今回の Solaris リリースでは、幅広いプリンタをサポートするように変更されました。 以前の Solaris リリースと比べると、プリンタのサポートは大きく異なります。 以前のリリースでは、PostScriptTM をネイティブに理解するプリンタを使用しなければ、プレーンな ASCII テキストしか印刷できませんでした。 また、サポートされるプリンタタイプ、および、これらのプリンタタイプが PostScript または ASCII テキストに対応するかどうかについての情報も制限されていました。 今回のリリースでは、変換プログラムであるラスターイメージプロセッサ (Raster Image Processor, RIP) の追加と、PostScript プリンタ記述 (PostScript Printer Description, PPD) ファイルの使用によって、多様なプリンタでの印刷が可能になりました。
RIP 機能および PPD ファイルを組み込むように、Solaris 印刷サブシステムが変更されました。 2 つのインタフェーススクリプト standard_foomatic と netstandard_foomatic が新しく作成されました。 これらのインタフェーススクリプトは、Solaris スプーラと Solaris プリンタサーバーのバックエンドプロセスとの間に、汎用の Solaris インタフェースを提供します。
次に、現在サポートされているプリンタタイプの例を示します。
Lexmark Optra E312
Epson Stylus Photo 1280
Canon BJC-55
QMS magicolor 2+
今回の Solaris リリースにおけるプリンタサポートの拡張には、次の機能が含まれます。
RIP を使用すると、PostScript 処理機能を持たないプリンタでも印刷できます。 Solaris 印刷ソフトウェアは、プリンタサーバー RIP およびそれをサポートするテクノロジを提供するようになりました。 RIP の動作は画面には表示されません。 しかし、適切なプリンタドライバを使用するには、Solaris プリンタマネージャまたは lpadmin -n コマンドを使用して、プリンタをそれぞれ構成する必要があります。
lpadmin コマンド、lpstat コマンド、および Solaris プリンタマネージャのプリンタ定義画面は、PPD ファイルの使用をサポートするように変更されました。
次に、この機能に関連する新しいソフトウェアパッケージを示します。
SUNWa2psr
SUNWa2psu
SUNWespgs
SUNWffiltersr
SUNWffiltersu
SUNWfppd
SUNWgimpprint
SUNWhpijs
SUNWimagick
SUNWpsutils
Solaris プリンタマネージャのプリンタ定義画面は、新しく拡張されたプリンタサポート機能を使用できるように変更されました。 今回のリリースでは、Solaris プリンタマネージャを使用して次のプリンタ定義を割り当てることができません。
プリンタタイプ (Printer Type)
ファイル内容形式 (File Content Type)
Solaris プリンタマネージャの次の画面が変更されました。
新しいローカルプリンタを設定 (New Attached Printer)
プリンタのプロパティを変更する (Modify Printer Properties) (接続したプリンタ用の画面)
新しいネットワークプリンタを設定 (New Network Printer)
プリンタのプロパティを変更する (Modify Printer Properties) (ネットワークプリンタ用の画面)
これらの画面では、「プリンタタイプ (Printer Type)」と「ファイル内容形式 (File Content Type)」が次のオプションに変更されました。
プリンタメーカー (Printer Make)
プリンタモデル (Printer Model)
プリンタドライバ (Printer Driver)
次の表に、Solaris プリンタマネージャで使用するプリンタ定義とそれらが利用可能かどうか (実行している Solaris ソフトウェアリリースによって異なる) について説明します。
表 2–1 Solaris プリンタマネージャで使用するプリンタ定義
プリンタ定義 |
Solaris 9 9/04 より前のリリースで利用できるか |
Solaris 9 9/04 リリースで利用できるか |
---|---|---|
プリンタ名 |
できる |
できる |
プリンタサーバー |
できる |
できる |
備考欄 |
できる |
できる |
プリンタタイプ |
できる |
できない (デフォルトではできない) |
ファイル内容 |
できる |
できない (デフォルトではできない) |
プリンタメーカー |
できない |
できる |
プリンタモデル |
できない |
できる |
プリンタドライバ |
できない |
できる |
プリンタ障害通知 |
できる |
できる |
オプション |
できる |
できる |
ユーザーアクセスリスト |
できる |
できる |
デフォルトプリンタ |
できる |
できる |
バナーを常に印刷 |
できる |
できる |
プリンタ定義「プリンタメーカー」、「プリンタモデル」、および「プリンタドライバ」の詳細については、プリンタの定義の設定を参照してください。
PPD ファイルの使用は待ち行列ごとの構成オプションであり、必須ではありません。 RIP 機能を搭載しているプリンタでは、PPD ファイルは必要ありません。 このようなプリンタは、以前の Solaris リリースの場合と同じように構成できます。
パフォーマンスを最大限にするため、Solaris プリンタマネージャは ppdcache ファイル内にある PPD ファイルだけを認識します。 場合によっては、以前の Solaris プリンタマネージャのプリンタ定義画面オプションに戻すことも可能です。 このためには、/usr/lib/lp/model/ppd/ ディレクトリにある ppdcache ファイルの名前を変更します。 このファイルの名前を変更するには、まず、スーパーユーザー (あるいは、同等の役割) になります。
ppdcache ファイルは、Solaris プリンタマネージャが新しいプリンタ定義画面オプションを表示するために必要なファイルです。このファイルの名前を変更すると、Solaris プリンタマネージャが以前の動作に戻り、以前の画面が表示されます。
新しいバージョンの Solaris プリンタマネージャを使用して、以前のバージョンの Solaris プリンタマネージャで追加したプリンタを変更することもできます。 しかし、ppdcache ファイルの名前を変更した場合、今回の Solaris リリースに含まれるバージョンの Solaris プリンタマネージャで追加したプリンタは変更できなくなります。
lpadmin コマンドには、新しい -n オプションが追加されました。 このオプションを使用すると、PPD ファイルを指定して、新しい印刷待ち行列を作成したり、既存の印刷待ち行列を変更したりできます。
たとえば、foobar という印刷待ち行列を Lexmark プリンタに追加したい場合、次のコマンドを入力します。
# lpadmin -p foobar -v device -I postscript -m standard_foomatic \ -n /usr/lib/lp/model/ppd/Lexmark/Lexmark-Optra_E312-Postscript.ppd.gz |
lpadmin コマンドに -n オプションを使用するときには、上記の例のように、PPD ファイルへのフルパスとファイル名を指定します。
詳細については、lpadmin(1M) のマニュアルページを参照してください。
サポートされるプリンタについての情報は、/usr/lib/lp/model/ppd ディレクトリにあります。 自分のプリンタに必要なファイルが見つからない場合は、独自の PPD ファイルを追加できます。 lpadmin -n コマンドを使用して新しい印刷待ち行列を作成する場合、独自の PPD ファイルは任意の場所に格納できます。 しかし、Solaris プリンタマネージャを使用して印刷待ち行列を作成する場合、 その PPD ファイルのエントリを ppdcache ファイルに含める必要があります。
サポートされるメーカーについての情報は、 /usr/lib/lp/model/ppd/manufacturer ディレクトリにあります。 このディレクトリで ls コマンドを実行すると、特定のプリンタメーカー用のすべての PPD ファイルの一覧が表示されます。 これらのファイルの名前は、サポートされるプリンタモデルを反映しています。
lpadmin コマンドに -n オプションを使用して PPD ファイルを指定するときには、その PPD ファイルへのフルパスを指定する必要があります。 異なるディレクトリにある PPD ファイルを使用する場合、そのファイルへのフルパスを指定する必要があります。
たとえば、ユーザーのホームディレクトリにある xyz.pdd という PPD ファイルを指定するには、次のコマンドを入力します。
# lpadmin -p foo -n /home/user/stuff/xyz.ppd -m \ standard_foomatic -I postscript -v /device |
PPD ファイルを使用して印刷待ち行列を作成した場合、 lpstat コマンドの出力には、その待ち行列を使用するように構成されている PPD ファイルが表示されるようになります。 PPD ファイルを使用せずに印刷待ち行列を作成した場合、lpstat コマンドの出力は以前と同じです。
次の 2 つの例に、lpstat コマンドの出力の違いを示します。
次の例では、PPD ファイルを使用せずに印刷待ち行列が作成されています。 PPD エントリが「none」であることに注目してください。
# lpstat -l -p luna printer luna is idle. enabled since Wed Apr 14 13:45:24 2004. available. Form mounted: Content types: any Printer types: unknown Description: Connection: direct Interface: /usr/lib/lp/model/standard PPD: none On fault: write to root once After fault: continue Users allowed: (all) Forms allowed: (none) Banner required Character sets: (none) Default pitch: Default page size: Default port settings: |
次の例では、Mitsubishi-CP50_Color_Printer-cp50.ppd.gz という PPD ファイルを使用して印刷待ち行列が構成されていることが、lpstat コマンドの出力からわかります。
# lpstat -l -p paper printer paper is idle. enabled since Tue 30 Mar 2004 01:48:38 PM PST available. Form mounted: Content types: any Printer types: unknown Description: Connection: direct Interface: /usr/lib/lp/model/standard_foomatic PPD: /usr/lib/lp/model/ppd/Mitsubishi/Mitsubishi-CP50_Color_Printer-cp50.ppd.gz After fault: continue Users allowed: (all) Forms allowed: (none) Banner required Character sets: (none) Default pitch: Default page size: Default port settings# lpstat l p <queue> |
Solaris プリンタマネージャを使用して、PPD ファイルを使用せずに作成した印刷待ち行列を変更することもできます。 この場合、Solaris プリンタマネージャは、プリンタメーカー、プリンタモデル、およびプリンタドライバが含まれない、以前のプリンタ定義画面オプションを使用します。
正しいプリンタのメーカー、モデル、およびドライバを選択しているのにもかかわらず、印刷ジョブの出力が文字化けを起こすことがあります。 この問題は、Solaris x86 システムの /dev/lp パラレルポート経由で印刷しているときに発生します。 この問題を修正するには、次のコマンドを実行します。
# lpadmin -p printer -H nopush |