Sun GlassFish Enterprise Server 2.1 配備計画ガイド

ネットワーク構成の計画

Enterprise Server をネットワークに統合する方法を計画する場合は、帯域幅の要件を見積もり、ユーザーのパフォーマンス要件を満たすような方法でネットワークを計画します。

ここで説明する内容は次のとおりです。

帯域幅の要件の見積もり

ネットワークの望ましいサイズと帯域幅を決定するには、まずネットワークトラフィックを特定し、そのピークを識別します。全体の量がピークになる特定の時間、曜日、または月の特定の日が存在するかどうかを確認したあと、そのピークの所要時間を特定します。

ピーク負荷の時間帯に、ネットワーク内のパケットの数はもっとも高いレベルに達します。一般に、ピーク負荷の設計を行う場合は、ピーク量の 100 パーセントを処理するという目標でシステムを拡張させます。ただし、どのようなネットワークでも予期しない動作をすること、またどれだけ拡張したとしても、必ずしもピーク量の 100 パーセントを処理できるとは限らないことを念頭においてください。

たとえば、ピーク負荷時に、ユーザーの 5 パーセントが Enterprise Server 上に配備されているアプリケーションへのアクセス中にネットワークに直接アクセスできない場合があるとします。その 5 パーセントのうち、最初の試行のあとにアクセスを再試行するユーザーがどれだけいるかを見積もってください。ここでも、それらのユーザーがすべて実行するとは限らず、その失敗したユーザーのうちの一定の割合が再試行します。その結果、ユーザーがアクセスを試行し続けるに伴って徐々にピーク使用が拡大するため、ピークが現れる時間は長くなります。

必要な帯域幅の計算

「パフォーマンス目標の確立」で行なった計算に基づいて、サイトに Application Server を配備するために必要な追加の帯域幅を決定します。

アクセス方法 (T-1 回線、ADSL、ケーブルモデム、その他) に応じて、見積もった負荷を処理するために必要な増加した帯域幅の量を計算します。たとえば、サイトで T-1 回線または高速な T-3 回線を使用しているとします。回線の帯域幅がわかったら、サイトで 1 秒あたりに生成される要求の平均数および最大ピーク負荷に基づいて、ネットワークに必要な回線数を見積もります。Web サイトの分析および監視ツールを使用して、これらの数値を計算します。


例 2–3 必要な帯域幅の計算

1 本の T-1 回線は、1.544 Mbps を処理できます。したがって、T-1 回線 4 本から成るネットワークは約 6 Mbps のデータを処理できます。クライアントに送り返される平均的な HTML ページが 30K バイトであると仮定すると、T-1 回線 4 本から成るこのネットワークは 1 秒あたり次のトラフィックを処理できます。

6,176,000 ビット/8 ビット = 1 秒あたり 772,000 バイト

1 秒あたり 772,000 バイト/30K バイト = 1 秒あたり約 25 の並行応答ページ

1 秒あたり 25 ページのトラフィックとすると、このシステムは 1 時間あたり 90,000 ページ (25 × 60 秒× 60 分) を処理できるため、負荷が 1 日中均一であると仮定した場合、1 日あたり最大 2,160,000 ページになります。最大ピーク負荷がこれより高い場合は、それに応じて帯域幅を増やします。


ピーク負荷の見積もり

負荷を 1 日中均一にすることは、おそらく現実的ではありません。ピーク負荷がいつ発生し、どれだけ持続するか、および負荷全体の何パーセントがピーク負荷になるかを特定する必要があります。


例 2–4 ピーク負荷の計算

ピーク負荷が 2 時間持続し、2,160,000 ページの負荷全体の 30 パーセントに相当する場合は、1 日のうちの 2 時間の間に T-1 回線上で 648,000 ページを処理する必要があることを示します。

したがって、この 2 時間の間にピーク負荷に対応するには、T-1 回線の数を次の計算に従って増やします。

648,000 ページ/120 分 = 1 分あたり 5,400 ページ

1 分あたり 5,400 ページ/60 秒 = 1 秒あたり 90 ページ

4 回線で 1 秒あたり 25 ページを処理できるとすると、その約 4 倍のページにはその 4 倍の回線 (この場合は 16 回線) が必要になります。この 16 回線は、30 パーセントのピーク負荷という現実的な最大量の処理を考慮したものです。明らかに、これらの多数の回線を使用すれば、その他の 70 パーセントの負荷を 1 日の残り時間にわたって処理できます。


サブネットの設定

アプリケーションサーバーインスタンスと HADB ノードが個別のホストマシン上に存在する分離層トポロジを使用すると、すべての HADB ノードを個別のサブネット上に配置することによってパフォーマンスを向上させることができます。これは、HADB がユーザーデータグラムプロトコル (UDP) を使用しているためです。独立したサブネットを使用することで、このサブネットの外部にあるマシンで UDP トラフィックが減少します。ただし、すべての HADB ノードは同じサブネット上に存在する必要があります。

すべてのノードと管理エージェントが同じサブネット上に存在するかぎり、管理クライアントを別のサブネットから引き続き実行できます。すべてのホストとポートをすべてのノードエージェント内でアクセス可能にするとともに、ノードをファイアウォール、UDP のブロックなどでブロックしないでください。

HADB は UDP マルチキャストを使用するため、HADB ノードを含むサブネットはすべてマルチキャスト用に設定してください。

ネットワークカードの選択

帯域幅を増やし、ネットワークパフォーマンスを最適化するために、Application Server をホストしているサーバーと HADB ノードの間に少なくとも 100 Mbps の Ethernet カード、できれば 1 Gbps の Ethernet カードを使用してください。

HADB のためのネットワーク設定


注 –

HADB は UDP マルチキャストを使用するため、システムのルーターとホストのネットワークインタフェースカード上でマルチキャストを有効にしてください。HADB が複数のサブネットワークにまたがっている場合は、それらのサブネットワーク間のルーター上でもマルチキャストを有効にしてください。最適な結果を得るには、HADB ノードをすべて同じネットワーク上に配置します。アプリケーションサーバーインスタンスは、異なるサブネットワーク上に配置できます。


次の提案を採用すると、HADB をネットワーク内で最適な状態で動作させることができます。