Solaris ボリュームマネージャの管理

第 16 章 ホットスペア集合 (作業)

この章では、Solaris ボリュームマネージャのホットスペアとホットスペア集合の使用方法について説明します。ホットスペア集合の概念については、第 15 章「ホットスペア集合 (概要)」を参照してください。

ホットスペア集合 (作業マップ)

次の表に、Solaris ボリュームマネージャ のホットスペア集合を管理するのに必要な作業を示します。

作業 

説明 

参照先 

 ホットスペア集合を作成する

Solaris ボリュームマネージャ の GUI か metainit コマンドを使ってホットスペア集合を作成します。

ホットスペア集合を作成するには
 ホットスペア集合にスライスを追加する

Solaris ボリュームマネージャ の GUI か metahs コマンドを使ってホットスペア集合にスライスを追加します。

ホットスペア集合にホットスペアを追加するには
 ホットスペア集合とボリュームを対応付ける

Solaris ボリュームマネージャ の GUI か metaparam コマンドを使ってホットスペア集合とボリュームを対応付けます。

ホットスペア集合とボリュームを対応付けるには
 ホットスペア集合とボリュームの対応付けを変更する

Solaris ボリュームマネージャ の GUI か metaparam コマンドを使ってホットスペア集合とボリュームの対応付けを変更します。

ホットスペア集合の対応付けを変更するには
 ホットスペアとホットスペア集合の状態をチェックする

Solaris ボリュームマネージャ の GUI か、metastat または metahs -i コマンドを使って、ホットスペアやホットスペア集合の状態をチェックします。

ホットスペア集合とホットスペアの状態を確認するには
 ホットスペア集合内のホットスペアを交換する

Solaris ボリュームマネージャ の GUI か metahs コマンドを使ってホットスペア集合内のホットスペアを交換します。

ホットスペア集合内のホットスペアを置き換えるには
 ホットスペア集合からホットスペアを削除する

Solaris ボリュームマネージャ の GUI か metahs コマンドを使ってホットスペア集合からホットスペアを削除します。

ホットスペア集合からホットスペアを削除するには
 ホットスペアを有効にする

Solaris ボリュームマネージャ の GUI か metahs コマンドを使ってホットスペア集合内のホットスペアを有効にします。

ホットスペアを有効にするには

ホットスペア集合の作成

ホットスペア集合を作成するには

  1. Solaris ボリュームマネージャ要素を作成するための前提条件を確認します。

  2. 次のどちらかの方法でホットスペア集合を作成します。

    • Solaris 管理コンソール内の「拡張ディスク」から「ホットスペアプール (Hot Spare Pools) 」ノードを開き、「アクション (Action) 」、「ホットスペアプールの作成 (Create Hot Spare Pool) 」の順に選択します。 詳細は、オンラインヘルプを参照してください。

    • 次の形式の metainit コマンドを使用します。


      metainit hot-spare-pool-name ctds-for-slice
      

      ここで、ctds-for-slice には、ホットスペア集合に割り当てるホットスペアを順に指定します。詳細は、metainit(1M) のマニュアルページを参照してください。


注 -

ホットスペア集合の作成には、metahs コマンドを使用することもできます。


例 — ホットスペア集合を作成する


# metainit hsp001 c2t2d0s2 c3t2d0s2
hsp001: Hotspare pool is setup

この例では、ホットスペア集合 hsp001 にホットスペアとして 2 つのディスクを割り当てます。ホットスペア集合が設定されたことを示すメッセージが出力されます。


注意 - 注意 -

作成するホットスペアの大きさが十分であるかどうかを示すメッセージは出力されません。ホットスペアのサイズが、対応付けられているボリュームのサイズ以上でないと、ホットスペアは使用されません。


次の作業

ホットスペア集合にホットスペアを追加する手順については、ホットスペア集合にホットスペアを追加するにはを参照してください。ホットスペア集合を作成したら、それをサブミラーまたは RAID 5 ボリュームと対応付ける必要があります。詳細は、ホットスペア集合とボリュームを対応付けるにはを参照してください。

ホットスペア集合にホットスペアを追加するには

  1. Solaris ボリュームマネージャ要素を作成するための前提条件を確認します。

  2. 次のどちらかの方法で既存のホットスペア集合にホットスペアを追加します。

    • Solaris 管理コンソール内の「拡張ディスク」から「ホットスペアプール (Hot Spare Pools) 」ノードを開き、変更したいホットスペア集合を選択します。次に「アクション (Action) 」、「プロパティ (Properties) 」を選択し、「ホットスペア (Components) 」パネルを選択します。詳細は、オンラインヘルプを参照してください。

    • 次の形式の metahs コマンドを使用します。


      metahs -a hot-spare-pool-name slice-to-add
      

      指定するホットスペア集合にスライスを追加する場合は、hot-spare-pool-name-a を指定します。

      すべてのホットスペア集合にスライスを追加する場合は、hot-spare-pool-name-all を指定します。詳細は、metahs(1M) のマニュアルページを参照してください。


    注 -

    同じホットスペアを複数のホットスペア集合に追加することができます。ホットスペアをホットスペア集合に追加すると、ホットスペアは、ホットスペア集合のスライスリストの最後に追加されます。


例 — ホットスペアスライスを 1 つのホットスペア集合に追加する


# metahs -a hsp001 /dev/dsk/c3t0d0s2
hsp001: Hotspare is added

この例では、-a オプションを使ってスライス /dev/dsk/c3t0d0s2 をホットスペア集合 hsp001 に追加します。 スライスがホットスペア集合に追加されたことを示すメッセージが表示されます。

例 — ホットスペアスライスをすべてのホットスペア集合に追加する


# metahs -a -all /dev/dsk/c3t0d0s2
hsp001: Hotspare is added
hsp002: Hotspare is added
hsp003: Hotspare is added

この例では、-a-all オプションを使って、スライス /dev/dsk/c3t0d0s2 をすべてのホットスペア集合に追加します。スライスがすべてのホットスペア集合に追加されたことを示すメッセージが表示されます。

ホットスペア集合とボリュームの対応付け

ホットスペア集合とボリュームを対応付けるには

  1. Solaris ボリュームマネージャ要素を作成するための前提条件を確認します。

  2. 次のどちらかの方法でホットスペア集合と RAID 5 ボリュームまたはサブミラーを対応付けます。

    • Solaris 管理コンソール内の「拡張ディスク」から「ボリューム (Volumes) 」を開き、ボリュームを選択します。「アクション (Action) 」、「プロパティ (Properties) 」の順に選択し、「ホットスペアプール (Hot Spare Pool) 」パネルを選択して、「ボリュームに割り当て (Attach HSP) 」を選択します。 詳細は、オンラインヘルプを参照してください。

    • 次の形式の metaparam コマンドを実行します。


      metaparam -h hot-spare-pool component
      
      -h

      ホットスペア集合とボリュームを対応付けることを意味します。

      hot-spare-pool

      ホットスペア集合の名前です。

      component

      ホットスペア集合に対応付けるサブミラーまたは RAID 5 ボリュームの名前です。

      詳細は、metaparam(1M) のマニュアルページを参照してください。

例 — ホットスペア集合とサブミラーを対応付ける


# metaparam -h hsp100 d10
# metaparam -h hsp100 d11
# metastat d0
d0: Mirror
    Submirror 0: d10
      State: Okay        
    Submirror 1: d11
      State: Okay        
...
 
d10: Submirror of d0
    State: Okay        
    Hot spare pool: hsp100
...
 
 
d11: Submirror of d0
    State: Okay        
    Hot spare pool: hsp100
...

この例では、-h オプションを指定して、ホットスペア集合 hsp100 をミラー d0 のサブミラー d10 d11 に対応付けます。metastat コマンドを実行して、ホットスペア集合と 2 つのサブミラーが対応付けられていることを確認します。

例 — ホットスペア集合と RAID 5 ボリュームを対応付ける


# metaparam -h hsp001 d10
# metastat d10
d10: RAID
    State: Okay        
    Hot spare pool: hsp001
...

-h オプションを指定して、ホットスペア集合 hsp001 と RAID 5 ボリューム d10 を対応付けます。metastat コマンドを実行して、ホットスペア集合と RAID 5 ボリュームが対応付けられていることを確認します。

ホットスペア集合の対応付けを変更するには

  1. Solaris ボリュームマネージャ要素を作成するための前提条件を確認します。

  2. 次のどちらかの方法でホットスペア集合とボリュームの対応付けを変更します。

    • Solaris 管理コンソール内の「拡張ディスク」から「ボリューム (Volumes) 」ノードを開き、ボリュームを選択します。「アクション (Action) 」、「プロパティ (Properties) 」の順に選択し、「ホットスペアプール (Hot Spare Pool) 」パネルを選択します。画面の指示に従って不要なホットスペア集合を切り離してから、新しいホットスペア集合を対応付けます。詳細は、オンラインヘルプを参照してください。

    • 次の形式の metaparam コマンドを実行します。


      metaparam -h hot-spare-pool-name RAID5-volume-or-submirror-name
      
      -h

      ホットスペア集合の対応付けを変更することを意味します。

      hot-spare-pool

      新しいホットスペア集合の名前です。ホットスペア集合の対応付けを削除する場合は、特別なキーワード none を指定します。

      component

      ホットスペア集合に対応付けるサブミラーまたは RAID 5 ボリュームの名前です。

      詳細は、metaparam(1M) のマニュアルページを参照してください。

例 — ホットスペア集合の対応付けを変更する


# metastat d4
d4: RAID
    State: Okay        
    Hot spare pool: hsp001
...
# metaparam -h hsp002 d4
# metastat d4
d4: RAID
    State: Okay        
    Hot spare pool: hsp002
...

この例では、ホットスペア集合 hsp001 と RAID 5 ボリューム d4 がすでに対応付けられているものとします。 このホットスペア集合の代わりにホットスペア集合 hsp002 をボリュームに対応付けます。metastat コマンドを実行して、ホットスペア集合の対応付けが変更されていることを確認します。

例 — ホットスペア集合の対応付けを削除する


# metastat d4
d4: RAID
    State: Okay        
    Hot spare pool: hsp001
...
# metaparam -h none d4
# metastat d4
d4: RAID
    State: Okay        
    Hot spare pool:
...

この例では、ホットスペア集合 hsp001 と RAID 5 ボリューム d4 がすでに対応付けられているものとします。 ホットスペア集合の対応付けを none に変更します。これによって、このボリュームは、ホットスペア集合がまったく対応付けられていない状態になります。metastat コマンドを実行して、ホットスペア集合の対応付けが削除されていることを確認します。

ホットスペア集合の保守

ホットスペア集合とホットスペアの状態を確認するには

    次のどちらかの方法でホットスペア集合とそのホットスペアの状態を表示します。

    • Solaris 管理コンソール内の「拡張ディスク」から「ホットスペアプール (Spare Pools) 」ノードを開き、ホットスペア集合を選択します。「アクション (Action) 」、「プロパティ (Properties) 」の順に選択して詳細なステータス情報を表示します。詳細は、オンラインヘルプを参照してください。

    • 次の形式の metastat コマンドを実行します。


      metastat hot-spare-pool-name
      

注 -

ホットスペア集合の状態を確認するには、metahs コマンドを使用することもできます。


例 — ホットスペア集合の状態を表示する

metastat コマンドを使ってホットスペア集合の状態を表示する例を以下に示します。


# metastat hsp001
hsp001: 1 hot spare
        c1t3d0s2                Available       16800 blocks

ホットスペア集合の状態

次の表に、ホットスペア集合の状態とそれに対する処置を示します。

表 16-1 ホットスペア集合の状態 (コマンド行)

状態 

意味 

処置 

使用可能 (Available) 

ホットスペアは正常であり、データを受け付けられる状態だが、今のところ書き込みも読み取りも行われていません。 

必要ない 

使用中 (In-use) 

このホットスペア集合には、冗長ボリュームの不良コンポーネントの代わりに使用されているスライスが含まれています。 

ホットスペアの使用状況を調べます。次に、このホットスペア集合によって置き換えられたボリュームのスライスを修理します。  

障害 (Broken) 

ホットスペアかホットスペア集合に問題があります。しかし、ただちにデータを失うおそれがあるわけではありません。すべてのホットスペアが使用中であったり、ホットスペアのどれかが故障している場合も、この状態になります。 

ホットスペアの使用状況または故障の原因を調べます。必要であれば、別のホットスペアをホットスペア集合に追加することができます。 

ホットスペア集合内のホットスペアを置き換えるには

  1. 次のどちらかの方法で、ホットスペアがすでに使用されているかどうかを確認します。

    • Solaris 管理コンソール内の「拡張ディスク」から「ホットスペアプール (Spare Pools) 」ノードを開き、ホットスペア集合を選択します。「アクション (Action) 」、「プロパティ (Properties) 」の順に選択し、「ホットスペア (Hot Spares) 」パネルを選択して、画面の指示に従ってホットスペアの使用状況を調べます。詳細は、オンラインヘルプを参照してください。

    • 次の形式の metastat コマンドを実行します。


      metastat hot-spare-pool-name
      

      詳細は、metastat(1M) のマニュアルページを参照してください。

  2. 次のどちらかの方法でホットスペアを交換します。

    • Solaris 管理コンソール内の「拡張ディスク」から「ホットスペアプール (Spare Pools) 」ノードを開き、ホットスペア集合を選択します。「アクション (Action) 」、「プロパティ (Properties) 」の順に選択し、「ホットスペア (Hot Spares) 」パネルを選択して、画面の指示に従ってホットスペアを交換します。詳細は、オンラインヘルプを参照してください。

    • 次の形式の metahs コマンドを使用します。


      metahs -r hot-spare-pool-name current-hot-spare replacement-hot-spare
      
      -r

      ホットスペア集合のディスクを交換することを意味します。

      hot-spare-pool

      ホットスペア集合の名前です。対応付けられているすべてのホットスペア集合を選択する場合は、特別なキーワード all を指定します。

      current-hot-spare

      置き換えられる現在のホットスペアの名前です。

      replacement-hot-spare

      現在のホットスペアの代わりに使用するスライスの名前です。

      詳細は、metahs(1M) のマニュアルページを参照してください。

例 — 1 つのホットスペア集合内のホットスペアを置き換える


# metastat hsp003
hsp003: 1 hot spare
        c0t2d0s2                Broken       5600 blocks
# metahs -r hsp003 c0t2d0s2 c3t1d0s2
hsp003: Hotspare c0t2d0s2 is replaced with c3t1d0s2

最初に、metastat コマンドを使って、ホットスペアが使用中でないことを確認します。metahs -r コマンドは、ホットスペア集合 hsp003 の ホットスペア /dev/dsk/c0t2d0s2 /dev/dsk/c3t1d0s2 で置き換えます。

例 — 対応付けられているすべてのホットスペア集合内のホットスペアを置き換える


# metahs -r all c1t0d0s2 c3t1d0s2
hsp001: Hotspare c1t0d0s2 is replaced with c3t1d0s2
hsp002: Hotspare c1t0d0s2 is replaced with c3t1d0s2
hsp003: Hotspare c1t0d0s2 is replaced with c3t1d0s2

この例では、キーワード all を使用することによって、対応付けられているすべてのホットスペア集合内のホットスペア /dev/dsk/c1t0d0s2/dev/dsk/c3t1d0s2 で置き換えます。

ホットスペア集合からホットスペアを削除するには

  1. 次のどちらかの方法で、ホットスペアがすでに使用されているかどうかを確認します。

    • Solaris 管理コンソール内の「拡張ディスク」から「ホットスペアプール (Spare Pools) 」ノードを開き、ホットスペア集合を選択します。「アクション (Action) 」、「プロパティ (Properties) 」の順に選択し、「ホットスペア (Hot Spares) 」パネルを選択して、画面の指示に従ってホットスペアの使用状況を調べます。詳細は、オンラインヘルプを参照してください。

    • 次の形式の metastat コマンドを実行します。


      metastat hot-spare-pool-name
      

      詳細は、metastat(1M) のマニュアルページを参照してください。

  2. 次のどちらかの方法でホットスペアを削除します。

    • Solaris 管理コンソール内の「拡張ディスク」から「ホットスペアプール (Spare Pools) 」ノードを開き、ホットスペア集合を選択します。「アクション (Action) 」、「プロパティ (Properties) 」の順に選択し、「ホットスペア (Hot Spares) 」パネルを選択して、画面の指示に従ってホットスペアを削除します。詳細は、オンラインヘルプを参照してください。

    • 次の形式の metahs コマンドを使用します。


      metahs -d hot-spare-pool-name current-hot-spare 
      
      -d

      ホットスペア集合からホットスペアを削除することを意味します。

      hot-spare-pool

      ホットスペア集合の名前です。対応付けられているすべてのホットスペア集合を選択する場合は、特別なキーワード all を指定します。

      current-hot-spare

      削除するホットスペアの名前です。

      詳細は、metahs(1M) のマニュアルページを参照してください。

例 — 1 つのホットスペア集合からホットスペアを削除する


# metastat hsp003
hsp003: 1 hot spare
        c0t2d0s2                Broken       5600 blocks
# metahs -d hsp003 c0t2d0s2

最初に、metastat コマンドを使って、ホットスペアが使用中でないことを確認します。次に、metahs -d コマンドを使って、ホットスペア集合 hsp003 からホットスペア /dev/dsk/c0t2d0s2 を削除します。

ホットスペアを有効にするには

  1. 次のどちらかの方法でホットスペアを「使用可能 (available) 」状態に戻します。

    • Solaris 管理コンソール内の「拡張ディスク」から「ホットスペアプール (Spare Pools) 」ノードを開き、ホットスペア集合を選択します。「アクション (Action) 」、「プロパティ (Properties) 」の順に選択し、「ホットスペア (Hot Spares) 」パネルを選択して、画面の指示に従ってホットスペアを有効にします。詳細は、オンラインヘルプを参照してください。

    • 次の形式の metahs コマンドを使用します。


      metahs -e hot-spare-slice
      
      -e

      ホットスペアを有効にすることを意味します。

      hot-spare-slice

      有効にするスライスの名前です。

      詳細は、metahs(1M) のマニュアルページを参照してください。

例 — ホットスペアを有効にする


# metahs -e c0t0d0s2

この例では、ホットスペア /dev/dsk/c0t0d0s2 を修理した後で、「使用可能 (Available) 」状態に戻します。ホットスペア集合を指定する必要はありません。