この節では、Solaris OS で印刷するための計画の立て方の概要を説明します。次の情報が含まれています。
プリンタ名、備考欄、プリンタポートなどのプリンタの定義の設定
プリンタのメーカー、モデル、およびドライバの選択
使用する PPD ファイルの決定
プリンタタイプとファイル内容の形式の選択
今回のリリースでは、プリンタタイプとファイル内容形式は Solaris プリンタマネージャで割り当てることができません。 Solaris プリンタマネージャを以前の動作に戻す方法については、以前の Solaris プリンタマネージャのプリンタ定義画面に戻す を参照してください。
障害通知とデフォルトプリンタの宛先の設定
バナーページを設定するかどうか、あるいはプリンタへのユーザーのアクセスを制限するかどうかの決定
プリンタクラスと障害回復の設定
ネットワーク上でのプリンタの定義は、より効率的な印刷環境をユーザーに提供するための継続的な作業です。 たとえば、サイトにあるすべてのプリンタのパラメータを設定すれば、ユーザーはプリンタがどこにあるのかを見つけやすくなります。 あるいは、プリンタのクラスを定義することにより、印刷要求を迅速に処理できます。
lpadmin コマンドを使用すると、すべてのプリンタ定義を設定できます。一方、Solaris プリンタマネージャを使用すると、プリンタのインストールまたは変更時にプリンタ定義の一部だけを設定できます。 表 3–1 は、プリンタ定義と、その定義を Solaris プリンタマネージャで割り当てることができるかどうかを示しています。
表 3–1 Solaris プリンタマネージャで設定されるプリンタ定義
プリンタ定義 |
Solaris プリンタマネージャで設定できるか |
---|---|
設定できる |
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設定できる |
|
設定できる |
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設定できない (デフォルトではできない) |
|
設定できない (デフォルトではできない) |
|
プリンタメーカー |
設定できる |
プリンタモデル |
設定できる |
プリンタドライバ |
設定できる |
設定できる。ただし lpadmin コマンドより機能は少ない |
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設定できる |
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設定できる。ただし lpadmin コマンドより機能は少ない |
|
設定できる。ただし lpadmin コマンドより機能は少ない |
|
設定できない |
|
設定できない |
システムにプリンタを追加するときは、その「プリンタ名」を指定します。 プリンタ名の必要条件は以下のとおりです。
管理ドメイン内のすべてのプリンタ間で一意であること
最大 14 文字までの英数字 (ハイフンと下線も含む) であること
覚えやすく、プリンタのタイプ、場所、プリンタサーバー名などを識別できること
サイトに合った命名規則を設定してください。 たとえば、ネットワーク上で異なるタイプのプリンタを使用する場合は、プリンタ名の一部にプリンタタイプを含めると、ユーザーは適切なプリンタを選択しやすくなります。 たとえば、PostScript プリンタは文字 PS で識別できます。 ただし、サイトのプリンタがすべて PostScript プリンタである場合は、PS というイニシャルをプリンタ名の一部として含める必要はありません。
lpadmin -Dコマンドまたは Solaris プリンタマネージャを使用すると、プリンタに説明 (備考欄) を割り当てることができます。 プリンタの備考欄には、ユーザーがプリンタを識別できるような情報を含める必要があります。 プリンタが設置されている部屋番号、プリンタのタイプやメーカー、印刷に問題がある場合に連絡する担当者名などを含めることができます。
次のコマンドで備考欄を参照することができます。
$ lpstat -D -p printer-name
プリンタのインストール時、またはその設定を後から変更するときに、lpadmin -p printer-name -v device-name コマンドまたは Solaris プリンタマネージャを使用して、プリンタの接続先となるデバイス、つまり「プリンタポート」を指定できます。
ほとんどのシステムが、2 つのシリアルポートと 1 つのパラレルポートまたは USB ポートを持っています。 システムにポートを追加しないかぎり、3 台以上のシリアルプリンタおよび 2 台以上のパラレルプリンタまたは 3 台以上の USB プリンタを直接接続することはできません。
Solaris プリンタマネージャを使用すると、以下のプリンタポートタイプを選択することができます。 これらのオプションには、lpadmin コマンドと同じ柔軟性があります。
プリンタポートタイプ |
対応するデバイス名のオプション |
---|---|
シリアル |
/dev/term/a |
シリアル |
/dev/term/b |
パラレル |
/dev/printers/0 —> /dev/ecpp0 |
USB |
/dev/printers/[1–9] |
プリンタサーバーが認識するポート名を指定 |
Other |
LP 印刷サービスは、標準プリンタインタフェースプログラムからの設定を使用してプリンタポートを初期設定します。 プリンタインタフェースプログラムの詳細は、印刷フィルタの管理を参照してください。 デフォルト設定で機能しないパラレルプリンタやシリアルプリンタがある場合は、プリンタポート特性の調整 のポート設定をカスタマイズする方法を参照してください。
x86 システムで複数のポートを使用している場合、デフォルトでは最初のポートだけが有効です。 2 番目以降のポートはデフォルトでは無効です。 複数のポートを使用するためには、追加の asy (シリアル) ポートや lp (パラレル) ポートごとに、デバイスドライバのポート構成ファイルを手作業で編集しなければなりません。 x86 ポート構成ファイルのパスは、次のとおりです。
/platform/i86pc/kernel/drv/asy.conf
/platform/i86pc/kernel/drv/lp.conf
「プリンタメーカー」とは、プリンタの製造業者名です。 プリンタメーカーは、プリンタ本体、梱包材、および同梱のマニュアルなどに印刷されています。
次に、今回のリリースで利用できるプリンタメーカーの例を示します。
Lexmark
Epson
Canon
QMS
Xerox
プリンタの製造業者はいくつかのプリンタのタイプおよびモデルを製造しています。 「プリンタモデル」はプリンタを正確に定義します。 プリンタモデルは通常、プリンタの前面または上面に刻印されています。 また、この情報は梱包材や同梱のマニュアルなどにも示されています。
次に、今回のリリースで利用できるプリンタモデルの例を示します。
Lexmark Optra E312
Lexmark Z32
Lexmark 1000
「プリンタドライバ」で、プリンタで印刷するときに使用するドライバを選択します。 プリンタドライバは、指定したプリンタメーカーとプリンタモデル用の PPD ファイルを選択したときに決定されます。
今回のリリースでは、 Solaris プリンタマネージャでプリンタタイプを割り当てることができなくなりました。 その代わりに、Solaris プリンタマネージャで新しいプリンタを追加したり既存のプリンタを変更したりする際には、プリンタのメーカー、モデル、およびドライバを 選択する必要があります。 以前 Solaris プリンタマネージャで割り当てたプリンタ定義を使用する方法については、以前の Solaris プリンタマネージャのプリンタ定義画面に戻す を参照してください。
「プリンタタイプ」とは、プリンタの種類を表す一般名です。 プリンタタイプは、プリンタのさまざまな制御シーケンスが入っている terminfo データベースエントリを識別します。 通常、プリンタタイプはメーカーのモデル名からとります。 たとえば、DECwriter のプリンタタイプ名は decwriter です。 ただし、共通プリンタタイプ PS はこの規則に従いません。 PS は、多くの PostScript プリンタモデルのプリンタタイプとして使用されます。
プリンタタイプを指定するには、lpadmin -T コマンドを使用します。
各プリンタタイプに関する情報は、terminfo データベース (/usr/share/lib/terminfo) に格納されています。 この情報には、プリンタの機能と初期制御データが含まれます。 インストールするプリンタは、terminfo データベース内のエントリに対応していなければなりません。
$ pwd /usr/share/lib/terminfo $ ls 1 3 5 7 9 B H P a c e g i k m o q s u w y 2 4 6 8 A G M S b d f h j l n p r t v x z $ |
各サブディレクトリには、端末またはプリンタに関してコンパイル済みのデータベースエントリが入っています。 各エントリは、プリンタまたは端末のタイプの頭文字別に編成されています。 たとえば、Epson プリンタがある場合は、/usr/share/lib/terminfo/e ディレクトリ内を探すと、Epson プリンタの特定のモデルが見つかります。
$ cd /usr/share/lib/terminfo/e $ ls emots ep2500+high ep48 ergo4000 exidy2500 env230 ep2500+low epson2500 esprit envision230 ep40 epson2500-80 ethernet ep2500+basic ep4000 epson2500-hi ex3000 ep2500+color ep4080 epson2500-hi80 exidy $ |
上記のように、Epson プリンタのエントリがあります。
NEC プリンタがある場合は、/usr/share/lib/terminfo/n ディレクトリ内を探すと、使用中の NEC プリンタモデルが見つかります。
$ cd /usr/share/lib/terminfo/n $ ls ncr7900 ncr7900iv netronics network nuc ncr7900-na ncr7901 netty netx nucterm ncr7900i nec netty-Tabs newhp ncr7900i-na net netty-vi newhpkeyboard $ |
上記のように、このディレクトリには、NEC のエントリが含まれています。
ローカル PostScript プリンタの場合は、プリンタタイプとして PostScript (PS) または Reverse PostScript (PSR) を使用します。 使用するプリンタが PostScript をサポートしていれば、プリンタタイプが terminfo データベースに含まれていても、PS または PSR を選択してください。
PostScript プリンタでページの印刷面を上にして印刷すると、文書は逆方向に印刷されます。1 ページ目はスタックの 1 番下になり、最終ページは 1 番上になります。 プリンタのタイプを PSRとして指定すると、LP 印刷サービスはプリンタに送る前にページの順序を逆転させます。 つまり、最終ページが最初に印刷され、各ページは正順にスタックされます。 ただし、LP 印刷サービスがページ順を確実に変更できるのは、Adobe® Technical Note #5001 の『PostScript Language Document Structuring Conventions Specification』(Adobe Developer Relations の Web サイトで入手可能) に準拠する PostScript ファイルの場合だけです。
プリンタで複数の種類のプリンタをエミュレートできる場合は、lpadmin -T コマンドを使用して複数のタイプを割り当てることができます。 複数のプリンタタイプを指定すると、LP 印刷サービスは各印刷要求に適したタイプを使用します。
該当する terminfo ディレクトリ内でプリンタタイプが見つからないことがあります。 プリンタのタイプは、そのプリンタのメーカー名に対応しているとは限りません。 たとえば、PostScript プリンタのタイプによっては、メーカーや製品名に固有のエントリの代わりに、PS または PSR エントリ (/usr/share/lib/terminfo/P ディレクトリに入っています) を使用できます。
例外的なタイプのプリンタを使用する場合は、さまざまなエントリを試してみなければ、プリンタのモデルに使用できる特定の terminfo エントリを判断できないことがあります。 できれば、プリンタに使用できるエントリを terminfo データベース内で見つけてください。 既存のエントリを使用するほうが、新たにエントリを作成するよりはるかに簡単です。 独自のエントリを作成しなければならない場合は、サポートされていないプリンタの terminfo エントリを追加する を参照してください。役立つヒントが掲載されています。
Solaris 9 9/04 より前のリリースでは、Solaris プリンタマネージャは次の一覧にあるファイル内容形式を提供しており、ローカルプリンタをインストールまたは変更するときには、この一覧から選択できました。 しかし、現在、ファイル内容形式は Solaris プリンタマネージャで割り当てることができなくなりました。 今回のリリースでは、Solaris プリンタマネージャでプリンタを追加するときには、PPD ファイルを使用して、プリンタのメーカー、モデル、およびドライバを選択します。 このとき、推奨されるファイル内容形式は PostScript です。 このファイル内容形式はツールによって設定されます。
場合によっては、Solaris プリンタマネージャを以前の動作に戻すことも可能です。 詳細は、以前の Solaris プリンタマネージャのプリンタ定義画面に戻す を参照してください。
新しいプリンタを追加するとき、あるいは、既存のプリンタを変更するときに、ファイル内容形式を指定するには、 lpadmin -I コマンドを使用する必要があります。
印刷フィルタはファイルの内容を、目的のプリンタが受け付けることができる形式に変換します。 「ファイル内容形式」は、フィルタを通さずに直接印刷できるファイル内容の形式を LP 印刷サービスに通知します。 フィルタなしに印刷するには、必要なフォントをプリンタ上でも利用できなければなりません。 フィルタは、その他のファイル形式用に設定して使用します。
ほとんどのプリンタは、以下のファイルタイプを直接印刷することができます。
ユーザーがファイルの印刷要求を出すときは、lp -T content-type コマンドを使用してそのファイルの内容形式を指定することができます。 要求を出すときにファイルの内容形式を指定しないと、LP サーバーは要求の最初のファイルを見て内容形式を判定します。 ファイルが ^D%! または %! で始まっている場合、その要求には PostScriptTM データが含まれると見なされます。 それ以外の場合、ファイルは simple (ASCII) テキストと見なされます。 LP 印刷サービスはファイル内容形式を使用して、ファイル内容をプリンタで処理できる形式に変換するためのフィルタを決めます。
選択結果は LP 印刷サービスが使用する名前に変換されます。 次の表は、Solaris プリントマネージャで選択できるファイル内容形式を示しています。
表 3–2 Solaris プリンタマネージャによるファイル内容形式の選択
ファイル内容形式 |
LP 印刷サービス名 |
説明 |
---|---|---|
PostScript |
postscript |
PostScript ファイルはフィルタを通す必要がない |
ASCII |
simple |
ASCII ファイルはフィルタを通す必要がない |
PostScript と ASCII |
simple, postscript |
PostScript ファイルも ASCII ファイルもフィルタを通す必要がない |
なし |
"" |
プリンタのタイプに一致するもの以外は、すべてのファイルがフィルタを通す必要がある |
任意 |
任意 |
フィルタは使用されない。 プリンタがファイル内容形式を直接処理できなければ、そのファイルは印刷されない |
プリンタの機能に最も適合するファイル内容形式を選択してください。 PostScript は、Solaris プリンタマネージャのデフォルトの選択で、通常はほとんどこのまま使用できます (PostScript ファイルには、フィルタ処理が不要なことを示します)。
この節では、Solaris ソフトウェアで最も一般的に使用されるプリンタのプリンタタイプとファイル内容形式について説明します。 掲載されていませんが、ここで説明するプリンタの多くは、simple 内容形式のファイルも直接印刷できます。
PostScript プリンタがある場合は、プリンタタイプ PS または PSR と内容形式 postscript を使用してください。 PSR はページの順序を逆転させ、各ページを逆順で印刷してバナーページを最後に印刷します。
表 3–3 は、PostScript 以外の他のプリンタと、各プリンタの構成に使用するプリンタタイプを示しています。 これらのプリンタでは、ファイル内容形式は simple です。
Sun では表 3–3 のプリンタをサポートしていませんが、フィルタ処理を行うか、プリンタがファイル内容形式を直接印刷できれば、サポートしていないプリンタを使用できます。 以下の製品に不明な点がある場合は、製造元に問い合わせてください。
プリンタ |
プリンタタイプ |
---|---|
Daisy |
daisy |
Datagraphix |
datagraphix |
DEC LA100 |
la100 |
DEC LN03 |
ln03 |
DECwriter |
decwriter |
Diablo |
diablo |
|
diablo-m8 |
Epson 2500 系列 |
epson2500 |
|
epson2500-80 |
|
epson2500-hi |
|
epson2500-hi80 |
Hewlett-Packard HPCL printer |
hplaser |
IBM Proprinter |
ibmproprinter |
terminfo データベースにないプリンタを設定したい場合は、サポートされていないプリンタの terminfo エントリを追加する方法 を参照してください。