トポロジを開発する前に、組織内のどこにメッセージングサービスを配置するかを決定するための戦略が必要です。目標により、組織に適用可能なトポロジには次の 4 つがあります。
ほとんど、またはすべての主要システムコンポーネントとメッセージングサーバーを 1 箇所で一元管理します。
ほとんどまたはすべてのシステムコンポーネントとメッセージングサーバーを複数のサイトに分散します。
一部のシステムコンポーネントを一元管理し、その他のコンポーネントは複数箇所に分散します。
複数のドメインをホストして、より大きなカスタマベースを処理します。集中トポロジと同様に、ほとんどのシステムコンポーネントを 1 箇所で一元管理します。
集中トポロジでは、ほとんどまたはすべての、主要なシステムコンポーネントおよびメッセージングプロセスを 1 つのサイトに配置します。リモートサイトのクライアントは、Wide Area Network (WAN) により中央メッセージングサーバーと通信を行います。図 12–1 は集中トポロジを示します。
次のような場合に、集中トポロジの導入を検討します。
リモートサイトでのメッセージングがミッションクリティカルなものではない。
小さなサイズのテキストメッセージの送受信を行うユーザーが多い。
組織が 1 つの物理的な場所にあるか、または小人数のユーザーが複数の場所に分散している。
リモートサイトのサポート要員がいない。
リモートサイトと中央サイト間で、少なくとも ISDN 以上の良質な帯域幅が使用可能。
集中トポロジの導入にはいくつかのメリットがあります。一般に、集中トポロジでは、ハードウェアとサポートのコストが低くなります。単純なメッセージングアーキテクチャーと少数のレプリカ契約によるディレクトリレプリカ構造のため、集中トポロジにすると管理がより容易になります。単純なアーキテクチャーと地理的に離れたサイト間でインストールを調整する必要がないため、集中トポロジでは迅速な配備が可能です。
ただし、集中トポロジの実施にはメリットと等しくデメリットもあります。集中化アプローチは WAN に大きく依存しています。ネットワークが正しく機能しなくなると、同じサイトのユーザーもリモートサイトのユーザーも、共に電子メールの送信ができなくなります。ネットワークの帯域幅とトラフィックにより、使用率がピークに達したときはサービスの処理が遅くなる場合があります。同じドメイン内にメッセージを送信するユーザーにとって、集中トポロジは非効率的となります。たとえば、図 12–1 では、東京サイトのあるユーザーが送信したメッセージは、同じ東京サイトの別のユーザーに配信される前にまず中央サイトに送られます。
分散トポロジでは、ほとんどまたはすべてのシステムコンポーネントとメッセージングプロセスを、複数のサイト (通常は各リモートサイト) に分散配置します。図 12–2 は分散トポロジを示します。
次のような場合には、分散トポロジの導入を検討することをお勧めします。
リモートサイトでのメッセージングがミッションクリティカルなものである。
ユーザーが大量のメッセージの送受信を行う。
リモートサイトに大量のユーザーを抱えている。
リモートサイトにサポート要員がいる。
リモートサイトへの帯域幅が貧弱。
帯域幅がトポロジ戦略に大きな影響を及ぼす場合は、帯域幅のアップグレードを検討します。一般に、帯域幅は比較的安価です。Virtual Private Networking (VPN) の導入についても検討します。VPN ではファイアウォールで保護された専用線ではなく、既存の広帯域幅インターネット網を使用します。
分散トポロジの導入にはいくつかのメリットがあります。メッセージを WAN 経由で取得する必要がないため、地域サイトのユーザーはメッセージに迅速にアクセスできます。さらに、特定地域内で送信されるメッセージに起因するメッセージングトラフィックは、集中トポロジの場合よりも少なくなります。ただし、遠隔オフィスは WAN に依存します。したがって、大量のメッセージトラフィックが遠隔オフィスで生成される場合、WAN をアップグレードする必要が出てきます。
分散トポロジを導入することのデメリットは、多くの場所で多くのハードウェアを保守しなければならないため、一般にハードウェアとサポートのコストが高くなることです。分散トポロジは複雑なため、サポートのコストも高くなります。たとえば、分散トポロジにおけるフェイルオーバーは、集中トポロジの場合よりも難しくなります。さらに、複数のサーバーを複数のサイトに分散するため、Messaging Server の初期配備に時間がかかります。
Messaging Server は LDAP ディレクトリにアクセスするため、メール配信処理においては、LDAP サーバーへの接続が不可欠となります。リモートの LDAP レプリカを使用しない場合、中央の LDAP がダウンすると、メッセージングサービスが使用できなくなります。
ハイブリッドトポロジでは、集中トポロジと分散トポロジを組み合わせて、組織のニーズを満たします。図 12–3 はハイブリッドトポロジを示します。
ハイブリッドトポロジからメリットを得られる組織として、大規模なユーザーベースをサポートできるサイトを数多く持つ組織があげられます。大規模なユーザーベースをサポートするサイトは、メッセージングサーバーを独自に保有できます。これらの大規模なサイトには、その近くに小規模な遠隔オフィスを持つ場合もあります。ただし、これらの遠隔オフィスには固有のメッセージングサーバーは必要ありません。代わりに最寄りの主要オフィスが、遠隔オフィスのためのサービスの中央ロケーションとして機能します。
サービスプロバイダトポロジは、本質的には大規模な集中トポロジです。通常、サービスプロバイダは複数のドメインをホストしており、企業よりも大規模なカスタマベースを抱えています。システムは集中化されており、ピーク時でも複数のユーザーをサポートする能力があります。図 12–4 はサービスプロバイダトポロジを示します。