Java ES コンポーネントの中には、ほかのコンポーネントをまずインストールして設定してからでないと、インストールと設定ができないものがあります。依存性が発生する理由はいくつかあります。
一部のコンポーネントは、ほかの特定のコンポーネントがインストールおよび設定されていないと正しく機能しません。たとえば、Communications Express インタフェースには、メッセージングサービスまたはカレンダサービス、あるいはその両方によって提供されるデータが必要です。Communications Express の設定手順では、すでに動作しているメッセージングサービスやカレンダサービスと Communications Express が相互動作できるようにするために、URL の入力を要求されます。この依存性のため、Communications Express をインストールして設定する前に、Messaging Server または Calendar Server、あるいはその両方をインストールして設定する必要があります。
多くのコンポーネントでは、認証と承認のために LDAP ディレクトリが必要です。これらのコンポーネントのインスタンスをインストールして設定する手順では、LDAP ディレクトリサービスの URL の入力を要求されます。この依存性のため、LDAP ディレクトリサービスを使用するコンポーネントよりも先に、Directory Server (またはそれ以外のアイデンティティーリポジトリ) をインストールする必要があります。
一部のコンポーネントは、既存のコンポーネントの設定を変更します。たとえば、Access Manager をインストールして設定すると、LDAP ディレクトリスキーマが変更されます。ソリューションで Access Manager を使用する場合、Access Manager のインストールよりも先に LDAP ディレクトリをインストールして設定することを指定する必要があります。
多くの Java ES コンポーネントは Web アプリケーションです。これらのコンポーネントは、正しく機能させるためには Web コンテナに配備する必要があります。そのようなコンポーネントをインストールして設定する前に、Web コンテナをインストールして実行しておく必要があります。Web Server、Application Server、または一部のサードパーティー製 Web コンテナを使用できますが、Web アプリケーションコンポーネントをインストールする時点で Web コンテナがそのコンピュータ上に存在している必要があります。
ソリューションで Web Server または Application Server を使用する場合、Java ES インストーラは Web コンテナと Web アプリケーションコンポーネントを同時にインストールでき、Web アプリケーションコンポーネントを Web コンテナに自動的に配備できます。
コンポーネントの中には、Sun Cluster ソフトウェアによって提供される高可用性クラスタにインストールされるものがあります。そのようなコンポーネントをインストールして設定する前に、Sun Cluster ソフトウェアをインストールして実行させておく必要があります。また、該当するコンポーネント用の Sun Cluster エージェントをインストールして設定しておく必要もあります。
これらの依存性には、ソリューションレベルのものとローカルのものがあることに注意してください。インストール計画を作成するときは、システムレベルの依存性とローカルの依存性を分けて考えます。次の例で違いを説明します。
Directory Server に対する Access Manager の依存性はシステムレベルの依存性です。Access Manager をインストールするとき、Directory Server の 1 つまたは複数のインスタンスによって提供されるディレクトリサービスの URL を指定します。Directory Server のインストールと設定が完了すると、ソリューション内のすべてのコンポーネントでディレクトリサービスを利用できるようになります。このタイプの依存性は、コンポーネントインスタンスのインストールと設定に関するソリューションレベルのシーケンスを決定します。Directory Server は Access Manager よりも先にインストールおよび設定されます。インストール計画において、ソリューションレベルの依存性は、インストールと設定のステップの全体的なシーケンスを決定します。
Web コンテナに対する Access Manager の依存性はローカル依存性です。この依存性を満たすには、Access Manager を実行するコンピュータに Web コンテナをインストールする必要があります。ただしこの Web コンテナは、ソリューション全体に対してサービスを提供するものではありません。分散ソリューションでは、Web コンテナは複数のコンピュータにインストールされるのが一般的です。各 Web コンテナは、それぞれ異なるコンポーネントをローカルでサポートします。したがって分散ソリューションでは、Web コンテナをインストールする 1 つの決まった場所は存在せず、インストールシーケンスの中で Web コンテナをインストールするポイントも特に決まっていません。
ソリューションのインストール計画を作成するために、ソリューションを記述してコンポーネント間の依存性を識別する配備アーキテクチャーを分析します。計画では、すべての依存性を満たすシーケンスでコンポーネントをインストールおよび設定する必要があります。一般に、全体的なインストールシーケンスはソリューションレベルの依存性を基にして作成します。その後、それぞれのコンピュータ上に存在する可能性があるローカルの依存性を考慮します。
コンポーネントの依存性のリストを表 3–1 に示します。これらの依存性への対処方法については、「インストール計画の作成」の個別コンポーネントの説明を参照してください。
表 3–1 Java ES コンポーネントの依存性
依存性 |
依存性の性質 |
ローカルである必要性 |
|
---|---|---|---|
Directory Server |
設定データを格納するため。ユーザーデータを格納し、検索を可能にするため |
なし |
|
J2EE Web コンテナ (次のいずれか): -Application Server -Web Server -BEA WebLogic Server -IBM WebSphere Application Server |
Access Manager はこれらの Web コンテナのいずれかに配備される必要がある |
あり |
|
Access Manager |
Access Manager サービスを提供するため |
なし |
|
J2EE Web コンテナ (次のいずれか): -Application Server -Web Server -BEA WebLogic Server -IBM WebSphere Application Server |
Access Manager SDK はこれらの Web コンテナのいずれかに配備される必要がある |
あり |
|
Directory Server |
設定ディレクトリを提供するため |
なし |
|
信頼性のある非同期メッセージングを提供するため |
あり |
||
Application Server インスタンス間の負荷分散を提供するため |
あり |
||
Application Server 間のフェイルオーバーをサポートするセッション状態を格納するため |
あり |
||
認証と承認に使われるユーザーデータを格納するため |
なし |
||
Calendar Server で使用するための LDAP ディレクトリを準備する |
なし |
||
ソリューションでシングルサインオンを使用する場合に必要 |
なし |
||
電子メール通知を提供するため |
なし |
||
LDAP スキーマを管理するため。カレンダサービスのユーザーをプロビジョニングするため |
なし |
||
-Application Server -Web Server |
Communications Express は Web コンテナに配備される必要がある |
あり |
|
アドレス帳などのユーザーデータを格納するため |
なし |
||
Communications Express 用の LDAP ディレクトリを準備するため |
なし |
||
認証および承認サービスとシングルサインオンを提供するため。ローカルの Access Manager SDK はリモートの Access Manager へのアクセスを提供する |
あり |
||
基盤のメッセージングサービスを提供するため |
なし |
||
基盤のカレンダサービスを提供するため |
なし |
||
J2EE Web コンテナ (次のいずれか): -Application Server -Web Server |
Delegated Administrator はこれらの Web コンテナのいずれかに配備される必要がある |
あり |
|
Directory Server |
Delegated Administrator で扱う LDAP データを格納するため |
なし |
|
Directory Preparation Tool |
Delegated Administrator 用の LDAP ディレクトリを準備するため |
なし |
|
Access Manager または Access Manager SDK のどちらか |
Access Manager サービスを提供するため。ローカルの Access Manager SDK はリモートの Access Manager へのアクセスを提供する |
あり |
|
Directory Server |
Directory Preparation Tool は、Java ES の通信コンポーネントで使用するディレクトリを準備する |
あり |
|
Administration Server |
Directory Proxy Server を設定するため |
なし |
|
Directory Server |
基盤の LDAP ディレクトリサービスを提供するため |
なし |
|
Administration Server |
Directory Server を設定するため |
なし |
|
High Availability Session Store |
なし | ||
Directory Server |
ユーザー、会議室、およびニュースチャネルのデータを格納するため |
なし |
|
Access Manager または Access Manager SDK (オプション) |
Access Manager サービスを提供するため。ローカルの Access Manager SDK はリモートの Access Manager へのアクセスを提供する |
あり |
|
J2EE Web コンテナ (次のいずれか): -Application Server -Web Server (Instant Messenger クライアントリソースの配信に必要) |
Instant Messenger クライアントリソースの配布とダウンロードをサポートするため |
あり |
|
Calendar Server (オプション、カレンダポップアップ機能を使用する場合) |
Calendar Server ポップアップをサポートするため |
なし |
|
Messaging Server (オプション、インスタントメッセージのオフライン配信を使用する場合) |
電子メールメッセージとしてのインスタントメッセージのオフライン配信をサポートするため |
なし |
|
Message Queue |
なし | ||
Directory Server |
設定データを格納するため。認証および承認のためのユーザーデータを格納および検索するため |
なし |
|
Administration Server |
Directory Server 設定ディレクトリに設定データを格納するため |
あり |
|
Directory Preparation Tool |
Messaging Server 用の LDAP ディレクトリを準備するため |
なし |
|
Access Manager (ソリューションでシングルサインオンを使用する場合) |
シングルサインオンの認証および承認サービスを提供するため |
なし |
|
Delegated Administrator (オプション) |
ユーザーおよびグループのデータを管理するため。ディレクトリスキーマを管理するため |
なし |
|
-Application Server -Web Server -BEA WebLogic Server -IBM WebSphere Application Server |
Portal Server はこれらの Web コンテナのいずれかに配備される必要がある |
あり |
|
Directory Server |
認証と承認に使われるユーザーデータを格納するため |
なし |
|
Access Manager または Access Manager SDK |
Access Manager サービスを提供するため。ローカルの Access Manager SDK はリモートの Access Manager へのアクセスを提供する |
あり |
|
Communications Express |
ポータルデスクトップ用のメッセージングおよびカレンダチャネルを提供するため |
なし |
|
Portal Server |
基盤のポータルサービスを提供するため |
あり |
|
Access Manager または Access Manager SDK のどちらか |
Access Manager サービスを提供するため。ローカルの Access Manager SDK はリモートの Access Manager へのアクセスを提供する |
あり |
|
Service Registry |
Application Server |
あり |
|
Sun Cluster ソフトウェア |
なし | ||
Sun Cluster |
Sun Cluster ノードにインストールされているコンポーネントを認識するため |
あり |
|
Web Server |
Web アプリケーションへのリモートアクセスを提供するため |
あり |
|
Web Server |
なし |