この節では、Veritas Cluster Server または Sun Cluster の高可用性のクラスタリングソフトウェアを設定し、Messaging Server で使用するための準備に必要な情報について説明します。『Sun Java System Communications Services 6 2005Q4 配備計画ガイド』の第 6 章「サービスの可用性の設計」を読んでおくことを前提にしています。また、Veritas または Sun Cluster Server のマニュアルで、詳細な計画、インストール手順、必要なパッチなどの情報を必要に応じて参照してください。
この章には、次の節があります。
次の表 は、Messaging Server で現時点でサポートされている Sun Cluster Server および Veritas Cluster Server のバージョンのリストです。
表 3–1 Sun Cluster Server および Veritas Cluster Servers のサポートされているバージョン
クラスタ |
サポートされているバージョン |
---|---|
Sun Cluster Server |
Sun Cluster 3.1 |
Veritas Cluster Server |
Veritas Cluster Server 1.3、Veritas Cluster Server 2.0、および Veritas Cluster Server 3.5 |
クラスタエージェントは、クラスタフレームワークのもとで動作する Messaging Server プログラムです。
Sun Cluster Messaging Server エージェント (SUNWscims) は、Java Enterprise System インストーラから Sun Cluster 3.1 を選択したときにインストールされます。Veritas Cluster Messaging Server エージェント (SUNWmsgvc) は、Java Enterprise System CD の Messaging Server の Product サブディレクトリにあります ( Solaris_sparc/Product/messaging_svr/Packages/SUNWmsgvc)。VCS クラスタエージェントをインストールするには、pkgadd(1M) コマンドを使用する必要があります。
Messaging Server および高可用性 (Veritas Cluster および Sun Cluster の両方に適用される) のインストールに関して次のことに注意してください。
クラスタリングソフトウェアは、Messaging Server の現在のバージョンのインストールと設定を行う前にインストールする必要があります。その場合は、Messaging Server の HA 論理ホスト名が現在指定しているクラスタノードで、インストールを実行してください。ノード名の入力を要求されたら、クラスタエイリアスを入力してください。Messaging Server をインストールする場合は、インストール先のノードはクラスタの論理名であり、物理名とは無関係であることを管理サーバーに報告してください。
Messaging Server の初期実行時設定 (「Messaging Server の初期実行時設定を作成する」を参照) を実行する際に、Messaging Server のクラスタの完全指定 HA 論理ホスト名を指定してください。
Messaging Server を設定するには、クラスタホスト名を使用してください。それ以外の方法で設定した場合、クラスタホスト名を使用して再設定する必要があります。
useconfig ユーティリティーを使用することで、HA 環境の複数のノード間で単一の設定を共有することができます。このユーティリティーは、既存の設定をアップグレードまたは更新するものではありません。
たとえば、最初のノードをアップグレードする場合は、Java Enterprise System インストーラからインストールを行ってから Messaging Server を設定します。そのあと、Java Enterprise System インストーラを使って Messaging Server パッケージをインストールする 2 番目のノードにフェイルオーバーします。ただし、初期実行時設定プログラム (configure) をもう一度実行する必要はありません。代わりに、useconfig ユーティリティーを使用することができます。
このユーティリティーを使用するには、useconfig ユーティリティーを実行して、以前の Messaging Server 設定を指定します。
msg_svr_base/sbin/useconfig install/configure_YYYYMMDDHHMMSS |
configure_YYYYMMDDHHMMSS は以前の構成設定ファイルです。
新しいノードでは、共用ディスク上の msg_svr_base/data/setup ディレクトリに configure_YYYYMMDDHHMMSS があります。
「Veritas Cluster Server エージェントのインストール」および「Sun Cluster エージェントのインストール」の以下の節には、useconfig ユーティリティーをいつ使用できるかが記載されています。
Messaging Server は、Veritas Cluster Server 1.3、2.0、および 3.5 とともに設定することができます。この節で示す手順では、Veritas Cluster 3.5 のみを取り上げています。Veritas 1.3 および 2.0 については、『Sun Java Enterprise System 2005Q4 Installation Guide for UNIX』を参照してください。
次の手順を実行する前に、Veritas Cluster Server マニュアルを再度お読みください。
Veritas Volume Manager (VxVM) には、別のライセンスを必要とするクラスタ機能があります。この機能では、Sun Cluster 3.0 グローバルファイルシステム同様、共有ストレージ上のファイルシステムを概観できます。詳細は、Veritas Cluster Server のマニュアルを参照してください。
FsckOpt は、3.5 より前の Veritas リリースではオプションでした。しかし、Mount リソースの設定には必須です。FsckOpt には -y または -n を付ける必要があります。そうしないと、リソースがオンラインになりません。
Veritas Cluster Server 2.0 Explorer は、Veritas Cluster Server 3.5 の管理には使用できません。
Java Enterprise System インストーラからの Messaging Server のインストールと HA の設定が完了したあと、HA サポートに関連するその他の手順を 「サーバーへの IP アドレスのバインド」で確認してください。
Veritas Cluster Software が、あらかじめインストールされ設定されていること。
次の手順 (「VCS 3.5 のインストールと設定上の注意」) で説明するように、Messaging Server ソフトウェアと Messaging Server のパッケージが両方のノードに存在すること。
次の手順では、Veritas Cluster Server 3.5 を使用して Messaging Server を HA サービスとして設定する方法について説明します。
デフォルトの main.cf 設定ファイルは、VCSweb アプリケーションを起動する ClusterService と呼ばれるリソースグループを設定します。このグループには、csgnic や webip などの、ネットワーク論理ホスト IP リソースが含まれます。また、ntfr リソースは、イベント通知用に作成されます。
ノードの 1 つから Cluster Explorer を起動します。
この Veritas Cluster Server の手順では、Messaging Server を HA サービスとして設定するためにグラフィカルユーザーインタフェースを使用することを前提とします。
Cluster Explorer を起動するには、次のコマンドを実行します。
# /opt/VRTSvcs/bin/hagui |
GUI を使用するため、VRTScscm パッケージがインストールされている必要があります。
タイプ DiskGroup のディスクグループリソース s1ms_dg を追加して、有効にします。
タイプ Mount のマウントリソース s1ms_mt を追加します。
s1ms_mt と s1ms_dg の間にリンクを作成します。リソース s1ms_mt を有効にします。
次の図は依存関係ツリーを示したものです。
Java Enterprise System インストーラを実行し、管理サーバーと Messaging Server を選択します。
管理サーバーの設定中、ホスト名の入力を求められたときは必ず論理ホスト名を指定します。
主要ノード (たとえば、Node_A) から Messaging Server 設定プログラムを実行して Messaging Server をインストールします。
pkgadd(1M) コマンドを使用して、Veritas Cluster Server エージェントパッケージ SUNWmsgvc (Java Enterprise System CD の Messaging Server Product サブディレクトリ内) をインストールします。
これで、Messaging Server と Veritas エージェントが Node_A にインストールされます。
バックアップノード (たとえば、Node_B) に切り替えます。
Java Enterprise System インストーラを実行して、バックアップノード (Node_B) に Messaging Server をインストールします。
Messaging Server をインストールしたあと、useconfig ユーティリティーを使用することにより、バックアップノード (Node_B) で追加の初期実行時設定を作成する必要がなくなります。useconfig ユーティリティーを使用すると、HA 環境内の複数のノード間で単一の設定を共有できます。このユーティリティーは、既存の設定をアップグレードまたは更新するものではありません。「useconfig ユーティリティーの使用」を参照してください。
これで、Node_B に Veritas エージェントがインストールされます。
Cluster Explorer の「File」メニューから「Import Types」を選択し、ファイル選択ダイアログボックスを表示します。
/etc/VRTSvcs/conf/config ディレクトリから MsgSrvTypes.cf タイプをインポートします。このタイプファイルをインポートします。このファイルを検索するには、クラスタノード上で作業している必要があります。
ここで、タイプ MsgSrv のリソース (たとえば、Mail) を作成します。このリソースに対して論理ホスト名プロパティーを設定する必要があります。
Mail リソースは s1ms_mt および webip に依存します。次の依存関係ツリーに示すようにリソース間のリンクを作成します。
Node_A に切り替え、高可用性設定が機能しているかどうかをチェックします。
グループ属性 OnlineRetryLimit を 3 から 0 に変更します。変更しないと、フェイルオーバーしたサービスが同じノード上で再起動する可能性があります。
ここでは、mail リソースの動作を決定する MsgSrv のその他の属性について説明します。Veritas Cluster Server で Messaging Server を設定するには、表 3–2 を参照してください。
表 3–2 Veritas Cluster Server の属性
属性 |
説明 |
---|---|
FaultOnMonitorTimeouts |
未設定 (0) の場合、監視 (プローブ) のタイムアウトはリソースの障害としては扱われません。推奨される設定は 2 です。その場合、監視のタイムアウトが 2 回になると、リソースが再起動またはフェイルオーバーします。 |
ConfInterval |
障害や再起動がカウントされる時間間隔。サービスのオンライン継続時間がこの設定値に達すると、以前の履歴が消去されます。推奨値は 600 秒です。 |
ToleranceLimit |
監視がこの回数だけ OFFLINE を返すと、リソースが FAULTED を宣言します。推奨値はデフォルトのままの「0」です。 |
ここでは、Messaging Server をインストールし、Sun Cluster Highly Available (HA) Data Service として設定する方法について説明します。このインストール手順は Sun Cluster 3.1 に適用されます。この節には、次の項目があります。
Sun Cluster 3.1 のマニュアルも参照してください。
Veritas File System (VxFS) は Sun Cluster 3.1 でサポートされています。
ここでは、次の条件を前提としています。
Sun Cluster 3.1 が、必要なパッチを適用した Solaris 8 または 9 オペレーティングシステム上にインストールされ、設定されていること。
Sun Cluster エージェント SUNWscims がシステムにインストールされていること。
論理ボリュームを作成している場合、Solstice DiskSuite または Veritas Volume Manager のどちらかを使用していること。
Sun Cluster 環境の内部で、ローカルマウントされるファイルシステムを高可用性にする場合、HAStoragePlus リソースタイプを使用することを強くお勧めします。Sun Cluster グローバルデバイスグループ上に存在するファイルシステムはすべて HAStoragePlus とともに使用できます。HAStorage のようなグローバルマウントされるファイルシステムと異なり、HAStoragePlus は同時に 1 台のクラスタノード上でのみ使用可能です。これらのローカルマウントされるファイルシステムは、フェイルオーバーモードでのみ、またフェイルオーバーリソースグループ内でのみ使用できます。HAStorage の GFS (グローバルファイルシステム) と対照的に、HAStoragePlus は FFS (フェイルオーバーファイルシステム) を提供します。
HAStoragePlus には多くの利点があります。
HAStoragePlus はグローバルファイルサービス層を完全に回避します。このことは、ディスク入出力が集中するデータサービスでパフォーマンスの大幅な向上につながります。
HAStoragePlus は、グローバルファイルサービス層と連携しない可能性があるファイルシステムも含めて、UFS、VxFS などの任意のファイルシステムと連携できます。Solaris オペレーティングシステムでサポートされるファイルシステムは HAStoragePlus と連携します。
HAStoragePlus の詳細については、http://docs.sun.com の『Sun Cluster 3.1 Data Service Planning and Administration Guide』を参照してください。
ここでは、Sun Cluster 3.1 用の Messaging Server の現在のバージョンに対して HA サポートおよび HAStoragePlus を設定する方法について、簡単な例を使用して説明します。
HA を設定したあとは必ず、HA サポートに関連する追加の手順について「サーバーへの IP アドレスのバインド」を確認してください。
次の例では、HA 論理ホスト名と IP アドレスを指定してメッセージングサーバーが設定済みであることを前提としています。物理ホスト名を mail-1 および mail-2、HA 論理ホスト名を budgie と仮定します。図 3–3 は、Messaging Server の HA サポートの設定時に作成する各種の HA リソースについて、入れ子構造の依存関係を示したものです。
スーパーユーザーになってコンソールを開きます。
以降の Sun Cluster コマンドはすべて、スーパーユーザーとしてログインしてから実行する必要があります。/dev/console へのメッセージ出力を確認するためのコンソールまたはウィンドウを別に開くこともできます。
必要なリソースタイプを追加します。
使用する予定のリソースタイプを認識するように Sun Cluster を設定します。これは scrgadm -a -t コマンドで行います。
# scrgadm -a -t SUNW.HAStoragePlus # scrgadm -a -t SUNW.ims |
Messaging Server 用のリソースグループを作成します。
リソースグループをまだ作成していない場合は作成し、Messaging Server を実行するクラスタノード上でそのグループが見えるようにします。次のコマンドは、MAIL-RG という名前のリソースグループを作成し、クラスタノード mail-1 および mail-2 上でそのグループが見えるようにします。
# scrgadm -a -g MAIL-RG -h mail-1,mail-2
もちろん、リソースグループに対しては任意の名前を使用できます。
HA 論理ホスト名リソースを作成し、リソースグループを起動します。
HA 論理ホスト名のリソースを作成して有効にし、リソースグループに配置します (まだこの作業を行っていない場合のみ)。次のコマンドは、論理ホスト名 budgie を使用してその処理を行います。-j スイッチを省略しているため、作成されるリソースの名前も budgie になります。
# scrgadm -a -L -g MAIL-RG -l budgie # scswitch -Z -g MAIL-RG |
HAStoragePlus リソースを作成します。
次に、Messaging Server が依存するファイルシステムに対して HAStoragePlus リソースタイプを作成する必要があります。次のコマンドは、disk-rs という名前の HAStoragePlus リソースを作成し、ファイルシステム disk_sys_mount_point をその制御下に置きます。
# scrgadm -a -j disk-rs -g MAIL-RG \ -t SUNW.HAStoragePlus \ -x ServicePaths=disk_sys_mount_point-1, disk_sys_mount_point-2 |
ServicePaths のコンマ区切りのリストは、Messaging Server が依存するクラスタファイルシステムのマウントポイントです。この例では、disk_sys_mount_point-1 および disk_sys_mount_point-2 の 2 つのマウントポイントのみを指定しています。いずれかのサーバーが依存するファイルシステムがほかにもある場合、追加の HA ストレージリソースを作成し、手順 10 でその追加の依存関係を指定することができます。
管理サーバーをインストールして設定します
手順については、『Sun Java Enterprise System 2005Q4 インストールガイド』を参照してください。
完全修飾ドメイン名を指定するときは、手順 4 で作成した HA 論理ホスト名を使用します。
Messaging Server をインストールし、設定します。「Messaging Server の初期実行時設定を作成する」を参照してください。
「Messaging Server の初期実行時設定を作成する」に示すように、初期実行時設定では設定ディレクトリを指定するよう求められます。必ず、対象の HAStoragePlus リソースの共有ディスクディレクトリパスを使用してください。
次のコマンドを実行して、Sun Cluster のもとで watcher プロセスを有効にします。
configutil -o local.autorestart -v 1 |
watcher プロセスの詳細については、「障害が発生したサービスや応答がないサービスの自動再起動」を参照してください。
ha_ip_config スクリプトを実行して、service.listenaddr および service.http.smtphost パラメータと、dispatcher.cnf および job_controller.cnf ファイルを高可用性のために設定します。このスクリプトは、これらのパラメータおよびファイルに対して、物理 IP アドレスではなく論理 IP アドレスが設定されることを保証します。また、watcher プロセスと自動再起動プロセスを有効にします (local.watcher.enable および local.auto.restart をそれぞれ 1 に設定する)。
スクリプトの実行方法については、「サーバーへの IP アドレスのバインド」を参照してください。
ha_ip_config スクリプトは、(設定およびデータ用の) 共有ディスクがあるマシン上で 1 回だけ実行することをお勧めします。
imta.cnf ファイルを修正します。すべての物理ホスト名をクラスタの論理ホスト名に置換します。
HA Messaging Server リソースを作成します。
ここで、HA Messaging Server リソースを作成してリソースグループに追加します。このリソースは HA 論理ホスト名と HA ディスクリソースに依存します。
HA Messaging Server リソースを作成するとき、Messaging Server の最上位ディレクトリのパス (msg_svr_base パス) を指定する必要があります。これらは、次のコマンドに示すように IMS_serverroot 拡張プロパティーを使用して行います。
# scrgadm -a -j mail-rs -t SUNW.ims -g MAIL-RG \ -x IMS_serverroot=msg_svr_base \ -y Resource_dependencies=disk-rs,budgie |
このコマンドは、msg_svr_base ディレクトリ内の IMS_serverroot にインストールされた Messaging Server に対して、mail-rs という名前の HA Messaging Server リソースを作成します。HA Messaging Server リソースは、HA 論理ホスト名 budgie に加えて、HA ディスクリソース disk-rs に依存します。
ファイルシステムに対する Messaging Server の依存関係がほかにもある場合、それらのファイルシステムに対する追加の HA ストレージリソースを作成できます。必ず、追加の HA ストレージリソースの名前を、このコマンドの Resource_dependencies オプションに含めるようにしてください。
/etc/vfstab ファイルから単語 global を削除します。/etc/vbstab で起動時マウントを「no」に設定する必要があります。詳細については、Sun Cluster 3.1 のマニュアルを参照してください。
vfstab ファイルが HAStoragePlus によって有効にされる前に、まず、現在グローバルファイルシステムであるファイルシステムをマウント解除 (umount) する必要があります。その後、HAStoragePlus で vfstab ファイルを有効にし、ファイルシステムを再マウントすることができます。
Messaging Server リソースを有効にします。
HA Messaging Server リソースをアクティブにし、それによってメッセージングサーバーをオンラインにする準備ができました。これを行うには、次のコマンドを使用します。
# scswitch -e -j mail-rs
このコマンドは、MAIL-RG リソースグループの mail-rs リソースを有効にします。MAIL-RG リソースはあらかじめオンラインにされていたため、このコマンドによって mail-rs もオンラインになります。
問題がないことを確認します。
scstat コマンドを使って、MAIL-RG リソースグループがオンラインかどうかを確認します。必要であれば、コンソールデバイスへの出力を参照して診断情報を確認します。また、syslog ファイル /var/adm/messages も確認します。
フェイルオーバーが正しく機能することを確認するために、リソースグループを別のクラスタノードにフェイルオーバーします。
リソースグループを別のクラスタノードに手動でフェイルオーバーします (フェイルオーバー先のクラスタノードに対するスーパーユーザー権限が必要)。
scstat コマンドを使用して、リソースグループが現在どのノード上で動作しているか (「オンライン」であるか) を確認します。たとえば、リソースグループが mail-1 上でオンラインである場合、次のコマンドを実行して mail-2 へフェイルオーバーします。
# scswitch -z -g MAIL-RG -h mail-2
最初のノードをアップグレードしている場合、Java Enterprise System インストーラでインストールを行ってから Messaging Server を設定します。そのあと、2 番目のノードにフェイルオーバーします。2 番目のノード上では Java Enterprise System インストーラを使用して Messaging Server パッケージをインストールしますが、初期実行時設定プログラム (configure) を再び実行する必要はありません。代わりに、useconfig ユーティリティーを使用することができます。
Symmetric または N + 1 高可用性モデルを使用している場合、Messaging Server 用に Sun Cluster Server を準備するための設定作業について追加の留意事項があります。
Messaging Server が動作するサーバーに正しい IP アドレスをバインドする必要があります。このことは、HA 環境でメッセージングを適切に設定するために必要です。
Messaging Server の HA 設定の一部では、Messaging Server がバインドして接続を待機するインタフェースアドレスの設定が必要です。デフォルトでは、サーバーはすべての利用可能なインタフェースアドレスにバインドします。ただし HA 環境では、HA 論理ホスト名と関連付けられたインタフェースアドレスにサーバーが明示的にバインドするのが理想的です。
そのため、特定の Messaging Server インスタンスに属するサーバーが使用するインタフェースアドレスを設定するためのスクリプトが用意されています。スクリプトでは、現在使用している IP アドレス、または、サーバーが使用する HA 論理ホスト名と関連付けられる予定の IP アドレスを利用してインタフェースアドレスが識別されることに注意してください。
スクリプトでは、次の設定ファイルを変更または作成することによって設定変更を有効にします。
msg_svr_base/config/dispatcher.cnf
このファイルに対し、スクリプトは SMTP サーバーおよび SMTP 送信サーバーに対する INTERFACE_ADDRESS オプションを追加または変更します。
msg_svr_base/config/job_controller.cnf
このファイルに対し、スクリプトはジョブコントローラに対する INTERFACE_ADDRESS オプションを追加または変更します。
スクリプトは最後に、configutil の service.listenaddr および service.http.smtphost パラメータを設定します。これらは POP サーバー、IMAP サーバー、および Messenger Express HTTP サーバーによって使用されるパラメータです。
元の設定ファイルがある場合、その名前は *.pre-ha に変更されます。
スクリプトを実行するには、次の手順に従います。
スーパーユーザーになります。
msg_svr_base/sbin/ha_ip_config を実行します。
スクリプトによって、次に示す質問が表示されます。質問に対して control-d を入力すると、スクリプトを中止できます。質問へのデフォルトの回答は角括弧 [ ] で囲んで示されます。デフォルトの回答を変更しない場合は、RETURN キーだけを押します。
論理 IP アドレス: Messaging Server が使用する予定の論理ホスト名に割り当てられる IP アドレスを指定します。IP アドレスは 123.456.78.90 のように、ドット区切りの 10 進形式で指定する必要があります。
論理 IP アドレスは configutil のパラメータ service.http.smtphost に自動的に設定されます。このパラメータにより、クラスタ内のどのマシンがメッセージングシステムを実行しているかを確認できます。たとえば、Messenger Express を使用している場合、送信メールの送信元メールホストをサーバーが判別できます。
Messaging Server ベース (msg_svr_base): Messaging Server がインストールされる最上位ディレクトリの絶対パスを指定します。
上の選択のいずれかを変更しますか。それまでの回答を変更せずに設定変更を有効にするには「no」と回答します。回答を変更する場合は「yes」と回答します。
ha_ip_config スクリプトはこれらの処理に加えて、2 つの新しいプロセス watcher および msprobe を自動的に有効にします。その際、local.autorestart パラメータと local.watcher.enable パラメータが使用されます。これらの新しいパラメータは、メッセージングサーバーの健全性を監視するために役立ちます。プロセスの障害や応答しないサービスがある場合、特定の障害を示すログメッセージが出力されます。クラスタエージェントは watcher プロセスを監視し、このプロセスが終了するたびにフェイルオーバーするようになりました。Sun Cluster を正しく機能させるためにはこれらのパラメータを有効にする必要がある点に注意してください。
watcher プロセスと msprobe プロセスの詳細については、「障害が発生したサービスや応答がないサービスの自動再起動」を参照してください。
ここでは、高可用性の設定を解除する方法について説明します。高可用性をアンインストールするには、Veritas または Sun Cluster のマニュアルに記載された手順に従います。
高可用性の設定解除手順は、Veritas Cluster Server と Sun Cluster のどちらを削除するかによって異なります。
この節には、次の項目があります。
ここでは、Veritas Cluster Server 用の高可用性コンポーネントを設定解除する方法について説明します。
iMS5 サービスグループをオフラインにし、そのリソースを無効にします。
mail リソース、logical_IP リソース、および mountshared リソースの間の依存関係を削除します。
iMS5 サービスグループをオンラインに戻し、sharedg リソースを使用可能にします。
インストールの間に作成されたすべての Veritas Cluster Server リソースを削除します。
Veritas Cluster Server を停止し、両方のノードで次のファイルを削除します。
/etc/VRTSvcs/conf/config/MsgSrvTypes.cf /opt/VRTSvcs/bin/MsgSrv/online /opt/VRTSvcs/bin/MsgSrv/offline /opt/VRTSvcs/bin/MsgSrv/clean /opt/VRTSvcs/bin/MsgSrv/monitor /opt/VRTSvcs/bin/MsgSrv/sub.pl |
両方のノードで、/etc/VRTSvcs/conf/config/main.cf ファイルから Messaging Server エントリを削除します。
両方のノードから /opt/VRTSvcs/bin/MsgSrv/ ディレクトリを削除します。
この節では、Sun Cluster 用の HA 設定を解除する方法について説明します。ここでは、「Sun Cluster エージェントのインストール」で説明した単純な設定例を想定します。手順 3 などの一部の手順が異なる場合がありますが、それ以外の手順の論理順は同じです。
スーパーユーザーになります。
以降の Sun Cluster コマンドはすべて、スーパーユーザーとして実行する必要があります。
リソースグループをオフラインにします。
リソースグループ内のすべてのリソースをシャットダウンするには、次のコマンドを実行します。
# scswitch -F -g MAIL-RG
このコマンドは、Messaging Server や HA 論理ホスト名など、リソースグループ内部のすべてのリソースをシャットダウンします。
個別のリソースを無効にします。
続いて、次のコマンドを実行して、リソースグループから 1 つずつリソースを削除します。
# scswitch -n -j mail-rs # scswitch -n -j disk-rs # scswitch -n -j budgie |
リソースグループから個別のリソースを削除します。
リソースが無効になったら、次のコマンドによって、リソースグループからリソースを 1 つずつ削除できます。
# scrgadm -r -j mail-rs # scrgadm -r -j disk-rs # scrgadm -r -j budgie |
リソースグループを削除します。
リソースグループからすべてのリソースが削除されたら、次のコマンドによってリソースグループ自体を削除できます。
# scrgadm -r -g MAIL-RG
リソースタイプを削除します (必要な場合)。
リソースタイプをクラスタから削除する必要がある場合、次のコマンドを実行します。
# scrgadm -r -t SUNW.ims # scrgadm -r -t SUNW.HAStoragePlus |