この章では、Application Server で使用するために Java Message Service (JMS) の負荷分散とフェイルオーバーを設定する方法について説明します。次のトピックが含まれています。
Java Message Service (JMS) API は、J2EE アプリケーションおよびコンポーネントに対して、メッセージの作成、送信、受信、および読み取りを可能にするメッセージング標準です。この API によって、緩やかに結合され、信頼性が高く、非同期の分散通信が可能となります。Sun Java System Message Queue 3 2005Q1 (MQ) は JMS を実装し、Application Server と密接に統合されているため、MQ を使用してメッセージ駆動型 Bean (MDB) などのコンポーネントを作成できます。
MQ はコネクタモジュールを使用して Application Server と統合されます。コネクタモジュールはリソースアダプタとしても知られており、J2EE Connector Architecture Specification 1.5 によって定義されています。Application Server に配備された J2EE コンポーネントは、コネクタモジュールを介して統合された JMS プロバイダを使用して、JMS メッセージをやり取りします。Application Server で JMS リソースを作成すると、バックグラウンドでコネクタリソースが作成されます。そのようにして、JMS 操作のたびにコネクタランタイムが呼び出され、バックグラウンドで MQ リソースアダプタが使用されます。
Java Message Service は、管理コンソールまたは asadmin コマンド行ユーティリティーから管理することができます。
mqfailover アプリケーション例では、JMS トピックからの着信メッセージを受け取るメッセージ駆動型 Bean を使用する MQ フェイルオーバーの例を示します。この例には、MDB とアプリケーションクライアントが含まれています。Application Server は MDB の可用性を高めます。あるブローカが停止すると、対話状態 (MDB によって受信されたメッセージ) はクラスタ内の別の使用可能なブローカインスタンスに透過的に移行します。
例は次のディレクトリにインストールされます。
install_dir/samples/ee-samples/failover/apps/mqfailover
JMS の詳細については『Sun Java System Application Server Enterprise Edition 8.1 2005Q2 Developer’s Guide』の第 14 章「Using the Java Message Service」を参照してください。コネクタ (リソースアダプタ) の詳細については、『Sun Java System Application Server Enterprise Edition 8.1 2005Q2 Developer’s Guide』の第 9 章「Developing Connectors」を参照してください。
Sun Java System Message Queue の詳細については、Sun Java System Message Queue のマニュアルを参照してください。JMS API の概要については、JMS Web ページを参照してください。
「Java Message Service」設定は、Sun Java System Application Server クラスタまたはインスタンスへのすべてのインバウンドおよびアウトバウンド接続に使用できます。次にあげるものを使用して、Java Message Service を設定できます。
管理コンソール。関連する設定で「Java Message Service」コンポーネントを開きます。詳細については、『Sun Java System Application Server Enterprise Edition 8.1 2005Q2 管理ガイド』の第 4 章「Java Message Service (JMS) リソースの設定」を参照してください。
server.jms-service.init-timeout-in-seconds = 60 server.jms-service.type = LOCAL server.jms-service.start-args = server.jms-service.default-jms-host = default_JMS_host server.jms-service.reconnect-interval-in-seconds = 60 server.jms-service.reconnect-attempts = 3 server.jms-service.reconnect-enabled = true server.jms-service.addresslist-behavior = random server.jms-service.addresslist-iterations = 3 server.jms-service.mq-scheme = mq server.jms-service.mq-service = jms
次のようなプロパティーも設定できます。
server.jms-service.property.instance-name = imqbroker server.jms-service.property.instance-name-suffix = server.jms-service.property.append-version = false
Java Message Service のすべての属性とプロパティーを一覧表示するには、asadmin get コマンドを使用します。asadmin get の詳細については、get(1)を参照してください。asadmin set の詳細については、set(1)を参照してください。
JMS 接続ファクトリの設定を使用して、Java Message Service の設定をオーバーライドできます。詳細については、『Sun Java System Application Server Enterprise Edition 8.1 2005Q2 管理ガイド』の「JMS 接続ファクトリに関する管理コンソールタスク」を参照してください。
Java Message Service の設定を変更した後には、Application Server インスタンスを再起動する必要があります。
JMS 管理の詳細については、『Sun Java System Application Server Enterprise Edition 8.1 2005Q2 管理ガイド』の第 4 章「Java Message Service (JMS) リソースの設定」を参照してください。
MQ を Application Server に統合するにはLOCAL と REMOTE の 2 通りの方法があり、管理コンソールには Java Message Service の「型」属性で表されます。
「型」属性が LOCAL (スタンドアロン Application Server インスタンスのデフォルト) の場合、Application Server はデフォルト JMS ホストとして指定された MQ ブローカを起動および停止します。LOCAL 型はスタンドアロンの Application Server インスタンスに最適です。
Application Server インスタンスと Message Queue ブローカの間に 1 対 1 の関係を作成するには、型を LOCAL に設定し、各 Application Server インスタンスに異なるデフォルト JMS ホストを指定します。 この作業は、クラスタが Application Server と MQ のどちらに定義されているかに関係なく行えます。
LOCAL 型では、「起動引数」属性を使用して MQ ブローカの起動パラメータを指定します。
「型」属性が REMOTE の場合、MQ ブローカは別個に起動する必要があります。クラスタが Application Server 内に定義されている場合は、これがデフォルトです。ブローカの起動については、『 Sun Java System Message Queue 管理ガイド』を参照してください。
この場合、Application Server は外部的に設定されたブローカまたはブローカクラスタを使用します。また、MQ ブローカの起動と停止は Application Server とは別個に行い、MQ ツールを使用してブローカまたはブローカクラスタを設定および調整する必要があります。REMOTE 型は Application Server クラスタに最適です。
REMOTE 型では、MQ ツールを使用して MQ ブローカ起動パラメータを指定する必要があります。「起動引数」属性は無視されます。
JMS ホストは MQ ブローカを表します。Java Message Service には JMS ホストリスト (AddressList とも呼ばれる) が含まれており、このリストには Application Server が使用するすべての JMS ホストが含まれます。
JMS ホストリストには指定された MQ ブローカのホストとポートが取り込まれ、JMS ホスト設定が変更になるたびに更新されます。JMS リソースを作成するかまたは MDB を配備すると、JMS リソースや MDB は JMS ホストリストを継承します。
Sun Java System Message Queue ソフトウェアでは、AddressList プロパティーは imqAddressList と呼ばれています。
JMS ホストリスト内のホストの 1 つが、 Default_JMS_host という名前のデフォルト JMS ホストに指定されます。Application Server インスタンスは、Java Message Service の型が LOCAL に設定されている場合に、デフォルト JMS ホストを起動します。
Sun Java System Message Queue ソフトウェア内にマルチブローカクラスタを作成してある場合は、デフォルト JMS ホストを削除してから、その Message Queue クラスタのブローカを JMS ホストとして追加します。この場合、デフォルト JMS ホストが JMS ホストリスト内の最初のホストになります。
Application Server が Message Queue クラスタを使用する場合には、デフォルト JMS ホスト上で Message Queue 固有のコマンドが実行されます。たとえば、3 つのブローカを持つ Message Queue クラスタ用に物理送信先を作成する場合、物理送信先を作成するコマンドはデフォルトの JMS ホスト上で実行されますが、クラスタ内の 3 つのブローカすべてがその物理送信先を使用します。
管理コンソールを使用します。関係する設定の「Java Message Service」コンポーネントを開き、「JMS ホスト」コンポーネントを選択してから、「新規」をクリックします。詳細については、『Sun Java System Application Server Enterprise Edition 8.1 2005Q2 管理ガイド』の「JMS ホストを作成する」を参照してください。
asadmin create-jms-host コマンドを使用します。詳細については、create-jms-host(1)を参照してください。
JMS ホスト設定が変更されるたびに、JMS ホストリストは更新されます。
Application Server は JMS 接続プールとフェイルオーバーをサポートします。Sun Java System Application Server は JMS 接続を自動的にプールします。「アドレスリストの動作」属性が random (デフォルト) である場合、Application Server は主ブローカを JMS ホストリストからランダムに選択します。フェイルオーバーが発生すると、MQ は負荷を別のブローカに透過的に転送し、JMS セマンティクスを保持します。
接続が失われたときに Application Server が主ブローカへの再接続を試行するかどうかを指定するには、「再接続」チェックボックスを選択します。再接続を有効に設定した状態で、主ブローカが停止すると、Application Server は JMS ホストリストにある別のブローカへの再接続を試みます。
「再接続」を有効にする場合には、以下の属性も指定します。
アドレスリストの動作: 接続を、JMS ホストリスト内のアドレスの順序 (priority) とランダムな順序 (random) のどちらで行うかを指定します。Priority に設定すると、Java Message Serviceは JMS ホストリストの最初に指定された MQ ブローカに接続を試行し、そのブローカが利用できない場合にのみ別のブローカを使用します。Random に設定すると、Java Message Serviceは JMS ホストリストから MQ ブローカをランダムに選択します。多数のクライアントが同じ接続ファクトリを使用して接続を試行する場合は、すべてのクライアントが同じアドレスに接続しないようにこの設定を使用します。
アドレスリストの繰り返し: 接続の確立または再確立のために、JMS ホストリストを介して Java Message Service が試行を繰り返す回数です。値 -1 は試行回数が無制限であることを示します。
再接続試行: クライアントランタイムがリストの次のアドレスを試行する前に、JMS ホストリストに指定した各アドレスへの接続 (または再接続) を試行する回数を指定します。値 -1 は、再試行回数が無制限であることを示します。クライアントランタイムは、接続が成功するまで最初のアドレスへの接続を試みます。
再接続間隔: 再接続を試行する間隔を秒数で指定します。これは、JMS ホストリストで指定した各アドレスおよびリストのそれ以降のアドレスへの試行に適用されます。間隔が短すぎると、ブローカにリカバリする時間が与えられません。間隔が長すぎると、再接続が許容できない遅延を示す場合があります。
これらの設定は、JMS 接続ファクトリ設定を使用してオーバーライドできます。詳細については、『Sun Java System Application Server Enterprise Edition 8.1 2005Q2 管理ガイド』の「JMS 接続ファクトリに関する管理コンソールタスク」を参照してください。
Application Server は同じ ClientID を持つ MDB にメッセージをランダムに配信します。ClientID は永続的なサブスクライバには必須です。
ClientID が設定されない非永続サブスクライバに対しては、同じトピックをサブスクライブする特定の MDB のすべてのインスタンスは同等であると見なされます。MDB が Application Server の複数のインスタンスに配備される場合、MDB のうちの 1 つだけがメッセージを受信します。複数の異なる MDB が同じトピックをサブスクライブすると、MDB ごとに 1 つのインスタンスがメッセージのコピーを受信します。
同じキューを使用する複数のコンシューマをサポートするには、物理送信先の maxNumActiveConsumers プロパティーを大きい値に設定します。このプロパティーを設定すると、MQ はプロパティーに設定した数の MDB まで同じキューからメッセージを消費することを許可します。メッセージはそれらの MDB にランダムに配信されます。maxNumActiveConsumers を -1 に設定した場合は、コンシューマの数に制限はありません。
MQ Enterprise Edition は、ブローカクラスタと呼ばれる、相互に接続した複数のブローカインスタンスをサポートします。ブローカクラスタによって、クライアント接続はクラスタ内のすべてのブローカに分散されます。クラスタ化することで、水平方向のスケーラビリティーが提供され、可用性が向上します。
この節では、高可用性を備えた Sun Java System Message Queue クラスタを使用するために Application Server を設定する方法を説明します。また、Message Queue クラスタを開始および設定する方法も解説します。
Application Server および MQ 配備のトポロジの詳細については、『Sun Java System Application Server Enterprise Edition 8.1 2005Q2 Deployment Planning Guide』の「Planning Message Queue Broker Deployment」を参照してください。
Application Server クラスタを作成します (まだクラスタがない場合)。
クラスタの作成については、「クラスタを作成するには」を参照してください。
MQ ブローカクラスタを作成します。
まず、ドメイン管理サーバーによって起動されるブローカを参照するデフォルト JMS ホストを削除してから、MQ ブローカクラスタに 3 つの外部ブローカ (JMS ホスト) を作成します。
JMS ホストの作成は、管理コンソールまたは asadmin コマンド行ユーティリティーのいずれかを使用して行います。
asadmin を使用する場合は、たとえば次のコマンドを実行します。
asadmin delete-jms-host --target cluster1 default_JMS_host asadmin create-jms-host --target cluster1 --mqhost myhost1 --mqport 6769 --mquser admin --mqpassword admin broker1 asadmin create-jms-host --target cluster1 --mqhost myhost2 --mqport 6770 --mquser admin --mqpassword admin broker2 asadmin create-jms-host --target cluster1 --mqhost myhost3 --mqport 6771 --mquser admin --mqpassword admin broker3 |
管理コンソールを使用してホストを作成するには、次のようにします。
マスター MQ ブローカと他の MQ ブローカを起動します。
JMS ホストマシン上で起動する 3 つの外部ブローカに加えて、任意のマシン上で 1 つのマスターブローカを起動します。このマスターブローカは、ブローカクラスタの一部である必要はありません。次に例を示します。
/usr/bin/imqbrokerd -tty -name brokerm -port 6772 -cluster myhost1:6769,myhost2:6770,myhost2:6772,myhost3:6771 -D"imq.cluster.masterbroker=myhost2:6772" |
クラスタ内の Application Server インスタンスを起動します。
クラスタ上に JMS リソースを作成します。
JMS 物理送信先を作成します。
たとえば、次の asadmin を使用します。
asadmin create-jmsdest --desttype queue --target cluster1 MyQueue asadmin create-jmsdest --desttype queue --target cluster1 MyQueue1 |
管理コンソールを使用する場合は、次のようにします。
JMS 接続ファクトリを作成します。
たとえば、次の asadmin を使用します。
asadmin create-jms-resource --target cluster1 --restype javax.jms.QueueConnectionFactory jms/MyQcf asadmin create-jms-resource --target cluster1 --restype javax.jms.QueueConnectionFactory jms/MyQcf1 |
管理コンソールを使用する場合は、次のようにします。
JMS 送信先リソースを作成します。
たとえば、次の asadmin を使用します。
asadmin create-jms-resource --target cluster1 --restype javax.jms.Queue --property imqDestinationName=MyQueue jms/MyQueue asadmin create-jms-resource --target cluster1 --restype javax.jms.Queue --property imqDestinationName=MyQueue1 jms/MyQueue1 |
管理コンソールを使用する場合は、次のようにします。
– retrieve オプションを指定して、アプリケーションをアプリケーションクライアント用に配備します。次に例を示します。
asadmin deploy --target cluster1 --retrieve /opt/work/MQapp/mdb-simple3.ear |
アプリケーションにアクセスして、期待どおりの動作をするかテストします。
Application Server をデフォルトの JMS 設定に戻す場合は、作成した JMS ホストを削除して、デフォルトを作成し直します。次に例を示します。
asadmin delete-jms-host --target cluster1 broker1 asadmin delete-jms-host --target cluster1 broker2 asadmin delete-jms-host --target cluster1 broker3 asadmin create-jms-host --target cluster1 --mqhost myhost1 --mqport 7676 --mquser admin --mqpassword admin default_JMS_host |
管理コンソールを使用して、これに相当する操作を実行することもできます。
問題が起きた場合は、次の点を考慮してください。
Application Server ログファイルを表示します。MQ ブローカがメッセージに応答しないとログファイルに記録されている場合は、ブローカを停止してから再起動します。
必ず MQ ブローカを先に起動してから、Application Server インスタンスを起動します。
すべての MQ ブローカが停止した場合、Java Message Service のデフォルト値では、Application Server の停止または起動までに 30 分かかります。Java Message Service の値を調整して、このタイムアウトを許容できる値にしてください。次に例を示します。
asadmin set --user admin --password administrator cluster1.jms-service.reconnect-interval-in-seconds=5