NIS のバインドに関する問題を示す症状が、1 台か 2 台のクライアントだけで発生している場合には、問題は多くの場合クライアントにあります。多くの NIS クライアントが、プロパティを正確にバインドできない場合には、問題は多くの場合 1 台以上の NIS サーバーにあります。複数のクライアントに影響する NIS の問題を参照してください。
1 台のクライアントに問題があっても、同じサブネット上の他のクライアントは正常に機能しています。問題のあるクライアント上で、ls -l を /usr のようなディレクトリで実行します。このディレクトリには、多くのユーザーが所有するファイルが含まれ、クライアント /etc/passwd ファイルにはないものも含まれます。実行結果として、ローカルの /etc/passwd に含まれるファイルの所有者が名前でなく番号で表示された場合は、NIS サービスがクライアント上で機能してないことを示しています。
通常これらの症状は、クライアント ypbind プロセスが実行されていないことを示します。ps -e を実行して、ypbind をチェックします。ypbind が見つからなければ、スーパーユーザーとしてログインし、次のように入力して、ypbind を起動します。
client# /usr/lib/netsvc/yp/ypstart |
あるクライアントに問題があり、他のクライアントは正常に機能していますが、ypbind は問題のあるクライアント上で実行されています。クライアントのドメインの設定が間違っている可能性があります。
クライアント上で domainname コマンドを実行して、どのドメイン名が設定されているのかを調べます。
client7# domainname neverland.com
NIS のマスターサーバー上の /var/yp 内の実際のドメイン名と、出力を比較します。実際の NIS ドメインは、/var/yp ディレクトリ内のサブディレクトリとして表示されます。
Client7# ls /var/yp...
-rwxr-xr-x 1 root Makefile drwxr-xr-x 2 root binding drwx------ 2 root doc.com ... |
マシン上での domainname の実行によって得たドメイン名が、/var/yp 内のディレクトリとして示されたサーバードメイン名と同じではない場合には、マシンの /etc/defaultdomain ファイルで指定されたドメイン名が間違っています。スーパーユーザーとしてログインして、マシンの /etc/defaultdomain ファイル内のクライアントのドメイン名を修正します。これによって、マシンを起動するたびに、ドメイン名が正しいかどうかが確認されます。ここでマシンをリブートします。
ドメイン名では大文字と小文字を区別します。
ドメイン名が正しく設定されていて ypbind が実行中でもコマンドがまだハングする場合には、ypbind コマンドを実行してクライアントがサーバーにバインドされていることを確認してください。ypbind を起動したばかりのときは、ypwhich を数回実行します。通常、1 回目ではドメインがバインドされていないことが通知され、2 回目は成功します。
ドメイン名が正しく設定されていて ypbind が実行中のときに、クライアントがサーバーと通信できないというメッセージを受け取った場合には、いくつかの問題が考えられます。
バインドするサーバーのリストを含む /var/yp/binding/domainname/ypservers ファイルがクライアントにあるかどうかを確認します。ない場合には、ypinit -c を実行して、設定の順番にクライアントのバインド先のサーバーを指定します。
クライアントに /var/yp/binding/domainname/ypservers ファイルがあり、1 台か 2 台のサーバーが使用できない場合には、十分な数のサーバーがあるかどうかを調べます。ない場合には、yppinit -c を実行して、リストにサーバーを追加します。
クライアントの ypservers ファイルにリストされたサーバーのどれもが使用できない場合には、クライアントはブロードキャストモードで稼働中のサーバーを検索します。稼働中のサーバーがクライアントのサブネットにある場合には、クライアントはそれを見つけます (検索中はパフォーマンスが低下する)。クライアントのサブネットに稼動中のサーバーがない場合には、次のいくつかの方法で問題を解決できます。
セキュリティと管理上の理由から、クライアントにブロードキャストを使ってサーバーを検索させるのではなく、クライアントの ypservers ファイルでクライアントのバインド先のサーバーを指定してください。ブロードキャストは、ネットワークの速度を落とし、クライアントの速度も落とします。また、異なるクライアントに対して異なるサーバーをリストするため、サーバー負荷の均衡がとれなくなります。
クライアントの ypservers ファイルにリストされたサーバーが、/etc/hosts ファイルにエントリを持っているかどうかを確認します。持っていない場合には、NIS マップホストの入力ファイルにサーバーを追加して、NIS マップに関する作業で説明しているように、yppinit -c または ypinit -s を実行してマップを再構築します。
/etc/nsswitch.conf ファイルが設定されていて、NIS の他にマシンのローカルの hosts ファイルを参照できるかどうかを確認します。スイッチの詳細については 第 2 章「ネームサービススイッチ (概要)」を参照してください。
/etc/nsswitch.conf ファイルが設定されていて、services と rpc に対して files を参照できるかどうかを確認します。
ypwhich を同じクライアントで数回使うと、NIS サーバーが変わるので結果の表示も変わります。これは正常な状態です。NIS クライアントから NIS サーバーへのバインドは、ネットワークや NIS サーバーを使用中の場合は時間の経過に伴って変化します。ネットワークは、すべてのクライアントが受け入れ可能な応答時間を NIS サーバーから得られる点で安定した状態になります。クライアントのマシンが NIS サービスを得ているかぎりは、サービスの供給元は問題にはなりません。たとえば、NIS サーバーマシンがそれ自体の NIS サービスを、ネットワーク上の別の NIS サーバーから受けることもあります。
サーバーのバインディングが不可能な場合には ypset コマンドを使用すると、別のネットワークまたはサブネットの別のサーバーが使用可能な場合には、そのサーバーへのバインディングが一時的に可能になります。ただし、-ypset オプションを使用するためには、-ypset または -ypsetme オプションのどちらかを指定して ypbind を実行する必要があります。
セキュリティ上の理由から、-ypset と -ypsetme のオプションの使用は、管理された環境のもとでのデバッグだけに限定してください。-ypset と -ypsetme のオプションを使用すると、セキュリティが侵害される恐れがあります。これらのデーモンの実行中はサーバーのバインドをだれでも変更できるため、他のユーザーの作業に問題が生じたり重要なデータへの未承認のアクセスが認められたりするためです。これらのオプションで ypbind を起動する場合は、問題が解決したら ypbind をいったん強制終了し、これらのオプションを指定しないで再起動してください。
ypbind が、起動するたびにすぐにクラッシュする場合には、システムの他の部分で問題を調べます。次のように入力して、rpcbind デーモンが存在するかどうか確認します。
% ps -ef | grep rpcbind
rpcbind が存在しない、安定しない、あるいは動作に異常がある場合には、RPC のマニュアルを参照してください。
正常に機能しているマシンから、問題のあるクライアント上の rpcbind と通信ができる場合があります。正常に機能しているマシンから、次のように入力してください。
% rpcinfo client
問題のあるクライアント上の rpcbind に問題がない場合には、rpcinfo によって次の出力がされます。
program version netid address service owner ... 100007 2 udp 0.0.0.0.2.219 ypbind superuser 100007 1 udp 0.0.0.0.2.219 ypbind superuser 100007 1 tcp 0.0.0.0.2.220 ypbind superuser 100007 2 tcp 0.0.0.0.128.4 ypbind superuser 100007 2 ticotsord \000\000\020H ypbind superuser 100007 2 ticots \000\000\020K ypbind superuser ... |
使用中のマシンには異なる複数のアドレスがあります。それらのアドレスが表示されない場合は、ypbind によってそのサービスが登録できていません。マシンをリブートして再度 rpcinfo を実行します。表示される出力の中に ypbind プロセスがいくつかあり、 /usr/lib/netsvc/yp/ypbind を再起動しようとするたびにそれらのプロセスが変更される場合は、rpcbind デーモンが実行中であってもシステムをリブートをしてください。