リンカーとライブラリ

監査インタフェースの関数

次の関数が「rtld-監査」インタフェースによって提供されており、使用順序に従って記載されています。


注 –

アーキテクチャあるいはオブジェクトクラス固有のインタフェースの参照では、説明を簡潔にするため、省略して一般名を使用します。たとえば、la_symbind32() および la_symbind64()la_symbind() で表します。


la_version()

この関数は、実行時リンカーと監査ライブラリの間に初期接続を提供します。監査ライブラリが読み込まれるためには、このインタフェースが提供されている必要があります。

uint_t la_version(uint_t version);

実行時リンカーは、サポート可能な最上位バージョンの rtld-監査によって、このインタフェースを呼び出します。監査ライブラリは、このバージョンが十分に使用できるかどうかを確認して、使用する予定のバージョンを返すことができます。このバージョンは、通常、/usr/include/link.h に定義されている LAV_CURRENT です。

監査ライブラリがゼロ、あるいは、実行時リンカーがサポートする 「rtld-監査」インタフェースよりも大きなバージョンを返す場合、監査ライブラリは破棄されます。

la_activity()

この関数は、リンク対応付けアクティビティが行われていることを監査プログラムに知らせます。

void la_activity(uintptr_t * cookie, uint_t flags);

cookie は、リンク対応付けの先頭のオブジェクトを指します。flags は、/usr/include/link.h に定義されているものと同じタイプのアクティビティを指します。

  • LA_ACT_ADD – リンク対応付けリストにオブジェクトが追加される

  • LA_ACT_DELETE – リンク対応付けリストからオブジェクトが削除される

  • LA_ACT_CONSISTENT – オブジェクトのアクティビティが完了した

la_objsearch()

この関数は、オブジェクトの検索を実行することを監査プログラムに知らせます。

char * la_objsearch(const char * name, uintptr_t * cookie, uint_t flags);

name は、検索中のファイルあるいはパス名を指します。cookie は、検索を開始しているオブジェクトを指します。flags は、/usr/include/link.h に定義されている name の出所および作成を示します。

  • LA_SER_ORIG – 初期検索名。通常は、DT_NEEDED エントリとして記録されたファイル名、あるいは dlmopen(3DL) に与えられた引数を指す

  • LA_SER_LIBPATH – パス名が LD_LIBRARY_PATH コンポーネントから作成されている

  • LA_SER_RUNPATH – パス名が「実行パス」コンポーネントから作成されている

  • LA_SER_DEFAULT – パス名がデフォルトの検索パスコンポーネントから作成されている

  • LA_SER_CONFIG – パスコンポーネントの出所が構成ファイルである。crle(1) のマニュアルページを参照

  • LA_SER_SECURE – パスコンポーネントがセキュアオブジェクトに固有である

戻り値は、実行時リンカーが処理を継続する必要がある検索パス名を示します。値 0 は、このパスが無視されることを示しています。検索パスを監視する監査ライブラリは、name を返します。

la_objopen()

この関数は、新しいオブジェクトが実行時リンカーによって読み込まれるたびに呼び出されます。

uint_t la_objopen(Link_map * lmp, Lmid_t lmid, uintptr_t * cookie);

lmp は、新しいオブジェクトを記述するリンクマップ構造を提供します。lmid は、オブジェクトが追加されているリンクマップリストを特定します。cookie は、識別子へのポインタを提供します。この識別子は、オブジェクト lmp に初期設定されます。この識別子は、監査ライブラリによって、オブジェクトを他の「rtld-監査」インタフェースルーチンに対して特定するように変更できます。

la_objopen() 関数は、このオブジェクトで問題になるシンボル結合を示す値を返します。これらの値により、後の la_symbind() 呼び出しが生じます。この結果の値は、/usr/include/link.h に定義された次の値のマスクです。

  • LA_FLG_BINDTO – このオブジェクトに対する監査シンボル結合

  • LA_FLG_BINDFROM – このオブジェクトからの監査シンボル結合

これらの 2 つのフラグの使用法については、la_symbind() 関数を参照してください。

ゼロの戻り値は、結合情報がこのオブジェクトで問題にならないことを示します。

la_preinit()

この関数は、すべてのオブジェクトがアプリケーションに読み込まれた後で、アプリケーションへの制御の譲渡が発生する前に一度呼び出されます。

void la_preinit(uintptr_t * cookie);

cookie は、プロセスを開始したプライマリオブジェクト、通常は動的実行可能プログラムを表します。

la_symbind()

この関数は、la_objopen() によって結合通知のタグが付けられた 2 つのオブジェクト間で結合が発生すると呼び出されます。

uintptr_t la_symbind32(Elf32_Sym * sym, uint_t ndx,
        uintptr_t * refcook, uintptr_t * defcook, uint_t * flags);
 
uintptr_t la_symbind64(Elf64_Sym * sym, uint_t ndx,
        uintptr_t * refcook, uintptr_t * defcook, uint_t * flags,
        const char * sym_name);

sym は構築された記号構造であり、 sym->st_value は結合された記号定義のアドレスを示します。/usr/include/sys/elf.h を参照してください。la_symbind32() は、sym->st_name を調整して実際の記号名を指すようにしています。la_symbind64()sym->st_name を結合オブジェクトの文字列テーブルのインデックスのままにしています。

ndx は、結合オブジェクト動的記号テーブル内の記号インデックスを示します。refcook は、この記号への参照を行うオブジェクトを記述します。この識別子は、LA_FLG_BINDFROM を返した la_objopen() 関数に渡されたものと同じです。defcook は、この記号を定義するオブジェクトを記述します。この識別子は、LA_FLG_BINDTO を返した la_objopen() に渡されるものと同じです。

flags は、結合に関する情報を伝達できるデータ項目を指します。このデータ項目を使用すると、プロシージャのリンクテーブルシンボルエントリの連続監査を変更できます。この値は、/usr/include/link.h に定義された次のフラグのマスクです。

  • LA_SYMB_NOPLTENTERla_pltenter() 関数は、この記号に対しては呼び出されない

  • LA_SYMB_NOPLTEXITla_pltexit() 関数は、この記号に対しては呼び出されない

  • LA_SYMB_DLSYMdlsym(3DL) を呼び出した結果発生したシンボル結合

  • LA_SYMB_ALTVALUE (LAV_VERSION2)la_symbind() への以前の呼び出しによって、記号値に対して代替値が返される

デフォルトでは、la_pltenter() または la_pltexit() 関数が存在する場合、これらの関数は、シンボルが参照されるたびに、la_symbind() 関数の後で、プロシージャのリンクテーブルエントリに対して呼び出されます。詳細は、監査インタフェースの制限を参照してください。

戻り値は、この呼び出しに続いて制御を渡す必要があるアドレスを示します。シンボル結合を監視するだけの監査ライブラリは、sym->st_value の値を返すため、制御は結合記号定義に渡されます。監査ライブラリは、異なる値を返すことによって、シンボル結合を意図的にリダイレクトできます。

sym_name は、la_symbind64() のみに適用可能であり、処理されるシンボルの名前を含みます。この名前は、32 ビットインタフェースから sym->st_name フィールドで使用できます。

la_pltenter()

これらの関数はそれぞれ SPARC および x86 システムで呼び出されます。これらの関数は、結合通知のタグが付いた 2 つのオブジェクト間でプロシージャのリンクテーブルエントリが呼び出されるときに呼び出されます。

uintptr_t la_sparcv8_pltenter(Elf32_Sym * sym, uint_t ndx,
        uintptr_t * refcook, uintptr_t * defcook,
        La_sparcv8_regs * regs, uint_t * flags);
 
uintptr_t la_sparcv9_pltenter(Elf64_Sym * sym, uint_t ndx,
        uintptr_t * refcook, uintptr_t * defcook,
        La_sparcv9_regs * regs, uint_t * flags,
        const char * sym_name);
 
uintptr_t la_i86_pltenter(Elf32_Sym * sym, uint_t ndx,
        uintptr_t * refcook, uintptr_t * defcook,
        La_i86_regs * regs, uint_t * flags);

symndxrefcookdefcook、および sym_name は、la_symbind() に渡されたものと同じ情報を提供します。

regs は、/usr/include/link.h に定義されているように、SPARC システム上の out レジスタと、x86 システム上の stack および frame レジスタを指します。

flags は、結合に関する情報を伝達できるデータ項目を指します。このデータ項目を使用すると、プロシージャのリンクテーブルシンボルエントリの連続監査を変更できます。このデータ項目は、la_symbind() から flags によって指されるものと同じです。この値は、/usr/include/link.h に定義された次のフラグのマスクです。

  • LA_SYMB_NOPLTENTERla_pltenter() は、この記号では再び呼び出されることはない

  • LA_SYMB_NOPLTEXITla_pltexit() は、この記号では呼び出されない

戻り値は、この呼び出しに続いて制御を渡す必要があるアドレスを示します。シンボル結合を監視するだけの監査ライブラリは、sym->st_value の値を返すため、制御は結合記号定義に渡されます。監査ライブラリは、異なる値を返すことによって、シンボル結合を意図的にリダイレクトできます。

la_pltexit()

この関数は、結合通知のタグが付いた 2 つのオブジェクト間でプロシージャのリンクテーブルエントリが返されるときに呼び出されます。この関数は、制御が呼び出し側に到達する前に呼び出されます。

uintptr_t la_pltexit(Elf32_Sym * sym, uint_t ndx, uintptr_t * refcook,
        uintptr_t * defcook, uintptr_t retval);

uintptr_t la_pltexit64(Elf64_Sym * sym, uint_t ndx, uintptr_t * refcook,
        uintptr_t * defcook, uintptr_t retval, const char * sym_name);

symndxrefcookdefcook、および sym_name は、la_symbind() に渡されたものと同じ情報を提供します。retval は結合関数からの戻りコードです。シンボル結合を監視する監査ライブラリは、retval を返します。監査ライブラリは、意図的に異なる値を返すことができます。


注 –

la_pltexit() は実験段階のインタフェースです。詳細は、監査インタフェースの制限を参照してください。


la_objclose()

この関数はオブジェクトに対する終了コードが実行されてから、オブジェクトが読み込みを解除されるまでに呼び出されます。

uint_t la_objclose(uintptr_t * cookie);

cookie はオブジェクトを特定するもので、以前の la_objopen() から取得されています。戻り値は、ここではすべて無視されます。