「rtld-デバッガ」インタフェースは、制御プロセスが、プロシージャのリンクのテーブルエントリをスキップオーバーする機能を提供します。デバッガなどの制御プロセスが、関数に介入するようにとの要求をはじめて受けると、プロシージャのリンクテーブル処理は、制御を実行時リンカーに渡して関数定義を検索します。
次のインタフェースを使用すると、制御プロセスで実行時リンカーのプロシージャのリンクテーブル処理にステップオーバーできます。制御プロセスは、ELF ファイルで提供される外部情報に基づいて、プロシージャのリンクのテーブルエントリに遭遇する時期を判定できます。
ターゲットプロセスは、プロシージャのリンクのテーブルエントリに介入すると、rd_plt_resolution() インタフェースを呼び出します。
この関数は、現在のプロシージャのリンクテーブルエントリの解決状態と、それをスキップする方法に関する情報を返します。
rd_err_e rd_plt_resolution(rd_agent_t * rdap, paddr_t pc, lwpid_t lwpid, paddr_t plt_base, rd_plt_info_t * rpi); |
pc は、プロシージャのリンクテーブルエントリの最初の命令を表します。lwpid は lwp 識別子を提供し、plt_base はプロシージャのリンクテーブルの基本アドレスを提供します。これらの 3 つの変数は、各種のアーキテクチャがプロシージャのリンクテーブルを処理するため十分な情報を提供します。
rpi は、rtld_db.h 内の次のデータ構造に定義された、プロシージャのリンクのテーブルエントリに関する詳しい情報を提供します。
typedef enum { RD_RESOLVE_NONE, RD_RESOLVE_STEP, RD_RESOLVE_TARGET, RD_RESOLVE_TARGET_STEP } rd_skip_e; typedef struct rd_plt_info { rd_skip_e pi_skip_method; long pi_nstep; psaddr_t pi_target; psaddr_t pi_baddr; unsigned int pi_flags; } rd_plt_info_t; #define RD_FLG_PI_PLTBOUND 0x0001
この構造体の要素を次に示します。
プロシージャのリンクテーブルエントリがどのように扱われるかを示す。rd_skip_e 値内の 1 つに設定される
RD_RESOLVE_STEP または RD_RESOLVE_TARGET_STEP が返された時にステップオーバーする命令がいくつあるかを示す
RD_RESOLVE_TARGET_STEP または RD_RESOLVE_TARGET が返された時にブレークポイントを設定するアドレス指定する
RD_VERSION3 で追加された、プロシージャのリンクテーブルの宛先アドレス。pi_flags フィールドの RD_FLG_PI_PLTBOUND フラグが設定されると、この要素は解決された (結合された) 宛先アドレスを示す
RD_VERSION3 で追加されたフラグフィールド。フラグ RD_FLG_PI_PLTBOUND は、pi_baddr フィールドで取得できる宛先アドレスへ解決された (結合された) プロシージャのリンクエントリを示す
次のシナリオは rd_plt_info_t 戻り値から考えられます。
このプロシージャのリンクテーブルによる最初の呼び出しは、実行時リンカーによって解決する必要がある。この場合、rd_plt_info_t には以下が含まれる
{RD_RESOLVE_TARGET_STEP, M, <BREAK>, 0, 0} |
制御プロセスは、BREAK にブレークポイントを設定し、ターゲットプロセスを続けます。ブレークポイントに達すると、プロシージャのリンクのテーブルエントリ処理は終了します。制御プロセスは M 命令を宛先関数にステップできます。これはプロシージャのリンクテーブルエントリで最初の呼び出しであるため、結合アドレス (pi_baddr) が設定されていないことに注意してください。
このプロシージャのリンクテーブル全体で Nth 番目。rd_plt_info_t には、次のものが含まれる
{RD_RESOLVE_STEP, M, 0, <BoundAddr>, RD_FLG_PI_PLTBOUND} |
プロシージャのリンクのテーブルエントリはすでに解決されていて、制御プロセスは M 命令を宛先関数にステップできます。プロシージャのリンクテーブルエントリが結合されるアドレスは <BoundAddr> で、RD_FLG_PI_PLTBOUND ビットが flags フィールドに設定されています。