IPv6 の管理

IPv6 プロトコルの概要

ここでは、自動設定中にインタフェースが実行する通常の手順について概要を説明します。自動設定が行われるのはマルチキャスト対応リンクだけです。たとえばシステム起動時など、マルチキャスト対応インタフェースが使用可能な状態で開始します。ノード (ホストとルーターの両方) では、そのインタフェースのリンクローカルアドレスを生成して自動設定プロセスを開始します。リンクローカルアドレスは、インタフェースの識別子を既知のリンクローカルプレフィックスに追加して作成します。

ノードは、この仮リンクローカルアドレスがリンク上の別のノードで使用されていないことを確認する必要があります。この確認が終わったら、リンクローカルアドレスをインタフェースに割り当てることができます。特に、ノードは宛先が仮アドレスになっている近傍要請メッセージを送信します。別のノードがそのアドレスを使用中の場合、そのノードはそのことを伝える内容を含む近傍要請を返信します。別のノードがそのアドレスを使用しようと試みている場合、そのノードもその宛先に近傍要請を送信します。近傍要請送信や再送の数と、連続した要請間の遅延 はリンクによって異なります。これらのパラメータは、システム管理で設定できます。

ノードにおいて、仮リンクローカルアドレスが一意でないことがわかると自動設定が打ち切られるため、手動でインタフェースを設定する必要があります。この状態からの回復を簡単にするには、管理者が代替インタフェース識別子を提供してデフォルト識別子を無効にします。これにより、新しい (一意であると考えられる) インタフェース識別子を利用して自動設定機構を実行できます。そうでなければ、リンクローカルアドレスとその他のアドレスは手動で設定します。

この仮リンクローカルアドレスが一意であると判断されると、ノードはインタフェースにそのアドレスを割り当てます。このとき、ノードは近傍ノードと IP レベルで接続されます。自動設定手順の残りは、ホストだけで実行されます。

ルーター通知の受信

自動設定の次の手順では、ルーター通知を受信するか、ルーターが存在しないことを確認します。ルーターがあれば、ホストが実行すべき自動設定の種類を指定したルーター通知が送信されます。ルーターがない場合、ステートフル自動設定が呼び出されます。

ルーターはルーター通知を定期的に送信します。ただし、連続した送信と送信の間の遅延は、自動設定を実行するホスト側の待機時間より通常は長くなります。通知を迅速に受信するため、すべてのルーターマルチキャストグループに 1 つまたは複数のルーター要請を送信します。ルーター通知には 2 つのフラグがあり、どのようなステートフル自動設定 (あれば) を実行すべきかを表します。管理アドレス設定フラグは、アドレスの取得時にホストがステートフル自動設定を使用するかどうかを表します。もう 1 つのステートフル設定フラグは、その他の情報 (アドレスを除く) の取得時にホストがステートフル自動設定を使用するかどうかを表します。

プレフィックス情報

ルーター通知にプレフィックス情報オプションがある場合、これらのオプションにはステートレスアドレス自動設定におけるサイトローカルアドレスとグローバルアドレスの生成に必要な情報を保存します。ルーター通知のステートレスアドレス自動設定フィールドとステートフルアドレス自動設定フィールドは個別に処理されます。ホストでは、ステートフルアドレス自動設定とステートレスアドレス自動設定を同時に使用できます。プレフィックス情報オプションフィールドの1 つである自動アドレス設定フラグは、オプションがステートレス自動設定にも適用されるかどうかを表します。適用される場合、補助オプションフィールドにサブネットプレフィッスと寿命値が保存されます。これらの値は、プレフィックスから作成されたアドレスがどれだけの時間優先権を持ち有効であるかを表します。

ルーターではルーター通知が定期的に生成されるので、ホストでは常に新しい通知を受信します。ホストは各通知に組み込まれた情報を上記の手順で処理し、情報を追加します。また、ホストは前の通知で受け取った情報を更新します。

アドレスの一意性

安全性確保のため、すべてのアドレスについて、インタフェースに対する割り当て前に一意かどうかが確認されます。ただし、ステートレス自動設定で作成したアドレスの場合は状況が異なります。アドレスの一意性は、インタフェース識別子から生成されるアドレスの一部で主に決まります。したがって、ノードにおいてリンクローカルアドレスの一意性が確認されると、他のアドレスの個別の確認は不要になります。これらのアドレスが、同じインタフェース識別子から生成されているためです。ただし、手動で得られるアドレスはすべて、個別に一意であることを確認する必要があります。ステートフルアドレスの自動設定で得られるアドレスについても同じです。一部のサイトでは、重複アドレスの検出を実行するためのオーバーヘッドが大きく、それを実行することで得られる利益が帳消しになる場合があります。そのようなサイトでは、インタフェース別設定フラグの設定で重複アドレスの検出の使用を無効にできます。

自動設定処理を短時間で終了するために、ルーター通知の待機とリンクローカルアドレスの生成 (およびその一意性の確認) をホストで並列して実行できます。ルーターでは、ルーター要請に対する応答が数秒遅れる可能性があります。そのため、上記 2 つの手順を 1 つずつ実行すると、自動設定を完了するために必要な合計時間が大幅に長くなる可能性があります。