Solaris のシステム管理 (基本編)

大きな数値のユーザー ID とグループ ID の使用

UID とGID の値の制限が符号付き整数の最大値 (つまり、2147483647) に引き上げられました。

ただし、60000 より大きな数値の UID と GID は機能的に完全でなく、多くの Solaris の機能と互換性がありません。したがって、60000 を超える UID と GID を使用することは避けてください。

次の表では、Solaris の以前のリリースとの相互運用性について説明します。

表 4–2 60000 より大きな数値の UID または GID の相互運用性に関する問題

項目 

製品またはコマンド 

問題または注意 

NFSTM 互換性

SunOSTM 4.0 NFS ソフトウェアおよびその互換リリース

NFS サーバーとクライアントのコードは、大きな UID と GID を 16 ビットに切り捨てる。この状況では、SunOS 4.0 およびその互換リリースが動作しているシステムが、大きな UID とGID を使用している環境で使用されると、セキュリティの問題が発生する可能性がある。この問題を回避するには、SunOS 4.0 およびその互換リリースが動作しているシステムにパッチをあてる必要がある。 

ネームサービスの互換性 

NIS ネームサービスおよびファイルベースのネームサービス 

60000 より大きな数値の UID を持つユーザーは、Solaris 2.5 およびその互換リリースが動作しているシステムでは、ログインしたり、su コマンドを使用したりできるが、そのユーザーの UID と GID は 60001 (nobody) に設定される。

 

NIS+ ネームサービス 

60000 より大きな数値の UID を持つユーザーは、Solaris 2.5 およびその互換リリースと NIS+ ネームサービスが動作しているシステムではアクセスが拒否される。 

表 4–3 大きな UID または GID の制限の要約

UID または GID の値 

制限 

60003 以上 

  • この分類のユーザーが、Solaris 2.5 およびそれ以前の互換リリースと NIS ネームサービスまたはファイルネームサービスが動作しているシステムにログインすると、nobody の UID および GID を取得する。

65535 以上 

  • Solaris 2.5 およびその互換リリースが NFS バージョン 2 ソフトウェアと一緒に動作しているシステムでは、この分類のUID は 16 ビットに切り捨てられるため、セキュリティの問題が発生する場合がある。

  • この分類のユーザーがデフォルトのアーカイブフォーマットで cpio コマンドを使用してファイルをコピーすると、ファイルごとにエラーメッセージが表示される。そして、UID と GID はアーカイブにおいて nobody に設定される。

  • SPARC システム: この分類のユーザーが SunOS 4.0 およびその互換バージョンで動作可能なアプリケーションを実行すると、一部のシステムコールから EOVERFLOW が戻されて、そのユーザーの UID と GID は nobody にマップされる。

  • x86 システム: この分類のユーザーが SVR3 互換のアプリケーションを実行すると、一部のシステムコールから EOVERFLOW が返される場合がある。

  • x86 システム: この分類のユーザーが、マウントされた System V ファイルシステムでファイルまたはディレクトリを作成しようとした場合、System V ファイルシステムは EOVERFLOW エラーを返す。

100000 以上 

  • ps -l コマンドは最大 5 桁の UID を表示する。したがって、99999 より大きな UID または GID を含むときは、出力される列が揃わない。

262144 以上 

  • この分類のユーザーが -H odc フォーマットで cpio コマンドまたは pax -x cpio コマンドを使用してファイルをコピーすると、ファイルごとにエラーメッセージが戻される。そして、UID と GID はアーカイブにおいて nobody に設定される。

1000000 以上 

  • この分類のユーザーが ar コマンドを使用すると、そのユーザーの UID と GID はアーカイブにおいて nobody に設定される。

2097152 以上 

  • この分類のユーザーが tar コマンド、cpio -H ustar コマンド、または pax -x tar コマンドを使用すると、そのユーザーの UID と GID は nobody に設定される。