この章では、Sun JavaTM System Communications Services 6 2005Q4 の概要、Communications Services の配備に関する業務上の根拠、および配備プロセスそのものについて説明します。
この章には、次の節があります。
Sun Java System Communications Services 6 2005Q4 は、安全で、費用効率の高い通信とコラボレーションを提供します。Communications Services は、他の通信およびコラボレーションソリューションに代わる、安全で、スケーラブルな、総所有コスト (TCO) を削減するソリューションを提供し、顧客が懸念するコスト、機能、および従来の通信インフラストラクチャーのセキュリティーなどの問題解決に取り組みます。
Communications Services は、企業と ISP 双方の通信およびコラボレーションのニーズに対応するために必要な電子メール、カレンダ、およびインスタントメッセージングソリューションを提供します。Communications Services の製品とサービスは、一般的なビジネス要件に対する強力な対応策を提供します。あらゆる組織にとって、通信は不可欠です。そして多くの場合、大規模な範囲の多様で地理的に分散しているユーザーコミュニティーに対して通信サービスを提供する必要があります。従来の通信ソリューションはコストがかかり、今日のスケーラビリティーとセキュリティー要件に対応するのに十分ではありません。Communications Services によって、組織は総所有コストの予算内でソリューションを配備することが可能になります。
また、Communications Services は、多様な顧客が必要とする独自のサービスとフル装備のコラボレーション機能を提供します。最後に、Communications Services の配備は、企業のファイアウォールの外側に通信を拡張する際や、複数のデバイスを使用するモバイルユーザーに対して必要とされるようになった高いセキュリティーを提供します。
Communications Services のコアソリューションは、次のコンポーネント製品から構成されています。
Sun Java System Messaging Server 6 (従来の SunTM ONE Messaging Server)
Sun Java System Calendar Server 6 (従来の SunTM ONE Calendar Server)
Sun Java System Instant Messaging 7 (従来の SunTM ONE Instant Messaging)
Communications Services ソリューションは次の追加機能によって拡張されます。
Sun JavaTM System Communications Express 6
Sun ONETM Synchronization 1.1
Sun JavaTM System Connector for Microsoft Outlook 7
全体として、Communications Services は、何千ものユーザーを抱える企業向け配備および数十万ものユーザーを抱える ISP 配備ための、標準ベースの統合された通信およびコラボレーション製品群を提供します。Communications Services は、あらゆる組織の多様な通信ニーズに対応する堅固で柔軟なプラットフォームを提供します。Communications Services は、遠隔地オフイス、分散ワークグループ、グローバルな企業拠点を接続するための最適なソリューションです。
Sun Java System Messaging Server 6 は、高性能かつ高い安全性を備えたメッセージングプラットフォームです。数千人から数百万人規模のユーザーのスケーリングに対応する Messaging Server は、電子メールサーバーを統合し、通信インフラストラクチャーの総所有コストを削減しようとする企業に適しています。Messaging Server は、ユーザー認証、セッションの暗号化、スパムとウィルスの防止に役立つ適切なコンテンツのフィルタリングを通し通信の統合を実現する幅広いセキュリティー機能を提供します。
Messaging Server によって、組織は社員、パートナー、および顧客からなるコミュニティー全体に対して安全で信頼性の高いメッセージングサービスを提供できます。
Messaging Server は現在、次の 2 つのクライアント向けユーザーインタフェース (UI) をサポートしています。
Messenger Express
Communications Express
今後、Messenger Express ユーザーインタフェースに新機能が追加されることはありません。Messaging Server は非推奨となり、代わって Communications Express が推奨のユーザーインタフェースとなりました。Sun Microsystems, Inc. は後日、Messenger Express の生産中止スケジュールを発表する予定です。
Messaging Server の概念やその他の配備に関する詳細については、パート II「Messaging Server の配備」を参照してください。
Sun Java System Calendar Server 6 は、ユーザーによるアポイントメント、予定、作業、リソースの管理、調整を可能にして、円滑なチームコラボレーションを可能にします。Calendar Server は、直観的な Web ベースのインタフェースによって、エンドユーザーが任意の時間、任意の場所で任意の Web ブラウザから、非公開、公開、またはグループカレンダにアクセスできるようにします。配備は、Messaging Server および Instant Messaging とともに Calendar Server を使用して、包括的な通信およびコラボレーション環境をユーザーに提供します。
Calendar Server は現在、次の 2 つのクライアント向けユーザーインタフェース (UI) をサポートしています。
Calendar Server は非推奨となり、代わって新しい Communications Express が推奨のユーザーインタフェースとなりました。今後、Calendar Server ユーザーインタフェースに新機能が追加されることはありません。Sun Microsystems, Inc. は後日、Calendar Server の生産中止スケジュールを発表する予定です。
Calendar Server の概念やその他の配備に関する詳細については、パート III「Calendar Server の配備」を参照してください。
Sun Java System Instant Messaging 7 は、安全で、リアルタイムの通信とコラボレーションを可能にします。Instant Messaging は、参加の確認をチャット、会議、アラート、ニュース、ポーリング、ファイル転送などのインスタントメッセージング機能と組み合わせて、機能の豊富なコラボレーション環境を形成します。これらの機能は、1 対 1 だけでなくグループによる共同作業にも対応し、短期間の通信のほか、会議室やニュースチャネルなどの持続的な場を利用することができます。Instant Messaging を Calendar Server、Messaging Server と組み合わせて使用すれば、包括的な通信およびコラボレーション環境をユーザーに対して提供できます。
Instant Messaging は、複数の認証メカニズムとセキュリティー保護された SSL 接続によって通信の統合を可能にします。Sun JavaTM System Portal Server 6 と Sun JavaTM System Access Manager 6 との統合により、セキュリティー機能、サービスベースのプロビジョニングアクセスポリシー、ユーザー管理、セキュリティー保護されたリモートアクセスが強化されます。さらに、Instant Messaging は XMPP (Extensible Messaging and Presence Protocol) をサポートします。XMPP を使用すると、ユーザーは、公衆ネットワークからの接続を集約するサードパーティー製の一部のクライアントが使用できるようになります。1 つのクライアント内に、AIM、Yahoo、MSN、Sun、およびその他の XMPP ベースのサーバーからの接続を収容できます。
Instant Messaging の概念や配備に関する詳細については、パート IV「Instant Messaging の配備」を参照してください。
Sun Java System Communications Express 6 は、通信およびコラボレーション用の Web ベースの統合クライアントです。Communications Express は Messaging Server と Calendar Server の共通ソフトウェアであり、カレンダ情報、メール、およびアドレス帳に対する Web インタフェースをエンドユーザーに対して提供します。
Communications Express の概念や配備に関する詳細については、パート V「Communications Express の配備」を参照してください。
Sun ONE Synchronization 1.1 は、Windows パーソナルコンピュータ上で実行されるソフトウェア製品で、Calendar Server の予定および作業と、モバイルデバイスや Microsoft Outlook などの PIM (Personal Information Manager) との同期を可能にします。
詳細については、次の Web サイトにある Sun ONE Synchronization のマニュアルを参照してください。
http://docs.sun.com/db/coll/S1_Sync_11
Sun Java System Connector for Microsoft Outlook 7 は、Outlook を Messaging Server と Calendar Server のデスクトップクライアントとして使用できるようにします。
Connector for Microsoft Outlook は、エンドユーザーのデスクトップにインストールする Outlook のプラグインです。Connector for Microsoft Outlook は、Messaging Server にフォルダの階層と電子メールメッセージを照会します。次に、Connector for Microsoft Outlook は、この情報を Outlook で表示できる MAPI (Messaging API) プロパティーに変換します。同様に、Connector for Microsoft Outlook は、Calendar Server に予定と作業を照会し、それらを MAPI プロパティーに変換します。このモデルによって、Connector for Microsoft Outlook は、Messaging Server のメールと Calendar Server のカレンダ情報の 2 つの別個の情報源からエンドユーザーの Outlook 表示を作成します。
同様に、Connector for Microsoft Outlook では、WABP (Web Address Book Protocol) を使用して Address Book Server に連絡先を照会し、それらを MAPI プロパティーに変換します。このモデルによって、Connector for Microsoft Outlook は、Messaging Server のメール、Calendar Server のカレンダ情報、Address Book Server の連絡先という、3 つの別個の情報源からエンドユーザーの Outlook 表示を作成します。
詳細については、次の Web サイトにある Connector for Microsoft Outlook のマニュアルを参照してください。
http://docs.sun.com/app/docs/coll/1312.1
Communications Services は、インフラストラクチャーサービスを提供するほかの Sun Java System コンポーネント製品との依存関係があります。これらのコンポーネント製品には、Sun JavaTM System Directory Server と、オプションで Sun Java System Access Manager が含まれます。さらに、Communication Services は、HTML コンテンツを提供し、HTML 接続を提供する Web サーバーに依存します。この機能を実行するために、Sun JavaTM System Web Server (従来の SunTM ONE Web Server) または Sun JavaTM System Application Server を使用できます。
また、Communications Services は DNS 機能にも依存します。Communications Services 製品をインストールするには、DNS サーバーが機能している必要があります。
製品の依存関係の詳細については、第 3 章「製品の要件と考慮事項について」を参照してください。
組織は、強力な機能を備えると同時に、コストを削減し管理を簡素化するためのサービスの配備が必要です。サービスのアーキテクチャーには、ユーザーが日常業務の遂行に不可欠な情報に、複数の方法でのアクセスを可能にするためのセキュリティーとスケーラビリティーの要件を追加する必要があります。Communications Services では、企業の総所有コストの予算内でスケーラブルなメッセージング、カレンダ、インスタントメッセージングを提供することによりこれらのニーズに対応します。
Communications Services により、配備と保守が容易で、完全な機能を持つアーキテクチャーの開発が可能になります。最も重要なことは、Communications Services アーキテクチャーによって各サービス要素にセキュリティーが組み込まれることです。これらの要素には、ネットワークインフラストラクチャー、動作環境、および Communications Service コンポーネント製品そのものが含まれます。
Messaging Server は、優れた信頼性と生産性の向上を促進するとともに、管理と運用コストを低減します。Messaging Server は、確定したトランザクションを使用するため、メッセージはディスクに格納されるまで受信済みとして認識されません。この信頼性機能は、メールメッセージの損失や破損を防止します。さらに、Message Store は、卓越したパフォーマンスとデータ統合を実現するために、追記型データストアと 2 段階インデックスを採用するカスタム設計のデータベースを中心に構築されます。
Calendar Server は、オープンで相互運用可能かつ高性能な、業界最高レベルの時間管理およびリソース管理ソリューションです。Calendar Server によって、ほかのソリューションに比べて低い総所有コストで、必要な機能を得ることができます。Calendar Server のアーキテクチャーは、柔軟で拡張可能なので、垂直方向 (システムごとの CPU の数を増大させる) と水平方向 (ネットワークにサーバーを追加する) の両方向で拡張性があります。
Instant Messaging ソフトウェアは、プロジェクトのライフサイクルを短縮し、新しいサービスを手ごろな価格で配備できるように Java Enterprise System と緊密に統合されています。さらに、Instant Messaging は、Portal Server、Access Manager、Messaging Server、および Calendar Server と連携して動作します。この統合によって、ユーザーは、安全かつスケーラブルなフル装備の通信およびコラボレーションサービスのプラットフォームを、単一のベンダーから入手できます。Instant Messaging に含まれる定評ある Java API は、複数のプラットフォームのサポート、プラットフォームの拡張性、リアルタイム通信およびコラボレーション機能のカスタマイズとともに、統合を容易にするオープンな標準を提供します。これらの機能は、既存のアプリケーションに組み込まれたり、あるいは新しいアプリケーションの基盤となります。また、XMPP による相互運用性は、パートナー企業や顧客との間でリアルタイム通信を実現したいと考えている企業に大きなメリットをもたらします。というのも、それらのパートナー企業や顧客の多くは、それぞれ独自のインスタントメッセージングシステムを構築しているからです。
Communications Express は通信およびコラボレーション用の Web ベースの統合クライアントであり、インターネットサービスプロバイダ、企業、および OEM のニーズを満たします。Communications Express はカレンダ、メール、およびアドレス帳に対する統合ユーザーインタフェースを備えており、あるクライアントモジュールから別のクライアントモジュールへとアクセス先を変更しても、ユーザー資格の再認証を行う必要がありません。メールとカレンダ間の通信は、Access Manager または Messaging Server のシングルサインオンメカニズムを使って確立されます。カレンダアプリケーションとメールアプリケーションは、同一のアドレス帳を共有します。Communications Express の「オプション」タブで指定されたユーザー設定を、すべてのモジュールが共有します。
従来、Communications Services コンポーネントは、大規模な、通信事業者クラスの配備に使用されてきました。大規模配備で要求されるのと同じ信頼性を企業で利用することができます。
次の表に、Communications Services の利点をまとめます。
表 1–1 Communications Services が組織に対して提供する利点
クラスタソフトウェアを使用すると、Messaging Server、Calendar Server、および Instant Messaging で高可用性が実現できるように設定できます。Messaging Server は、SunTM Cluster および Veritas Cluster Server の両方のソフトウェアをサポートしています。Calendar Server および Instant Messaging は、Sun Cluster ソフトウェアをサポートしています。クラスタソフトウェアの使用時に、プライマリシステムが保守目的でオフラインとなっている場合、あるいは障害によりダウンしている場合に、Messaging Server、Calendar Server、または Instant Messaging のセカンダリホストがユーザーにサービスを提供します。
Sun Cluster を使用しなくても、Messaging Server には、サーバープロセスとサービスの可用性の状態を継続的にチェックする組み込み監視機能が装備されています。Messaging Server は、必要に応じてプロセスとサービスを自動的に再起動することができます。レポートと分析を選択した場合、Messaging Server は障害と回復操作のログを記録します。
さらに、冗長コンポーネントを使用することにより、高度に可用性のある構成で Communications Services 製品を配備することができます。この種の配備により、サービスの稼働時間を高レベルにすることができます。このように可用性の高い配備を行うには、サービスアーキテクチャーの各コンポーネントで冗長性が必要になります。このようなコンポーネントには、二重のデータストアサーバー、二重のネットワークインタフェースカード、および二重のシステム記憶装置が含まれます。
このガイドでは、Communications Services の高可用性配備における Sun Cluster の利用に関する詳細は取り扱っていません。このトピックに関する詳細については、Sun Cluster、Messaging Server、Calendar Server、および Instant Messaging のマニュアルを参照してください。
Portal Server を含む Communication Services 製品のインストールでポータルページのメッセージングおよびカレンダポートレットにアクセスできます。これらのポートレットは、メッセージング情報、カレンダスケジュール、アドレス帳情報の要約を提供します。Portal Server の統合には、Portal Server、Calendar Express、Messaging Express、Communications Express クライアント間のシングルサインオン機能が含まれます。
Sun JavaTM System スキーマ 1 とスキーマ 2 の両方の環境で、Communications Express を実行できます。スキーマ 2 を使用している場合は、Access Manager 認証を使用して Communications Express にシングルサインオンすることができます。
また、Portal Server は Instant Messaging のメッセージアーカイブをサポートします。さらに、ユーザーは、Portal Server デスクトップを使用して、Messenger Express、Calendar Express、Instant Messenger クライアントを利用することができます。
Portal Server の次の 2 つのコンポーネントは、Communications Services の基本配備に対する追加機能を提供します。
Portal Server デスクトップ: ユーザーがポートレットから Communications Services アプリケーションにアクセスし、起動できるようにします。
Sun JavaTM System Portal Server Secure Remote Access:これにより、リモートエンドユーザーは、インターネットを介して特定の組織のネットワークやそのサービスに安全に接続できます。エンドユーザーは、Secure Remote Access ゲートウェイを介して、Web ベースの Portal Server デスクトップにログインすることで Secure Remote Access にアクセスします。Portal Server に設定された認証モジュールで、エンドユーザーが認証されます。エンドユーザーのセキュリティー保護されたセッションが Portal Server との間で確立されると、エンドユーザーの Portal Server デスクトップへのアクセスが有効になります。
このガイドでは、ポータル環境における Communications Services のポータル配備については取り扱っていません。詳細については Portal Server のマニュアルを参照してください。
Communications Services の配備プロセスは、次の基本フェーズから構成されています。これらのフェーズをソリューションライフサイクルといいます。
ビジネス要件の分析
技術要件の分析
論理アーキテクチャーの設計
配備アーキテクチャーの設計
配備の実行
配備の運用
配備フェーズは固定的なものではなく、配備プロセスは反復して行われます。ただし次の各節では、配備フェーズをそれぞれ個別に説明しています。
Communications Services や Java Enterprise System コンポーネントの配備プロセスの詳細については、『Sun Java Enterprise System 2005Q4 Deployment Planning Guide』を参照してください。
ビジネス分析フェーズでは、配備プロジェクトのビジネス目標を定義し、その目標を達成するために満たす必要のあるビジネス要件を記述します。ビジネス要件を記述する際には、ビジネス目標の達成に影響する可能性のある、あらゆるビジネス制約を考慮してください。ビジネス分析フェーズの成果物であるビジネス要件文書は、後続の技術要件フェーズで使用されます。ライフサイクル全体を通じて、このビジネス分析フェーズで実施した分析結果に基づいて、配備計画と最終的な配備済みシステムの成功度合いを測定します。
技術要件フェーズでは、ビジネス分析フェーズで定義されたビジネス要件とビジネス制約の内容を確認し、それらを配備アーキテクチャー設計時に使用可能な技術仕様書に変換します。技術仕様書には、パフォーマンス、可用性、セキュリティーといったサービス品質に関する基準を記述します。
技術要件フェーズで準備する情報は、次のとおりです。
ユーザーの作業と使用パターンの分析
ユーザーと計画中の配備との相互作用をモデル化したユースケース
ビジネス要件に基づいて作成されたサービス品質要件 (ユーザーの作業と使用パターンの分析結果も考慮)
成果物である使用分析文書、ユースケース文書、およびシステム要件文書が、ソリューションライフサイクルの論理設計フェーズに提供されます。また、技術要件分析フェーズではサービスレベル要件も特定します。これらの要件が、配備済みシステムの障害を解決し、システム要件を満たすべく顧客サービスを提供する上での条件となります。サービスレベル要件は、プロジェクト承認時に締結されるサービスレベル契約の基礎となります。
論理設計フェーズでは、配備に必要なサービスを特定します。サービスの特定が完了したら、それらのサービスを提供する論理的に区別されたコンポーネントを、論理アーキテクチャー内にマッピングします。論理アーキテクチャーには、コンポーネント間の依存関係も記載します。論理アーキテクチャーと技術要件フェーズで作成された技術要件仕様書によって、「配備シナリオ」が特徴づけられます。
論理アーキテクチャーには、配備シナリオ実施時に必要となる実際のハードウェアは規定されていません。しかしながら、論理アーキテクチャーは、コンポーネント間の相互関係の視覚化に役立ち、ユースケースと特定された使用パターンをさらに分析するための土台を提供し、配備設計フェーズの開始点となります。
API を使用してサービスを拡張する際や、たとえば企業のブランド設定を導入してルックアンドフィールをカスタマイズする際には、追加の作業が必要なこともあります。
ソリューションによっては、配備やカスタマイズにかなりのコストがかかり、新しいビジネスおよびプレゼンテーションサービスの開発が必要になる場合もあります。他のソリューションの場合、Portal Server デスクトップなどの既存のグラフィカルユーザーインタフェースをカスタマイズすることによって必要な機能の実現が可能な場合もあります。
製品 API の使用や製品機能のカスタマイズについては、適切なコンポーネント製品のマニュアルを参照してください。
『Sun Java System Calendar Server 6 2005Q4 Developer’s Guide』
『Sun Java System Communications Services 6 2005Q4 Event Notification Service Guide』
『Sun Java System Messenger Express 6 2005Q4 Customization Guide』
『Sun Java System Messaging Server 6 2005Q4 MTA Developer’s Reference』
設計フェーズでは、論理アーキテクチャー内に指定された論理コンポーネントを、配備アーキテクチャー内の物理コンポーネントにマッピングします。また、配備実施時に役立つ設計文書も作成します。配備設計がうまくいくと、次の成果物が得られます。
プロジェクトの承認
プロジェクトの承認は通常、このフェーズで作成された設計文書に基づいて行われます。プロジェクト承認時には配備コストが評価され、承認された場合には、配備実施契約が締結され、プロジェクトを立ち上げるためのリソースが確保されます。実際の承認がどの時点でなされるかは、設計した配備の種類と、その配備を要求している会社の社内方針によって決まります。
配備アーキテクチャー
配備アーキテクチャーとは、論理コンポーネントからネットワークのハードウェアとソフトウェアへのマッピングを表現した、高レベルの設計文書のことです。
実施仕様書
実施仕様書とは、次の文書を含む一連の設計文書のことです。
配備実施時のブループリントとして使用される詳細な設計仕様書
ディレクトリサービスを設計および実装するための手順と、システムサービスにアクセスするユーザーのプロビジョニングに必要なデータ構造について概説したユーザー管理計画書
配備の分散インストール手順について概説したインストール計画書
配備の段階的な実施方法やエンドユーザーおよび管理者へのトレーニング方法を記した追加計画書、および配備のスムーズな導入に関係するその他の計画書
実行フェーズでは、配備設計時に作成された設計文書に基づいて配備アーキテクチャーを構築し、配備を実施します。このフェーズでは、個々の配備プロジェクトの特性に応じて次の手順の一部または全部を実行します。
テスト環境内で、パイロット配備またはプロトタイプ配備、あるいはその両方を作成および配備します
機能テストを設計および実行し、システム要件への準拠度を測定します
負荷テストを設計および実行し、ピーク負荷時のパフォーマンスを測定します
本稼働用の配備を作成します (本稼働環境に段階的に導入してもよい)
配備の本稼働後も引き続き、配備の監視、テスト、および調整を行い、ビジネス目標が確実に達成されるようにする必要があります。