この章では、Sun Cluster HA for Lotus データサービスを構成し、管理する方法について説明します。
この章で説明する手順は次のとおりです。
Sun Cluster HA for Lotus 製品は、Sun Cluster 環境で実行することによって可用性が高まる Lotus Domino サーバーで構成されます。Sun Cluster 2.2 は、Lotus Partitioned Server および Lotus Cluster 製品をサポートしていません。
Sun Cluster 上で Sun Cluster HA for Lotus を実行するには、次のことを行う必要があります。
Lotus Domino のマニュアルで説明されている Lotus Domino のインストールの準備をする
Lotus Domino をインストールし、構成する
hadsconfig(1M) コマンドにより Sun Cluster 用の Lotus Domino を構成する
Sun Cluster HA for Lotus の構成の妥当性を検査する
この章で説明する手順を行うには、Sun Cluster の概念であるディスクセット、論理ホスト、物理ホスト、スイッチオーバー、テイクオーバー、データサービスに関する知識が必要です。
Sun Cluster HA for Lotus のインストールと構成を行う前に、Sun Cluster フレームワークのインストールと構成を行なってください。Sun Cluster HA for Lotus のインストールと構成は、この後の節で説明されている手順に従って行います。
Lotus Domino サーバーは、HTTP、POP3、IMAP、NNTP、LDAP サーバーとして構成できます。同じクラスタに Lotus Domino サーバーと Sun Cluster HA for Netscape サーバーを共存させる場合は、いくつかの制限があります。インストール中に指定する Lotus Domino のサーバータスクを決定するにあたっては、表 13-1 で簡単に説明している全般的なガイドラインを参照してください。
表 13-1 Lotus Domino Server のオプション - 全般的なガイドライン
サーバータスク |
サポートされるクライアントタイプ |
制限事項 |
デフォルトポート |
---|---|---|---|
HTTP |
web ブラウザ (Netscape Navigator、Microsoft Internet Explorer など) |
同じ論理ホストまたは同じ物理ホストがマスターする論理ホストに Sun Cluster HA for Netscape HTTP と Lotus HTTP サーバーをインストールしてはならない。 |
80 |
IMAP |
POP3 (Post Office Protocol 3) または IMAP (Internet Message Access Protocol) を使用するインターネットメールクライアント |
同じ論理ホストまたは同じ物理ホストがマスターする論理ホストに Sun Cluster HA for Netscape Mail と Lotus IMAP サーバーをインストールしてはならない。 |
110 (POP3) 143 (IMAP) |
LDAP |
LDAP (Lightweight Directory Access Protocol) を使用するインターネットディレクトリクライアント |
同じ論理ホストまたは同じ物理ホストがマスターする論理ホストに Sun Cluster HA for Netscape LDAP と Lotus LDAP サーバーをインストールしてはならない。 |
389 |
NNTP |
NNTP (Network News Transfer Protocol) を使用するインターネットニュースリーダー |
同じ論理ホストまたは同じ物理ホストがマスターする論理ホストに Sun Cluster HA for Netscape News と Lotus NNTP サーバーをインストールしてはならない。 |
119 |
SMTP/MIME |
SMTP (Simple Mail Transfer Protocol) を使用するインターネットメールクライアント |
同じ論理ホストまたは同じ物理ホストがマスターする論理ホストに Sun Cluster HA for Netscape Mail と Lotus SMTP/MIME サーバーをインストールしてはならない。 |
なし |
この節では、Lotus Domino をインストールして、Sun Cluster HA for Lotus データサービスとして動作できるようにする手順を説明します。
この手順を行う前に Lotus Domino のマニュアルを参照してください。
Sun Cluster HA for Lotus を実行する論理ホストをマスターできる各ノード上の /etc/nsswitch.conf ファイルを編集します。
/etc/nsswitch.conf ファイルを編集して、「グループ」の検索が最初にファイルに対して行われるようにしてください。
... group: files nisplus ... |
Sun Cluster HA for Lotus は、データベースサーバーを起動および停止するときに su user コマンドを使用します。
Solaris および Sun Cluster 環境をインストールします。
第 3 章「Sun Cluster ソフトウェアのインストールと構成」を参照してください。scinstall(1M) コマンドを使用して、使用する Sun Cluster HA for Lotus のパッケージをすべてインストールしてください。インストール後の手順を実行して、必要なパッチをすべてインストールしてください。
この時点では、Sun Cluster に必要のないパッチをインストールしないでください。
scadmin(1M) コマンドを使用して、Sun Cluster を起動します。
最初のノードを起動します。管理ワークステーションから次のコマンドを実行してください。
# scadmin startcluster localhostname clustername |
続いて、クラスタにノードを追加します。追加する個々のノードから、次のコマンドを実行してください。
# scadmin startnode |
この手順を正しく完了すると、クラスタが動作し、HA ファイルシステムがそれぞれの論理ホストのデフォルトマスターにマウントされます。
各論理ホストがそのデフォルトマスターからサービスを受けていることを確認します。
Sun Cluster HA for Lotus は、論理ホストのデフォルトマスターである物理ホストからインストールします。必要ならば、論理ホストがそれぞれのデフォルトマスターからサービスを受けるようにスイッチオーバーしてください。
Sun Cluster 構成で使用する論理ホスト名は、Sun Cluster HA for Lotus アプリケーションをインストールし、構成するときにサーバー名として使用します。この手順は、Lotus サーバーが正しくフェイルオーバーするために必要です。
Lotus Domino を実行する各 Sun Cluster サーバー上で Lotus Domino 用のユーザー名とグループ名を指定します。
Lotus グループ (通常は notes という名前を使用) を作成してください。ユーザーアカウント (これも通常は notes という名前を使用) を作成し、notes グループのメンバーにしてください。全ノード上でグループ ID および ユーザー ID は同じである必要があります。
# groupadd notes # useradd -u notes -g notes -d /opt/lotus/bin notes |
HA-Lotus を実行する各 Sun Cluster サーバーに Lotus Domino ソフトウェアをインストールします。
この手順を実行する前に、スーパーユーザーでログインして、ディレクトリ全体の所有権を取得します。インストールディレクトリにある Lotus インストールプログラムをローカルディスクにコピーし、Lotus Domino ソフトウェアをインストールしてください。
デフォルトでは、Lotus Domino ソフトウェアは /opt/lotus ディレクトリにインストールされますが、ローカルディスクまたは論理ディスクの別のディレクトリを選択できます。その場合、インストールプログラムは、デフォルトのインストールディレクトリと指定されたインストールディレクトリ間にシンボリックリンクを作成します。スーパーユーザーで install コマンドを実行してください。
# cd /cdrom/notes_r4/uni # ./install |
Lotus CD-ROM 上の Lotus Domino インストールディレクトリが、ここで示されているディレクトリと異なることがあります。Lotus Domino インストールディレクトの実際のパスについては、Lotus Domino のインストールマニュアルで確認してください。
HA-Lotus を実行する各 Sun Cluster サーバーに Lotus Domino 用の $PATH 変数を設定します。
# set PATH = /opt/lotus/bin $PATH . |
Sun Cluster HA for Lotus を実行する各 Sun Cluster サーバー上で Lotus Domino サーバーを構成します。
Lotus Domino の設定プログラムを使用して、Lotus Domino を構成してください。Domino サーバーのデータファイルにアクセスできるように、ユーザー notes でログインしてください。Domino サーバーのデータファイルは、論理ホストに格納する必要があります。
# ./opt/lotus/bin/notes |
これで、Lotus Domino のインストールと構成は完了です。「Sun Cluster HA for Lotus のインストールと構成」を参照してください。
この節では、Sun Cluster HA for Lotus をインストールして、構成、登録、起動する手順を説明します。
HA-Lotus を実行するすべての Sun Cluster サーバー上で hadsconfig(1M) コマンドを実行し、Sun Cluster HA for Lotus を構成します。
Sun Cluster HA for Lotus のインスタンスの作成、編集、削除には、hadsconfig(1M) コマンドを使用します。hadsconfig(1M) コマンドで指定する情報については、「Sun Cluster HA for Lotus に対する構成パラメータ」を参照してください。詳細は、hadsconfig(1M) のマニュアルページを参照してください。
# hadsconfig |
Lotus インスタンスは 1 つのクラスタにつき 1 つだけ構成してください。Lotus インスタンスは、何も起動しないか、すべて起動するかのいずれかです。すなわち、クラスタ内で一部のインスタンスだけを起動することはできません。複数のインスタンスは互いに衝突する可能性があります。
hareg(1M) コマンドを使用して、Sun Cluster HA for Lotus を登録し起動します。
hareg(1M) コマンドは、Sun Cluster HA for Lotus データサービスをクラスタ構成データベースに追加して、クラスタの再構成を行い、Lotus Domino サーバーのすべてを起動します。hareg(1M) コマンドは、1 つのノード上でだけ実行してください。
# hareg -s -r lotus ... # hareg -y lotus |
Sun Cluster HA for Lotus の構成の妥当性を検査します。
ユーザー notes でログインし、Sun Cluster サーバーの 1 つで Lotus Domino サーバーを起動、停止することによって構成を検査してください。
phys-hahost1# /opt/lotus/bin/server ... phys-hahost1# /opt/lotus/bin/server -q |
クラスタを起動した後、さまざまな物理ホストから論理ホストをマスターし、それら物理ホストから Lotus Domino サーバーを起動、停止することによって構成の多くをテストできます。たとえば、次のようにします。
phys-hahost1# scadmin startcluster phys-hahost1 clustername phys-hahost2# scadmin startnode clustername phys-hahost1# haswitch phys-hahost2 hahost1 hahost2 |
ユーザー notes でログインし、Domino データディレクトリから Lotus Domino サーバーを停止、起動してください。たとえば、次のようにします。
phys-hahost2# cd /hahost1/domino_data_dir phys-hahost2# /opt/lotus/bin/server -q ... phys-hahost2# /opt/lotus/bin/server |
これで、Sun Cluster HA for Lotus の構成と起動は完了です。
この節では、Sun Cluster HA for Lotus データサービス用の構成ファイルを作成するときに hadsconfig(1M) コマンドに指定する情報について説明します。hadsconfig(1M) コマンドはテンプレートを使用して、構成ファイルを作成し、作成したファイルを /etc/opt/SUNWsclts ディレクトリに保管します。このテンプレートには、デフォルト値を持つパラメータや値が明示的に指定されたパラメータ、値が指定されていないパラメータが含まれています。値が指定されていないパラメータに対しては、必ず値を指定する必要があります。
障害検証パラメータは特に、Sun Cluster HA for Lotus の性能に影響することがあります。検証間隔値を小さくしすぎると (障害検証の回数の増加により)、システム性能が低下することがあり、その結果として、システムが単に遅くなっただけでも、誤ったテイクオーバーが発生したり、再起動が試みられたりすることがあります。
Sun Cluster HA for Lotus データサービスには、テイクオーバーフラグを設定する必要があります。テイクオーバーフラグは、Sun Cluster による部分的フェイルオーバーの処理方法を指定します。このフラグに設定できる値は次の 2 つです。
-y (yes) - Sun Cluster は、他のマスターへの論理ホストのスイッチオーバーを試みますが、スイッチオーバーに失敗した場合、Sun Cluster はすべての論理ホストを対象となるマスターにスイッチオーバーします。元のマスターは停止されるか、再起動されます。デフォルトは、この値です。
-n (no) - Sun Cluster は、データサーバーに問題を検出したときでも、別のマスターに論理ホストを移動しません。また、論理ホスト上のデータサーバーあるいはデータベースに障害が発生した場合でも、何の処置も行いません。
表 13-2 で説明しているオプションを指定することによって、hadsconfig(1M) 入力書式に列挙されている Sun Cluster HA for Lotus 用のパラメータを設定してください。
表 13-2 Sun Cluster HA for Lotus に対する構成パラメータ
パラメータ |
説明 |
---|---|
インスタンス名 |
インスタンスの識別子として使用される論理ホスト名。Sun Cluster HA for Lotus が生成するログメッセージでは、この識別子が参照される。hadsconfig(1M) コマンドは、ここで指定された論理ホスト名の前にパッケージ名を付ける。たとえば hahost1 を指定すると、SUNWsclts_hahost1 が生成される。 |
論理ホスト |
Sun Cluster HA for Lotus のこのインスタンスにサービスを提供する論理ホスト名 |
製品をインストールするベースディレクトリ |
多重ホストディスク上の HA Lotus をインストールする場所を示すルート付きのパス名。これはインスタンスのパスである (例: /hahost1/lotus-home/lotus_1)。 |
構成ディレクトリ |
データベースが存在するディレクトリ (例: /hahost1/d1/Lotus/database.db)。 |
遠隔検証 |
Lotus 障害検証機能に遠隔ホストを検証させるかどうかを指定。デフォルト値は -n。 |
ローカル検証 |
Lotus 障害検証機能にローカルホストを検証させるかどうかを指定。デフォルト値は -y。 |
検証間隔 |
障害検証を行う時間間隔 (秒単位)。デフォルトの間隔は 60 秒。 |
検証タイムアウト |
障害検証をタイムアウトにする時間 (秒単位)。デフォルトのタイムアウト値は 60 秒。 |
Sun Cluster HA for Lotus のこのインスタンス専用のポート。デフォルトのポート番号は 1352。 |
|
テイクオーバーフラグ |
このデータサービスインスタンスで障害が発生した場合に、関連付けられている論理ホストのテイクオーバーまたはフェイルオーバーを行うかどうかを指定する。指定できる値は、-y (yes) または -n (no) のいずれかである。デフォルトは -y。 |