リンカーとライブラリ

第 7 章 オブジェクトファイル形式

この章では、アセンブラとリンカーで生成されるオブジェクトファイルの実行可能リンク形式 (ELF) について説明します。オブジェクトファイルには、主に次の 3 つの種類が存在します。

ファイル形式では、オブジェクトファイルの形式、およびこの形式がプログラム作成にどのように関係しているかに焦点を当てています。動的リンクでは、この形式がプログラムの読み込みにどのように関係しているかに焦点を当てています。

オブジェクトファイルは、ELF アクセスライブラリ libelf に含まれる関数で処理できます。libelf の説明については、elf(3ELF) のマニュアルページを参照してください。libelf を使用するサンプルソースコードは、SUNWosdem パッケージに含まれており、/usr/demo/ELF ディレクトリの下に置かれています。

ファイル形式

オブジェクトファイルはプログラムのリンクと実行の両方に関係します。利便性と効率性のため、オブジェクトファイルの形式には、リンクと実行の異なる要求に合わせて、2 つの平行した見方があります。次の図にオブジェクトファイルの編成を示します。

図 7–1 オブジェクトファイル形式

オブジェクトファイル形式。

ELF ヘッダーはオブジェクトファイルの先頭に存在し、ファイル編成を記述する「ロードマップ」を保持します。


注 –

ELF ヘッダーの位置のみがファイル内で固定されています。ELF 形式には柔軟性があるため、ヘッダーテーブル、セクション、およびセグメントの順序は特に決まっていません。この図に示したのは、Solaris で使用される典型的なレイアウトです。


「セクション」は、ELF ファイル内で処理可能な最小単位 (これ以上分割できない単位) です。「セグメント」は、exec(2) または実行時リンカーでメモリーイメージに対応付けできる最小単位です。

セクションは、リンクの観点から見たオブジェクトファイルの情報 (命令、データ、シンボルテーブル、再配置情報など) の大部分を保持します。セクションに関しては、この章の前半で説明します。セグメントとプログラムの実行の観点から見たファイルの構造に関しては、この章の後半で説明します。

プログラムヘッダーテーブル (存在する場合) は、システムにプロセスイメージの作成方法を通知します。プロセスイメージの作成に使用されるファイル (実行可能プログラムと共有オブジェクト) には、プログラムヘッダーテーブルが存在しなければなりません。再配置可能オブジェクトには、プログラムヘッダーテーブルは必要ありません。

セクションヘッダーテーブルには、ファイルのセクションを記述する情報が入っています。セクションヘッダーテーブルには各セクションのエントリが存在します。各エントリは、セクション名、セクションサイズなどの情報が含まれます。リンク編集で使用されるファイルには、セクションヘッダーテーブルが存在しなければなりません。他のオブジェクトファイルには、セクションヘッダーテーブルは存在してもしなくてもかまいません。

データ表現

オブジェクトファイルの形式は、8 ビットバイト、32 ビットアーキテクチャ、および 64 ビットアーキテクチャを持つさまざまなプロセッサをサポートしています。ただし、オブジェクトファイルの形式は拡張性が高いため、より大きな (またはより小さな) アーキテクチャに対応できます。表 7–1表 7–2 に、32 ビットおよび 64 ビットのデータタイプを示します。

オブジェクトファイルは、いくつかの制御データをマシンに依存しない形式で表現します。このため、オブジェクトファイルの識別、およびオブジェクトファイルの内容を共通の方法で解釈することが可能になります。オブジェクトファイルの残りのデータは、このオブジェクトファイルが作成されたマシンとは関係なく、対象となるプロセッサ用に符号化されています。

表 7–1 ELF 32 ビットデータタイプ

名前 

サイズ 

整列 

目的 

Elf32_Addr

4

4

符号なしプログラムアドレス 

Elf32_Half

2

2

符号なし、中程度の整数 

Elf32_Off

4

4

符号なしファイルオフセット 

Elf32_Sword

4

4

符号付き整数 

Elf32_Word

4

4

符号なし整数 

unsigned char

1

1

符号なし、短い整数 

表 7–2 ELF 64 ビットデータタイプ

名前 

サイズ 

整列 

目的 

Elf64_Addr

8

8

符号なしプログラムアドレス 

Elf64_Half

2

2

符号なし、中程度の整数 

Elf64_Off

8

8

符号なしファイルオフセット 

Elf64_Sword

4

4

符号付き整数 

Elf64_Word

4

4

符号なし整数 

Elf64_Xword

8

8

符号なし、長い整数 

Elf64_Sxword

8

8

符号付き、長い整数 

unsigned char

1

1

符号なし、短い整数 

オブジェクトファイルの形式で定義されるすべてのデータ構造は、該当クラスの自然なサイズと整列ガイドラインに従います。必要であれば、データ構造に明示的にパッドを入れることで、4 バイトオブジェクトに対して 4 バイト整列を保証したり構造サイズを 4 の倍数に設定したりします。また、データはファイルの先頭から適切に整列されます。したがってたとえば、Elf32_Addr 構成要素が存在する構造はファイル内において 4 バイト境界で整列され、Elf64_Addr 構成要素が存在する構造は 8 バイト境界で整列されます。


注 –

移植性を考慮して、ELF ではビットフィールドを使用していません。


ELF ヘッダー

いくつかのオブジェクトファイル制御構造は大きくなることがありますが、そのサイズは ELF ヘッダーに記録されます。オブジェクトファイルの形式が変わった場合、ELF 形式のファイルにアクセスするプログラムは、大きくなったり小さくなったりした制御構造体を扱うことになります。大きくなった場合は、追加された部分を無視することができるかもしれません。小さくなった場合は、無くなった部分の扱いは状況に依存しますし、形式が変更された時に規定されるでしょう。

ELF ヘッダーの構造体 (sys/elf.h 内で定義) は、以下のとおりです。

#define EI_NIDENT       16
 
typedef struct {
        unsigned char   e_ident[EI_NIDENT]; 
        Elf32_Half      e_type;
        Elf32_Half      e_machine;
        Elf32_Word      e_version;
        Elf32_Addr      e_entry;
        Elf32_Off       e_phoff;
        Elf32_Off       e_shoff;
        Elf32_Word      e_flags;
        Elf32_Half      e_ehsize;
        Elf32_Half      e_phentsize;
        Elf32_Half      e_phnum;
        Elf32_Half      e_shentsize;
        Elf32_Half      e_shnum;
        Elf32_Half      e_shstrndx;
} Elf32_Ehdr;

typedef struct {
        unsigned char   e_ident[EI_NIDENT]; 
        Elf64_Half      e_type;
        Elf64_Half      e_machine;
        Elf64_Word      e_version;
        Elf64_Addr      e_entry;
        Elf64_Off       e_phoff;
        Elf64_Off       e_shoff;
        Elf64_Word      e_flags;
        Elf64_Half      e_ehsize;
        Elf64_Half      e_phentsize;
        Elf64_Half      e_phnum;
        Elf64_Half      e_shentsize;
        Elf64_Half      e_shnum;
        Elf64_Half      e_shstrndx;
} Elf64_Ehdr;

この構造体の要素を次に示します。

e_ident

先頭のバイト列に、オブジェクトファイルであることを示す印と、機種に依存しない、ファイルの内容を復号化または解釈するためのデータが入ります。完全な記述は、ELF 識別で行われています。

e_type

オブジェクトファイルの種類を示します。次の種類が存在します。

表 7–3 ELF ファイル識別子

名前 

値 

意味 

ET_NONE

0

ファイルタイプが存在しない 

ET_REL

1

再配置可能ファイル 

ET_EXEC

2

実行可能ファイル 

ET_DYN

3

共有オブジェクトファイル 

ET_CORE

4

コアファイル 

ET_LOPROC

0xff00

プロセッサに固有 

ET_HIPROC

0xffff

プロセッサに固有 

コアファイルの内容は指定されていませんが、ET_CORE タイプはコアファイルを示すために予約されます。ET_LOPROC から ET_HIPROC までの値 (それぞれを含む) は、プロセッサ固有の方法で解釈されます。他の値は予約され、必要に応じて新しいオブジェクトファイルの種類に割り当てられます。

e_machine

個々のファイルに必要なアーキテクチャを指定します。関連するアーキテクチャを、次の表に示します。

表 7–4 ELF 機種

名前 

値 

意味 

EM_NONE

0

マシンが存在しない 

EM_SPARC

2

SPARC 

EM_386

3

Intel 80386 

EM_SPARC32PLUS

18

Sun SPARC 32+ 

EM_SPARCV9

43

SPARC V9 

他の値は予約され、必要に応じて新しい機種に割り当てられます (sys/elf.h を参照)。プロセッサ固有の ELF 名の識別には、機種名が使用されます。たとえば、表 7–5 で定義されたフラグでは、接頭辞 EF_ が使用されます。EM_XYZ マシンの WIDGET というフラグは、EF_XYZ_WIDGET と呼ばれます。

e_version

オブジェクトファイルのバージョンを示します。次のバージョンが存在します。

表 7–5 ELF バージョン

名前 

値 

意味 

EV_NONE

0

無効なバージョン 

EV_CURRENT

>=1

現在のバージョン 

値 1 は最初のファイル形式を示します。EV_CURRENT の値は、現在のバージョン番号を示すために必要に応じて変化します。

e_entry

システムが制御を最初に渡す仮想アドレスを保持し、仮想アドレスが与えられると、プロセスが起動します。ファイルに関連するエントリポイントが存在しない場合、この構成要素は 0 を保持します。

e_phoff

プログラムヘッダーテーブルのファイルオフセットを保持します (単位: バイト)。ファイルにプログラムヘッダーテーブルが存在しない場合、この構成要素は 0 を保持します。

e_shoff

セクションヘッダーテーブルのファイルオフセットを保持します (単位: バイト)。ファイルにセクションヘッダーテーブルが存在しない場合、この構成要素は 0 を保持します。

e_flags

ファイルに対応付けられたプロセッサ固有のフラグを保持します。フラグ名は、EF_machine「_flag」という形式をとります。x86 の場合、この構成要素はゼロになります。SPARC の場合のフラグを、次の表に示します。

表 7–6 SPARC: ELF フラグ

名前 

値 

意味 

EF_SPARC_EXT_MASK

0xffff00

ベンダー拡張マスク 

EF_SPARC_32PLUS

0x000100

V8+ 共通機能 

EF_SPARC_SUN_US1

0x000200

Sun UltraSPARC™ 1 拡張 

EF_SPARC_HAL_R1

0x000400

HAL R1 拡張 

EF_SPARC_SUN_US3

0x000800

Sun UltraSPARC 3 拡張 

EF_SPARCV9_MM

0x3

メモリーモデルのマスク 

EF_SPARCV9_TSO

0x0

トータルストアオーダリング (TSO) 

EF_SPARCV9_PSO

0x1

パーシャルストアオーダリング (PSO) 

EF_SPARCV9_RMO

0x2

リラックスメモリーオーダリング (RMO) 

e_ehsize

ELF ヘッダーのサイズ (単位: バイト)。

e_phentsize

ファイルのプログラムヘッダーテーブルの 1 つのエントリのサイズ (単位:バイト)。すべてのエントリは同じサイズです。

e_phnum

プログラムヘッダーテーブルのエントリ数。e_phentsizee_phnum を掛けると、テーブルのサイズ (単位: バイト) が求められます。ファイルにプログラムヘッダーテーブルが存在しない場合、e_phnum は値 0 を保持します。

e_shentsize

セクションヘッダーのサイズ (単位:バイト)。1 つのセクションヘッダーは、セクションヘッダーテーブルの 1 つのエントリです。すべてのエントリは同じサイズです。

e_shnum

セクションヘッダーテーブルのエントリ数。e_shentsizee_shnum を掛けると、セクションヘッダーテーブルのサイズ (単位: バイト) が求められます。ファイルにセクションヘッダーテーブルが存在しない場合、e_shnum は値 0 を保持します。

セクションの数が SHN_LORESERVE (0xff00) 以上の場合、この構成要素の値は 0 となり、セクションヘッダーテーブルエントリの実際の数はセクションヘッダーの sh_size フィールドのインデックス 0 の位置に入っています。そうでない場合、当初のエントリの sh_size 構成要素には 0 が入っています。

e_shstrndx

セクション名文字列テーブルに対応するエントリのセクション ヘッダーテーブルインデックス。ファイルにセクション名文字列テーブルが存在しない場合、この構成要素は値 SHN_UNDEF を保持します。

セクション名文字列テーブルセクションのインデックスが SHN_LORESERVE (0xff00) 以上の場合、この構成要素の値は SHN_XINDEX (0xffff) となり、セクション名文字列テーブルセクションの実際のインデックスはセクションヘッダーの sh_link フィールドのインデックス 0 の位置に入っています。そうでない場合、当初のエントリの sh_link 構成要素には 0 が入っています。

ELF 識別

ELF はオブジェクトファイルの枠組みを提供し、複数のプロセッサ、複数のデータ符号化、複数のクラスのマシンをサポートします。このオブジェクトファイルファミリをサポートするため、ファイルの初期バイトによりファイルの解釈方法が指定されます。これらの初期バイトは、問い合わせが行われるプロセッサにも、ファイルの他の内容にも依存しません。

ELF ヘッダーおよびオブジェクトファイル の初期バイトは、e_ident 構成要素に一致します。

表 7–7 ELF 識別インデックス

名前 

値 

種類 

EI_MAG0

0

ファイルの識別 

EI_MAG1

1

ファイルの識別 

EI_MAG2

2

ファイルの識別 

EI_MAG3

3

ファイルの識別 

EI_CLASS

4

ファイルのクラス 

EI_DATA

5

データの符号化 

EI_VERSION

6

ファイルのバージョン 

EI_OSABI

7

オペレーティングシステム / ABI の識別

EI_ABIVERSION

8

ABI のバージョン

EI_PAD

9

パッドバイトの開始 

EI_NIDENT

16

e_ident[] のサイズ

これらのインデックスは、次に示す値を保持するバイトにアクセスします。

EI_MAG0 - EI_MAG3

ファイルを ELF オブジェクトファイルとして識別する 4 バイトの「マジックナンバー」(次の表を参照)。

表 7–8 ELF マジックナンバー

名前 

値 

位置 

ELFMAG0

0x7f

e_ident[EI_MAG0]

ELFMAG1

'E'

e_ident[EI_MAG1]

ELFMAG2

'L'

e_ident[EI_MAG2]

ELFMAG3

'F'

e_ident[EI_MAG3]

EI_CLASS

バイト e_ident[EI_CLASS] は、ファイルのクラスまたは容量を示します。次の表にファイルのクラスを示します。

表 7–9 ELF ファイルのクラス

名前 

値 

意味 

ELFCLASSNONE

0

無効なクラス 

ELFCLASS32

1

32 ビットオブジェクト 

ELFCLASS64

2

64 ビットオブジェクト 

ファイル形式は、最大マシンのサイズを最小マシンに押しつけることなしにさまざまなサイズのマシン間で互換性が維持されるように設計されています。ファイルのクラスは、オブジェクトファイルそのもののデータ構造によって使用される基本タイプを定義します。オブジェクトファイルセクションに含まれるデータは、異なるプログラミングモデルに準拠する場合があります。

クラス ELFCLASS32 は、4 ギガバイトまでのファイルと仮想アドレス空間が存在するマシンをサポートします。これは、表 7–1 で定義される基本タイプを使用します。

クラス ELFCLASS64 は、SPARC などの 64 ビットアーキテクチャに対して使用されます。これは、表 7–2 で定義される基本タイプを使用します。

EI_DATA

バイト e_ident[EI_DATA] は、オブジェクトファイルのプロセッサ固有のデータの符号化を指定します (次の表を参照)。

表 7–10 ELF データの符号化

名前 

値 

意味 

ELFDATANONE

0

無効な符号化 

ELFDATA2LSB

1

図 7–2 を参照

ELFDATA2MSB

2

図 7–3 を参照

これらの符号化の詳細は、データの符号化 で説明します。他の値は予約され、必要に応じて新しい符号化に割り当てられます。

EI_VERSION

バイト e_ident[EI_VERSION] は、ELF ヘッダーバージョン番号を指定します。現在この値は、EV_CURRENT でなければなりません。

EI_OSABI

バイト e_ident[EI_OSABI] は、オブジェクトのターゲット先となるオペレーティングシステムおよび ABI を識別します。他の ELF 構造体内のフィールドの中には、オペレーティンシステム特有または ABI 特有の意味を持つフラグおよび値を保持するものがあります。これらのフィールドの解釈は、このバイトの値によって決定されます。

EI_ABIVERSION

バイト e_ident[EI_ABIVERSION] は、オブジェクトのターゲット先となる ABI のバージョンを識別します。このフィールドは、ABI の互換性の無いバージョンを識別するために使用します。このバージョン番号の解釈は、EI_OSABI フィールドで識別される ABI によって異なります。プロセッサについて EI_OSABI フィールドに値が何も指定されていない場合、または EI_OSABI バイトの特定の値によって決定される ABI についてバージョンの値が何も指定されていない場合は、「指定なし」を示すものとして値 0 が使用されます。

EI_PAD

この値は、e_ident の使用されていないバイトの先頭を示します。これらのバイトは保留され、0 に設定されます。オブジェクトファイルを読み取るプログラムは、これらのバイトを無視する必要があります。

データの符号化

ファイルのデータ符号化方式は、ファイルの基本オブジェクトを解釈する方法を指定します。クラス ELFCLASS32 のファイルは、1、2、および 4 バイトを占めるオブジェクトを使用します。クラス ELFCLASS64 のファイルは、1、2、4、および 8 バイトを占めるオブジェクトを使用します。定義されている符号化方式の下では、オブジェクトは以下のように表されます。バイト番号は、左上隅に示されています。

ELFDATA2LSB を符号化すると、最下位バイトが最低位アドレスを占める 2 の補数値が指定されます。

図 7–2 データの符号化方法 ELFDATA2LSB

ELFDATA2LSB データの符号化方法。

ELFDATA2MSB を符号化すると、最上位バイトが最低位アドレスを占める 2 の補数値が指定されます。

図 7–3 データの符号化方法 ELFDATA2MSB

ELFDATA2MSB データの符号化。

セクション

オブジェクトファイルのセクションヘッダーテーブルを使用すると、ファイルのセクションすべてを見つけ出すことができます。セクションヘッダーテーブルは、以下に示されているとおり、Elf32_Shdr 構造体または Elf64_Shdr 構造体の配列です。セクションヘッダーテーブルインデックスは、この配列への添字です。ELF ヘッダーのe_shoff 構成要素は、ファイルの先頭からセクションヘッダーテーブルまでのバイトオフセットを与えます。e_shnum は、セクションヘッダーテーブルに存在するエントリ数を与えます。e_shentsize は、各エントリのサイズ (単位: バイト) を与えます。

セクションの数が SHN_LORESERVE (0xff00) 以上の場合、e_shnum の値は SHN_UNDEF (0) となり、セクションヘッダーテーブルエントリの実際の数はセクションヘッダーの sh_size フィールドのインデックス 0 の位置に入っています。そうでない場合、当初のエントリの sh_size 構成要素には 0 が入っています。

セクションヘッダーテーブルインデックスの中には、インデックスサイズが制限されている文脈で予約されているものがあります。たとえば、シンボルテーブルエントリの st_shndx 構成要素、 ELF ヘッダーの e_shnum 構成要素と e_shstrndx 構成要素などがそうです。このような文脈では、予約値はオブジェクトファイル内の実際のセクションを示しません。また、このような文脈では、エスケープ値は、実際のセクションインデックスがどこかもっと大きなフィールド内に存在することを示します。

表 7–11 ELF セクションの特殊インデックス

名前 

値 

SHN_UNDEF

0

SHN_LORESERVE

0xff00

SHN_LOPROC

0xff00

SHN_BEFORE

0xff00

SHN_AFTER

0xff01

SHN_HIPROC

0xff1f

SHN_LOOS

0xff20

SHN_HIOS

0xff3f

SHN_ABS

0xfff1

SHN_COMMON

0xfff2

SHN_XINDEX

0xffff

SHN_HIRESERVE

0xffff


注 –

インデックス 0 は未定義値として予約されますが、セクションヘッダーテーブルにはインデックス 0 のエントリが存在します。つまり、ELF ヘッダーの e_shnum 構成要素が、ファイルのセクションヘッダーテーブルに 6 つのエントリが存在することを示している場合、これら 6 つのエントリにはインデックス 0 から 5 までが与えられます。先頭のエントリの内容は、この項の末尾に記述します。


SHN_UNDEF

未定義の、失われた、関連のない、または無意味なセクション参照。たとえば、セクション番号 SHN_UNDEF に関して「定義された」シンボルは、未定義シンボルです。

SHN_LORESERVE

予約されているインデックスの範囲の下限。

SHN_LOPROC - SHN_HIPROC

この範囲の値は、プロセッサ固有の使用方法に予約されます。

SHN_LOOS - SHN_HIOS

この範囲の値 (両端の値を含む) は、オペレーティングシステム固有の意味のために予約されています。

SHN_BEFORE, SHN_AFTER

SHF_LINK_ORDER および SHF_ORDERED セクションフラグと共に先頭および末尾セクションに順序付けを行います (表 7–14 を参照)。

SHN_ABS

対応する参照の絶対値。 たとえば、セクション番号 SHN_ABS からの相対で定義されたシンボルは絶対値をとり、再配置の影響を受けません。

SHN_COMMON

このセクションに関して定義されたシンボルは、共通シンボルです。たとえば、FORTRAN COMMON や割り当てられていない C 外部変数です。これらのシンボルは、ときどき一時的シンボルと呼ばれることもあります。

SHN_XINDEX

実際のセクションヘッダーインデックスが大きすぎて保持するフィールド内に入りきらないことを示すエスケープ値。ヘッダーセクションインデックスは、このインデックスが出現する構造体に固有の別の場所に存在します。

SHN_HIRESERVE

予約されているインデックスの範囲の上限。システムは、SHN_LORESERVE から SHN_HIRESERVE までのインデックスを予約します。値は、セクションヘッダーテーブルを参照しません。セクションヘッダーテーブルには予約されているインデックスのエントリは存在しません。

セクションには、ELF ヘッダー、プログラムヘッダーテーブル、セクションヘッダーテーブルを除く、オブジェクトファイルのすべての情報が存在します。また、オブジェクトファイルのセクションは以下の条件を満たします。

セクションヘッダーの構造体 (sys/elf.h で定義されている) は、次のとおりです。

typedef struct {
        Elf32_Word      sh_name;
        Elf32_Word      sh_type;
        Elf32_Word      sh_flags;
        Elf32_Addr      sh_addr;
        Elf32_Off       sh_offset;
        Elf32_Word      sh_size;
        Elf32_Word      sh_link;
        Elf32_Word      sh_info;
        Elf32_Word      sh_addralign;
        Elf32_Word      sh_entsize;
} Elf32_Shdr;

typedef struct {
        Elf64_Word      sh_name;
        Elf64_Word      sh_type;
        Elf64_Xword     sh_flags;
        Elf64_Addr      sh_addr;
        Elf64_Off       sh_offset;
        Elf64_Xword     sh_size;
        Elf64_Word      sh_link;
        Elf64_Word      sh_info;
        Elf64_Xword     sh_addralign;
        Elf64_Xword     sh_entsize;
} Elf64_Shdr;

この構造体の要素を次に示します。

sh_name

セクション名。値はセクションヘッダーの文字列テーブルセクションへのインデックスで、ヌル文字で終わっている文字列を示します。セクション名とその説明は、表 7–17 を参照してください。

sh_type

セクションの内容と意味を分類します。セクションのタイプとその説明は、表 7–12 を参照してください。

sh_flags

セクションは、さまざまな属性を記述する 1 ビットフラグをサポートします。フラグの定義は、表 7–14 を参照してください。

sh_addr

セクションがプロセスのメモリーイメージに現れる場合、この構成要素はセクションの先頭バイトが存在しなければならないアドレスを与えます。セクションがプロセスのメモリーイメージに現れない場合、この構成要素には 0 が存在します。

sh_offset

ファイルの先頭からセクションの先頭バイトまでのバイトオフセット。SHT_NOBITS 型のセクションは、ファイルのスペースを占めません。sh_offset 構成要素は、ファイル内の概念上の位置を示します。

sh_size

セクションのサイズ (単位: バイト)。セクションのタイプが SHT_NOBITS でない限り、セクションはファイルの sh_size バイトを占めます。タイプが SHT_NOBITS のセクションは、0 以外のサイズをとることがありますが、ファイルのスペースは占めません。

sh_link

セクションヘッダーテーブルのインデックスリンク。このリンクの解釈は、セクションのタイプに依存します。値は、表 7–15 を参照してください。

sh_info

追加情報。情報の解釈は、セクションのタイプに依存します。値は、表 7–15 を参照してください。

sh_addralign

いくつかのセクションには、アドレス整列制約が存在します。たとえば、あるセクションが 2 語で構成されるデータを保持している場合、システムはそのセクション全体に対して 2 語単位の整列を保証しなければなりません。つまり、sh_addr の値は、sh_addralign の値を法として 0 でなければなりません。現在、0、および 2 の非負整数累乗のみが許可されています。値 0 と 1 は、セクションに整列制約が存在しないことを意味します。

sh_entsize

いくつかのセクションは、サイズが一定のエントリのテーブル (シンボルテーブルなど) を保持します。このようなセクションに対してこの構成要素は、各エントリのサイズ (単位: バイト) を与えます。サイズが一定のエントリのテーブルをセクションが保持しない場合、この構成要素には 0 が格納されます。

セクションヘッダーの sh_type 構成要素は、表 7–12 に示すようにこのセクションの意味を示します。

表 7–12 ELF セクションタイプ、sh_type

名前 

値 

SHT_NULL

0

SHT_PROGBITS

1

SHT_SYMTAB

2

SHT_STRTAB

3

SHT_RELA

4

SHT_HASH

5

SHT_DYNAMIC

6

SHT_NOTE

7

SHT_NOBITS

8

SHT_REL

9

SHT_SHLIB

10

SHT_DYNSYM

11

SHT_INIT_ARRAY

14

SHT_FINI_ARRAY

15

SHT_PREINIT_ARRAY

16

SHT_GROUP

17

SHT_SYMTAB_SHNDX

18

SHT_LOOS

0x60000000

SHT_SUNW_move

0x6ffffffa

SHT_SUNW_COMDAT

0x6ffffffb

SHT_SUNW_syminfo

0x6ffffffc

SHT_SUNW_verdef

0x6ffffffd

SHT_SUNW_verneed

0x6ffffffe

SHT_SUNW_versym

0x6fffffff

SHT_HIOS

0x6fffffff

SHT_LOPROC

0x70000000

SHT_HIPROC

0x7fffffff

SHT_LOUSER

0x80000000

SHT_HIUSER

0xffffffff

SHT_NULL

セクションヘッダーが使用されないことを示します。このセクションヘッダーには、関連付けられているセクションは存在しません。セクションヘッダーの他の構成要素の値は不定です。

SHT_PROGBITS

プログラムで定義された情報を示します。プログラムの形式と意味は、プログラムが独自に決定します。

SHT_SYMTAB, SHT_DYNSYM

文字列テーブルを示します。一般に、SHT_SYMTAB セクションはリンク編集に関するシンボルを示します。このセクションには完全なシンボルテーブルとして、動的リンクに不要な多くのシンボルが存在することがあります。また、オブジェクトファイルには SHT_DYNSYM セクション (動的リンクシンボルの最小セットを保持して領域を節約している) が存在することがあります。詳細は、シンボルテーブルを参照してください。

SHT_STRTAB, SHT_DYNSTR

文字列テーブルを示します。オブジェクトファイルには、複数の文字列テーブルセクションを指定できます。詳細は、文字列テーブルを参照してください。

SHT_RELA

明示的加数が存在する再配置エントリ (32 ビットクラスのオブジェクトファイルの Elf32_Rela タイプなど) を示します。オブジェクトファイルには、複数の再配置セクションを指定できます。詳細は、再配置を参照してください。

SHT_HASH

シンボルハッシュテーブルを示します。動的にリンクされたすべてのオブジェクトファイルには、シンボルハッシュテーブルが存在しなければなりません。現在、オブジェクトファイルにはハッシュテーブルは 1 つしか存在できませんが、この制約は将来、緩和されるかもしれません。詳細は、ハッシュテーブルを参照してください。

SHT_DYNAMIC

動的リンクに関する情報を示します。現在、オブジェクトファイルには動的セクションを 1 つだけ含めることができます。詳細は、動的セクションを参照してください。

SHT_NOTE

ファイルを示す情報を示します。詳細は、注釈セクションを参照してください。

SHT_NOBITS

このセクションは、ファイルの領域を占めないという点以外では SHT_PROGBITS に類似しています。このセクションにはデータは存在しませんが、sh_offset 構成要素には概念上のファイルオフセットが存在します。

SHT_REL

明示的加数が存在しない再配置エントリ (32 ビットクラスのオブジェクトファイルの Elf32_Rel 型など) を示します。オブジェクトファイルには、複数の再配置セクションを指定できます。詳細は、再配置を参照してください。

SHT_SHLIB

未定義のセマンティクスを保持する、予約済みのセクション。この型のセクションが存在するプログラムは、ABI に準拠しません。

SHT_INIT_ARRAY

初期設定関数を指すポインタの配列が存在するセクションを示します。配列内の各ポインタは、void を戻り値とする、パラメータを持たないプロシージャと見なされます。詳細は、初期設定および終了セクションを参照してください。

SHT_FINI_ARRAY

終了関数を指すポインタの配列が存在するセクションを示します。配列内の各ポインタは、void を戻り値とする、パラメータを持たないプロシージャと見なされます。詳細は、初期設定および終了セクションを参照してください。

SHT_PREINIT_ARRAY

ほかのすべての初期設定関数の前に呼び出される関数を指すポインタの配列が存在するセクションを示します。配列内の各ポインタは、void を戻り値とする、パラメータを持たないプロシージャと見なされます。詳細は、初期設定および終了セクションを参照してください。

SHT_GROUP

セクショングループを示します。セクショングループとは関連する一連のセクションであり、リンカーによって特別に扱う必要があります。タイプが SHT_GROUP であるセクションは、再配置可能オブジェクト内にしか存在できません。グループセクションのセクションヘッダーテーブルエントリは、セクションヘッダーテーブル内においてそのグループの構成要素であるどのセクションのエントリよりも前にある必要があります。詳細は、セクショングループを参照してください。

SHT_SYMTAB_SHNDX

拡張されたセクションインデックスが入ったセクション (シンボルテーブルに関連付けられている) を示します。シンボルテーブルによって参照されているセクションヘッダーインデックスのどれかにエスケープ値 SHN_XINDEX が含まれる場合は、関連する SHT_SYMTAB_SHNDX が必要です。

SHT_SYMTAB_SHNDX セクションは、Elf32_Word 値の配列です。各値はシンボルテーブルエントリと 1 対 1 で対応しており、それらのエントリと同じ順序で出現します。これらの値は、シンボルテーブルエントリが定義されているセクションヘッダーインデックスを示します。一致する Elf32_Word に実際のセクションヘッダーインデックスが含まれるのは、対応するシンボルテーブルエントリの st_shndx フィールドにエスケープ値 SHN_XINDEX が含まれる場合だけです。そうでない場合、エントリは必ず SHN_UNDEF (0) です。

SHT_LOOSSHT_HIOS

この範囲の値 (両端の値を含む) は、オペレーティングシステム固有の意味のために予約されています。

SHT_SUNW_move

部分的に初期化されたシンボルを処理するデータを指定します。詳細は、移動セクションを参照してください。

SHT_SUNW_COMDAT

同一データの複数のコピーを単一のコピーに削減することを可能にするセクション。詳細は、Comdat セクションを参照してください。

SHT_SUNW_syminfo

追加のシンボル情報を指定します。詳細は、Syminfo テーブルを参照してください。

SHT_SUNW_verdef

このファイルで定義された、きめの細かいバージョンを指定します。詳細は、バージョン定義セクションを参照してください。

SHT_SUNW_verneed

このファイルに必要な、きめの細かい依存関係を指定します。詳細は、バージョン依存セクションを参照してください。

SHT_SUNW_versym

シンボルとファイルに記述されたバージョン定義との関係を示すテーブルを指定します。詳細は、バージョンシンボルセクションを参照してください。

SHT_LOPROC - SHT_HIPROC

この範囲の値は、プロセッサ固有の使用方法に予約されます。

SHT_LOUSER

アプリケーションプログラムに対して予約されるインデックスの範囲の下限を示します。

SHT_HIUSER

アプリケーションプログラムに対して予約されるインデックスの範囲の上限を示します。SHT_LOUSER から SHT_HIUSER までのセクション型は、現在の、または将来のシステム定義セクション型と競合することなくアプリケーションで使用できます。

他のセクション型の値は、保留されています。先に述べたとおり、インデックス 0 (SHN_UNDEF) のセクションヘッダーは存在します (このインデックスが未定義セクション参照を示してもです)。その値は表 7–13 の通りです。

表 7–13 ELF セクションヘッダーのテーブルエントリ: インデックス 0

名前 

値 

注意 

sh_name

0

名前が存在しない 

sh_type

SHT_NULL

使用されない 

sh_flags

0

フラグが存在しない 

sh_addr

0

アドレスが存在しない 

sh_offset

0

ファイルオフセットが存在しない 

sh_size

0

サイズが存在しない 

sh_link

SHN_UNDEF

リンク情報が存在しない 

sh_info

0

補助情報が存在しない 

sh_addralign

0

整列が存在しない 

sh_entsize

0

エントリが存在しない 

セクションヘッダーの sh_flags 構成要素は、セクションの属性を記述する 1 ビットフラグを保持します。

表 7–14 ELF セクションの属性フラグ

名前 

値 

SHF_WRITE

0x1

SHF_ALLOC

0x2

SHF_EXECINSTR

0x4

SHF_MERGE

0x10

SHF_STRINGS

0x20

SHF_INFO_LINK

0x40

SHF_LINK_ORDER

0x80

SHF_OS_NONCONFORMING

0x100

SHF_GROUP

0x200

SHF_TLS

0x400

SHF_MASKOS

0x0ff00000

SHF_ORDERED

0x40000000

SHF_EXCLUDE

0x80000000

SHF_MASKPROC

0xf0000000

sh_flags にフラグビットが設定されると、属性がセクションに対して「オン」になります。設定されない場合は、属性が「オフ」になるか、または適用されません。定義されていない属性は保留され、0 に設定されています。

SHF_WRITE

プロセス実行時に書き込み可能にする必要のあるセクションを示します。

SHF_ALLOC

プロセス実行時にメモリーを占有するセクションを示します。いくつかの制御セクションは、オブジェクトファイルのメモリーイメージに存在しません。この属性は、これらのセクションに対してオフです。

SHF_EXECINSTR

実行可能なマシン命令を含むセクションを示します。

SHF_MERGE

重複を避けるためにマージ可能なデータを含むセクションを示します。同時に SHF_STRINGS フラグが設定されていない限り、このセクション内のデータ要素は統一されたサイズになります。各要素のサイズは、セクションヘッダーの sh_entsize フィールドで指定されます。同時に SHF_STRINGS フラグも設定されている場合は、データ要素はヌル文字で終わる文字列で構成されています。各文字のサイズは、セクションヘッダーの sh_entsize フィールドで指定されます。

SHF_STRINGS

ヌル文字で終わる文字列で構成されるセクションを示します。各文字のサイズは、セクションヘッダーの sh_entsize フィールドで指定されます。

SHF_INFO_LINK

このセクションヘッダーの sh_info フィールドは、セクションヘッダーのテーブルインデックスを保持します。

SHF_LINK_ORDER

このセクションは、リンカーに特別な順序の要求を追加します。この要求は、このセクションのヘッダーの sh_link フィールドが別のセクション (リンク先のセクション) を参照する場合に適用されます。このセクションを出力ファイル内の他のセクションと結合する場合、結合対象セクションと同じ相対的な順序で現われます。同様に、リンクされるセクションは、それが結合されるセクションに現われます。

特殊な sh_link 値である SHN_BEFORE および SHN_AFTER (表 7–11 を参照) は、順序付けされるセット内の他のすべてのセクションに対して、ソートされたセクションがそれぞれ前に付くまたは後に付くことを示します。順序付けの対象となるセクションの複数にこれらの特殊値の 1 つが存在する場合、入力ファイルが指定された順序は保存されます。

このフラグを使用する場合の典型的なものとして、アドレスの順序でテキストまたはデータセクションを参照するテーブルを構築する場合があります。

sh_link 順序付け情報が存在しない場合、出力ファイルの 1 つのセクション内で結合される 1 つの入力ファイルからのセクションは連続的になり、入力ファイル内の相対順序付けと同じ相対順序付けになります。複数の入力ファイルからの場合は、リンクコマンドで指定された順序になります。

SHF_OS_NONCONFORMING

このセクションは、正しくない動作を避けるために、特別な OS 固有の処理 (標準のリンク処理規則の範囲を越えるもの) を必要とするものです。このセクションが、これらのフィールドに対して sh_type 値を持つか、OS 固有の範囲内にある sh_flags ビットを含み、かつリンカーがこれらの値を認識しない場合は、リンカーはこのセクションを含むオブジェクトファイルを拒否し、エラーを出します。

SHF_GROUP

このセクションは、1 つのセクショングループの (おそらく唯一の) 構成要素です。このセクションは、タイプ SHT_GROUP のセクションに参照されなければなりません。SHF_GROUP フラグは、再配置可能オブジェクト内に含まれるセクションに対してしか設定できません。詳細は、セクショングループを参照してください。

SHF_TLS

このセクションは、スレッド固有の領域を保持します。つまり、各個別の実行の流れは、このデータのインスタンスをそれぞれ別個に持つことを意味します。詳細は、スレッド固有領域 を参照してください。

SHF_MASKOS

このマスクに含まれるすべてのビットは、オペレーティングシステム特有の意味のために予約されています。

SHF_ORDERED

このセクションは、同じ型の他のセクションと順序付けられます。順序付けられるセクションは、sh_link エントリでポイントされるセクション内で結合されます。順序付けられるセクションの sh_link エントリは、自身を指し示すことがあります。

順序付けられるセクションの sh_info エントリが同一入力ファイル内の有効セクションの場合、順序付けられるセクションは、sh_info エントリでポイントされるセクションの出力ファイル内の相対順序付けに基づいて整列されます。

特殊なsh_info 値である SHN_BEFORE または SHN_AFTER (表 7–11 を参照) は、整列対象セクションが順序付け対象となる他のすべてのセクションの前または後に存在することを意味します。順序付けの対象となるセクションの複数にこれらの特殊値の 1 つが存在する場合、入力ファイルが指定された順序は保存されます。

sh_info 順序付け情報が存在しない場合、出力ファイルの 1 つのセクション内で結合される 1 つの入力ファイルからのセクションは連続的になり、入力ファイル内の相対順序付けと同じ相対順序付けになります。複数の入力ファイルからの場合は、リンクコマンドで指定された順序になります。

SHF_EXCLUDE

このセクションは、実行可能オブジェクトまたは共有オブジェクトのリンク編集への入力から除かれます。このフラグは、SHF_ALLOC フラグが設定されている場合、またはセクションに対する参照が存在する場合、無視されます。

SHF_MASKPROC

このマスクに存在するすべてのビットは、プロセッサ固有な使用方法に予約されます。

セクションヘッダーの 2 つの構成要素 sh_linksh_info は、セクション型に従って特殊な情報を保持します。

表 7–15 ELF sh_linksh_info の解釈

sh_type

sh_link

sh_info

SHT_DYNAMIC

関連付けられている文字列テーブルのセクションヘッダーインデックス 

0

SHT_HASH

関連付けられているシンボルテーブルのセクションヘッダーインデックス 

0

SHT_REL

SHT_RELA

関連付けられているシンボルテーブルのセクションヘッダーインデックス 

再配置が適用されるセクションのセクションヘッダーインデックス。表 7–17再配置も参照

SHT_SYMTAB

SHT_DYNSYM

関連付けられている文字列テーブルのセクションヘッダーインデックス 

最後のローカルシンボルのシンボルテーブルインデックスより 1 大きい (STB_LOCAL に対応する)

SHT_GROUP

関連付けられているシンボルテーブルのセクションヘッダーインデックス 

関連付けられているシンボルテーブル内のエントリの、シンボルテーブルインデックス。指定されたシンボルテーブルエントリの名前は、そのセクショングループのシグニチャを提供する 

SHT_SYMTAB_SHNDX

関連付けられているシンボルテーブルのセクションヘッダーインデックス 

0

SHT_SUNW_move

関連付けられているシンボルテーブルのセクションヘッダーインデックス 

0

SHT_SUNW_COMDAT

0

0

SHT_SUNW_syminfo

関連付けられているシンボルテーブルのセクションヘッダーインデックス 

関連付けられている .dynamic セクションのセクションヘッダーインデックス

SHT_SUNW_verdef

関連付けられている文字列テーブルのセクションヘッダーインデックス 

セクション内のバージョン定義数 

SHT_SUNW_verneed

関連付けられている文字列テーブルのセクションヘッダーインデックス 

セクション内のバージョン依存数 

SHT_SUNW_versym

関連付けられているシンボルテーブルのセクションヘッダーインデックス 

0

セクショングループ

セクションの中には、相互関連のあるグループがあるものがあります。たとえば、インライン関数の out-of-line 定義では、実行可能命令を含むセクションに加えて、参照定数を含む読み取り専用のデータセクション、1 つまたは複数のデバッギング情報セクション、およびその他の情報セクションを必要とする場合があります。さらに、これらのセクションの中には、セクションのうちの 1 つが削除されたり他のオブジェクトからの重複によって置き換えられたりすると意味を成さない内部参照がある可能性があります。そのため、これらのグループは、リンクされるオブジェクトに含めるまたはそこから削除する場合は、1 つのユニットとして扱う必要があります。

タイプ SHT_GROUP のセクションは、そういったセクションのグループ化を定義します。含んでいるオブジェクトのシンボルテーブルのうちの 1 つからのシンボル名が、そのセクショングループについてのシグニチャを提供します。SHT_GROUP セクションのセクションヘッダーが、識別シンボルエントリを指定します。sh_link 構成要素はそのエントリを含むシンボルテーブルセクションのセクションヘッダーインデックスを含み、sh_info 構成要素はその識別エントリのシンボルテーブルインデックスを含みます。そのセクションヘッダーの sh_flags 構成要素は、0 を含みます。そのセクションの名前 (sh_name) は指定されません。

SHT_GROUP セクションのセクションデータは、Elf32_Word エントリの配列です。最初のエントリは、フラグです。残りのエントリは、セクションヘッダーのインデックスのシーケンスです。

現在、以下のフラグが定義されています。

表 7–16 ELF セクショングループのフラグ

名前 

値 

GRP_COMDAT

0x1

GRP_COMDAT

GRP_COMDATCOMDAT グループであることを示します。これは、同じグループシグニチャを持つものとして重複が定義されている場合には、他のオブジェクトファイル内の他の COMDAT グループと重複する可能性があります。その場合には、重複グループのうち 1 つのみがリンカーによって保持されます。残りのグループの構成要素は破棄されます。

SHT_GROUP セクション内のセクションヘッダーインデックスは、そのグループを構成するセクションを識別します。それらの各セクションは、SHF_GROUP フラグを sh_flags セクションヘッダー構成要素内に設定していなければなりません。リンカーがそのセクショングループを削除することを決めた場合、リンカーはそのグループのすべての構成要素を削除します。

未決定の参照を残すことなく、シンボルテーブルの処理を最小限にしてグループの削除を行うには、次の規則に従う必要があります。

特殊セクション

さまざまなセクションがプログラム情報と制御情報を保持します。以下の表に示すセクションはシステムで使用されますが、これらのセクションには指定された型と属性が存在します。

表 7–17 ELF 特殊セクション

名前 

形式 

属性 

.bss

SHT_NOBITS

SHF_ALLOC + SHF_WRITE

.comment

SHT_PROGBITS

なし 

.data

SHT_PROGBITS

SHF_ALLOC + SHF_WRITE

.data1

SHT_PROGBITS

SHF_ALLOC + SHF_WRITE

.dynamic

SHT_DYNAMIC

SHF_ALLOC + SHF_WRITE

.dynstr

SHT_STRTAB

SHF_ALLOC

.dynsym

SHT_DYNSYM

SHF_ALLOC

.fini

SHT_PROGBITS

SHF_ALLOC + SHF_EXECINSTR

.fini_array

SHT_FINI_ARRAY

SHF_ALLOC + SHF_WRITE

.got

SHT_PROGBITS

大域オフセットテーブル (プロセッサ固有)を参照

.hash

SHT_HASH

SHF_ALLOC

.init

SHT_PROGBITS

SHF_ALLOC + SHF_EXECINSTR

.init_array

SHT_INIT_ARRAY

SHF_ALLOC + SHF_WRITE

.interp

SHT_PROGBITS

プログラムインタプリタを参照

.note

SHT_NOTE

なし 

.plt

SHT_PROGBITS

プロシージャのリンクテーブル (プロセッサ固有)を参照

.preinit_array

SHT_PREINIT_ARRAY

SHF_ALLOC + SHF_WRITE

.rela

SHT_RELA

なし 

.relname

SHT_REL

再配置を参照

.relaname

SHT_RELA

再配置を参照

.rodata

SHT_PROGBITS

SHF_ALLOC

.rodata1

SHT_PROGBITS

SHF_ALLOC

.shstrtab

SHT_STRTAB

なし 

.strtab

SHT_STRTAB

後続の .strtab 記述を参照

.symtab

SHT_SYMTAB

シンボルテーブルを参照

.symtab_shndx

SHT_SYMTAB_SHNDX

シンボルテーブルを参照

.tbss

SHT_NOBITS

SHF_ALLOC + SHF_WRITE + SHF_TLS

.tdata

SHT_PROGBITS

SHF_ALLOC + SHF_WRITE + SHF_TLS

.tdata1

SHT_PROGBITS

SHF_ALLOC + SHF_WRITE + SHF_TLS

.text

SHT_PROGBITS

SHF_ALLOC + SHF_EXECINSTR

.SUNW_bss

SHT_NOBITS

SHF_ALLOC + SHF_WRITE

.SUNW_heap

SHT_PROGBITS

SHF_ALLOC + SHF_WRITE

.SUNW_move

SHT_SUNW_move

SHF_ALLOC

.SUNW_reloc

SHT_REL

SHT_RELA

SHF_ALLOC

.SUNW_syminfo

SHT_SUNW_syminfo

SHF_ALLOC

.SUNW_version

SHT_SUNW_verdef

SHT_SUNW_verneed

SHT_SUNW_versym

SHF_ALLOC

.bss

プログラムのメモリーイメージで使用される初期化されてい ないデータ。システムは、プログラムが実行を開始すると 0 でデータを初期化することになっています。このセクションは、セクション型 SHT_NOBITS で示しているとおり、ファイル領域を占めません。

.comment

コメント情報 (通常、コンパイルシステムのコンポーネントが使用)。このセクションは、mcs(1)により操作できます。

.data.data1

プログラムのメモリーイメージで使用される、初期化済みのデータ。

.dynamic

動的リンク情報。 詳細は、動的セクションを参照してください。

.dynstr

動的リンクに必要な文字列 (最も一般的には、シンボルテーブルエントリに関連付けられている名前を表す文字列)。

.dynsym

動的リンクシンボルテーブル。詳細は、シンボルテーブルを参照してください。

.fini

このセクションを含む実行可能ファイルまたは共有オブジェクトの単一の終了関数で使用される実行可能命令。詳細は、初期設定および終了ルーチンを参照してください。

.fini_array

このセクションを含む実行可能ファイルまたは共有オブジェクトの単一の終了配列で使用される関数ポインタの配列。詳細は、初期設定および終了ルーチンを参照してください。

.got

大域オフセットテーブル。詳細は、大域オフセットテーブル (プロセッサ固有)を参照してください。

.hash

シンボルハッシュテーブル。詳細は、ハッシュテーブルを参照してください。

.init

このセクションを含む実行可能ファイルまたは共有オブジェクトの単一の初期化関数で使用される実行可能命令。詳細は、初期設定および終了ルーチンを参照してください。

.init_array

このセクションを含む実行可能ファイルまたは共有オブジェクトの単一の初期化配列で使用される関数ポインタの配列。詳細は、初期設定および終了ルーチンを参照してください。

.interp

プログラムインタプリタのパス名。詳細は、プログラムインタプリタを参照してください。

.note

注釈セクションに記載された形式の情報。

.plt

プロシージャのリンクテーブル。プロシージャのリンクテーブル (プロセッサ固有)を参照してください。

.preinit_array

このセクションを含む実行可能ファイルまたは共有オブジェクトの単一の初期設定前の配列に使用される関数ポインタの配列。詳細は、初期設定および終了ルーチンを参照してください。

.rela

特定のセクションに適用されない再配置情報。このセクションの用途の 1 つは、レジスタの再配置です。詳細は、レジスタシンボルを参照してください。

.relname.relaname

再配置情報 (詳細は、再配置を参照)。再配置が存在する読み込み可能セグメントがファイルに存在する場合、これらのセクションの属性として SHF_ALLOC ビットがオンになります。そうでない場合、このビットはオフになります。慣例により、name は再配置が適用されるセクションの名前になります。したがって、.text の再配置セクションには、通常 .rel.text または .rela.text という名前が存在します。

.rodata.rodata1

読み取り専用データ (通常はプロセスイメージの書き込み不可セグメントに使用)。詳細は、プログラムヘッダーを参照してください。

.shstrtab

セクション名。

.strtab

文字列 (最も一般的には、シンボルテーブルエントリに関連付けられている名前を表す文字列)。シンボル文字列テーブルが存在する読み込み可能セグメントがファイルに存在する場合、セクションの属性として SHF_ALLOC ビットがオンになります。そうでない場合、このビットはオフになります。

.symtab

シンボルテーブル (詳細は、シンボルテーブルを参照)。シンボルテーブルが存在する読み込み可能セグメントがファイルに存在する場合、セクションの属性として SHF_ALLOC ビットがオンになります。そうでない場合、このビットはオフになります。

.symtab_shndx

このセクションには、.symtab による指定に従い、特別なシンボルテーブルセクションインデックス配列が保持されます。 関連付けられたシンボルテーブルセクションに SHF_ALLOC ビットが含まれる場合、このセクションの属性も SHF_ALLOC ビットを含みます。そうでない場合、このビットはオフになります。

.tbss

このセクションは、プログラムのメモリーイメージで使用される、初期化されていないスレッド固有データを保持します。データが新しい実行フロー用に具体化されると、システムはデータを 0 で初期化します。このセクションは、セクション型 SHT_NOBITS で示しているとおり、ファイル領域を占めません。詳細は、スレッド固有領域 を参照してください。

.tdata, .tdata1

これらのセクションは、プログラムのメモリーイメージで使用される、初期化されたスレッド固有データを保持します。その内容のコピーは、それぞれ新しい実行フロー用にシステムによって具体化されます。詳細は、スレッド固有領域 を参照してください。

.text

プログラムの「テキスト」すなわち実行可能命令。

.SUNW_bss

プログラムのメモリーイメージで使用される、共有オブジェクトの部分的に初期化されたデータ。データは実行時に初期化されます。このセクションは、セクション型 SHT_NOBITS で示しているとおり、ファイル領域を占めません。

.SUNW_heap

dldump(3DL) により作成される動的実行可能ファイルのヒープ。

.SUNW_move

部分的に初期化されたデータに関する追加情報。詳細は、移動セクションを参照してください。

.SUNW_reloc

再配置情報 (詳細は、再配置を参照)。このセクションは再配置セクションが連結されたものであり、個々の再配置レコードに対するより良い参照のローカル性 (局所性) を与えます。再配置レコード自身のオフセットのみが意味があり、したがってセクション sh_info の値は 0 です。

.SUNW_syminfo

シンボルテーブルの追加情報。詳細は、Syminfo テーブルを参照してください。

.SUNW_version

バージョン情報。詳細は、バージョン情報を参照してください。

ドット (.) 接頭辞付きのセクション名はシステムにおいて予約されています。これらのセクションの既存の意味が満足できるものであれば、アプリケーションはこれらのセクションを使用できます。アプリケーションは、ドット (.) 接頭辞なしの名前を使用して、システムで予約されたセクションとの競合を回避することができます。オブジェクトファイル形式では、上記リストに記載されていないセクションが定義できます。オブジェクトファイルには、同じ名前を持つ複数のセクションが存在できます。

プロセッサアーキテクチャに対して予約されるセクション名は、アーキテクチャ名の省略形をセクション名の前に入れることで作成されます。セクション名の前に、e_machine に対して使用されるアーキテクチャ名を入れる必要があります。たとえば、.Foo.psect は、FOO アーキテクチャで定義される psect セクションです。

既存の拡張セクションは、従来から使用されている名前をそのまま使用しています。

文字列テーブル

文字列テーブルセクションは、ヌル文字で終了する一連の文字 (一般に文字列と呼ばれている) を保持します。オブジェクトファイルは、これらの文字列を使用してシンボルとセクション名を表します。文字列をインデックスに使用して、文字列テーブルセクションを参照します。

先頭バイト (インデックス 0) は、ヌル文字を保持します。同様に、文字列テーブルの最後のバイトは、ヌル文字を保持します。したがって、すべての文字列は確実にヌル文字で終了します。したがって、すべての文字列は確実にヌル文字で終了します。インデックスが 0 の文字列は、名前を指定しないかヌル文字の名前を指定します (状況に依存する)。

空の文字列テーブルセクションが許可されており、セクションヘッダーの sh_size 構成要素に 0 が入ります。0 以外のインデックスは、空の文字列テーブルに対して無効です。

セクションヘッダーの sh_name 構成要素は、ELF ヘッダーの e_shstrndx 構成要素で示されているとおり、セクションヘッダー文字列テーブルセクションへのインデックスを保持します。次の図は、25 バイトの文字列テーブルと、さまざまなインデックスに関連付けられている文字列を示しています。

図 7–4 ELF 文字列テーブル

ELF 文字列テーブルの例。

次の表に、上の図に示した文字列テーブルの文字列を示しています。

表 7–18 ELF 文字列テーブルインデックス

インデックス 

文字列 

0

なし

1

name

7

Variable

11

able

16

able

24

ヌル文字列 

例で示しているとおり、文字列テーブルインデックスはセクションのすべてのバイトを参照できます。文字列は 2 回以上出現可能です。部分文字列に対する参照は存在可能です。単一文字列は複数回参照可能です。参照されない文字列も許可されます。

シンボルテーブル

オブジェクトファイルのシンボルテーブルは、プログラムのシンボル定義または参照の探索と再配置に必要な情報を保持します。シンボルテーブルインデックスは、この配列への添字です。インデックス 0 はシンボルテーブルの先頭エントリを指定し、また未定義シンボルインデックスとして機能します。詳細は、表 7–22 を参照してください。

シンボルテーブルエントリの形式 (sys/elf.h で定義されている) は、次のとおりです。

typedef struct {
        Elf32_Word      st_name;
        Elf32_Addr      st_value;
        Elf32_Word      st_size;
        unsigned char   st_info;
        unsigned char   st_other;
        Elf32_Half      st_shndx;
} Elf32_Sym;

typedef struct {
        Elf64_Word      st_name;
        unsigned char   st_info;
        unsigned char   st_other;
        Elf64_Half      st_shndx;
        Elf64_Addr      st_value;
        Elf64_Xword     st_size;
} Elf64_Sym;

この構造体の要素を次に示します。

st_name

オブジェクトファイルのシンボル文字列テーブルへのインデックス (シンボル名の文字表現を保持する)。値が 0 以外の場合、その値はシンボル名を与える文字列テーブルインデックスを表します。値が 0 の場合、シンボルテーブルエントリに名前は存在しません。

st_value

関連付けられているシンボルの値。この値は、絶対値やアドレスなど (状況に依存する) を表します。詳細は、シンボル値を参照してください。

st_size

多くのシンボルは、関連付けられているサイズを持っています。たとえば、データオブジェクトのサイズは、データオブジェクトに存在するバイト数です。この構成要素は、シンボルがサイズを持っていない場合またはサイズが不明な場合、0 を保持します。

st_info

シンボルの種類および結び付けられる属性。値と意味のリストを、表 7–19 に示します。次のコードは、値 (sys/elf.h で定義されている) の処理方法を示します。

#define ELF32_ST_BIND(info)          ((info)>> 4)
#define ELF32_ST_TYPE(info)          ((info) & 0xf)
#define ELF32_ST_INFO(bind, type)    (((bind)<<4)+((type)&0xf))

#define ELF64_ST_BIND(info)          ((info)>> 4)
#define ELF64_ST_TYPE(info)          ((info) & 0xf)
#define ELF64_ST_INFO(bind, type)    (((bind)<<4)+((type)&0xf))
st_other

シンボルの可視性。値とその意味のリストを、表 7–21 に示します。以下のコードは、32 ビットオブジェクトと 64 ビットオブジェクトの両方の値を操作する方法を示しています。その他のビットは 0 を含んでおり、特に意味はありません。

#define ELF32_ST_VISIBILITY(o)       ((o)&0x3)
#define ELF64_ST_VISIBILITY(o)       ((o)&0x3)
st_shndx

すべてのシンボルテーブルエントリは、何らかのセクションに関して定義されます。この構成要素は、該当するセクションヘッダーテーブルインデックスを保持します。いくつかのセクションインデックスは、特別な意味を示します。表 7–11 を参照してください。

この構成要素に SHN_XINDEX が含まれる場合は、実際のセクションヘッダーインデックスが大きすぎてこのフィールドに入りません。 実際の値は、タイプ SHT_SYMTAB_SHNDX の関連するセクション内に存在します。

シンボルのバインディングは、st_info で指定され、これにより、リンクの可視性と動作が決定します。

表 7–19 ELF シンボルのバインディング、(ELF32_ST_BINDELF64_ST_BIND)

名前 

値 

STB_LOCAL

0

STB_GLOBAL

1

STB_WEAK

2

STB_LOOS

10

STB_HIOS

12

STB_LOPROC

13

STB_HIPROC

15

STB_LOCAL

ローカルシンボル。ローカルシンボルは、ローカルシンボルの定義が存在するオブジェクトファイルの外部では見えません。同じ名前のローカルシンボルは、互いに干渉することなく複数のファイルに存在できます。

STB_GLOBAL

大域シンボル。大域シンボルは、結合されるすべてのオブジェクトファイルで見ることができます。あるファイルの大域シンボルの定義は、その大域シンボルへの別ファイルの未定義参照を解決します。

STB_WEAK

ウィークシンボル。ウィークシンボルは大域シンボルに似ていますが、ウィークシンボルの定義の優先順位は大域シンボルの定義より低いです。

STB_LOOS - STB_HIOS

この範囲の値 (両端の値を含む) は、オペレーティングシステム固有の意味のために予約されています。

STB_LOPROC - STB_HIPROC

この範囲の値は、プロセッサ固有の使用方法に予約されます。

大域シンボルとウィークシンボルは、主に 2 つの点で異なります。


注 –

ウィークシンボルは、主にシステムソフトウェアでの使用を意図したものです。アプリケーションプログラムでの使用は推奨されません。


各シンボルテーブルにおいて、STB_LOCAL 結び付きが存在するすべてのシンボルは、ウィークシンボルと大域シンボルの前に存在します。セクション に記述されているとおり、シンボルテーブルセクションの sh_info セクションヘッダー構成要素は、最初のローカルではないシンボルに対するシンボルテーブルインデックスを保持します。

シンボルのタイプは st_info フィールドで指定され、これにより、関連付けられた実体の一般的な分類が決定されます。

表 7–20 ELF シンボルのタイプ (ELF32_ST_TYPEELF64_ST_TYPE)

名前 

値 

STT_NOTYPE

0

STT_OBJECT

1

STT_FUNC

2

STT_SECTION

3

STT_FILE

4

STT_COMMON

5

STT_TLS

6

STT_LOOS

10

STT_HIOS

12

STT_LOPROC

13

STT_SPARC_REGISTER

13

STT_HIPROC

15

STT_NOTYPE

シンボルの種類は指定されません。

STT_OBJECT

シンボルは、データオブジェクト (変数や配列など) と関連付けられています。

STT_FUNC

シンボルは、関数または他の実行可能コードに関連付けられています。

STT_SECTION

シンボルは、セクションに関連付けられています。この種類のシンボルテーブルエントリは主に再配置を行うために存在しており、通常、STB_LOCAL に結び付けられています。

STT_FILE

慣例により、シンボルの名前はオブジェクトファイルに対応するソースファイルの名前を与えます。ファイルシンボルは STB_LOCAL に結び付けられており、セクションインデックスは SHN_ABS です。このシンボルは、存在する場合、ファイルの他の STB_LOCAL シンボルの前に存在します。 SHT_SYMTAB のシンボルインデックス 1 は、ファイル自身を表す STT_FILE シンボルです。慣例により、この後にはファイルの STT_SECTION シンボルと、ローカルシンボルに短縮されている大域シンボルが続きます。

STT_COMMON

このシンボルは、初期設定されていない共通ブロックを表します。これは、STT_OBJECT とまったく同じに扱われます。

STT_TLS

シンボルは、スレッド固有領域の実体を指定します。定義されている場合、実際のアドレスではなく、シンボルに割り当てられたオフセットを提供します。STT_TLS 型のシンボルは、特殊なスレッド固有領域の再配置だけによって参照され、スレッド固有領域の再配置は、STT_TLS 型のシンボルだけを参照します。詳細は、スレッド固有領域 を参照してください。

STT_LOOS - STT_HIOS

この範囲の値 (両端の値を含む) は、オペレーティングシステム固有の意味のために予約されています。

STT_LOPROC - STT_HIPROC

この範囲の値は、プロセッサ固有の使用方法に予約されます。

シンボルの可視性は、st_other フィールドで決定され、これは、再配置可能オブジェクトの中で指定できます。シンボルの可視性により、シンボルが実行可能ファイルまたは共有オブジェクトの一部になった後のシンボルへのアクセス方法が定義されます。

表 7–21 ELF シンボルの可視性

名前 

値 

STV_DEFAULT

0

STV_INTERNAL

1

STV_HIDDEN

2

STV_PROTECTED

3

STV_DEFAULT

STV_DEFAULT 属性を持つシンボルの可視性は、シンボルの結合タイプで指定されたものになります。つまり、大域シンボルおよびウィークシンボルは、それらの定義するコンポーネント (実行可能ファイルまたは共有オブジェクト) の外から見ることができます。ローカルシンボルは、「隠されて」います。大域シンボルおよびウィークシンボルを、「横取り可能」に設定 (別のコンポーネント内の同名定義によるオーバーライドを可能に) することもできます。

STV_PROTECTED

現在のコンポーネン内で定義されたシンボルは、それが他のコンポーネント内で参照可能であるが横取り可能ではない場合、保護されています。つまり、定義するコンポーネント内からのそのようなシンボルへの参照は、たとえデフォルトの規則によって間に入るような別のコンポーネントの定義があったとしても、そのコンポーネントの定義にもとづいて解決されなければなりません。STB_LOCAL 結合を持つシンボルは、STV_PROTECTED 可視性を持ちません。

STV_HIDDEN

現在のコンポーネント内で定義されたシンボルは、その名前が他のコンポーネントから参照することができない場合、「隠されて」います。そのようなシンボルは、保護される必要があります。この属性は、コンポーネントの外部インタフェースの管理に使用されます。そのようなシンボルによって指定されたオブジェクトは、そのアドレスが外部に渡された場合でも、他のコンポーネントから参照可能です。

再配置可能オブジェクトに含まれた「隠された」シンボルは、その再配置可能オブジェクトが実行可能ファイルまたは共有オブジェクトに含まれる時には、リンカーによって削除されるか STB_LOCAL 結合に変換されます。

STV_INTERNAL

この可視性の属性は、現在予約されています。

可視性の属性は、リンク編集中、実行可能ファイルまたは共有オブジェクト内のシンボルの解決には全く影響をおよぼしません。このような解決は、結合タイプによって制御されます。いったんリンカーがその解決を選択すると、これらの属性は以下の 2 つの必要条件を課します。どちらの必要条件も、リンクされるコード内の参照は、属性の利点を利用するために最適化されるという事実に基づくものです。

シンボル値がセクション内の特定位置を参照すると、セクションインデックス構成要素 st_shndx は、セクションヘッダーテーブルへのインデックスを保持します。再配置時にセクションが移動すると、シンボル値も変化します。シンボルへの参照はプログラム内の同じ位置を指し示し続けます。いくつかの特別なセクションインデックス値は、ほかの意味付けがされています。

SHN_ABS

シンボルは、絶対値 (再配置が行われても変化しない) を持ちます。

SHN_COMMON

シンボルは、割り当てられていない共通ブロックを示します。シンボル値は、セクションの sh_addralign 構成要素に類似した整列制約を与えます。リンカーは st_value の倍数のアドレスにシンボル記憶領域を割り当てます。シンボルのサイズは、必要なバイト数を示します。

SHN_UNDEF

このセクションテーブルインデックスは、シンボルが未定義であることを意味します。リンカーがこのオブジェクトファイルを、示されたシンボルを定義する他のオブジェクトファイルに結合すると、このシンボルに対するこのファイルの参照は実際の定義に結び付けられます。

すでに説明したように、インデックス 0 (STN_UNDEF) のシンボルテーブルエントリは予約されています。このエントリは以下の値を保持します。

表 7–22 ELF シンボルテーブルエントリ: インデックス 0

名前 

値 

注意 

st_name

0

名前が存在しない 

st_value

0

値は 0 

st_size

0

サイズはない 

st_info

0

種類はない。ローカル結合 

st_other

0

 

st_shndx

SHN_UNDEF

セクションは存在しない 

シンボル値

異なる複数のオブジェクトファイル型のシンボルテーブルエントリは、st_value 構成要素に対してわずかに異なる解釈を持ちます。

シンボルテーブル値は、異なる種類のオブジェクトファイルでも似た意味を持ちますが、適切なプログラムはデータに効率的にアクセスできます。

レジスタシンボル

SPARC アーキテクチャは、レジスタシンボル (大域レジスタを初期化するシンボル) をサポートします。レジスタシンボルに対するシンボルテーブルエントリには、以下の値が入ります。

表 7–23 SPARC: ELF シンボルテーブルエントリ: レジスタシンボル

フィールド 

意味 

st_name

シンボル名文字列テーブルへのインデックス。または 0 (スクラッチレジスタ)  

st_value

 レジスタ番号。整数レジスタの割り当てについては、ABI マニュアルを参照

st_size

未使用 (0)  

st_info

結合は標準的には STB_GLOBAL。種類は STT_SPARC_REGISTER でなければならない

st_other

未使用 (0)  

st_shndx

SHN_ABS (このオブジェクトがこのレジスタシンボルを初期化する場合)。SHN_UNDEF (それ以外の場合)

定義済みの SPARC 用レジスタ値を、次に示します。

表 7–24 SPARC: ELF レジスタ番号

名前 

値 

意味 

STO_SPARC_REGISTER_G2

0x2

%g2

STO_SPARC_REGISTER_G3

0x3

%g3

特定の大域レジスタのエントリが存在しないことは、その特定の大域レジスタがオブジェクトで使用されないことを意味します。

Syminfo テーブル

syminfo セクションには、Elf32_Syminfo 型または Elf64_Syminfo 型の複数のエントリが存在します。関連付けられているシンボルテーブルの各エントリ (sh_link) の .SUNW_syminfo セクションには、1 つのエントリが存在します。

このセクションがオブジェクトに存在している場合、関連付けられているシンボルテーブルからシンボルインデックスを取り出し、このシンボルインデックスを使ってこのセクションに存在する対応する Elf32_Syminfo または Elf64_Syminfo エントリを見つけることで、追加シンボル情報を見つけます。関連付けられているシンボルテーブルと、Syminfo テーブルには、必ず同じ数のエントリが存在します。

インデックス 0 は、Syminfo テーブルの現バージョン (SYMINFO_CURRENT) を格納するために使用されます。シンボルテーブルエントリ 0 は必ず UNDEF シンボルテーブルエントリに対して予約されるので、矛盾は発生しません。

Symfino エントリの形式 (sys/link.h で定義) を、次に示します

typedef struct {
        Elf32_Half      si_boundto;
        Elf32_Half      si_flags;
} Elf32_Syminfo;

typedef struct {
        Elf64_Half      si_boundto;
        Elf64_Half      si_flags;
} Elf64_Syminfo;

この構造体の要素を次に示します。

si_boundto

これは、.dynamic セクションのエントリへのインデックスで、sh_info フィールドにより示され、Syminfo フラグを増加させます。 たとえば、DT_NEEDED エントリは、Syminfo エントリに関連付けられた動的オブジェクトを示します。表 7–25 に示すエントリは、si_boundto に対して予約されています。

表 7–25 ELF si_boundto 予約値

名前 

値 

意味 

SYMINFO_BT_SELF

0xffff

自己に結びつけられるシンボル 

SYMINFO_BT_PARENT

0xfffe

親に結びつけられるシンボル。親は、この動的オブジェクトの読み込みを発生させる最初のオブジェクト 

si_flags

このビットフィールドでは、次の表に示すフラグを設定できます。

表 7–26 ELF Syminfo フラグ

名前 

値 

意味 

SYMINFO_FLG_DIRECT

0x01

外部オブジェクトの直接参照 

SYMINFO_FLG_COPY

0x04

コピー再配置の結果 

SYMINFO_FLG_LAZYLOAD

0x08

遅延読み込み可能な外部オブジェクト参照 

再配置

再配置は、記号参照を記号定義に関連付ける処理です。たとえば、プログラムが関数を呼び出すとき、関連付けられている呼び出し命令は、実行時に適切な宛先アドレスに制御を渡さなければなりません。再配置可能ファイルには、セクション内容の変更方法を示す情報が存在しなければなりません。その結果、実行可能オブジェクトファイルと共有オブジェクトファイルは、プロセスのプログラムイメージに関する正しい情報を保持できます。再配置エントリは、これらのデータを保持します。

再配置エントリは、以下の構造体 (sys/elf.h で定義) を持つことができます。

typedef struct {
        Elf32_Addr      r_offset;
        Elf32_Word      r_info;
} Elf32_Rel;
 
typedef struct {
        Elf32_Addr      r_offset;
        Elf32_Word      r_info;
        Elf32_Sword     r_addend;
} Elf32_Rela;

typedef struct {
        Elf64_Addr      r_offset;
        Elf64_Xword     r_info;
} Elf64_Rel;
 
typedef struct {
        Elf64_Addr      r_offset;
        Elf64_Xword     r_info;
        Elf64_Sxword    r_addend;
} Elf64_Rela;

この構造体の要素を次に示します。

r_offset

この構成要素は、再配置処理を適用する位置を与えます。オブジェクトファイルが異なると、この構成要素の解釈が多少異なります。

再配置可能ファイルの場合、値はセクションのオフセットを示します。再配置セクション自身は、ファイル内の別セクションの変更方法を示します。再配置オフセットは、2 番目のセクション内の領域を指定します。

実行可能ファイルまたは共有オブジェクトの場合、値は再配置の影響を受ける領域の仮想アドレスを示します。この情報により、再配置エントリは、実行時リンカーにとって、より意味のあるものになります。

関連するプログラムによるアクセスの効率を高めるため、構成要素の解釈はオブジェクトファイルによって異なりますが、再配置タイプの意味は同じになります。

r_info

この構成要素は、再配置が行われなければならないシンボルテーブルインデックスと、適用される再配置の種類を与えます。たとえば、呼び出し命令の再配置エントリは、呼び出される関数のシンボルテーブルインデックスを保持します。インデックスが STN_UNDEF (未定義シンボルインデックス) の場合、再配置はシンボル値として 0 を使用します。

再配置の種類はプロセッサに固有です。再配置エントリの再配置の種類またはシンボルテーブルインデックスは、それぞれ ELF32_R_TYPE または ELF32_R_SYM をエントリの r_info 構成要素に適用した結果です。

#define ELF32_R_SYM(info)             ((info)>>8)
#define ELF32_R_TYPE(info)            ((unsigned char)(info))
#define ELF32_R_INFO(sym, type)       (((sym)<<8)+(unsigned char)(type))

#define ELF64_R_SYM(info)             ((info)>>32)
#define ELF64_R_TYPE(info)            ((Elf64_Word)(info))
#define ELF64_R_INFO(sym, type)       (((Elf64_Xword)(sym)<<32)+ \ 
                                        (Elf64_Xword)(type))

Elf64_Rel および Elf64_Rela 構造の場合、r_info フィールドはさらに 8 ビットの識別子と 24 ビットの付随的なデータに分割されます。

#define ELF64_R_TYPE_DATA(info)       (((Elf64_Xword)(info)<<32)>>40)
#define ELF64_R_TYPE_ID(info)         (((Elf64_Xword)(info)<<56)>>56)
#define ELF64_R_TYPE_INFO(data, type) (((Elf64_Xword)(data)<<8)+ \ 
                                        (Elf64_Xword)(type))
r_addend

この構成要素は、再配置可能フィールドに格納される値の計算に使用される定数加数を指定します。

Rela エントリには、明示的加数が含まれます。Rel エントリには、変更される位置に暗黙の加数が存在します。32 ビットおよび 64 ビット SPARC では、それぞれ Elf32_Rela および Elf64_Rela 再配置エントリのみを使用します。したがって、r_addend 構成要素は再配置加数として機能します。x86 は、Elf32_Rel 再配置エントリのみを使用します。再配置対象のフィールドは、加数を保持します。すべての場合において、加数と計算された結果は同じバイト順序を使用します。

再配置セクションは、ほかに 2 つのセクションを参照することがあります。1 つは sh_info セクションヘッダーエントリにより示されるシンボルテーブルで、もう 1 つは sh_link セクションヘッダーエントリにより示される変更対象のセクションです。セクション に、各セクションの関係を示します。再配置可能オブジェクト内に再配置セクションが存在するが、実行可能ファイルおよび共有オブジェクトの場合には省略可能である場合、sh_link エントリが必要になります。再配置オフセットが存在すれば、再配置を実行できます。

再配置型 (プロセッサ固有)

再配置エントリには、次の図に示す命令およびデータフィールドの変更方法が記述されます。ビット番号はボックスの下隅に表示されます。

SPARC プラットフォームの場合、再配置エントリはバイト (byte8)、ハーフワード (half16)、またはワード (word、その他) に適用されます。

SPARC の再配置エントリ。

64 ビット SPARC では、再配置は拡張ワード (xword64) にも適用されます。

SPARCV9 の再配置エントリ。

x86 の場合、再配置エントリはワード (word32) に適用されます。

x86 の再配置エントリ。

word32 は、任意バイト整列が存在する 4 バイトを占める 32 ビットフィールドを指定します。これらの値は、x86 アーキテクチャにおけるほかのワード値と同じバイト順序を使用します。

x86 の再配置エントリ。

いずれの場合でも r_offset 値は、影響が与えられる領域の先頭バイトのオフセットまたは仮想アドレスを指定します。再配置タイプは、変更されるビットと、これらのビットの値の計算方法を指定します。

以下の再配置型の計算では、操作により、再配置可能ファイルが実行可能ファイルまたは共有オブジェクトファイルに変換されることが仮定されています。概念上、リンカーは 1 つまたは複数の再配置可能ファイルを併合して出力します。リンカーは、まず入力ファイルの結合/配置方法を決めます。次にシンボル値を更新します。最後に再配置を行います。実行可能オブジェクトファイルと共有オブジェクトファイルに適用される再配置は類似しており、同じ結果を実現します。このセクションの表では、以下の表記が使用されています。

A

再配置可能フィールドの値を計算するために使用される加数。

B

実行時に共有オブジェクトがメモリーに読み込まれるベースアドレス。一般に共有オブジェクトファイルは 0 ベース仮想アドレスで作成されますが、実行アドレスは異なります。詳細は、プログラムヘッダーを参照してください。

G

実行時に再配置エントリのシンボルのアドレスが存在する大域オフセットテーブルへのオフセット。詳細は、大域オフセットテーブル (プロセッサ固有)を参照してください。

GOT

大域オフセットテーブルのアドレス。詳細は、大域オフセットテーブル (プロセッサ固有)を参照してください。

L

シンボルに対するプロシージャのリンクテーブルエントリのセクションオフセットまたはアドレス。プロシージャのリンクテーブル (プロセッサ固有)を参照してください。

P

再配置される領域のセクションオフセットまたはアドレス (r_offset を使用して計算)。

S

インデックスが再配置エントリ内に存在するシンボルの値。

SPARC: 再配置型

表 7–28 に示されているフィールド名は、再配置型がオーバーフローを検査するかどうかを通知します。計算される再配置値は意図したフィールドより大きい場合があり、再配置型によっては値の適合を検証 (V) したり結果を切り捨てたり (T) することがあります。たとえば、V-simm13 は、計算された値が simm13 フィールドの外部に 0 以外の有意ビットを持つことがないことを意味します。

表 7–27 SPARC: ELF 再配置型

名前 

値 

フィールド 

計算 

R_SPARC_NONE

0

なし 

なし 

R_SPARC_8

1

V-byte8

S + A

R_SPARC_16

2

V-half16

S + A

R_SPARC_32

3

V-word32

S + A

R_SPARC_DISP8

4

V-byte8

S + A - P

R_SPARC_DISP16

5

V-half16

S + A - P

R_SPARC_DISP32

6

V-disp32

S + A - P

R_SPARC_WDISP30

7

V-disp30

(S + A - P)>> 2

R_SPARC_WDISP22

8

V-disp22

(S + A - P)>> 2

R_SPARC_HI22

9

T-imm22

(S + A)>> 10

R_SPARC_22

10

V-imm22

S + A

R_SPARC_13

11

V-simm13

S + A

R_SPARC_LO10

12

T-simm13

(S + A) & 0x3ff

R_SPARC_GOT10

13

T-simm13

G & 0x3ff

R_SPARC_GOT13

14

V-simm13

G

R_SPARC_GOT22

15

T-simm22

G>> 10

R_SPARC_PC10

16

T-simm13

(S + A - P) & 0x3ff

R_SPARC_PC22

17

V-disp22

(S + A - P)>> 10

R_SPARC_WPLT30

18

V-disp30

(L + A - P)>> 2

R_SPARC_COPY

19

なし 

なし 

R_SPARC_GLOB_DAT

20

V-word32

S + A

R_SPARC_JMP_SLOT

21

なし 

R_SPARC_JMP_SLOT」を参照

R_SPARC_RELATIVE

22

V-word32

B + A

R_SPARC_UA32

23

V-word32

S + A

R_SPARC_PLT32

24

V-word32

L + A

R_SPARC_HIPLT22

25

T-imm22

(L + A)>> 10

R_SPARC_LOPLT10

26

T-simm13

(L + A) & 0x3ff

R_SPARC_PCPLT32

27

V-word32

L + A - P

R_SPARC_PCPLT22

28

V-disp22

(L + A - P)>> 10

R_SPARC_PCPLT10

29

V-simm13

(L + A - P) & 0x3ff

R_SPARC_10

30

V-simm10

S + A

R_SPARC_11

31

V-simm11

S + A

R_SPARC_OLO10

33

V-simm13

((S + A) & 0x3ff) + O

R_SPARC_HH22

34

V-imm22

(S + A)>> 42

R_SPARC_HM10

35

T-simm13

((S + A)>> 32) & 0x3ff

R_SPARC_LM22

36

T-imm22

(S + A)>> 10

R_SPARC_PC_HH22

37

V-imm22

(S + A - P)>> 42

R_SPARC_PC_HM10

38

T-simm13

((S + A - P)>> 32) & 0x3ff

R_SPARC_PC_LM22

39

T-imm22

(S + A - P)>> 10

R_SPARC_WDISP16

40

V-d2/disp14

(S + A - P)>> 2

R_SPARC_WDISP19

41

V-disp19

(S + A - P)>> 2

R_SPARC_7

43

V-imm7

S + A

R_SPARC_5

44

V-imm5

S + A

R_SPARC_6

45

V-imm6

S + A

R_SPARC_HIX22

48

V-imm22

( (S + A) ^ 0xffffffffffffffff)>> 10

R_SPARC_LOX10

49

T-simm13

((S + A) & 0x3ff) | 0x1c00

R_SPARC_H44

50

V-imm22

(S + A)>> 22

R_SPARC_M44

51

T-imm10

( (S + A)>> 12) & 0x3ff

R_SPARC_L44

52

T-imm13

(S + A) & 0xfff

R_SPARC_REGISTER

53

V-word32

S + A

R_SPARC_UA16

55

V-half16

S + A

いくつかの再配置型には、単純な計算を超えた意味が存在します。

R_SPARC_GOT10

R_SPARC_LO10 に似ていますが、シンボルの大域オフセットテーブルエントリのアドレスを参照する点が異なります。また、 R_SPARC_GOT10 は、大域オフセットテーブルの作成をリンカーに指示します。

R_SPARC_GOT13

R_SPARC_13 に似ていますが、シンボルの大域オフセットテーブルエントリのアドレスを参照する点が異なります。また、 R_SPARC_GOT13 は、大域オフセットテーブルの作成をリンカーに指示します。

R_SPARC_GOT22

R_SPARC_22 に似ていますが、シンボルの大域オフセットテーブルエントリのアドレスを参照する点が異なります。また、 R_SPARC_GOT22 は、大域オフセットテーブルの作成をリンカーに指示します。

R_SPARC_WPLT30

R_SPARC_WDISP30 に似ていますが、シンボルのプロシージャリンクテーブルエントリのアドレスを参照する点が異なります。また、R_SPARC_WPLT30 は、プロシージャのリンクテーブル作成をリンカーに指示します。

R_SPARC_COPY

リンカーは、この際配置型を作成して動的実行可能ファイルが読み取り専用のテキストセグメントを保持できるようにします。この再配置型のオフセット構成要素は、書き込み可能セグメントの位置を参照します。シンボルテーブルインデックスは、現オブジェクトファイルと共有オブジェクトの両方に存在する必要があるシンボルを指定します。実行時、実行時リンカーは共有オブジェクトのシンボルに関連付けられているデータを、オフセットで指定されている位置にコピーします。コピー再配置を参照してください。

R_SPARC_GLOB_DAT

R_SPARC_32 に似ていますが、大域オフセットテーブルエントリを指定されたシンボルのアドレスに設定する点が異なります。この特殊な再配置型を使うと、シンボルと大域オフセットテーブルエントリの対応付けを判定できます。

R_SPARC_JMP_SLOT

リンカーは、動的オブジェクトが遅延結合を提供できるようにするため、この再配置型を作成します。この再配置型のオフセット構成要素は、プロシージャのリンクテーブルエントリの位置を与えます。実行時リンカーは、プロシージャのリンクテーブルエントリを変更して指定シンボルアドレスに制御を渡します。

R_SPARC_RELATIVE

リンカーは、動的オブジェクト用にこの再配置型を作成します。この再配置型のオフセット構成要素は、相対アドレスを表す値が存在する、共有オブジェクト内の位置を与えます。実行時リンカーは共有オブジェクトが読み込まれる仮想アドレスに相対アドレスを加算することで、対応する仮想アドレスを計算します。この型に対する再配置エントリは、シンボルテーブルインデックスに対して 0 を指定しなければなりません。

R_SPARC_UA32

R_SPARC_32 に似ていますが、整列されていないワードを参照する点が異なります。再配置されるワードは、任意整列が存在する 4 つの別個のバイトとして処理されなければなりません (アーキテクチャの要求に従って整列されるワードとしては処理されません)。

R_SPARC_OLO10

R_SPARC_LO10 に似ていますが、符号付き13 ビット即値フィールドを十分に使用するために余分なオフセットが追加される点が異なります。

R_SPARC_LM22

R_SPARC_HI22 に似ていますが、妥当性検査ではなく切り捨てを行う点が異なります。

R_SPARC_PC_LM22

R_SPARC_PC22に似ていますが、妥当性検査ではなく切り捨てを行う点が異なります。

R_SPARC_HIX22

64 ビットアドレス空間の最上位 4G バイトに限定される実行可能ファイルに対して R_SPARC_LOX10 と共に使用されます。R_SPARC_HI22 に似ていますが、リンク値の 1 の補数を与えます。

R_SPARC_LOX10

R_SPARC_HIX22 と共に使用されます。R_SPARC_LO10 に似ていますが、必ずリンク値のビット 10 からビット 12 までを設定します。

R_SPARC_L44

再配置型 R_SPARC_H44 および R_SPARC_M44 と共に使用され、44 ビット絶対アドレス指定モデルを生成します。

R_SPARC_REGISTER

レジスタシンボルの初期化に使用されます。この再配置型のオフセット構成要素には、初期化されるレジスタ番号が存在します。SHN_ABS 型のこのレジスタには、対応するレジスタシンボルが存在しなければなりません。

64-bit SPARC: 再配置型

次の表に示す再配置型は、32 ビット SPARC 用に定義された再配置型を拡張または変更します。詳細は、SPARC: 再配置型を参照してください。

表 7–28 64-bit SPARC: ELF 再配置型

名前 

値 

フィールド 

計算 

R_SPARC_HI22

9

V-imm22

(S + A)>> 10

R_SPARC_GLOB_DAT

20

V-xword64

S + A

R_SPARC_RELATIVE

22

V-xword64

B + A

R_SPARC_64

32

V-xword64

S + A

R_SPARC_DISP64

46

V-xword64

S + A - P

R_SPARC_PLT64

47

V-xword64

L + A

R_SPARC_REGISTER

53

V-xword64

S + A

R_SPARC_UA64

54

V-xword64

S + A

x86: 再配置型

次の表に、32 ビット x86 用に定義された再配置型を示します。

表 7–29 x86: ELF 再配置型

名前 

値 

フィールド 

計算 

R_386_NONE

0

なし 

なし 

R_386_32

1

word32

S + A

R_386_PC32

2

word32

S + A - P

R_386_GOT32

3

word32

G + A

R_386_PLT32

4

word32

L + A - P

R_386_COPY

5

なし 

なし 

R_386_GLOB_DAT

6

word32

S

R_386_JMP_SLOT

7

word32

S

R_386_RELATIVE

8

word32

B + A

R_386_GOTOFF

9

word32

S + A - GOT

R_386_GOTPC

10

word32

GOT + A - P

R_386_32PLT

11

word32

L + A

いくつかの再配置型には、単純な計算を超えた意味が存在します。

R_386_GOT32

大域オフセットテーブルのベースからシンボルの大域オフセットテーブルエントリまでの距離を計算します。この再配置型はまた、大域オフセットテーブルを作成するようにリンカーに指示します。

R_386_PLT32

シンボルのプロシージャのリンクテーブルエントリのアドレスを計算し、かつプロシージャのリンクテーブルを作成するようにリンカーに指示します。

R_386_COPY

リンカーは、この再配置型を作成して、動的実行可能ファイルが読み取り専用のテキストセグメントを保持できるようにします。この再配置型のオフセット構成要素は、書き込み可能セグメントの位置を参照します。シンボルテーブルインデックスは、現オブジェクトファイルと共有オブジェクトの両方に存在する必要があるシンボルを指定します。実行時、実行時リンカーは共有オブジェクトのシンボルに関連付けられているデータを、オフセットで指定されている位置にコピーします。コピー再配置を参照してください。

R_386_GLOB_DAT

大域オフセットテーブルエントリを、指定されたシンボルのアドレスに設定します。この特殊な再配置型を使うと、シンボルと大域オフセットテーブルエントリの対応付けを判定できます。

R_386_JMP_SLOT

リンカーは、動的オブジェクトが遅延結合を提供できるようにするため、この再配置型を作成します。この再配置型のオフセット構成要素は、プロシージャのリンクテーブルエントリの位置を与えます。実行時リンカーは、プロシージャのリンクテーブルエントリを変更して指定シンボルアドレスに制御を渡します。

R_386_RELATIVE

リンカーは、動的オブジェクト用にこの再配置型を作成します。この再配置型のオフセット構成要素は、相対アドレスを表す値が存在する、共有オブジェクト内の位置を与えます。実行時リンカーは共有オブジェクトが読み込まれる仮想アドレスに相対アドレスを加算することで、対応する仮想アドレスを計算します。この型に対する再配置エントリは、シンボルテーブルインデックスに対して 0 を指定しなければなりません。

R_386_GOTOFF

シンボルの値と大域オフセットテーブルのアドレスの差を計算します。この再配置型はまた、大域オフセットテーブルを作成するようにリンカーに指示します。

R_386_GOTPC

R_386_PC32 に似ていますが、計算を行う際に大域オフセットテーブルのアドレスを使用する点が異なります。この再配置で参照されるシンボルは、通常 _GLOBAL_OFFSET_TABLE_ です。この再配置型はまた、大域オフセットテーブルを作成するようにリンカーに指示します。

Comdat セクション

Comdat セクションは、セクション名 (sh_name) で一意に示されます。 リンカーが、同じセクション名の SHT_SUNW_COMDAT 型の複数のセクションと出会うと、最初のセクションが保持され、他のすべてのセクションは捨てられます。捨てられた SHT_SUNW_COMDAT セクションに適用されたすべての再配置は無視され、かつ捨てられたセクションで定義されたすべてのシンボルも保持されません。

また、リンカーはセクション命名規約をサポートします。このセクション命名規約は、コンパイラが -xF オプションで呼び出されるとき、セクションの再順序付けで使用されます。セクションが、.funcname%sectname という名前のセクションに入れられると、保持された最後の SHT_SUNW_COMDAT セクションが、.sectname で示されるセクションに合体します。この方法を使用すると、SHT_SUNW_COMDAT セクションを最終的に .text.data、または他のセクションに入れることができます。

バージョン情報

リンカーで作成されるオブジェクトには、2 つの型のバージョン情報が存在できます。

これらのセクションを形成する構造体は、sys/link.h で定義されます。バージョン情報が存在するセクションには、.SUNW_version という名前が付けられます。

バージョン定義セクション

このセクションは、SHT_SUNW_verdef 型で定義されます。このセクションが存在する場合、SHT_SUNW_versym セクションも存在しなければなりません。これら 2 つの構造体を使用することで、シンボルとバージョン定義の関連付けがファイル内で維持されます。(バージョン定義の作成を参照)。このセクションの要素の構造体は、次のとおりです。

typedef struct {
        Elf32_Half      vd_version;
        Elf32_Half      vd_flags;
        Elf32_Half      vd_ndx;
        Elf32_Half      vd_cnt;
        Elf32_Word      vd_hash;
        Elf32_Word      vd_aux;
        Elf32_Word      vd_next;
} Elf32_Verdef;
 
typedef struct {
        Elf32_Word      vda_name;
        Elf32_Word      vda_next;
} Elf32_Verdaux;

typedef struct {
        Elf64_Half      vd_version;
        Elf64_Half      vd_flags;
        Elf64_Half      vd_ndx;
        Elf64_Half      vd_cnt;
        Elf64_Word      vd_hash;
        Elf64_Word      vd_aux;
        Elf64_Word      vd_next;
} Elf64_Verdef;
 
typedef struct {
        Elf64_Word      vda_name;
        Elf64_Word      vda_next;
} Elf64_Verdaux;

この構造体の要素を次に示します。

vd_version

この構成要素は、構造体自身のバージョンを示します (次の表を参照)。

表 7–30 ELF バージョン定義構造のバージョン

名前 

値 

意味 

VER_DEF_NONE

0

無効バージョン 

VER_DEF_CURRENT

>=1

現在のバージョン 

値 1 は最初のセクション形式を示し、拡張した場合は番号を大きくします。VER_DEF_CURRENT の値は、現在のバージョン番号を示すために必要に応じて変化します。

vd_flags

この構成要素は、バージョン定義に固有の情報を保持します (次の表を参照)。

表 7–31 ELF バージョン定義セクションのフラグ

名前 

値 

意味 

VER_FLG_BASE

0x1

ファイル自身のバージョン定義 

VER_FLG_WEAK

0x2

ウィークバージョン識別子 

ベースのバージョン定義は、バージョン定義またはシンボルの自動短縮簡約がファイルに適用されている場合、必ず存在します。ベースバージョンは、ファイルの予約されたシンボルに対してデフォルトのバージョンを与えます。ウィークバージョン定義には、関連付けられているシンボルは 存在しません。詳細は、ウィークバージョン定義の作成を参照してください。

vd_ndx

バージョンインデックス。各バージョン定義には、SHT_SUNW_versym エントリを適切なバージョン定義に関連付ける一意のインデックスが存在します。

vd_cnt

Elf32_Verdaux 配列の要素数。

vd_hash

バージョン定義名のハッシュ値。この値は、ハッシュテーブルに記述されているハッシング機能により生成されます。

vd_aux

この Elf32_Verdef エントリの先頭からバージョン定義名の Elf32_Verdaux 配列までのバイトオフセット。配列の先頭要素は存在しなければなりません。これはこの構造体が定義するバージョン定義文字列を指し示します。追加要素は存在可能です。要素の番号は vd_cnt 値で示されます。これらの要素は、このバージョン定義の依存関係を表します。これらの依存関係の各々は、独自のバージョン定義構造体を持っています。

vd_next

この Elf32_Verdef 構造体の先頭から次の Elf32_Verdef エントリまでのバイトオフセット。

vda_name

ヌル文字で終わる文字列への文字列テーブルオフセットで、バージョン定義名を指定します。

vda_next

この Elf32_Verdaux エントリの先頭から次の Elf32_Verdaux エントリまでのバイトオフセット。

バージョンシンボルセクション

バージョンシンボルセクションは SHT_SUNW_versym 型で定義されており、以下の構造を持つ要素配列からなります。

typedef Elf32_Half      Elf32_Versym;
typedef Elf64_Half      Elf64_Versym;

配列の要素数は、関連付けられているシンボルテーブルに存在するシンボルテーブルエントリ数に等しくなければなりません。この値は、セクションの sh_link 値で決定されます。配列の各要素には 1 つのインデックスが存在し、このインデックスは表 7–32 に示す値をとることができます。

表 7–32 ELF バージョン依存インデックス

名前 

値 

意味 

VER_NDX_LOCAL

0

シンボルにローカル適用範囲が存在する 

VER_NDX_GLOBAL

1

シンボルに大域適用範囲 (ベースバージョン定義に割り当てられる) が存在する 

 

>1

シンボルに大域適用範囲 (ユーザー定義バージョン定義に割り当てられる) が存在する 

VER_NDX_GLOBAL より大きいインデックス値は、SHT_SUNW_verdef セクションのエントリの vd_ndx 値に一致しなければなりません。VER_NDX_GLOBAL より大きいインデックス値が存在しない場合、SHT_SUNW_verdef セクションが存在する必要はありません。

バージョン依存セクション

バージョン依存セクションは、SHT_SUNW_verneed 型で定義されます。 このセクションは、ファイルの動的依存性から要求されるバージョン定義を示すことで、ファイルの動的依存性要求を補足します。依存性にバージョン定義が存在する場合のみ、記録が このセクションにおいて行われます。 このセクションの要素の構造体は、次のとおりです。

typedef struct {
        Elf32_Half      vn_version;
        Elf32_Half      vn_cnt;
        Elf32_Word      vn_file;
        Elf32_Word      vn_aux;
        Elf32_Word      vn_next;
} Elf32_Verneed;
 
typedef struct {
        Elf32_Word      vna_hash;
        Elf32_Half      vna_flags;
        Elf32_Half      vna_other;
        Elf32_Word      vna_name;
        Elf32_Word      vna_next;
} Elf32_Vernaux;

typedef struct {
        Elf64_Half      vn_version;
        Elf64_Half      vn_cnt;
        Elf64_Word      vn_file;
        Elf64_Word      vn_aux;
        Elf64_Word      vn_next;
} Elf64_Verneed;
 
typedef struct {
        Elf64_Word      vna_hash;
        Elf64_Half      vna_flags;
        Elf64_Half      vna_other;
        Elf64_Word      vna_name;
        Elf64_Word      vna_next;
} Elf64_Vernaux;

この構造体の要素を次に示します。

vn_version

この構成要素は、構造体自身のバージョンを示します (次の表を参照)。

表 7–33 ELF バージョン依存構造体のバージョン

名前 

値 

意味 

VER_NEED_NONE

0

無効バージョン 

VER_NEED_CURRENT

>=1

現在のバージョン 

値 1 は最初のセクション形式を示し、拡張した場合は番号を大きくします。VER_NEED_CURRENT の値は、現在のバージョン番号を示すために必要に応じて変化します。

vn_cnt

Elf32_Vernaux 配列の要素数。

vn_file

ヌル文字で終わっている文字列への文字列テーブルオフセットで、バージョン依存性が存在するファイル名を指定します。この名前は、ファイル内に存在する .dynamic 依存性のどれかに一致します。詳細は、動的セクションを参照してください。

vn_aux

この Elf32_Verneed エントリの先頭から、関連付けられているファイル依存性から要求されるバージョン定義の Elf32_Vernaux 配列までのバイトオフセット。少なくとも 1 つのバージョン依存性が存在しなければなりません。追加バージョン依存性は存在することができ、また番号は vn_cnt 値で示されます。

vn_next

この Elf32_Verneed エントリの先頭から次の Elf32_Verneed エントリまでのバイトオフセット。

vna_hash

バージョン依存性の名前のハッシュ値。この値は、ハッシュテーブルに記述されているハッシング機能により生成されます。

vna_flags

バージョン依存性に固有の情報 (次の表を参照)。

表 7–34 ELF バージョン依存構造のフラグ

名前 

値 

意味 

VER_FLG_WEAK

0x2

ウィークバージョン識別子 

ウィークバージョン依存性は、ウィークバージョン定義への最初の結び付きを示します。

vna_other

現在、使用されていません。

vna_name

ヌル文字で終わる文字列への文字列テーブルオフセット。バージョン依存性の名前を与えます。

vna_next

この Elf32_Vernaux エントリの先頭から次の Elf32_Vernaux エントリまでのバイトオフセット。

注釈セクション

ソフトウェアを開発して販売する場合、オブジェクトファイルに特別な情報を付加して、ほかのプログラムから準拠性や互換性などを確認できるようにしたいことがあります。SHT_NOTE 型のセクションと PT_NOTE 型のプログラムヘッダー要素は、この目的に対して使用できます。

次の図に示すように、セクションとプログラムヘッダー要素内の注釈情報は任意の数のエントリを保持します。64 ビットおよび 32 ビットのオブジェクトについては、各エントリはターゲットプロセッサの形式になっている 4 バイトワードの配列です。注釈情報の構造についての説明を容易にするため、ラベルを 図 7–6 に示します。 ただし、ラベルは仕様の一部ではありません。

図 7–5 注釈の情報

ELF セクションの注釈情報。

この構造体の要素を次に示します。

nameszname

名前の先頭 namesz バイトには、エントリの所有者または作者を示す、ヌル文字で終わっている文字列が存在します。名前の競合を回避するための正式な機構は存在しません。慣例では、ベンダーは識別子として自身の名前 (“XYZ Computer Company” など) を使用します。name が存在しない場合、namesz は 0 になります。name の領域は、パッドを使用して、4 バイトに整列します。必要であれば namesz は、パッドの長さを含みません。

descszdesc

desc の先頭 descsz バイトは、注釈記述を保持します。注釈の記述が存在しない場合、descsz は 0 になります。desc の領域は、必要であればパッドを使用して、4 バイトに整列します。descsz はパットの長さを含みません。

type

注釈の解釈を示します。各エントリの作者は、自分で種類を管理します。1 つの type 値に関して複数の解釈が存在する場合があります。したがって、注釈の記述を認識するには、nametype の両方を認識しなければなりません。type は現在、負でない値でなければなりません。

次の図に示す注釈セグメントは、2 つのエントリを保持しています。

図 7–6 注釈セグメントの例

ELF セクションの注釈の例。


注 –

システムは注釈情報 (名前が存在せず (namesz == 0)、名前の長さが 0 (name[0] == '\0') を予約していますが、現在 type を定義していません。他のすべての名前には、少なくとも 1 つのヌル以外の文字が存在しなければなりません。


移動セクション

一般に、ELF ファイル内では、初期設定されたデータ変数はオブジェクトファイル内で維持されます。データ変数が非常に大きく、初期設定された (ゼロ以外の) 要素が少数の場合でも、変数全体はやはりオブジェクトファイルで維持されます。

サイズの大きな部分的に初期設定されたデータ変数を含むオブジェクト (FORTRAN COMMON ブロックなどのような) は、多大なディスクスペースオーバーヘッドをもたらすことがあります。SHT_SUNW_move セクションは、これらのデータ変数を圧縮するメカニズムを提供します。これにより、関連するオブジェクトのディスクサイズを減らすことができます。

SHT_SUNW_move セクションは、ELF32_Move または Elf64_Move 型の複数のエントリを含みます。これらのエントリはデータ変数を一時的項目 (.bss) として定義することが可能で、そのためオブジェクトファイル内にスペースを占めることなく、実行時にオブジェクトのメモリーイメージに反映させることができます。移動レコードは、完全なデータ変数を構成するためにデータについてメモリーイメージがどのように初期設定されるかを確立します。

ELF32_Move および Elf64_Move エントリは次のように定義されます。

typedef struct {
        Elf32_Lword       m_value;
        Elf32_Word        m_info;
        Elf32_Word        m_poffset;
        Elf32_Half        m_repeat;
        Elf32_Half        m_stride;
} Elf32_Move;

#define ELF32_M_SYM(info)       ((info)>>8)
#define ELF32_M_SIZE(info)      ((unsigned char)(info))
#define ELF32_M_INFO(sym, size) (((sym)<<8)+(unsigned char)(size))

typedef struct {
        Elf64_Lword       m_value;
        Elf64_Xword       m_info;
        Elf64_Xword       m_poffset;
        Elf64_Half        m_repeat;
        Elf64_Half        m_stride;
} Elf64_Move;

#define ELF64_M_SYM(info)       ((info)>>8)
#define ELF64_M_SIZE(info)      ((unsigned char)(info))
#define ELF64_M_INFO(sym, size) (((sym)<<8)+(unsigned char)(size))

これらの構造体の要素を次に示します。

m_value

初期設定値で、この値はメモリーイメージへ移されます。

m_info

初期設定が適用されるものに関連するシンボルテーブルインデックス、および初期設定されるオフセットのサイズ (単位: バイト)。構成要素の下位 8 ビットはサイズを定義し、1、2、4、または 8 になります。上位バイトはシンボルインデックスを定義します。

m_poffset

初期設定が適用される関連シンボルからの相対オフセット。

m_repeat

繰り返し回数。

m_stride

スキップの数。この値は、繰り返し初期設定を実行する際にスキップするユニットの数を示します。1 ユニットは m_info で定義された初期設定オブジェクトのサイズです。m_stride の値が 0 の場合、初期設定を m_repeat ユニット連続して行うことを示します。

次のデータ定義は、通常、オブジェクトファイル内で 0x8000 バイトを消費します。

typedef struct {
        int     one;
        char    two;
} Data

Data move[0x1000] = {
        {0, 0},       {1, '1'},     {0, 0},
        {0xf, 'F'},   {0xf, 'F'},   {0, 0},
        {0xe, 'E'},   {0, 0},       {0xe, 'E'}
};

SHT_SUNW_move セクションを使用して、データ項目を .bss セクションへ移動し、関連する移動エントリで初期設定することができます。


$ elfdump -s data | fgrep move
      [17]  0x00020868 0x00008000  OBJT GLOB 0   .bss       move
$ elfdump -m data

Move Section: .SUNW_move
        offset  ndx     size    repeat  stride  value   with respect to
        0x8     0x17    4       1       0       0x1     move
        0xc     0x17    1       1       0       0x31    move
        0x18    0x17    4       2       2       0xf     move
        0x1c    0x17    1       2       8       0x46    move
        0x28    0x17    4       2       4       0xe     move
        0x2c    0x17    1       2       16      0x45    move

再配置可能オブジェクトから提供される移動セクションは連結され、リンカーにより作成されるオブジェクト内に出力されます。 ただし、次の条件が成り立つ場合、リンカーは移動エントリを処理し、その内容を従来のデータ項目に拡張します。

スレッド固有領域

コンパイル時に割り当てられたデータを、スレッドごとに複製して関連付けるために、スレッド固有領域 (thread-local storage、TLS) セクションを使用して、そのようなデータのサイズおよび初期の内容を指定することができます。

SHF_TLS 型のセクションは、初期化されていないスレッド固有領域と初期化されたスレッド固有領域を提供します。初期化されていないセクションである .tbss は、適切な整列のためのパディングに従って、初期化されたセクションである .tdata および .tdata1 の直後に割り当てられます。セクションの組み合わせにより TLS テンプレートが形成され、この TLS テンプレートは、新しいスレッドが作成されるたびに、スレッド固有領域の割り当てに使用されます。

このテンプレートの初期化された部分を、TLS 初期化イメージと呼びます。初期化されたスレッド固有変数の結果発生する再配置はすべて、このテンプレートに適用され、新しいスレッドが初期値を要求すると、再配置された値が使用されます。

1 つの PT_TLS プログラムエントリは、1 つの TLS テンプレートを記述し、次の構成要素を持ちます。

表 7–35 ELF PT_TLS プログラムエントリ

構成要素 

値 

p_offset

TLS 初期化イメージのファイルオフセット

p_vaddr

TLS 初期化イメージの仮想メモリーアドレス

p_paddr

予約済み 

p_filesz

TLS 初期化イメージのサイズ

p_memsz

TLS テンプレートの合計サイズ

p_flags

PF_R

p_align

TLS テンプレートの整列

動的リンク

このセクションは、オブジェクトファイル情報と、プログラムの実行イメージを作成するシステム動作を記述します。ここで説明する情報の大半は、すべてのシステムに適用されます。プロセッサに固有の情報はその旨が示されたセクションに存在します。

実行可能オブジェクトファイルと共有オブジェクトファイルは、アプリケーションプログラムを静的に表現します。このようなプログラムを実行するためには、システムはこれらのファイルを使用して動的なプログラムの表現、すなわちプロセスイメージを作成します。プロセスイメージには、テキスト、データ、スタックなどが存在するセグメントが存在します。この項の主な細目は以下のとおりです。

プログラムヘッダー

実行可能オブジェクトファイルまたは共有オブジェクトファイルのプログラムヘッダーテーブルは、構造体の配列です (各構造体は、実行されるプログラムを作成するためにシステムが必要とするセグメントやその他の情報を記述します) 。各オブジェクトファイルセグメントには、セグメントの内容に記述されているとおり、1 つまたは複数のセクションが存在します。

プログラムヘッダーは、実行可能オブジェクトファイルと共有オブジェクトファイルに対してのみ意味があります。プログラムヘッダーサイズは、ELF ヘッダーの e_phentsize 構成要素と e_phnum 構成要素で指定されます。

プログラムヘッダーの構造体 (sys/elf.h で定義) は、次のとおりです。

typedef struct {
        Elf32_Word      p_type;
        Elf32_Off       p_offset;
        Elf32_Addr      p_vaddr;
        Elf32_Addr      p_paddr;
        Elf32_Word      p_filesz;
        Elf32_Word      p_memsz;
        Elf32_Word      p_flags;
        Elf32_Word      p_align;
} Elf32_Phdr;

typedef struct {
        Elf64_Word      p_type;
        Elf64_Word      p_flags;
        Elf64_Off       p_offset;
        Elf64_Addr      p_vaddr;
        Elf64_Addr      p_paddr;
        Elf64_Xword     p_filesz;
        Elf64_Xword     p_memsz;
        Elf64_Xword     p_align;
} Elf64_Phdr;

この構造体の要素を次に示します。

p_type

この配列要素が記述するセグメント型、または配列要素情報の解釈方法。型の値とその意味は、表 7–36 を参照してください。

p_offset

ファイルの先頭から、セグメントの先頭バイトが存在する位置までのオフセット。

p_vaddr

セグメントの先頭バイトが存在するメモリー内の仮想アドレス。

p_paddr

セグメントの物理アドレス (物理アドレス指定が適切なシステムの場合)。本システムはアプリケーションプログラムに対して物理アドレス指定を無視するので、この構成要素には実行可能ファイルと共有オブジェクトに対する指定されていない内容が存在します。

p_filesz

セグメントのファイルイメージのバイト数 (0 の場合もある)。

p_memsz

セグメントのメモリーイメージのバイト数 (0 の場合もある)。

p_flags

セグメントに関係するフラグ。型の値とその意味については、表 7–37 を参照してください。

p_align

読み込み可能なプロセスセグメントは、ページサイズを基にして、p_vaddrp_offset に対して同じ値を保持する必要があります。この構成要素は、セグメントがメモリーとファイルにおいて整列される値を与えます。値 0 と 1 は、整列が必要ないことを意味します。その他の値の場合、p_align は 2 の正整数累乗でなければならず、また p_vaddrp_align を法として p_offset に等しくなければなりません。詳細は、プログラムの読み込み (プロセッサ固有)を参照してください。

エントリの中には、プロセスセグメントを記述するものもあります。それ以外のエントリは補足情報を与え、プロセスイメージには関与しません。セグメントエントリが現れる順序は、明示されている場合を除き任意です。定義されている型の値を、次の表に示します。

表 7–36 ELF セグメント型

名前 

値 

PT_NULL

0

PT_LOAD

1

PT_DYNAMIC

2

PT_INTERP

3

PT_NOTE

4

PT_SHLIB

5

PT_PHDR

6

PT_TLS

7

PT_LOSUNW

0x6ffffffa

PT_SUNWBSS

0x6ffffffb

PT_SUNWSTACK

0x6ffffffa

PT_HISUNW

0x6fffffff

PT_LOPROC

0x70000000

PT_HIPROC

0x7fffffff

PT_NULL

使用しません。他の構成要素の値は不定です。この型を使用すると、プログラムヘッダーテーブルに、無視されるエントリを入れることができます。

PT_LOAD

p_fileszp_memsz により記述される読み込み可能セグメントを指定しますファイルのバイト列は、メモリーセグメントの先頭に対応付けされます。セグメントのメモリーサイズ (p_memsz) がファイルサイズ (p_filesz) より大きい場合、不足するバイトは、値 0 を保持しセグメントの初期化領域に続くように定義されます。ファイルサイズがメモリーサイズより大きくなることは許可されません。プログラムヘッダーテーブルの読み込み可能セグメントエントリは、p_vaddr 構成要素で整列され、昇順に現れます。

PT_DYNAMIC

動的リンクに関する情報を指定します。詳細は、動的セクションを参照してください。

PT_INTERP

インタプリタとして呼び出される、ヌル文字で終了しているパス名の位置とサイズを指定します。動的実行可能ファイルの場合、このセグメント型は必須であり、共有オブジェクトの場合、このセグメント型は指定可能です。このセグメント型を、ファイル内に複数指定することはできません。このセグメント型が存在する場合、このセグメント型は読み込み可能セグメントエントリの前に存在しなければなりません。詳細は、プログラムインタプリタを参照してください。

PT_NOTE

補助情報の位置とサイズを指定します。詳細は、注釈セクションを参照してください。

PT_SHLIB

このセグメント型は、予約済みですが、解釈の方法は定義されていません。

PT_PHDR

プログラムヘッダーテーブル自身の、ファイル、およびプログラムのメモリーイメージにおける位置とサイズを指定します。このセグメント型を、ファイル内に複数指定することはできません。また、このセグメント型は、プログラムヘッダーテーブルがプログラムのメモリーイメージの一部になる場合に限り存在できます。このセグメント型が存在する場合、このセグメント型は読み込み可能セグメントエントリの前に存在しなければなりません。詳細は、プログラムインタプリタを参照してください。

PT_TLS

スレッド固有領域のテンプレートを指定します。詳細は、スレッド固有領域 を参照してください。

PT_LOSUNW - PT_HISUNW

この範囲の値は、Sun 固有のセマンティクスに対して予約されます。

PT_SUNWBSS

PT_LOAD 要素と同じ属性で、.SUNW_bss セクションの記述に使用します。

PT_SUNWSTACK

プロセススタックを記述します。現在のところ、そういった要素は 1 つのみ存在し、p_flags フィールドで定義されているアクセスパーミッションのみが有用です。

PT_LOPROC - PT_HIPROC

この範囲の値は、プロセッサに固有の使用方法に対して予約されています。


注 –

他の箇所で特に要求されない限り、すべてのプログラムヘッダーセグメントタイプはそれぞれ存在することもありますし、存在しないこともあります。ファイルのプログラムヘッダーテーブルには、このプログラムの内容に関係する要素のみが存在できます。


ベースアドレス

実行可能オブジェクトファイルと共有オブジェクトファイルには、ベースアドレス (プログラムのオブジェクトファイルのメモリーイメージに関連付けられている最下位仮想アドレス) が存在します。ベースアドレスは、たとえば動的リンク時にプログラムのメモリーイメージを再配置するために使用されます。

実行可能オブジェクトファイルと共有オブジェクトファイルのベースアドレスは、実行時に 3 つの値 (プログラムの読み込み可能セグメントのメモリー読み込みアドレス、最大ページサイズ、最下位仮想アドレス) から計算されます。プログラムヘッダーの仮想アドレスは、プログラムのメモリーイメージの実際の仮想アドレスを表さないことがあります。詳細は、プログラムの読み込み (プロセッサ固有)を参照してください。

ベースアドレスを計算するには、PT_LOAD セグメントの最下位 p_vaddr 値に関連付けられているメモリーアドレスを判定します。次に、メモリーアドレスを最大ページサイズの最近倍数に切り捨てることで、ベースアドレスが求められます。メモリーに読み込まれるファイルの種類によって、メモリーアドレスは p_vaddr 値に一致しない場合もあります

セグメントへのアクセス権

システムで読み込まれるプログラムには、少なくとも 1 つの読み込み可能セグメントが存在しなければなりません (ただし、このことはファイル形式では要求されていません)。システムは、読み込み可能セグメントのメモリーイメージを作成するとき、p_flags 構成要素で指定されるアクセス権を与えます。PF_MASKPROC マスクのすべてのビットは、プロセッサ固有のセマンティクスに対して予約されます。

表 7–37 ELF セグメントフラグ

名前 

値 

意味 

PF_X

0x1

実行 

PF_W

0x2

書き込み 

PF_R

0x4

読み取り 

PF_MASKPROC

0xf0000000

指定なし 

アクセス権ビットが 0 の場合、その種類のアクセスは拒否されます。実際のメモリーアクセス権は、メモリー管理ユニット (システムによって異なることがある) に依存します。すべてのフラグ組み合わせが有効ですが、システムは要求以上のアクセスを与えることがあります。ただしどんな場合も、特に断りが明示的に記述されていない限り、セグメントは書き込み権を持ちません。次の表に、正確なフラグ解釈と許容されるフラグ解釈を示します。

表 7–38 ELF セグメントへのアクセス権

フラグ 

値 

正確なフラグ解釈 

許容されるフラグ解釈 

None

0

すべてのアクセスが拒否される 

すべてのアクセスが拒否される 

PF_X

1

実行のみ 

読み取り、実行 

PF_W

2

書き込みのみ 

読み取り、書き込み、実行 

PF_W+PF_X

3

書き込み、実行 

読み取り、書き込み、実行 

PF_R

4

読み取りのみ 

読み取り、実行 

PF_R + PF_X

5

読み取り、実行 

読み取り、実行 

PF_R+PF_W

6

読み取り、書き込み 

読み取り、書き込み、実行 

PF_R+PF_W+PF_X

7

読み取り、書き込み、実行 

読み取り、書き込み、実行 

たとえば、標準的なテキストセグメントは読み取り権と実行権を持っていますが、書き込み権は持っていません。データセグメントは通常、読み取り権、書き込み権、および実行権を持っています。

セグメントの内容

オブジェクトファイルセグメントは、1 つまたは複数のセクションで構成されます。ただし、プログラムヘッダーはこの事実には関与しません。ファイルセグメントに 1 つのセクションが存在するか複数のセクションが存在するかもまた、プログラム読み込み時に重要ではありません。しかし、さまざまなデータが、プログラム実行時や動的リンク時などには存在しなければなりません。以下に、セグメントの内容を示します。 セグメント内のセクションの順序と帰属関係は、異なることがあります。

テキストセグメントには、読み取り専用の命令/データが存在します。データセグメントには、書き込み可能のデータ/命令が存在します。すべての特殊セクションの一覧については、表 7–17を参照してください。

PT_DYNAMIC プログラムヘッダー要素は、.dynamic セクションを指し示します。さらに、.got セクションと .plt セクションには、位置に依存しないコードと動的リンクに関係する情報が存在します。

.plt は、テキストセグメントまたはデータセグメントに存在できます (どちらのセグメントに存在するかはプロセッサに依存します)。詳細は、大域オフセットテーブル (プロセッサ固有)プロシージャのリンクテーブル (プロセッサ固有)を参照してください。

.bss セクションには、SHT_NOBITS 型が存在します。このセクションはファイル領域を占めませんが、セグメントのメモリーイメージに与えられます。通常、これらの初期化されていないデータはセグメントの終わりに存在し、その結果、関連付けられているプログラムヘッダー要素において p_memszp_filesz より大きくなります。

プログラムの読み込み (プロセッサ固有)

システムは、プロセスイメージを作成または拡張するとき、ファイルのセグメントを仮想メモリーセグメントに論理的にコピーします。システムがファイルをいつ物理的に読み取るかは、プログラムの挙動やシステムの負荷などに依存します。

プロセスは実行時に論理ページを参照しない限り物理ページを必要とせず、また一般に多くのページを未参照状態のままにします。したがって、物理読み取りを遅延させると、これらの物理読み取りが不要になり、システム性能が向上します。この効率性を実際に実現するには、実行可能オブジェクトファイルと共有オブジェクトファイルには、ファイルオフセットと仮想アドレスがページサイズを法として同じであるセグメントイメージが存在しなければなりません。

32 ビットのセグメントの仮想アドレスとファイルオフセットは、64K (0x10000) を法として同じです。64 ビットのセグメントの仮想アドレスとファイルオフセットは、1M バイト (0x100000) を法として同じです。 セグメントを最大ページサイズに整列すると、ファイルは物理ページサイズには関係なくページング処理に対して適切になります。

デフォルトでは 64 ビット SPARC プログラムは開始アドレス (0x100000000) にリンクされます。プログラム全体 (テキスト、データ、ヒープ、スタック、共有オブジェクトの依存関係を含む) は、4G バイトより上に存在します。そうすることにより、プログラムがポインタを切り捨てると、アドレス空間の最下位 4G バイトでフォルトが発生することになるので、64 ビットプログラムが正しく作られたことを確認することがより容易になります。64 ビットプログラムは4G バイトより上でリンクされていますが、コンパイラあるいはリンカーに mapfile および -M オプションを使用することにより、4G バイト未満でリンクすることも可能です。詳細は、/usr/lib/ld/sparcv9/map.below4G を参照してください。

次の図に、SPARC バージョンの実行可能ファイルを示します。

図 7–7 SPARC: 実行可能ファイル (64K に整列)

SPARC 実行可能ファイルのレイアウトの例。

次の表に、前の図に示した読み込み可能セグメント要素の定義を示します。

表 7–39 SPARC: ELF プログラムヘッダーセグメント (64K に整列)

構成要素 

テキスト 

データ 

p_type

PT_LOAD

PT_LOAD

p_offset

0x0

0x4000

p_vaddr

0x10000

0x24000

p_paddr

指定なし 

指定なし 

p_filesize

0x3a82

0x4f5

p_memsz

0x3a82

0x10a4

p_flags

PF_R + PF_X

PF_R + PF_W + PF_X

p_align

0x10000

0x10000

次の図に、x86 バージョンの実行可能ファイルの例を示します。

図 7–8 x86: 実行可能ファイル (64K に整列)

x86 実行可能ファイルのレイアウトの例。

次の表に、前の図に示した読み込み可能セグメント要素の定義を示します。

表 7–40 x86: ELF プログラムヘッダーセグメント (64K に整列)

構成要素 

テキスト 

データ 

p_type

PT_LOAD

PT_LOAD

p_offset

0x0

0x4000

p_vaddr

0x8050000

0x8064000

p_paddr

指定なし 

指定なし 

p_filesize

0x32fd

0x3a0

p_memsz

0x32fd

0xdc4

p_flags

PF_R + PF_X

PF_R + PF_W + PF_X

p_align

0x10000

0x10000

例に示したファイルオフセットと仮想アドレスは、テキストとデータの両方に対して最大ページサイズを法として同じですが、最大 4 ファイルページ (ページサイズとファイルシステムブロックサイズに依存) に、純粋ではないテキストやデータが含まれます。


注 –

上記の例は、テキストセグメントを丸めた、典型的な Solaris のシステムバイナリを反映したものです。


データセグメントの終わりは、初期化されていないデータに対して特別な処理を必要とします (初期値が 0 になるようにシステムで定義されている)。ファイルの最後のデータページに、論理メモリーページに存在しない情報が存在する場合、これらのデータは 0 に設定しなければなりません (実行可能ファイルの未知の内容のままにしてはならない)。

他の 3 ページに存在する純粋でないテキストまたはデータは、論理的にはプロセスイメージの一部ではありません。システムがこれらの純粋でないテキストまたはデータを除去するかどうかについては、規定されていません。このプログラムのメモリーイメージが 4K バイト (0x1000) ページを使用する例を、次の図に示します。単純化するために次の図では、1 ページのサイズのみを示しています。

図 7–9 SPARC: プロセスイメージセグメント

SPARC プロセスイメージセグメントの例。

図 7–10 x86: プロセスイメージセグメント

x86 プロセスイメージセグメントの例。

セグメント読み込みは、実行可能ファイルと共有オブジェクトでは異なる側面が 1 つ存在します。実行可能ファイルのセグメントには、標準的には絶対コードが存在します。プロセスを正しく実行するには、セグメントは実行可能ファイルを作成するために使用された仮想アドレスに存在しなければなりません。システムは変化しない p_vaddr 値を仮想アドレスとして使用します。

一方、通常は共有オブジェクトのセグメントには、位置に依存しないコードが存在します。したがって、セグメントの仮想アドレスは、実行動作を無効にすることなくプロセスごとに変化させることができます。

システムは個々のプロセスごとに仮想アドレスを選択しますが、セグメントの相対位置は維持します。位置に依存しないコードはセグメント間で相対アドレス指定を使用するので、メモリーの仮想アドレス間の差は、ファイルの仮想アドレス間の差に一致しなければなりません。

以下の表は、いくつかのプロセスに対する共有オブジェクト仮想アドレスの割り当ての例で、一定の相対位置になることを示しています。これらの表は、ベースアドレスの計算も示しています。

表 7–41 SPARC: ELF 共有オブジェクトセグメントアドレスの例

出所 

テキスト 

データ 

ベースアドレス 

ファイル 

0x0

0x4000

0x0

プロセス 1 

0xc0000000

0xc0024000

0xc0000000

プロセス 2 

0xc0010000

0xc0034000

0xc0010000

プロセス 3 

0xd0020000

0xd0024000

0xd0020000

プロセス 4 

0xd0030000

0xd0034000

0xd0030000

表 7–42 x86: ELF 共有オブジェクトセグメントアドレスの例

出所 

テキスト 

データ 

ベースアドレス 

ファイル 

0x0

0x4000

0x0

プロセス 1 

0x8000000

0x8004000

0x80000000

プロセス 2 

0x80081000

0x80085000

0x80081000

プロセス 3 

0x900c0000

0x900c4000

0x900c0000

プロセス 4 

0x900c6000

0x900ca000

0x900c6000

プログラムインタプリタ

動的リンクを開始する動的実行可能ファイルまたは共有オブジェクトは、1 つの PT_INTERP プログラムヘッダー要素を保持できます。exec(2) の実行時に、システムは PT_INTERP セグメントからパス名を取り出し、インタプリタファイルのセグメントから初期プロセスイメージを作成します。インタプリタはシステムから制御を受け取り、アプリケーションプログラムに対して環境を提供する必要があります。

Solaris オペレーティング環境では、インタプリタは実行時リンカー、ld.so.1(1) として知られています。

実行時リンカー

リンカーは、動的リンクを開始する動的オブジェクトを作成する際、 PT_INTERP 型のプログラムヘッダー要素を実行可能ファイルに付加します。この要素は、実行時リンカーをプログラムインタプリタとして呼び出すようにシステムに指示します。exec(2) と実行時リンカーは、協調してプログラムのプロセスイメージを作成します。

リンカーはまた、実行時リンカーを支援する、実行可能ファイルと共有オブジェクトファイル用のさまざまなデータを作成します。これらのデータは読み込み可能セグメントに存在するため、実行時に使用可能です。これらのセグメントには、以下が含まれます。

共有オブジェクトは、ファイルのプログラムヘッダーテーブルに記録されているアドレスとは異なる仮想メモリーアドレスを占有することが可能です。実行時リンカーは、アプリケーションが制御を取得する前に、メモリーイメージを再配置して絶対アドレスを更新します。

動的セクション

オブジェクトファイルが動的リンクに関係している場合、このオブジェクトファイルのプログラムヘッダーテーブルには、PT_DYNAMIC 型の要素が存在します。このセグメントには、.dynamic セクションが存在します。特殊なシンボル _DYNAMIC は、このセクションを示します。このセクションには、以下の構造体 (sys/link.h で定義される) の配列が存在します。

typedef struct {
        Elf32_Sword d_tag;
        union {
                Elf32_Word      d_val;
                Elf32_Addr      d_ptr;
                Elf32_Off       d_off;
        } d_un;
} Elf32_Dyn;

typedef struct {
        Elf64_Xword d_tag;
        union {
                Elf64_Xword     d_val;
                Elf64_Addr      d_ptr;
        } d_un;
} Elf64_Dyn;

このタイプの各オブジェクトの場合、d_tagd_un の解釈に影響します。

d_val

このオブジェクトは、さまざまに解釈される整数値を表します。

d_ptr

このオブジェクトは、プログラムの仮想アドレスを表わします。ファイルの仮想アドレスは、実行時にメモリーの仮想アドレスに一致しないことがあります。実行時リンカーは、動的構造体に存在するアドレスを解釈するとき、元のファイル値とメモリーのベースアドレスに基づいて実際のアドレスを計算します。整合性のため、ファイルには動的構造体内のアドレスを補正するための再配置エントリは存在しません。

ツールによる動的セクションエントリの内容の解釈をシンプルにするために、各タグの値 (2 つの特別な互換性範囲を除く) で d_un union の解釈を決定します。 偶数の値を持つタグは、d_ptr を使用する動的セクションのエントリを示します。奇数の値を持つタグは、d_val を使用する動的セクションのエントリ、または d_ptrd_val のどちらも使用しない動的セクションのエントリを示します。特殊値 DT_ENCODING より小さい値を持つタグ、および DT_HIOSDT_LOPROC 間の範囲に入る値を持つタグは、これらの規則には従いません。

表 7–43 は、実行可能オブジェクトファイルと共有オブジェクトファイルのタグ要求についてまとめています。タグに「必須」という印が付いている場合、動的リンク配列にはその型のエントリが存在しなければなりません。また、「任意」は、タグのエントリが現れてもよいですが必須ではないことを意味します

表 7–43 ELF 動的配列タグ

名前 

値 

d_un

実行可能ファイル 

共有オブジェクトファイル 

DT_NULL

0

無視される 

必須 

必須 

DT_NEEDED

1

d_val

任意 

任意 

DT_PLTRELSZ

2

d_val

任意 

任意 

DT_PLTGOT

3

d_ptr

任意 

任意 

DT_HASH

4

d_ptr

必須 

必須 

DT_STRTAB

5

d_ptr

必須 

必須 

DT_SYMTAB

6

d_ptr

必須 

必須 

DT_RELA

7

d_ptr

必須 

任意 

DT_RELASZ

8

d_val

必須 

任意 

DT_RELAENT

9

d_val

必須 

任意 

DT_STRSZ

10

d_val

必須 

必須 

DT_SYMENT

11

d_val

必須 

必須 

DT_INIT

12

d_ptr

任意 

任意 

DT_FINI

13

d_ptr

任意 

任意 

DT_SONAME

14

d_val

無視される 

任意 

DT_RPATH

15

d_val

任意 

任意 

DT_SYMBOLIC

16

無視される 

無視される 

任意 

DT_REL

17

d_ptr

必須 

任意 

DT_RELSZ

18

d_val

必須 

任意 

DT_RELENT

19

d_val

必須 

任意 

DT_PLTREL

20

d_val

任意 

任意 

DT_DEBUG

21

d_ptr

任意 

無視される 

DT_TEXTREL

22

無視される 

任意 

任意 

DT_JMPREL

23

d_ptr

任意 

任意 

DT_BIND_NOW

24

無視される 

任意 

任意 

DT_INIT_ARRAY

25

d_ptr

任意 

任意 

DT_FINI_ARRAY

26

d_ptr

任意 

任意 

DT_INIT_ARRAYSZ

27

d_val

任意 

任意 

DT_FINI_ARRAYSZ

28

d_val

任意 

任意 

DT_RUNPATH

29

d_val

任意 

任意 

DT_FLAGS

30

d_val

任意 

任意 

DT_ENCODING

32

指定なし 

指定なし 

指定なし 

DT_PREINIT_ARRAY

32

d_ptr

任意 

無視される 

DT_PREINIT_ARRAYSZ

33

d_val

任意 

無視される 

DT_LOOS

0x6000000d

指定なし 

指定なし 

指定なし 

DT_SUNW_RTLDINF

0x6000000e

d_ptr

任意 

任意 

DT_HIOS

0x6ffff000

指定なし 

指定なし 

指定なし 

DT_VALRNGLO

0x6ffffd00

指定なし 

指定なし 

指定なし 

DT_CHECKSUM

0x6ffffdf8

d_val

任意 

任意 

DT_PLTPADSZ

0x6ffffdf9

d_val

任意 

任意 

DT_MOVEENT

0x6ffffdfa

d_val

任意 

任意 

DT_MOVESZ

0x6ffffdfb

d_val

任意 

任意 

DT_FEATURE_1

0x6ffffdfc

d_val

任意 

任意 

DT_POSFLAG_1

0x6ffffdfd

d_val

任意 

任意 

DT_SYMINSZ

0x6ffffdfe

d_val

任意 

任意 

DT_SYMINENT

0x6ffffdff

d_val

任意 

任意 

DT_VALRNGHI

0x6ffffdff

指定なし 

指定なし 

指定なし 

DT_ADDRRNGLO

0x6ffffe00

指定なし 

指定なし 

指定なし 

DT_CONFIG

0x6ffffefa

d_ptr

任意 

任意 

DT_DEPAUDIT

0x6ffffefb

d_ptr

任意 

任意 

DT_AUDIT

0x6ffffefc

d_ptr

任意 

任意 

DT_PLTPAD

0x6ffffefd

d_ptr

任意 

任意 

DT_MOVETAB

0x6ffffefe

d_ptr

任意 

任意 

DT_SYMINFO

0x6ffffeff

d_ptr

任意 

任意 

DT_ADDRRNGHI

0x6ffffeff

指定なし 

指定なし 

指定なし 

DT_RELACOUNT

0x6ffffff9

d_val

任意 

任意 

DT_RELCOUNT

0x6ffffffa

d_val

任意 

任意 

DT_FLAGS_1

0x6ffffffb

d_val

任意 

任意 

DT_VERDEF

0x6ffffffc

d_ptr

任意 

任意 

DT_VERDEFNUM

0x6ffffffd

d_val

任意 

任意 

DT_VERNEED

0x6ffffffe

d_ptr

任意 

任意 

DT_VERNEEDNUM

0x6fffffff

d_val

任意 

任意 

DT_LOPROC

0x70000000

指定なし 

指定なし 

指定なし 

DT_SPARC_REGISTER

0x70000001

d_val

任意 

任意 

DT_AUXILIARY

0x7ffffffd

d_val

指定なし 

任意 

DT_USED

0x7ffffffe

d_val

任意 

任意 

DT_FILTER

0x7fffffff

d_val

指定なし 

任意 

DT_HIPROC

0x7fffffff

指定なし 

指定なし 

指定なし 

DT_NULL

_DYNAMIC 配列の終わりを示します。

DT_NEEDED

ヌル文字で終わっている文字列の DT_STRTAB 文字列テーブルオフセットで、必要な依存性の名前を指定します。動的配列には、この型の複数のエントリが存在可能です。これらのエントリの相対順序は意味がありますが、他の型のエントリに対するこれらのエントリの相対順序には意味がありません。詳細は、共有オブジェクトの依存性を参照してください。

DT_PLTRELSZ

プロシージャのリンクテーブルに関連付けられている再配置エントリの合計サイズ (単位: バイト)。プロシージャのリンクテーブル (プロセッサ固有)を参照してください。

DT_PLTGOT

プロシージャのリンクテーブルまたは大域オフセットテーブルに関連付けられるアドレス。詳細は、プロシージャのリンクテーブル (プロセッサ固有) および 大域オフセットテーブル (プロセッサ固有)を参照してください。

DT_HASH

シンボルハッシュテーブルのアドレス。このテーブルは、DT_SYMTAB 要素で示されるシンボルテーブルを参照します。詳細は、ハッシュテーブルを参照してください。

DT_STRTAB

文字列テーブルのアドレス。文字列テーブルには、実行時リンカーが必要とするシンボル名、依存性名、および他の文字列が存在します。詳細は、文字列テーブルを参照してください。

DT_SYMTAB

シンボルテーブルのアドレス。詳細は、シンボルテーブルを参照してください。

DT_RELA

再配置テーブルのアドレス。詳細は、再配置を参照してください。

オブジェクトファイルには、複数の再配置セクションを指定できます。リンカーは、実行可能オブジェクトファイルまたは共有オブジェクトファイルの再配置テーブルを作成するとき、これらのセクションを連結して単一のテーブルを作成します。これらの各セクションはオブジェクトファイル内で独立している場合がありますが、実行時リンカーは単一のテーブルとして扱います。実行時リンカーは、実行可能ファイルのプロセスイメージを作成したり、またはプロセスイメージに共有オブジェクトを付加したりするとき、再配置テーブルを読み取り、関連付けられている動作を実行します。

この要素が存在する場合、DT_RELASZ 要素と DT_RELAENT 要素も存在する必要があります。再配置がファイルに対して必須の場合、DT_RELA または DT_REL が使用可能です。

DT_RELASZ

DT_RELA 再配置テーブルの合計サイズ (単位: バイト)。

DT_RELAENT

DT_RELA 再配置エントリのサイズ (単位: バイト)。

DT_STRSZ

DT_STRTAB 文字列テーブルの合計サイズ (単位: バイト)。

DT_SYMENT

DT_SYMTAB シンボルエントリのサイズ (単位: バイト)。

DT_INIT

初期化関数のアドレス。詳細は、初期設定および終了セクションを参照してください。

DT_FINI

終了関数のアドレス。詳細は、初期設定および終了セクションを参照してください。

DT_SONAME

ヌル文字で終わっている文字列の DT_STRTAB 文字列テーブルオフセットで、共有オブジェクトの名前を示します。共有オブジェクト名の記録を参照してください。

DT_RPATH

ヌル文字で終わっているライブラリ検索パス文字列の DT_STRTAB 文字列テーブルオフセット。この要素の使用は、DT_RUNPATH に置き換えられました。 実行時リンカーが検索するディレクトリを参照してください。

DT_SYMBOLIC

オブジェクトが、リンク編集中に適用されたシンボリック結合を含むことを示します。この要素の使用は、DF_SYMBOLIC フラグに置き換えられました。 詳細は、-B symbolicの使用を参照してください。

DT_REL

DT_RELA に似ていますが、テーブルに暗黙の加数が存在する点が異なります。この要素が存在する場合、DT_RELSZ 要素と DT_RELENT 要素も存在する必要があります。

DT_RELSZ

DT_REL 再配置テーブルの合計サイズ (単位: バイト)。

DT_RELENT

DT_REL 再配置エントリのサイズ (単位: バイト)。

DT_PLTREL

プロシージャのリンクテーブルが参照する再配置エントリの型 (DT_REL または DT_RELA ) を示します。1 つのプロシージャのリンクテーブルでは、すべての再配置は、同じ再配置を使用しなければなりません。詳細は、プロシージャのリンクテーブル (プロセッサ固有)を参照してください。この要素が存在する場合、DT_JMPREL 要素も存在する必要があります。

DT_DEBUG

デバッグに使用されます。

DT_TEXTREL

1 つまたは複数の再配置エントリが書き込み不可セグメントに対する変更を要求する可能性があり、実行時リンカーはそれに応じて対応できることを示します。この要素の使用は、DF_TEXTREL フラグに置き換えられました。 位置に依存しないコードを参照してください。

DT_JMPREL

プロシージャのリンクテーブルにのみ関連付けられている再配置エントリのアドレス。詳細は、プロシージャのリンクテーブル (プロセッサ固有)を参照してください。これらの再配置エントリを分離しておくと、遅延結合が有効の場合、実行時リンカーはオブジェクトの読み込み時にこれらの再配置エントリを無視します。この要素が存在する場合、DT_PLTRELSZ 要素と DT_PLTREL 要素も存在する必要があります。

DT_POSFLAG_1

直後の DT_ 要素に適用されるさまざまな状態フラグ。詳細は、表 7–46 を参照してください。

DT_BIND_NOW

プログラムに制御を渡す前に、このオブジェクトについてのすべての再配置を処理するよう実行時リンカーに指示します。環境または dlopen(3DL) で指定された場合、このエントリは遅延結合の使用指示よりも優先されます。この要素の使用は、DF_BIND_NOW フラグに置き換えられました。 詳細は、再配置が実行されるときを参照してください。

DT_INIT_ARRAY

初期設定関数へのポインタの配列のアドレス。この要素が存在する場合、DT_INIT_ARRAYSZ 要素も存在する必要があります。詳細は、初期設定および終了セクションを参照してください。

DT_FINI_ARRAY

終了関数へのポインタの配列のアドレス。この要素が存在する場合、DT_FINI_ARRAYSZ 要素も存在する必要があります。詳細は、初期設定および終了セクションを参照してください。

DT_INIT_ARRAYSZ

DT_INIT_ARRAY 配列の合計サイズ (単位: バイト)。

DT_FINI_ARRAYSZ

DT_FINI_ARRAY 配列の合計サイズ (単位: バイト)。

DT_RUNPATH

ヌル文字で終わっているライブラリ検索パス文字列の DT_STRTAB 文字列テーブルオフセット。実行時リンカーが検索するディレクトリを参照してください。

DT_FLAGS

このオブジェクトに特有のフラグ値。詳細は、表 7–44 を参照してください。

DT_ENCODING

DT_ENCODING と等しいかそれより大きく、かつ DT_HIOS と等しいかそれより小さい値は、d_un union の解釈の規則に従います。

DT_PREINIT_ARRAY

初期設定前関数へのポインタの配列のアドレス。この要素が存在する場合、DT_PREINIT_ARRAYSZ 要素も存在する必要があります。この配列は、実行可能ファイル内でのみ処理されます。共有オブジェクト内に含まれている場合は無視されます。詳細は、初期設定および終了セクションを参照してください。

DT_PREINIT_ARRAYSZ

DT_PREINIT_ARRAY 配列の合計サイズ (単位: バイト)。

DT_LOOS - DT_HIOS

この範囲の値 (両端の値を含む) は、オペレーティングシステム固有の意味のために予約されています。このような値はすべて、d_un union の解釈の規則に従います。

DT_SUNW_RTLDINF

実行時リンカーによる使用のために予約されています。

DT_SYMINFO

シンボル情報テーブルのアドレス。この要素が存在する場合、DT_SYMINENT 要素と DT_SYMINSZ 要素も存在する必要があります。詳細は、Syminfo テーブルを参照してください。

DT_SYMINENT

DT_SYMINFO 情報エントリのサイズ (単位: バイト)。

DT_SYMINSZ

DT_SYMINFO テーブルのサイズ (単位: バイト)。

DT_VERDEF

バージョン定義テーブルのアドレス。このテーブル内の要素には、文字列テーブル DT_STRTAB のインデックスが含まれます。この要素が存在する場合、DT_VERDEFNUM 要素も存在する必要があります。詳細は、バージョン定義セクションを参照してください。

DT_VERDEFNUM

DT_VERDEF テーブルのエントリ数。

DT_VERNEED

バージョン依存性テーブルのアドレス。このテーブル内の要素には、文字列テーブル DT_STRTAB のインデックスが含まれます。この要素が存在する場合、DT_VERNEEDNUM 要素も存在する必要があります。詳細は、バージョン依存セクションを参照してください。

DT_VERNEEDNUM

DT_VERNEEDNUM テーブルのエントリ数

DT_RELACOUNT

すべての Elf32_Rela (または Elf64_Rela) RELATIVE 再配置は連結されていることを示し、このエントリにより、RELATIVE 再配置カウントが指定されます。詳細は、再配置セクションの結合を参照してください。

DT_RELCOUNT

すべての Elf32_Rel RELATIVE 再配置は連結されていることを示し、このエントリにより、RELATIVE 再配置カウントが指定されます。詳細は、再配置セクションの結合を参照してください。

DT_AUXILIARY

ヌル文字で終わっている DT_STRTAB 文字列テーブルオフセットで、1 つ以上の補助フィルティーの命名を行います。詳細は、補助フィルタの生成を参照してください。

DT_FILTER

ヌル文字で終わっている DT_STRTAB 文字列テーブルオフセットで、1 つ以上の標準フィルティーの命名を行います。詳細は、標準フィルタの生成を参照してください。

DT_CHECKSUM

オブジェクトの選択されたセクションの簡単なチェックサム。詳細は、gelf_checksum(3ELF) のマニュアルページを参照してください。

DT_MOVEENT

DT_MOVETAB 移動エントリのサイズ (単位: バイト)。

DT_MOVESZ

DT_MOVETAB テーブルの合計サイズ (単位: バイト)。

DT_MOVETAB

移動テーブルのアドレス。この要素が存在する場合、DT_MOVEENT 要素と DT_MOVESZ 要素も存在する必要があります。詳細は、移動セクションを参照してください。

DT_CONFIG

ヌル文字で終わっている DT_STRTAB 文字列テーブルオフセットで、構成ファイルを定義します。構成ファイルは、実行可能ファイルでのみ有効であり、通常このオブジェクトに固有のファイルです。詳細は、デフォルトの検索パスの設定を参照してください。

DT_DEPAUDIT

ヌル文字で終わっている DT_STRTAB 文字列テーブルオフセットで、1 つ以上の監査ライブラリを定義します。詳細は、実行時リンカーの監査インタフェースを参照してください。

DT_AUDIT

ヌル文字で終わっている DT_STRTAB 文字列テーブルオフセットで、1 つ以上の監査ライブラリを定義します。詳細は、実行時リンカーの監査インタフェースを参照してください。

DT_FLAGS_1

このオブジェクトに特有のフラグ値。表 7–45 を参照してください。

DT_FEATURE_1

このオブジェクト特有の機能を示す値。詳細は、機能チェックを参照してください。

DT_VALRNGLO - DT_VALRNGHI

この範囲の値は、動的構造体内の d_un.d_val フィールドで使用されます。

DT_ADDRRNGLO - DT_ADDRRNGHI

この範囲の値は、動的構造体内の d_un.d_ptr フィールドで使用されます。ELF オブジェクトが作成後に調整された場合、これらのエントリも更新する必要があります。

DT_SPARC_REGISTER

DT_SYMTAB シンボルテーブル内の STT_SPARC_REGISTER シンボルのインデックス。シンボルテーブルの各 STT_SPARC_REGISTER シンボルには、1 つのエントリが存在します。詳細は、レジスタシンボルを参照してください。

DT_LOPROC - DT_HIPROC

この範囲の値は、プロセッサ固有の使用方法に予約されます。

動的配列の最後にある DT_NULL 要素と、DT_NEEDEDDT_POSFLAG_1 要素の相対的な順序を除くと、エントリはどの順序で現れてもかまいません。表に示されていないタグ値は予約されています。

表 7–44 ELF 動的フラグ DT_FLAGS

名前 

値 

意味 

DF_ORIGIN

0x1

$ORIGIN 処理が必要

DF_SYMBOLIC

0x2

シンボリックシンボル解決が必要 

DF_TEXTREL

0x4

テキストの再配置が存在する 

DF_BIND_NOW

0x8

非遅延結合が必要 

DF_STATIC_TLS

0x10

オブジェクトは静的なスレッド固有領域方式を使用する 

DF_ORIGIN

オブジェクトに $ORIGIN 処理が必要であることを示します。関連する依存関係の配置を参照してください。

DF_SYMBOLIC

オブジェクトが、リンク編集中に適用されたシンボリック結合を含むことを示します。詳細は、-B symbolicの使用を参照してください。

DF_TEXTREL

1 つまたは複数の再配置エントリが書き込み不可セグメントに対する変更を要求する可能性があり、実行時リンカーはそれに応じて対応できることを示します。位置に依存しないコードを参照してください。

DF_BIND_NOW

プログラムに制御を渡す前に、このオブジェクトについてのすべての再配置を処理するよう実行時リンカーに指示します。環境または dlopen(3DL) で指定された場合、このエントリは遅延結合の使用指示よりも優先されます。詳細は、再配置が実行されるときを参照してください。

DF_STATIC_TLS

静的なスレッド固有領域方式を使用するコードがオブジェクトに含まれていることを示します。静的なスレッド固有領域は、dlopen(3DL) または遅延読み込みを使用して動的に読み込まれるオブジェクトでは使用できません。この制限のため、リンカーは静的なスレッド固有領域を必要とする共有オブジェクトの作成をサポートしていません。

表 7–45 ELF 動的フラグ DT_FLAGS_1

名前 

値 

意味 

DF_1_NOW

0x1

完全な再配置処理を行います 

DF_1_GLOBAL

0x2

未使用 

DF_1_GROUP

0x4

オブジェクトがグループの構成要素であることを示します 

DF_1_NODELETE

0x8

オブジェクトがプロセスから削除できないことを示します 

DF_1_LOADFLTR

0x10

フィルティーの即時読み込みを保証します 

DF_1_INITFIRST

0x20

オブジェクトの初期化を最初に実行します 

DF_1_NOOPEN

0x40

オブジェクトを dlopen(3DL) で使用できません

DF_1_ORIGIN

0x80

$ORIGIN 処理が必要です

DF_1_DIRECT

0x100

直接結合が有効です 

DF_1_INTERPOSE

0x400

オブジェクトは割り込み処理です 

DF_1_NODEFLIB

0x800

デフォルトのライブラリ検索パスを無視します 

DF_1_NODUMP

0x1000

オブジェクトを dldump(3DL) でダンプできません

DF_1_CONFALT

0x2000

オブジェクトは代替構成です 

DF_1_ENDFILTEE

0x4000

フィルティーがフィルタの検索を終了します 

DF_1_DISPRELDNE

0x8000

ディスプレイスメント再配置の終了 

DF_1_DISPRELPND

0x10000

ディスプレイスメント再配置の保留 

DF_1_NOW

プログラムに制御を渡す前に、このオブジェクトについてのすべての再配置を処理するよう実行時リンカーに指示します。環境または dlopen(3DL) で指定された場合、このフラグは遅延結合の使用指示よりも優先されます。詳細は、再配置が実行されるときを参照してください。

DF_1_GROUP

オブジェクトがグループの構成要素であることを示します。このフラグは、リンカーの -B group オプションを使用してオブジェクトに記録されます。詳細は、オブジェクト階層を参照してください。

DF_1_NODELETE

オブジェクトがプロセスから削除できないことを示します。オブジェクトは、dlopen(3DL) で直接または依存性としてプロセスに読み込まれた場合、dlclose(3DL) で読み込み解除できません。このフラグは、リンカーの -z nodelete オプションを使用してオブジェクトに記録されます。

DF_1_LOADFLTR

これは、「フィルタ」に対してのみ意味があります。関連付けられているすべてのフィルティーが直ちに処理されることを示します。このフラグは、リンカーの -z loadfltr オプションを使用してオブジェクトに記録されます。詳細は、フィルティーの処理を参照してください。

DF_1_INITFIRST

このオブジェクトと共に読み込まれた他のオブジェクトより先に、このオブジェクトの初期化セクションが実行されることを示します。このフラグは、特殊なシステムライブラリでのみ使用するもので、リンカーの -z initfirst オプションを使用してオブジェクトに記録されます。

DF_1_NOOPEN

dlopen(3DL) を使ってオブジェクトを実行中のプロセスに追加できないことを示します。このフラグは、リンカーの -z nodlopen オプションを使用してオブジェクトに記録されます。

DF_1_ORIGIN

オブジェクトに $ORIGIN 処理が必要であることを示します。関連する依存関係の配置を参照してください。

DF_1_DIRECT

オブジェクトが直接結合情報を使用することを示します。直接結合を参照してください。

DF_1_INTERPOSE

オブジェクトシンボルテーブルの割り込みが、一次読み込みオブジェクト (通常は実行可能ファイル) 以外のすべてのシンボルの前で発生します。このフラグは、リンカーの -z interpose オプションを使用して記録されます。直接結合を参照してください。

DF_1_NODEFLIB

このオブジェクトの依存関係を検索する際、デフォルトのライブラリ検索パスがすべて無視されることを示します。このフラグは、リンカーの -z nodefaultlib オプションを使用してオブジェクトに記録されます。実行時リンカーが検索するディレクトリを参照してください。

DF_1_NODUMP

このオブジェクトが dldump(3DL) によってダンプされないことを示します。このオプションの候補には、再配置を保持しないオブジェクトが含まれ、これらのオブジェクトは、crle(1) を使用して代替オブジェクトを生成する際に含めることができます。このフラグは、リンカーの -z nodump オプションを使用してオブジェクトに記録されます。

DF_1_CONFALT

このオブジェクトが、crle(1) によって生成された代替構成オブジェクトであることを示します。このフラグにより実行時リンカーがトリガーされ、構成ファイル $ORIGIN/ld.config.app-name が検索されます。

DF_1_ENDFILTEE

フィルティーに対してのみ意味があります。以降のフィルティーに対するフィルタ検索は行われません。このフラグは、リンカーの -z endfiltee オプションを使用してオブジェクトに記録されます。詳細は、補助検索の縮小を参照してください。

DF_1_DISPRELDNE

このオブジェクトにディスプレイスメント再配置が適用されたことを示します。再配置が適用されると再配置レコードは破棄されるため、オブジェクト内のディスプレイスメント再配置レコードはもはや存在しません。詳細は、ディスプレイスメント再配置 を参照してください。

DF_1_DISPRELPND

このオブジェクトのディスプレイスメント再配置が保留されていることを示します。ディスプレイスメント再配置はオブジェクト内部で終了するため、実行時に完了できます。詳細は、ディスプレイスメント再配置 を参照してください。

表 7–46 ELF 動的位置フラグ DT_POSFLAG_1

名前 

値 

意味 

DF_P1_LAZYLOAD

0x1

遅延読み込みされた依存関係を示す 

DF_P1_GROUPPERM

0x2

グループの依存関係を示す 

DF_P1_LAZYLOAD

後続の DT_NEEDED エントリが遅延読み込み対象のオブジェクトであることを示します。このフラグは、リンカーの -z lazyload オプションを使用してオブジェクトに記録されます。動的依存関係の遅延読み込みを参照してください。

DF_P1_GROUPPERM

後続の DT_NEEDED エントリがグループとして読み込まれるオブジェクトであることを示します。このフラグは、リンカーの -z groupperm オプションを使用してオブジェクトに記録されます。詳細は、グループの分離を参照してください。

表 7–47 ELF 動的機能フラグ DT_FEATURE_1

名前 

値 

意味 

DTF_1_PARINIT

0x1

部分的な初期化機能が必要 

DTF_1_CONFEXP

0x2

構成ファイルが必要 

DTF_1_PARINIT

オブジェクトが部分的な初期化を必要とすることを示します。詳細は、移動セクションを参照してください。

DTF_1_CONFEXP

このオブジェクトが、crle(1) によって生成された代替構成オブジェクトであることを示します。このフラグにより実行時リンカーがトリガーされ、構成ファイル $ORIGIN/ld.config.app-name が検索されます。このフラグの効果は、DF_1_CONFALT と同じです。

大域オフセットテーブル (プロセッサ固有)

一般に位置に依存しないコードには絶対仮想アドレスは存在できません。大域オフセットテーブルは、内部で使用するデータ内に絶対アドレスを保持します。このため、位置からの独立性とプログラムのテキストの共有性を低下させることなくアドレスが使用可能になります。プログラムは、位置に依存しないアドレス指定を使用して大域オフセットテーブルを参照し、絶対値を抽出します。この方法により、位置に依存しない参照を、絶対位置にリダイレクトできます。

最初は、大域オフセットテーブルには再配置エントリで要求される情報を保持します。システムが読み込み可能オブジェクトファイルのメモリーセグメントを作成したあと、実行時リンカーが再配置エントリを処理します。これらの再配置エントリのいくつかは、R_SPARC_GLOB_DAT 型 (SPARC の場合) または R_386_GLOB_DAT 型 (x86 の場合) であり、大域オフセットテーブルを参照します。

実行時リンカーは、関連付けられているシンボル値を判定し、絶対アドレスを計算し、適切なメモリーテーブルエントリに正しい値を設定します。リンカーがオブジェクトファイルを作成するとき、絶対アドレスは認識されていませんが、実行時リンカーはすべてのメモリーセグメントのアドレスを認識しており、したがって、これらのメモリーセグメントに存在するシンボルの絶対アドレスを計算できます。

プログラムがシンボルの絶対アドレスへの直接アクセスを必要とする場合、このシンボルには大域オフセットテーブルエントリが存在します。実行可能ファイルと共有オブジェクトには別個の大域オフセットテーブルが存在するので、シンボルのアドレスはいくつかのテーブルに現れることがあります。実行時リンカーは、すべての大域オフセットテーブルの再配置を処理してから、プロセスイメージ内のいずれかのコードに制御を渡します。この処理により、実行時に絶対アドレスが利用可能になります。

テーブルのエントリ 0 は、_DYNAMIC シンボルで参照される動的構造体のアドレスを保持するために予約されています。このシンボルを利用することにより、実行時リンカーなどのプログラムは、再配置エントリを処理していなくても自身の動的構造体を見つけることができます。この方法は、実行時リンカーにとって特に重要です。なぜなら、実行時リンカーは他のプログラムに頼ることなく自身を初期化してメモリーイメージを再配置しなければならないからです。

システムは、異なるのプログラムの同じ共有オブジェクトに対して、異なるメモリーセグメントアドレスを与えることがあります。さらに、システムはプログラムを実行するごとに異なるライブラリアドレスを与えることさえあります。しかし、プロセスイメージがいったん作成されると、メモリーセグメントのアドレスは変更されません。プロセスが存在する限り、そのプロセスのメモリーセグメントは固定仮想されたアドレスに存在します。

大域オフセットテーブルの形式と解釈は、プロセッサに固有です。SPARC プロセッサと x86 プロセッサの場合、_GLOBAL_OFFSET_TABLE_ シンボルは、テーブルをアクセスするために使用できます。このシンボルは、.got セクションの中央に存在可能であるため、負の添字と負でない添字の両方をアドレスの配列に含めることができます。シンボルタイプは、32 ビットコードの場合、Elf32_Addr の配列で、64 ビットコードの場合、Elf64_Addr の配列です。

extern  Elf32_Addr  _GLOBAL_OFFSET_TABLE_[];
extern  Elf64_Addr  _GLOBAL_OFFSET_TABLE_[];

プロシージャのリンクテーブル (プロセッサ固有)

大域オフセットテーブルは位置に依存しないアドレスの計算を絶対位置に変換します。同様に、プロシージャのリンクテーブルは位置に依存しない関数呼び出しを絶対位置に変換します。リンカーは、ある 1 つの実行可能オブジェクトまたは共有オブジェクトから別の実行可能オブジェクトまたは共有オブジェクトへの実行転送 (関数呼び出しなど) を解決できません。このため、リンカーはプログラム転送制御をプロシージャのリンクテーブルのエントリに与えます。このようにして実行時リンカーは、位置からの独立性とプログラムのテキストの共有性を低下させることなくエントリをリダイレクトします。実行可能ファイルと共有オブジェクトファイルには、別個のプロシージャのリンクテーブルが存在します。

SPARC: 32 ビットプロシージャのリンクテーブル

32 ビット SPARC 動的オブジェクトの場合、プロシージャのリンクテーブルは専用データ内に存在します。実行時リンカーは、宛先の絶対アドレスを判定し、これらの絶対アドレスに従ってプロシージャのリンクテーブルのメモリーイメージに変更を加えます。

最初の 4 つのプロシージャのリンクテーブルエントリは、予約されています。表 7–48 に例示されてはいますが、これらのエントリの元の内容は指定されていません。テーブル内の各エントリは 3 ワード (12 バイト) を占めており、最後のテーブルエントリの後には nop 命令が続きます。

再配置テーブルは、プロシージャのリンクテーブルに関連付けられています。_DYNAMIC 配列の DT_JMP_REL エントリは、最初の再配置エントリの位置を与えます。再配置テーブルには、予約されていないプロシージャのリンクテーブルエントリごとに 1 つのエントリが同じ順番で存在します。各エントリの再配置タイプは、R_SPARC_JMP_SLOT です。再配置オフセットは関連付けられているプロシージャのリンクテーブルエントリの先頭バイトのアドレスを指定します。シンボルテーブルインデックスは適切なシンボルを参照します。

プロシージャのリンクテーブル機能を説明するため、表 7–48 に 4 つのエントリが示されています。最初の 2 つのエントリは予約されている最初の 4 つのエントリの内の 2 つであり、3 番目のエントリは name101 に対する呼び出しであり、4 番目のエントリは name102 に対する呼び出しです。この例では、name102 のエントリがテーブルの最後のエントリであることを前提としており、後に続く nop 命令が示されています。左欄は、動的リンクが行われる前のオブジェクトファイルの命令を示しています。右欄は、実行時リンカーがプロシージャのリンクテーブルエントリを変更した結果を示しています。

表 7–48 SPARC: プロシージャのリンクテーブルの例
オブジェクトファイルメモリーセグメント
.PLT0:
    unimp
    unimp
    unimp
.PLT1:
    unimp
    unimp
    unimp
.PLT0:
    save    %sp, -64, %sp
    call    runtime_linker
    nop
.PLT1:
    .word   identification
    unimp
    unimp
.PLT101:
    sethi   (.-.PLT0), %g1
    ba,a    .PLT0
    nop
.PLT102:
    sethi   (.-.PLT0), %g1
    ba,a    .PLT0
    nop

    nop
.PLT101:
    nop
    ba,a    name101
    nop
.PLT102:
    sethi   (.-.PLT0), %g1
    sethi   %hi(name102), %g1
    jmpl    %g1+%lo(name102), %g0
    
    nop

実行時リンカーとプログラムは、以下の手順に従ってプロシージャのリンクテーブル内のシンボル参照を協調して解決します。ただし、以下に記述されている手順は、単に説明用のためのものです。実行時リンカーの正確な実行時動作については、記述されていません。

  1. 実行時リンカーは、プログラムのメモリーイメージを最初に作成するとき、プロシージャのリンクテーブルの初期エントリに、実行時リンカー自身のルーチンの 1 つに制御を渡すように変更を加える。実行時リンカーはまた、識別情報 (identification) を 2 番目のエントリに格納する。実行時リンカーは、制御を受け取る際、このワードを調べることで、このルーチンを呼び出したオブジェクトを見つけることができる

  2. 他のすべてのプロシージャのリンクテーブルエントリは、最初は先頭エントリに渡される。これで、実行時リンカーは各テーブルエントリの最初の実行時に制御を取得する。たとえば、プログラムが name101 を呼び出すと、制御がラベル .PLT101 に渡される

  3. sethi 命令は、現在のプロシージャのリンクテーブルエントリ (.PLT101) と最初のプロシージャのリンクテーブルエントリ (.PLT0) の距離を計算する。この値は、%g1 レジスタの最上位 22 ビットを占める。

  4. 次に、ba,a 命令が .PLT0 にジャンプして、スタックフレームを作成し、実行時リンカーを呼び出す

  5. 実行時リンカーは、識別情報の値を使うことによってオブジェクトのデータ構造体 (再配置テーブルを含む) を取得する

  6. 実行時リンカーは、%g1 値をシフトしプロシージャのリンクテーブルエントリのサイズで除算することで、 name101 の再配置エントリのインデックスを計算する。再配置エントリ 101 はタイプ R_SPARC_JMP_SLOT を保持し、そのオフセットは .PLT101 のアドレスを指定し、また、そのシンボルテーブルインデックスは name101 を参照する。したがって、実行時リンカーはシンボルの実際の値を取得し、スタックを戻し、プロシージャのリンクテーブルエントリに変更を加え、本来の宛先に制御を渡す

実行時リンカーは、メモリーセグメント欄に示された命令シーケンスを必ずしも作成するとは限りません。ただし、作成する場合は、いくつかの点でより詳細な説明が必要です。


注 –

.PLT101.PLT102 の命令シーケンスの違いから、関連する宛先に合わせた最適化の方法を知ることができます。


LD_BIND_NOW 環境変数は、動的リンク動作を変更します。この環境変数の値がヌル文字列以外の場合、実行時リンカーは、プログラムに制御を渡す前に R_SPARC_JMP_SLOT 再配置エントリ (プロシージャのリンクテーブルエントリ) を処理します。

SPARC: 64 ビットプロシージャのリンクテーブル

64 ビット SPARC 動的オブジェクトの場合、プロシージャのリンクテーブルは専用データ内に存在します。実行時リンカーは、宛先の絶対アドレスを判定し、これらの絶対アドレスに従ってプロシージャのリンクテーブルのメモリーイメージに変更を加えます。

最初の 4 つのプロシージャのリンクテーブルエントリは、予約されています。表 7–49 で例示されてはいますが、これらのエントリの元の内容は指定されていません。テーブル内の先頭 32,768 エントリは、それぞれ 8 ワード (32 バイト) を占め、32 バイト境界で整列する必要があります。テーブル全体は 256 バイト境界で整列する必要があります。32,768 を超えるエントリが必要な場合、残りのエントリは 6 ワード (24 バイト) および 1 つのポインタ (8 バイト) で構成されます。 命令は、160 エントリのブロックにまとめられ、その次に 160 個ポインタが続きます。最後のグループのエントリとポインタは、160 未満でもかまいません。パディングの必要はありません。


注 –

32,768 および 160 という数字は、それぞれ分岐と読み込み置換の制限に基づいており、また、キャッシュの効率を向上させるために、コードとデータの間の区分を 256 バイト境界に合わせています。


再配置テーブルは、プロシージャのリンクテーブルに関連付けられています。_DYNAMIC 配列の DT_JMP_REL エントリは、最初の再配置エントリの位置を与えます。再配置テーブルには、予約されていないプロシージャのリンクテーブルエントリごとに 1 つのエントリが同じ順番で存在します。各エントリの再配置タイプは、R_SPARC_JMP_SLOT です。最初の 32,767 スロットでは、再配置オフセットは関連するプロシージャのリンクテーブルエントリの先頭バイトのアドレスを指定します。加数フィールドはゼロになります。シンボルテーブルインデックスは適切なシンボルを参照します。32,768 以後のスロットでは、再配置オフセットは関連するポインタの先頭バイトのアドレスを指定します。加数フィールドは、再配置されていない値 -(.PLTN + 4) になります。シンボルテーブルインデックスは適切なシンボルを参照します。

プロシージャのリンクテーブルの機能を説明するため、表 7–49 にエントリがいくつか示されています。最初の 3 つのエントリは、予約済みの初期エントリを示します。続く 3 つのエントリは、32,768 エントリの初期状態と、それぞれ、対象アドレスがエントリの +/- 2G バイト以内の場合、アドレス空間の下位 4G バイト以内の場合、およびその他の場合に適用されると考えられる、変換された状態を示しています。最後の 2 つのエントリは、命令とポインタのペアで構成される、後のエントリの例を示します。左欄は、動的リンクが行われる前のオブジェクトファイルの命令を示しています。右欄は、実行時リンカーがプロシージャのリンクテーブルエントリを変更した結果を示しています。

表 7–49 64-bit SPARC: プロシージャのリンクテーブルの例
オブジェクトファイルメモリーセグメント
.PLT0:
    unimp
    unimp
    unimp
    unimp
    unimp
    unimp
    unimp
    unimp
.PLT1:
    unimp
    unimp
    unimp
    unimp
    unimp
    unimp
    unimp
    unimp
.PLT2:
    unimp
.PLT0:
    save    %sp, -176, %sp
    sethi   %hh(runtime_linker_0), %l0
    sethi   %lm(runtime_linker_0), %l1
    or      %l0, %hm(runtime_linker_0), %l0
    sllx    %l0, 32, %l0
    or      %l0, %l1, %l0
    jmpl    %l0+%lo(runtime_linker_0), %o1
    mov     %g1, %o0
.PLT1:
    save    %sp, -176, %sp
    sethi   %hh(runtime_linker_1), %l0
    sethi   %lm(runtime_linker_1), %l1
    or      %l0, %hm(runtime_linker_1), %l0
    sllx    %l0, 32, %l0
    or      %l0, %l1, %l0
    jmpl    %l0+%lo(runtime_linker_0), %o1
    mov     %g1, %o0
.PLT2:
    .xword  identification
.PLT101:
    sethi   (.-.PLT0), %g1
    ba,a    %xcc, .PLT1
    nop
    nop
    nop;    nop
    nop;    nop
.PLT102:
    sethi   (.-.PLT0), %g1
    ba,a    %xcc, .PLT1
    nop
    nop
    nop;    nop
    nop;    nop
.PLT103:
    sethi   (.-.PLT0),  %g1
    ba,a    %xcc, .PLT1
    nop
    nop
    nop
    nop
    nop
    nop
.PLT101:
    nop
    mov     %o7,  %g1
    call    name101
    mov     %g1, %o7
    nop;    nop
    nop;    nop
.PLT102:
    nop
    sethi   %hi(name102), %g1
    jmpl    %g1+%lo(name102), %g0
    nop
    nop;    nop
    nop;    nop
.PLT103:
    nop
    sethi   %hh(name103), %g1
    sethi   %lm(name103), %g5
    or      %hm(name103), %g1
    sllx    %g1, 32, %g1
    or      %g1, %g5, %g5
    jmpl    %g5+%lo(name103), %g0
    nop
.PLT32768:
    mov     %o7, %g5
    call    .+8
    nop
    ldx     [%o7+.PLTP32768 -
              (.PLT32768+4)], %g1
    jmpl    %o7+%g1, %g1
    mov     %g5, %o7

    ...

.PLT32927:
    mov     %o7, %g5
    call    .+8
    nop
    ldx     [%o7+.PLTP32927 -
              (.PLT32927+4)], %g1
    jmpl    %o7+%g1, %g1
    mov     %g5, %o7
.PLT32768:
    <unchanged>
    <unchanged>
    <unchanged>
    <unchanged>

    <unchanged>
    <unchanged>

    ...

.PLT32927:
    <unchanged>
    <unchanged>
    <unchanged>
    <unchanged>

    <unchanged>
    <unchanged>
.PLTP32768
    .xword  .PLT0 -
              (.PLT32768+4)
    ...

.PLTP32927
    .xword  .PLT0 -
              (.PLT32927+4)
.PLTP32768
    .xword  name32768 -
              (.PLT32768+4)
    ...
    
.PLTP32927
    .xword  name32927 -
	      (.PLT32927+4)

実行時リンカーとプログラムは、以下の手順に従ってプロシージャのリンクテーブル内のシンボル参照を協調して解決します。ただし、以下に記述されている手順は、単に説明用のためのものです。実行時リンカーの正確な実行時動作については、記述されていません。

  1. 実行時リンカーは、プログラムのメモリーイメージを最初に作成するとき、プロシージャのリンクテーブルの初期エントリに、実行時リンカー自身のルーチンの 1 つに制御を渡すように変更を加える。実行時リンカーはまた、識別情報 (identification) の拡張ワードを 3 番目のエントリに格納する。実行時リンカーは、制御を受け取ると、この拡張ワードを調べることで、このルーチンを呼び出したオブジェクトを見つけることができる

  2. 他のすべてのプロシージャのリンクテーブルエントリは、最初、先頭または 2 番目のエントリに渡される。これらのエントリは、スタックフレームを確立して、実行時リンカーを呼び出す

  3. 実行時リンカーは、識別情報の値を使うことによってオブジェクトのデータ構造体 (再配置テーブルを含む) を取得する

  4. 実行時リンカーは、テーブルスロットの再配置エントリのインデックスを計算する

  5. インデックス情報に関しては、実行時リンカーはシンボルの実際の値を取得し、スタックを戻し、プロシージャのリンクテーブルエントリを変更してから、制御を宛先に渡す

実行時リンカーは、メモリーセグメント欄に示された命令シーケンスを必ずしも作成する必要はありません。ただし、作成する場合は、いくつかの点でより詳細な説明が必要です。

エントリの 2 番目のフォームに示すように、ポインタの変更は、単一の不可分 64 ビットストアを使用して行われます。


注 –

.PLT101.PLT102、および .PLT103 の命令シーケンスの違いから、関連する宛先に合わせた最適化の方法を知ることができます。


LD_BIND_NOW 環境変数は、動的リンク動作を変更します。この環境変数の値がヌル文字列以外の場合、実行時リンカーは、プログラムに制御を渡す前に R_SPARC_JMP_SLOT 再配置エントリ (プロシージャのリンクテーブルエントリ) を処理します。

x86: 32 ビットプロシージャのリンクテーブル

32 ビット x86 動的オブジェクトの場合、プロシージャリンクテーブルは共有テキスト内に存在しますが、非公開の大域オフセットテーブル内のアドレスを使用します。 実行時リンカーは、宛先の絶対アドレスを判定し、これらの絶対アドレスに従って大域オフセットテーブルのメモリーイメージに変更を加えます。このようにして実行時リンカーは、位置からの独立性とプログラムのテキストの共有性を低下させることなくエントリをリダイレクトします。実行可能ファイルと共有オブジェクトファイルには、別個のプロシージャのリンクテーブルが存在します。

表 7–50 x86: 絶対プロシージャのリンクテーブルの例
.PLT0:
    pushl   got_plus_4
    jmp     *got_plus_8
    nop;    nop
    nop;    nop
.PLT1:
    jmp     *name1_in_GOT
    pushl   $offset
    jmp     .PLT0@PC
.PLT2:
    jmp     *name2_in_GOT
    pushl   $offset
    jmp     .PLT0@PC

表 7–51 x86: 位置に依存しないプロシージャリンクテーブルの例
.PLT0:
    pushl   4(%ebx)
    jmp     *8(%ebx)
    nop;    nop
    nop;    nop
.PLT1:
    jmp     *name1@GOT(%ebx)
    pushl   $offset
    jmp     .PLT0@PC
.PLT2:
    jmp     *name2@GOT(%ebx)
    pushl   $offset
    jmp     .PLT0@PC


注 –

前述の例が示すとおり、プロシージャリンクテーブルの命令は、絶対コードと位置に依存しないコードで異なるオペランドアドレス指定モードを使用します。それでも、実行時リンカーへのインタフェースは同一です。


実行時リンカーとプログラムは、以下の手順に従ってプロシージャのリンクテーブル内と大域オフセットテーブル内のシンボル参照を協調して解決します。

  1. 実行時リンカーは、プログラムのメモリーイメージを最初に作成するとき、大域オフセットテーブルの 2 番目と 3 番目のエントリに特殊な値を設定する。これらの値については、以下の手順で説明する

  2. プロシージャのリンクテーブルが位置に依存していない場合、大域オフセットテーブルのアドレスは、%ebx に存在しなければならない。プロセスイメージにおける各共有オブジェクトファイルには自身のプロシージャのリンクテーブルが存在しており、制御は同じオブジェクトファイル内からのみプロシージャのリンクテーブルエントリに渡される。したがって、呼び出し側関数は、プロシージャのリンクテーブルエントリを呼び出す前に、大域オフセットテーブルベースレジスタをセットしなければならない

  3. たとえば、プログラムが name1 を呼び出すと、制御が .PLT1 に渡される

  4. 最初の命令は、name1 の大域オフセットテーブルエントリのアドレスにジャンプする。大域オフセットテーブルは最初は、後続の pushl 命令のアドレスを保持する (name1 の実アドレスは保持しない)

  5. プログラムは再配置オフセット (offset) をスタックにプッシュする。再配置オフセットは、再配置テーブルへの 32 ビットの負ではないバイトオフセット。指定された再配置エントリには R_386_JMP_SLOT が存在しており、オフセットは、前の jmp 命令で使用された大域オフセットテーブルエントリを指定する。再配置エントリにはシンボルテーブルインデックスも存在しており、実行時リンカーはこれを使って参照されたシンボル name1 を取得する

  6. プログラムは、再配置オフセットをプッシュした後、.PLT0 (プロシージャのリンクテーブルの先頭エントリ) にジャンプする。pushl 命令は、2 番目の大域オフセットテーブルエントリ (got_plus_4 または 4(%ebx)) の値をスタックにプッシュして、実行時リンカーに 1 ワードの識別情報を与える。プログラムは次に、3 番目の大域オフセットテーブルエントリ (got_plus_8 または 8(%ebx)) のアドレスにジャンプして、実行時リンカーにジャンプする

  7. 実行時リンカーはスタックを戻し、指定された再配置エントリを調べ、シンボルの値を取得し、name1 の実際のアドレスを大域オフセットテーブルエントリに格納し、そして宛先にジャンプする

  8. その後のプロシージャのリンクテーブルエントリに対する実行は、name1 に直接渡される (実行時リンカーの再呼び出しは行われない)。.PLT1 における jmp 命令は、pushl 命令にジャンプする代わりに、name1 にジャンプする

LD_BIND_NOW 環境変数は、動的リンク動作を変更します。この環境変数の値がヌル文字列以外の場合、実行時リンカーは、プログラムに制御を渡す前に R_386_JMP_SLOT 再配置エントリ (プロシージャのリンクテーブルエントリ) を処理します。

ハッシュテーブル

Elf32_Word オブジェクトまたは Elf64_Word オブジェクトのハッシュテーブルは、シンボルテーブルアクセスをサポートしています。ハッシュが関連付けられているシンボルテーブルは、ハッシュテーブルのセクションヘッダーの sh_link エントリに指定されます (表 7–15 を参照)。ハッシュテーブルの構造についての説明をわかりやすくするためにラベルを図 7–11 に示します。ただし、ラベルは仕様の一部ではありません。

図 7–11 シンボルハッシュテーブル

ELF ハッシュテーブル情報の例。

bucket 配列には nbucket 個のエントリが存在し、chain 配列には nchain 個のエントリが存在します。インデックスは 0 から始まります。bucketchain は、どちらもシンボルテーブルインデックスを保持します。連鎖テーブルエントリは、シンボルテーブルに対応しています。シンボルテーブルエントリ数は、nchain に等しくなければなりません。したがって、シンボルテーブルインデックスにより、連鎖テーブルエントリも選択されます。

ハッシュ関数はシンボル名を受け取り、bucket インデックスの計算に使用できる値を返します。したがって、ハッシュ関数が名前に対して値 x を返すと、bucket [x%nbucket] は、シンボルテーブルと連鎖テーブルの両方にインデックス y を与えます。シンボルテーブルエントリが、求めるシンボルテーブルエントリでなかった場合、chain[y] は、同じハッシュ値が存在する次のシンボルテーブルエントリを与えます。

選択したシンボルテーブルエントリが目的の名前を保持するか、chain エントリに値 STN_UNDEF が含まれるまで、chain リンクをたどることができます。

ハッシュ関数を次に示します。

unsigned long
elf_Hash(const unsigned char *name)
{
    unsigned long h = 0, g;
 
	    while (*name)
	    {
		     h = (h << 4) + *name++;
		     if (g = h & 0xf0000000)
			      h ^= g>> 24;
				   h &= ~g;
	    }
	    return h;
}