Sun Java System Application Server Enterprise Edition 8.1 2005Q2 管理ガイド

Application Server のメッセージセキュリティーの理解

Application Server は、Web サービスのクライアント側コンテナとサーバー側コンテナにおいて、WS-Security 標準に対する統合化されたサポートを提供します。この機能は統合化されているため、Application Server のコンテナがアプリケーションに代わって Web サービスセキュリティーを適用します。また、そうしたセキュリティーで Web サービスアプリケーションを保護する際、アプリケーションの実装を変更する必要はありません。Application Server は、これを実現する目的で、SOAP レイヤーメッセージセキュリティープロバイダとメッセージ保護ポリシーを、コンテナおよびコンテナ内に配備されたアプリケーションにバインドする機能を提供しています。

メッセージセキュリティーの責任の割り当て

Application Server でメッセージセキュリティー設定の主要責任者として期待されるのは、「システム管理者」ロールと「アプリケーション配備担当者」ロールです。場合によっては、「アプリケーション開発者」もその責任の一端を担うことがありますが、通常は、システム管理者またはアプリケーション配備者のいずれかのロールが既存アプリケーションをセキュリティー保護し、開発者が関与することも、実装が変更されることもありません。次の各節では、各種ロールの責任を定義します。

システム管理者

システム管理者は次の責任を負います。

システム管理者は、管理コンソールを使用してサーバーセキュリティーの設定を管理し、コマンド行ツールを使用して証明書データベースを管理します。Platform Edition の証明書と非公開鍵は、キーストア内に格納され、keytool を使って管理されます。Standard Edition と Enterprise Edition の証明書と非公開鍵は、NSS データベース内に格納され、certutil を使って管理されます。このマニュアルは主にシステム管理者を対象にしています。メッセージセキュリティータスクの概要については、「メッセージセキュリティーのための Application Server の設定」を参照してください。

アプリケーション配備担当者

アプリケーション配備担当者は次の責任を負います。

これらのセキュリティータスクについては、『Developers’ Guide』の「Securing Applications」の章で説明されています。この章へのリンクについては、「詳細情報」を参照してください。

アプリケーション開発者

アプリケーション開発者はメッセージセキュリティーを有効にできますが、そのようにする責任はありません。メッセージセキュリティーの設定をシステム管理者が行う場合、すべての Web サービスがセキュリティー保護されます。コンテナにバインドされているプロバイダまたは保護ポリシーと異なるものをアプリケーションにバインドする必要がある場合、アプリケーション配備担当者がメッセージセキュリティーの設定を行います。

アプリケーション開発者またはプログラマは次の責任を負います。

セキュリティートークンとセキュリティーメカニズムについて

WS-Security 仕様は、セキュリティートークンを使って SOAP Web サービスメッセージを認証および暗号化するための拡張可能なメカニズムを提供します。Application Server とともにインストールされる SOAP レイヤーメッセージセキュリティープロバイダを使えば、ユーザー名 / パスワードセキュリティートークンと X.509 証明書セキュリティートークンによる SOAP Web サービスメッセージの認証と暗号化を行えます。Application Server の今後のリリースでは、SAML アサーションなどのほかのセキュリティートークンを採用したプロバイダも追加される予定です。

ユーザー名トークンについて

Application Server は、SOAP メッセージ内で「ユーザー名トークン」を使ってメッセージ「送信者」の認証 ID を確立します。パスワードが埋め込まれたユーザー名トークンを含むメッセージの受信者は、そのメッセージの送信者がそのトークンによって識別されるユーザーとして振る舞うことを許可されているかどうかを検証するために、その送信者がユーザーの秘密情報 (パスワード) を知っているかどうかを確認します。

ユーザー名トークンを使用する場合、有効なユーザーデータベースを Application Server 上に設定する必要があります。このトピックの詳細については、「レルムを編集する」を参照してください。

デジタル署名について

Application Server は、XML デジタル署名を使ってメッセージの「コンテンツ」に認証 ID をバインドします。クライアントはデジタル署名を使用して、呼び出し元 ID を確立します。この方法は、トランスポートレイヤーセキュリティーが使用されている場合に、基本認証または SSL クライアント証明書認証が同じ目的で使用される方法に類似しています。デジタル署名は、メッセージコンテンツのソースを認証するためにメッセージ受信者によって検証されます (このソースはメッセージ送信者と異なる可能性がある。)

デジタル署名を使用する場合、有効なキーストアおよびトラストストアファイルを Application Server 上に設定する必要があります。このトピックの詳細については、「証明書ファイルについて」を参照してください。

暗号化について

暗号化の目的は、対象読者だけが理解できるようにデータを変更することです。これは、元のコンテンツを暗号化された要素に置き換えることにより行われます。公開鍵暗号方式に関して言えば、暗号化はメッセージを読み取ることができる関係者の ID を確立するために使用されます。

暗号化を使用する場合は、暗号化をサポートする JCE プロバイダがインストールされている必要があります。このトピックの詳細については、「JCE プロバイダを設定する」を参照してください。

メッセージ保護ポリシーについて

メッセージ保護ポリシーは、要求メッセージ処理と応答メッセージ処理に対して定義され、ソース認証または受信者認証に関する要件として表現されます。ソース認証ポリシーは、メッセージを送信したエンティティーまたはメッセージのコンテンツを定義したエンティティーの ID がメッセージ内で確立され、その ID をメッセージ受信者が認証できる、という要件を表します。受信者認証ポリシーは、メッセージを受信可能なエンティティーの ID をメッセージ送信者が確立できるようにメッセージが送信される、という要件を表します。プロバイダは、特定のメッセージセキュリティーメカニズムを適用することで、SOAP Web サービスメッセージにおけるメッセージ保護ポリシーを実現します。

要求と応答に対するメッセージ保護ポリシーが定義されるのは、特定のプロバイダがコンテナ内に設定される時です。また、アプリケーションまたはアプリケーションクライアントの Sun 固有の配備記述子内で、アプリケーション固有のメッセージ保護ポリシー (Web サービスのポートまたは操作の粒度でのポリシー) を設定することも可能です。いずれにせよ、メッセージ保護ポリシーを定義する場合、クライアントの要求と応答に対するメッセージ保護ポリシーは、サーバーのそれと一致する (等しい) 必要があります。アプリケーション固有のメッセージ保護ポリシーの定義方法の詳細については、『Developers’ Guide』の「Securing Applications」の章を参照してください。

メッセージセキュリティー用語の解説

次に、このマニュアルで使用する用語について説明します。これらの概念については、「メッセージセキュリティーのための Application Server の設定」でも説明しています。