Sun Cluster データサービス開発ガイド (Solaris OS 版)

Start および Stop メソッドを使用するかどうかの決定

この節では、Start メソッドと Stop メソッドを使用するか、または、Prenet_start メソッドと Postnet_stop メソッドを使用するかを決定するときのいくつかの注意事項について説明します。使用する適切なメソッドを決定するには、クライアントおよびデータサービスのクライアントサーバー型ネットワークプロトコルについて十分に理解している必要があります。

ネットワークアドレスリソースを使用するサービスでは、起動または停止の手順を特定の順序で実行しなければならない場合があります。この順序は、論理ホスト名アドレスの構成を基準とする必要があります。オプションのコールバックメソッド Prenet_startPostnet_stop を使用してリソースタイプを実装すると、同じリソースグループ内のネットワークアドレスが「起動」に構成される前、または「停止」に構成されたあとに、特別な起動処理または停止処理を行います。

RGM は、データサービスの Prenet_start メソッドを呼び出す前に、ネットワークアドレスを取り付ける (plumb、ただし起動には構成しない) メソッドを呼び出します。RGM は、データサービスの Postnet_stop メソッドを呼び出したあとに、ネットワークアドレスを取り外す (unplumb) メソッドを呼び出します。

    RGM がリソースグループをオンラインにするときは、次のような順番になります。

  1. ネットワークアドレスを取り付けます。

  2. データサービスの Prenet_start メソッドを呼び出します (存在する場合)。

  3. ネットワークアドレスを起動状態に構成します。

  4. データサービスの Start メソッドを呼び出します (存在する場合)。

    RGM がリソースグループをオフラインにするときは、逆の順番になります。

  1. データサービスの Stop メソッドを呼び出します (存在する場合)。

  2. ネットワークアドレスを停止状態に構成します。

  3. データサービスの Postnet_stop メソッドを呼び出します (存在する場合)。

  4. ネットワークアドレスを取り外します。

StartStopPrenet_startPostnet_stop のうち、どのメソッドを使用するかを決定する際には、まずサーバー側を考慮します。データサービスアプリケーションリソースとネットワークアドレスリソースの両方を持つリソースグループをオンラインにするとき、RGM は、データサービスリソースの Start メソッドを呼び出す前に、ネットワークアドレスを起動状態に構成するメソッドを呼び出します。したがって、データサービスを起動するときにネットワークアドレスが「起動」に構成されている必要がある場合は、Start メソッドを使用してデータサービスを起動します。

同様に、データサービスアプリケーションリソースとネットワークアドレスリソースの両方を持つリソースグループをオフラインにするとき、RGM は、データサービスリソースの Stop メソッドを呼び出したあとに、ネットワークアドレスを停止状態に構成するメソッドを呼び出します。したがって、データサービスを停止するときにネットワークアドレスが「起動」に構成されている必要がある場合は、Stop メソッドを使用してデータサービスを停止します。

たとえば、データサービスを起動または停止するために、データサービスの管理ユーティリティーまたはライブラリを実行しなければならない場合があります。また、クライアントサーバー型ネットワークインタフェースを使用して管理を実行するような管理ユーティリティーまたはライブラリを持っているデータサービスもあります。つまり、管理ユーティリティーがサーバーデーモンを呼び出すので、管理ユーティリティーまたはライブラリを使用するためには、ネットワークアドレスが「起動」に構成されている必要があります。このような場合は、Start メソッドと Stop メソッドを使用します。

データサービスが起動および停止するときにネットワークアドレスが「停止」に構成されている必要がある場合は、Prenet_start メソッドと Postnet_stop メソッドを使用して データサービスを起動および停止します。クラスタ再構成 (SCHA_GIVEOVER 引数を指定した scha_control() または clnode evacuate コマンドによるスイッチオーバー) のあとネットワークアドレスとデータサービスのどちらが最初にオンラインになるかによってクライアントソフトウェアの応答が異なるかどうかを考えます。たとえば、クライアントの実装が最小限の再試行を行うだけで、データサービスのポートが利用できないと判断すると、すぐにあきらめる場合もあります。

データサービスを起動するときにネットワークアドレスが「起動」に構成されている必要がない場合、ネットワークインタフェースが「起動」に構成される前に、データサービスを起動します。このようにデータサービスを起動することで、ネットワークアドレスが「起動」に構成されるとすぐに、データサービスはクライアントの要求に応答できます。その結果、クライアントが再試行を停止する可能性も減ります。このような場合は、Start ではなく、Prenet_start メソッドを使用してデータサービスを起動します。

Postnet_stop メソッドを使用した場合、ネットワークアドレスが「停止」に構成されている時点では、データサービスリソースは「起動」のままです。Postnet_stop メソッドを実行するのは、ネットワークアドレスが「停止」に構成されたあとだけです。結果として、データサービスの TCP または UDP のサービスポート (つまり、その RPC プログラム番号) は、常に、ネットワーク上のクライアントから利用できます。ただし、ネットワークアドレスも応答しない場合を除きます。


注 –

クラスタに RPC サービスをインストールする場合、サービスはプログラム番号 100141、100142、および 100248 を使用できません。これらの番号は、Sun Cluster デーモン rgmd_receptionist fed、および pmfd 用に予約されています。インストールした RPC サービスがこれらのプログラム番号のいずれかを使用する場合は、RPC サービスのプログラム番号を変更します。


StartStop メソッドを使用するか、Prenet_startPostnet_stop メソッドを使用するか、または両方を使用するかを決定するには、サーバーとクライアント両方の要件と動作を考慮に入れる必要があります。