再配置エントリには、次の図に示す命令およびデータフィールドの変更方法が記述されます。ビット番号はボックスの下隅に表示されます。
SPARC プラットフォームの場合、再配置エントリはバイト (byte8)、ハーフワード (half16)、またはワード (word、その他) に適用されます。
64 ビット SPARC では、再配置は拡張ワード (xword64) にも適用されます。
IA の場合、再配置エントリはワード (word32) に適用されます。
word32 は、任意バイト整列が存在する 4 バイトを占める 32 ビットフィールドを指定します。これらの値は、IA アーキテクチャにおける他のワード値と同じバイト順序を使用します。
いずれの場合でも r_offset 値は、影響が与えられる領域の先頭バイトのオフセットまたは仮想アドレスを指定します。再配置タイプは、変更されるビットと、これらのビットの値の計算方法を指定します。
以下の再配置型の計算では、操作により、再配置可能ファイルが実行可能ファイルまたは共有オブジェクトファイルに変換されることが仮定されています。概念上、リンカーは 1 つまたは複数の再配置可能ファイルを併合して出力します。リンカーは、まず入力ファイルの結合/配置方法を決めます。次にシンボル値を更新します。最後に再配置を行います。実行可能オブジェクトファイルと共有オブジェクトファイルに適用される再配置は類似しており、同じ結果を実現します。このセクションの表では、以下の表記が使用されています。
再配置可能フィールドの値を計算するために使用される加数。
実行時に共有オブジェクトがメモリーに読み込まれるベースアドレス。一般に共有オブジェクトファイルは 0 ベース仮想アドレスで作成されますが、実行アドレスは異なります。詳細は、「プログラムヘッダー」を参照してください。
実行時に再配置エントリのシンボルのアドレスが存在する大域オフセットテーブルへのオフセット。詳細は、「大域オフセットテーブル (プロセッサ固有)」を参照してください。
大域オフセットテーブルのアドレス。詳細は、「大域オフセットテーブル (プロセッサ固有)」を参照してください。
シンボルに対するプロシージャのリンクテーブルエントリのセクションオフセットまたはアドレス。詳細は、「プロシージャのリンクテーブル (プロセッサ固有)」を参照してください。
再配置される領域のセクションオフセットまたはアドレス (r_offset を使用して計算)。
インデックスが再配置エントリ内に存在するシンボルの値。
表 7-28 に示されているフィールド名は、再配置型がオーバーフローを検査するかどうかを通知します。計算される再配置値は意図したフィールドより大きい場合があり、再配置型によっては値の適合を検証 (V) したり結果を切り捨てたり (T) することがあります。たとえば、V-simm13 は、計算された値が simm13 フィールドの外部に 0 以外の有意ビットを持つことがないことを意味します。
表 7-27 SPARC: ELF 再配置型
名前 |
値 |
フィールド |
計算 |
---|---|---|---|
R_SPARC_NONE |
0 |
なし |
なし |
R_SPARC_8 |
1 |
V-byte8 |
S + A |
R_SPARC_16 |
2 |
V-half16 |
S + A |
R_SPARC_32 |
3 |
V-word32 |
S + A |
R_SPARC_DISP8 |
4 |
V-byte8 |
S + A - P |
R_SPARC_DISP16 |
5 |
V-half16 |
S + A - P |
R_SPARC_DISP32 |
6 |
V-disp32 |
S + A - P |
R_SPARC_WDISP30 |
7 |
V-disp30 |
(S + A - P)>> 2 |
R_SPARC_WDISP22 |
8 |
V-disp22 |
(S + A - P)>> 2 |
R_SPARC_HI22 |
9 |
T-imm22 |
(S + A)>> 10 |
R_SPARC_22 |
10 |
V-imm22 |
S + A |
R_SPARC_13 |
11 |
V-simm13 |
S + A |
R_SPARC_LO10 |
12 |
T-simm13 |
(S + A) & 0x3ff |
R_SPARC_GOT10 |
13 |
T-simm13 |
G & 0x3ff |
R_SPARC_GOT13 |
14 |
V-simm13 |
G |
R_SPARC_GOT22 |
15 |
T-simm22 |
G>> 10 |
R_SPARC_PC10 |
16 |
T-simm13 |
(S + A - P) & 0x3ff |
R_SPARC_PC22 |
17 |
V-disp22 |
(S + A - P)>> 10 |
R_SPARC_WPLT30 |
18 |
V-disp30 |
(L + A - P)>> 2 |
R_SPARC_COPY |
19 |
なし |
なし |
R_SPARC_GLOB_DAT |
20 |
V-word32 |
S + A |
R_SPARC_JMP_SLOT |
21 |
なし |
「R_SPARC_JMP_SLOT」を参照 |
R_SPARC_RELATIVE |
22 |
V-word32 |
B + A |
R_SPARC_UA32 |
23 |
V-word32 |
S + A |
R_SPARC_PLT32 |
24 |
V-word32 |
L + A |
R_SPARC_HIPLT22 |
25 |
T-imm22 |
(L + A)>> 10 |
R_SPARC_LOPLT10 |
26 |
T-simm13 |
(L + A) & 0x3ff |
R_SPARC_PCPLT32 |
27 |
V-word32 |
L + A - P |
R_SPARC_PCPLT22 |
28 |
V-disp22 |
(L + A - P)>> 10 |
R_SPARC_PCPLT10 |
29 |
V-simm13 |
(L + A - P) & 0x3ff |
R_SPARC_10 |
30 |
V-simm10 |
S + A |
R_SPARC_11 |
31 |
V-simm11 |
S + A |
R_SPARC_OLO10 |
33 |
V-simm13 |
((S + A) & 0x3ff) + O |
R_SPARC_HH22 |
34 |
V-imm22 |
(S + A)>> 42 |
R_SPARC_HM10 |
35 |
T-simm13 |
((S + A)>> 32) & 0x3ff |
R_SPARC_LM22 |
36 |
T-imm22 |
(S + A)>> 10 |
R_SPARC_PC_HH22 |
37 |
V-imm22 |
(S + A - P)>> 42 |
R_SPARC_PC_HM10 |
38 |
T-simm13 |
((S + A - P)>> 32) & 0x3ff |
R_SPARC_PC_LM22 |
39 |
T-imm22 |
(S + A - P)>> 10 |
R_SPARC_WDISP16 |
40 |
V-d2/disp14 |
(S + A - P)>> 2 |
R_SPARC_WDISP19 |
41 |
V-disp19 |
(S + A - P)>> 2 |
R_SPARC_7 |
43 |
V-imm7 |
S + A |
R_SPARC_5 |
44 |
V-imm5 |
S + A |
R_SPARC_6 |
45 |
V-imm6 |
S + A |
R_SPARC_HIX22 |
48 |
V-imm22 |
( (S + A) ^ 0xffffffffffffffff)>> 10 |
R_SPARC_LOX10 |
49 |
T-simm13 |
((S + A) & 0x3ff) | 0x1c00 |
R_SPARC_H44 |
50 |
V-imm22 |
(S + A)>> 22 |
R_SPARC_M44 |
51 |
T-imm10 |
( (S + A)>> 12) & 0x3ff |
R_SPARC_L44 |
52 |
T-imm13 |
(S + A) & 0xfff |
R_SPARC_REGISTER |
53 |
V-word32 |
S + A |
R_SPARC_UA16 |
55 |
V-half16 |
S + A |
いくつかの再配置型には、単純な計算を超えた意味が存在します。
R_SPARC_LO10 に似ていますが、シンボルの大域オフセットテーブルエントリのアドレスを参照する点が異なります。また、 R_SPARC_GOT10 は、大域オフセットテーブルの作成をリンカーに指示します。
R_SPARC_13 に似ていますが、シンボルの大域オフセットテーブルエントリのアドレスを参照する点が異なります。また、 R_SPARC_GOT13 は、大域オフセットテーブルの作成をリンカーに指示します。
R_SPARC_22 に似ていますが、シンボルの大域オフセットテーブルエントリのアドレスを参照する点が異なります。また、 R_SPARC_GOT22 は、大域オフセットテーブルの作成をリンカーに指示します。
R_SPARC_WDISP30 に似ていますが、シンボルのプロシージャリンクテーブルエントリのアドレスを参照する点が異なります。また、R_SPARC_WPLT30 は、プロシージャのリンクテーブル作成をリンカーに指示します。
リンカーにより作成され、動的実行可能ファイルによる読み取り専用テキストセグメントの保持を可能にします。この再配置型のオフセット構成要素は、書き込み可能セグメントの位置を参照します。シンボルテーブルインデックスは、現オブジェクトファイルと共有オブジェクトの両方に存在する必要があるシンボルを指定します。実行時、実行時リンカーは共有オブジェクトのシンボルに関連付けられているデータを、オフセットで指定されている位置にコピーします。詳細は、「コピー再配置」を参照してください。
R_SPARC_32 に似ていますが、大域オフセットテーブルエントリを指定されたシンボルのアドレスに設定する点が異なります。この特殊な再配置型を使うと、シンボルと大域オフセットテーブルエントリの対応付けを判定できます。
リンカーは、動的オブジェクトが遅延結合を提供できるようにするため、この再配置型を作成します。この再配置型のオフセット構成要素は、プロシージャのリンクテーブルエントリの位置を与えます。実行時リンカーは、プロシージャのリンクテーブルエントリを変更して指定シンボルアドレスに制御を渡します。
リンカーは、動的オブジェクト用にこの再配置型を作成します。この再配置型のオフセット構成要素は、相対アドレスを表す値が存在する、共有オブジェクト内の位置を与えます。実行時リンカーは共有オブジェクトが読み込まれる仮想アドレスに相対アドレスを加算することで、対応する仮想アドレスを計算します。この型に対する再配置エントリは、シンボルテーブルインデックスに対して 0 を指定しなければなりません。
R_SPARC_32 に似ていますが、整列されていないワードを参照する点が異なります。再配置されるワードは、任意整列が存在する 4 つの別個のバイトとして処理されなければなりません (アーキテクチャの要求に従って整列されるワードとしては処理されません)。
R_SPARC_LO10 に似ていますが、符号付き13 ビット即値フィールドを十分に使用するために余分なオフセットが追加される点が異なります。
R_SPARC_HI22 に似ていますが、妥当性検査ではなく切り捨てを行う点が異なります。
R_SPARC_PC22に似ていますが、妥当性検査ではなく切り捨てを行う点が異なります。
64 ビットアドレス空間の最上位 4G バイトに限定される実行可能ファイルに対して R_SPARC_LOX10 と共に使用されます。R_SPARC_HI22 に似ていますが、リンク値の 1 の補数を与えます。
R_SPARC_HIX22 と共に使用されます。R_SPARC_LO10 に似ていますが、必ずリンク値のビット 10 からビット 12 までを設定します。
再配置型 R_SPARC_H44 および R_SPARC_M44 と共に使用され、44 ビット絶対アドレス指定モデルを生成します。
レジスタシンボルの初期化に使用されます。この再配置型のオフセット構成要素には、初期化されるレジスタ番号が存在します。SHN_ABS 型のこのレジスタには、対応するレジスタシンボルが存在しなければなりません。
次の表に示す再配置型は、32 ビット SPARC 用に定義された再配置型を拡張または変更します。詳細は、「SPARC: 再配置型」を参照してください。
表 7-28 64-bit SPARC: ELF 再配置型
名前 |
値 |
フィールド |
計算 |
---|---|---|---|
R_SPARC_HI22 |
9 |
V-imm22 |
(S + A)>> 10 |
R_SPARC_GLOB_DAT |
20 |
V-xword64 |
S + A |
R_SPARC_RELATIVE |
22 |
V-xword64 |
B + A |
R_SPARC_64 |
32 |
V-xword64 |
S + A |
R_SPARC_DISP64 |
46 |
V-xword64 |
S + A - P |
R_SPARC_PLT64 |
47 |
V-xword64 |
L + A |
R_SPARC_REGISTER |
53 |
V-xword64 |
S + A |
R_SPARC_UA64 |
54 |
V-xword64 |
S + A |
次の表に、32 ビット IA 用に定義された再配置型を示します。
表 7-29 IA: ELF 再配置型
名前 |
値 |
列 |
計算 |
---|---|---|---|
R_386_NONE |
0 |
なし |
なし |
R_386_32 |
1 |
word32 |
S + A |
R_386_PC32 |
2 |
word32 |
S + A - P |
R_386_GOT32 |
3 |
word32 |
G + A |
R_386_PLT32 |
4 |
word32 |
L + A - P |
R_386_COPY |
5 |
なし |
なし |
R_386_GLOB_DAT |
6 |
word32 |
S |
R_386_JMP_SLOT |
7 |
word32 |
S |
R_386_RELATIVE |
8 |
word32 |
B + A |
R_386_GOTOFF |
9 |
word32 |
S + A - GOT |
R_386_GOTPC |
10 |
word32 |
GOT + A - P |
R_386_32PLT |
11 |
word32 |
L + A |
いくつかの再配置型には、単純な計算を超えた意味が存在します。
大域オフセットテーブルのベースからシンボルの大域オフセットテーブルエントリまでの距離を計算します。この再配置型はまた、大域オフセットテーブルを作成するようにリンカーに指示します。
シンボルのプロシージャのリンクテーブルエントリのアドレスを計算し、かつプロシージャのリンクテーブルを作成するようにリンカーに指示します。
リンカーは、この再配置型を作成して、動的実行可能ファイルが読み取り専用のテキストセグメントを保持できるようにします。この再配置型のオフセット構成要素は、書き込み可能セグメントの位置を参照します。シンボルテーブルインデックスは、現オブジェクトファイルと共有オブジェクトの両方に存在する必要があるシンボルを指定します。実行時、実行時リンカーは共有オブジェクトのシンボルに関連付けられているデータを、オフセットで指定されている位置にコピーします。詳細は、「コピー再配置」を参照してください。
大域オフセットテーブルエントリを、指定されたシンボルのアドレスに設定します。この特殊な再配置型を使うと、シンボルと大域オフセットテーブルエントリの対応付けを判定できます。
リンカーは、動的オブジェクトが遅延結合を提供できるようにするため、この再配置型を作成します。この再配置型のオフセット構成要素は、プロシージャのリンクテーブルエントリの位置を与えます。実行時リンカーは、プロシージャのリンクテーブルエントリを変更して指定シンボルアドレスに制御を渡します。
リンカーは、動的オブジェクト用にこの再配置型を作成します。この再配置型のオフセット構成要素は、相対アドレスを表す値が存在する、共有オブジェクト内の位置を与えます。実行時リンカーは共有オブジェクトが読み込まれる仮想アドレスに相対アドレスを加算することで、対応する仮想アドレスを計算します。この型に対する再配置エントリは、シンボルテーブルインデックスに対して 0 を指定しなければなりません。
シンボルの値と大域オフセットテーブルのアドレスの差を計算します。この再配置型はまた、大域オフセットテーブルを作成するようにリンカーに指示します。
R_386_PC32 に似ていますが、計算を行う際に大域オフセットテーブルのアドレスを使用する点が異なります。この再配置で参照されるシンボルは、通常 _GLOBAL_OFFSET_TABLE_ です。この再配置型はまた、大域オフセットテーブルを作成するようにリンカーに指示します。