要件を決定する上で考慮が必要な要因を示しています。
表 3–5 スケーラビリティー要因