Sun Cluster のシステム管理 (Solaris OS 版)

第 4 章 データ複製のアプローチ

この章では、Sun Cluster ソフトウェアで使用できるデータ複製技術について説明します。Sun Cluster ソフトウェアは、クラスタ間のデータ複製 (障害回復目的) またはクラスタ内のデータ複製 (ホストベースのミラー化の代替として) をサポートします。データ複製は、主ストレージデバイスからバックアップデバイス (二次デバイス) へのデータのコピーとして定義されます。主デバイスに障害が発生した場合も、二次デバイスからデータを使用できます。データ複製を使用すると、クラスタの高可用性と耐障害性を確保できます。

クラスタに最適なサービスを提供する複製アプローチを選択するには、ホストベースとストレージベースのデータ複製を両方とも理解しておく必要があります。Sun Cluster Geographic Edition を使用してデータ複製を管理できます。詳細については、『Sun Cluster Geographic Edition Overview』を参照してください。

この章で説明する内容は次のとおりです。

データ複製についての理解

Sun Cluster はデータ複製に対して次のアプローチをサポートしています。

サポートされるデータ複製方式

Sun Cluster ソフトウェアは、クラスタ間またはクラスタ内のデータ複製方式として以下をサポートしています。

  1. クラスタ間の複製 – 障害回復目的でのクラスタ間のデータ複製には、ホストベースまたはストレージベースの複製を使用できます。通常、ホストベースの複製とストレージベースの複製のいずれかを選択し、両方の組み合わせは選択しません。Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアで両方の種類の複製を管理できます。

    • ホストベースの複製

      • Sun StorageTek Availability Suite 4 (Solaris 10 OS 以降)

      • Sun StorEdge Availability Suite 3.2.1 (Solaris 9 OS)

      このマニュアルでは、特に明記していないかぎり、Sun StorageTek Availability Suite ソフトウェアに言及している内容は、Sun StorEdge Availability Suite ソフトウェアにも該当します。

      Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアを使用しないでホストベースの複製を使用する場合は、付録 A 例「Sun StorEdge Availability Suite または Sun StorageTek Availability Suite ソフトウェアを使用したホストベースのデータ複製の構成」を参照してください。

    • ストレージベースの複製

      • Hitachi TrueCopy (Sun Cluster Geographic Edition 経由)

      • EMC Symmetrix Remote Data Facility (SRDF) (Sun Cluster Geographic Edition 経由)

      Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアを使用しないでストレージベースの複製を使用する場合は、複製ソフトウェアのマニュアルを参照してください。

  2. クラスタ内の複製 – この方式は、ホストベースのミラー化の代替として使用されます。

    • ストレージベースの複製

      • Hitachi TrueCopy

      • EMC Symmetrix Remote Data Facility (SRDF)

  3. アプリケーションベースの複製 – Oracle Data Guard はアプリケーションベースの複製ソフトウェアの例です。この種類のソフトウェアは障害回復目的でのみ使用されます。詳細については、『Sun Cluster Geographic Edition Oracle Data Guard 向けデータ複製ガイド』を参照してください。

クラスタ内でのストレージベースのデータ複製の使用

ストレージベースのデータ複製は、ストレージデバイスにインストールされているソフトウェアを使用して、クラスタまたは構内クラスタ内の複製を管理します。このようなソフトウェアは、特定のストレージデバイスに固有で、障害回復には使用されません。ストレージベースのデータ複製を構成する際には、ストレージデバイスに付属するマニュアルを参照してください。

使用するソフトウェアに応じて、ストレージベースのデータ複製を使用して自動または手動いずれかのフェイルオーバーを使用できます。Sun Cluster は、Hitachi TrueCopy および EMC SRDF ソフトウェアによる複製物の手動および自動フェイルオーバーをサポートしています。

この節では、構内クラスタで使用されるストレージベースのデータ複製を説明します。図 4–1 に、2 つのストレージアレイ間でデータが複製される、2 か所に設置されたクラスタ構成の例を示します。この例では、第一の場所に主ストレージアレイがあり、これが両方の場所のノードにデータを提供します。また主ストレージアレイは、複製するデータを二次ストレージアレイに提供します。


注 –

図 4–1 は、複製されていないボリューム上に定足数デバイスがあることを示しています。複製されたボリュームを定足数デバイスとして使用することはできません。


図 4–1 ストレージベースのデータ複製を装備した 2 ヶ所に設置されたクラスタ構成

図 : 前のパラグラフと次のパラグラフはグラフィックを説明したものです。

使用するアプリケーションの種類によっては、Hitachi TrueCopy によるストレージベースのデータ複製を Sun Cluster 環境で同期的または非同期に実行できます。構内クラスタで自動フェイルオーバーを実行する場合は、TrueCopy を同期的に使用します。EMC SRDF によるストレージベースの同期複製は、Sun Cluster でサポートされています。EMC SRDF については、非同期複製はサポートされていません。

クラスタ内でストレージベースのデータ複製を使用する際の要件と制限

データの整合性を確保するには、マルチパスおよび適切な RAID パッケージを使用します。次のリストには、ストレージベースのデータ複製を使用するクラスタ構成を実装するための考慮事項が含まれています。

クラスタ内でストレージベースのデータ複製を使用する際の手動回復に関する懸念事項

すべての構内クラスタと同じように、ストレージベースのデータ複製を使用するクラスタは、通常、1 つの障害が発生した場合はユーザーの操作は必要ありません。ただし、(図 4–1 に示すように) 手動フェイルオーバーを使用し、主ストレージデバイスを保持する空間が失われた場合、2 ノードクラスタでは問題が発生します。残ったノードは定足数デバイスを予約できず、またクラスタメンバーとして起動できません。このような状況では、クラスタには次の手動操作が必要になります。

  1. クラスタメンバーとして起動するよう、Sun のサービスプロバイダが残りのノードを再構成する必要があります。

  2. ユーザーまたは Sun のサービスプロバイダが、二次ストレージデバイスの複製されてない方のボリュームを定足数デバイスとして構成する必要があります。

  3. 二次ストレージデバイスを主ストレージとして使用できるよう、ユーザーまたは Sun のサービスプロバイダが残りのノードを構成する必要があります。このような再構成には、ボリュームマネージャーボリュームの再構築、データの復元、ストレージボリュームとアプリケーションの関連付けの変更が含まれます。

ストレージベースのデータ複製を使用する際のベストプラクティス

ストレージベースのデータ複製に Hitachi TrueCopy ソフトウェアを使用するデバイスグループを設定する場合は、次のプラクティスに従ってください。

ストレージベースのデータ複製に EMC SRDF ソフトウェアを使用する場合は、静的デバイスではなく動的デバイスを使用します。静的デバイスでは主複製を変更するのに数分かかり、フェイルオーバー時間に影響を与えることがあります。