この章では、Sun Cluster サーバー上で Sun Cluster HA for Tivoli データサービスを構成、管理する方法について説明します。
この章で説明する手順は次のとおりです。
Sun Cluster HA for Tivoli 製品は、Sun Cluster で実行することによって高可用性が高まる 1 つの Tivoli コンポーネント (Tivoli Management Environment) サーバーと Tivoli 管理ノード、その他コンポーネント) で構成されます。
Tivoli のコンポーネントは、Sun Cluster の内部または外部のどちらにも配置できます。クラスタの内部に配置されたコンポーネントはすべて、フェイルオーバー機能によって保護されます。たとえば、クラスタ内に構成された Tivoli オブジェクトディスパッチャーで問題が発生した場合、ディスパッチャーは自動的に再起動されるか、別のホストにフェイルオーバーされます。
クラスタの内部に Tivoli サーバーと管理ノードを配置する場合は、それぞれを独立した論理ホストに配置する必要があります。
Tivoli サーバーおよび管理ノードは、Sun Cluster 製品をインストールして構成した後でインストールしてください。Tivoli 製品は、Tivoli デスクトップユーティリティまたはシェルコマンドを使用してインストールできます。Tivoli の詳細なインストール手順については、Tivoli のマニュアルを参照してください。
TME サーバーまたは管理ノードが動作する論理ホスト名を決定するとき、Tivoli 検証は環境変数に設定されている Tivoli データベース名から推測します。Tivoli データベース名が論理ホスト名に従って命名されていない場合、Tivoli 検証は Tivoli サーバーまたは管理ノードが正しく動作していることを検出できず、論理ホストのフェイルオーバーを呼び出します。したがって、Tivoli データベース名と論理ホスト名が同じであることを確認してください。
GUI を使用する場合、「start at boot time」オプションは選択しないでください。
この手順は、Sun Cluster をインストール、構成して、ファイルシステムと論理ホストの構成を終えてから行なってください。
Sun Cluster を起動して、論理ホストが Tivoli をインストールする物理ホストによってマスターされていることを確認します。
この例では phys-hahost1 が物理ホスト、hahost1 と hahost2 が論理ホストです。
phys-hahost1# haswitch phys-hahost1 hahost1 hahost2 |
Tivoli のインストール準備スクリプトの WPREINST.SH を実行します。
WPREINST.SH スクリプトは、Tivoli の CD-ROM に収録されています。このスクリプトは、指定されたディレクトリから Tivoli の CD-ROM へのリンクを作成します。
Tivoli サーバーをインストールし、論理ホスト上の、Tivoli コンポーネント用のディレクトリ位置を指定します。
論理ホストに関連付けられた多重ホストディスクに Tivoli サーバーをインストールしてください。
Tivoli GUI または Tivoli のコマンドを使用して、Tivoli サーバーおよび管理ノードをインストールできます。Tivoli のコマンド行インタフェースを使用する場合は、環境変数の DOGUI を no に設定する必要があります。GUI を使用する場合、「start at boot time」オプションは選択しないでください。
次の例では、論理ホスト上の、TME バイナリとライブラリ、TME サーバーデータベース、マニュアルページ、メッセージカタログ、X11 リソースファイル用のディレクトリ位置を指定しています。
phys-hahost1# ./wserver -c cdrom_path -a $WLOCALHOST -p ¥ /hahost1/d1/Tivoli! BIN=/hahost1/d1/Tivoli/bin! ¥ LIB=/hahost1/d1/Tivoli/lib! ALIDB=/hahost1/d1/Tivoli! ¥ MAN=/hahost1/d1/Tivoli/man! ¥ APPD=/hahost1/d1/Tivoli/X11/app-defaults! ¥ CAT=/hahost1/d1/Tivoli/msg_cat! CreatePaths=1 |
Tivoli のパッチをインストールします。
適用可能なパッチについては、Tivoli のマニュアルを参照するか、ご購入先に問い合わせてください。Tivoli のマニュアルの説明に従って、インストールしてください。
Tivoli 環境のディレクトリ名を変更し、マスターになる可能性のある他のすべての論理ホストにそのディレクトリをコピーします。
他のインストールでディレクトリが上書きされないよう、Tivoli 環境のディレクトリ名を変更してください。その後、Tivoli サーバーをインストールする、マスターになる可能性のある他のすべての論理ホストに Tivoli 環境のディレクトリをコピーしてください。
phys-hahost1# mv /etc/Tivoli /etc/Tivoli.hahost1 phys-hahost1# tar cvf /tmp/tiv.tar /etc/Tivoli.hahost1 phys-hahost1# rcp /tmp/tiv.tar phys-hahost2:/tmp phys-hahost2# tar xvf /tmp/tiv.tar |
パスを設定してから、Tivoli デーモンをいったん停止して、再起動します。
setup_env.sh スクリプトを使用して、パスを設定してください。デフォルトのポート番号は 94 です。
phys-hahost1# . /etc/Tivoli.hahost1/setup_env.sh phys-hahost1# odadmin shutdown phys-hahost1# oserv -H hahost1 -p port_number -k $DBDIR |
(Tivoli 3.6 のみ) 他の論理ホストを 2 つ目の物理ホストにスイッチオーバーします。
Tivoli 3.6 oserv はシステム上に構成された特定の IP アドレス上の要求に対して待機するのではなく、任意の IP アドレス (INADDR_ANY) 上の要求に対して待機します。Tivoli サーバーと管理ノード oserv のデフォルトのポートは同じです (つまり、94)。したがって、Tivoli サーバーがすでに動作しているとき、管理ノード oserv プロセスは起動できません。この問題を防ぐために、2 つの論理ホストは異なる物理ホストがマスターするように設定してください。
phys-hahost1# haswitch phys-hahost2 hahost2 ... phys-hahost1# haget -f master -h hahost1 phys-hahost1 ... phys-hahost1# haget -f master -h hahost2 phys-hahost2 |
(省略可能) 2 つ目の論理ホストに Tivoli 管理ノードのインスタンスをインストールします。
例:
phys-hahost1# wclient -c cdrom_path -I -p hahost1-region ¥ BIN=/hahost2/d1/Tivoli/bin! LIB=/hahost2/d1/Tivoli/lib! ¥ DB=/hahost2/d1/Tivoli! MAN=/hahost2/d1/Tivoli/man! ¥ APPD=/hahost2/d1/Tivoli/X11/app-defaults! ¥ CAT=/hahost2/d1/Tivoli/msg_cat! CreatePaths=1 hahost2 |
(Tivoli 3.6 のみ) 管理ノードサーバーが (物理ホストではなく) 論理ホストの IP アドレスを使用して、要求に対して待機するように構成します。
phys-hahost1# odadmin odlist |
管理ノードのホストが論理ホストであることを確認してください。そうでない場合、次のコマンドを使用して (「odadmin」は Tivoli サーバーの odadmin)、論理ホストを管理ノードのオブジェクトディスパッチャに関連付け、物理ホストの関連付けを解除します。dispatcher_id を決定するには、odadmin odlist コマンドの出力から Disp フィールドを調べます。
phys-hahost1# odadmin odlist add_ip_alias dispatcher_id logical_hostname phys-hahost1# odadmin odlist delete_ip_alias dispatcher_id logical_hostname |
(Tivoli 3.6 のみ) Tivoli サーバーと管理ノードが特定の IP アドレス上の要求に対して待機するように構成します。
次のコマンドを使用します (「odadmin」は Tivoli サーバーの odadmin)。このコマンドを使用するには、Tivoli oserv と管理ノード oserv の両方が動作している必要があります。
phys-hahost1# odadmin set_force_bind TRUE all |
(省略可能) Tivoli 環境のディレクトリ名を変更し、マスターになる可能性のある他のすべての論理ホストにそのディレクトリをコピーします。
他のインストールでディレクトリが上書きされないよう、Tivoli 環境のディレクトリ名を変更してください。その後、Tivoli サーバーをインストールした、マスターになる可能性のある他のすべての論理ホストに Tivoli 環境のディレクトリをコピーしてください。
phys-hahost1# mv /etc/Tivoli /etc/Tivoli.hahost2 phys-hahost1# tar cvf /tmp/tiv.tar /etc/Tivoli.hahost2 phys-hahost1# rcp /tmp/tiv.tar phys-hahost2:/tmp phys-hahost2# tar xvf /tmp/tiv.tar |
/etc/services ファイルを編集します。
Tivoli インスタンスの、マスターになる可能性のあるすべての物理ホスト上の /etc/services ファイルに次のエントリを追加します。Tivoli 用のデフォルトのポート番号は 94 です。
objcall port_number/tcp |
Tivoli が正しくインストールされたことを確認します。
Sun Cluster HA for Tivoli を構成する前に、Tivoli サーバーと Tivoli 管理ノードのインスタンス、検証に使用する Tivoli 管理ノードが正しくインストールされていることを確認してください。
phys-hahost1# . /etc/Tivoli.hahost1/setup_env.sh phys-hahost1# odadmin odlist phys-hahost1# wping hahost1 phys-hahost1# wping hahost2 |
setup_env.sh ファイルは、1 つ目の論理ホストからのみ実行してください。2 つ目の論理ホストから setup_env.sh ファイルを実行すると、odadmin コマンドや wping コマンドが正しく実行されません。
Tivoli サーバー上に管理ユーザーを作成し、正しくアクセス権を設定します。
Tivoli ユーザーインタフェースを使用して、ユーザーID が root、グループ ID が root の管理者を作成し、user、admin、senior、super 権限を付与してください。これにより、wping コマンドによる検証が可能になります。
Tivoli サーバーまたはサーバーデーモンを停止します。
デーモンは、クラスタを起動するか、マスター間で論理ホストが切り替えられるときに、Sun Cluster によって自動的に再起動されます。odadmin を初めて実行すると、TME サーバーが停止します。再び odadmin を実行すると、管理ノードが停止します。
phys-hahost1# odadmin shutdown phys-hahost1# . /etc/Tivoli.hahost2/setup_env.sh phys-hahost1# odadmin shutdown |
「Sun Cluster HA for Tivoli のインストールと構成」に進んで、Sun Cluster HA for Tivoli データサービスを登録、インストールしてください。
この節では、Sun Cluster HA for Tivoli をインストールして、構成、登録、起動する手順を説明します。Sun Cluster HA for Tivoli を構成する前に、Sun Cluster のインストール、構成、Tivoli 製品のインストールを終えておく必要があります。
Sun Cluster HA for Tivoli は、hadsconfig(1M) コマンドを使用して構成します。詳細は、hadsconfig(1M) のマニュアルページを参照してください。
各 Sun Cluster サーバーに Tivoli パッケージの SUNWsctiv をまだインストールしていない場合は、サーバー上のデフォルト位置にインストールします。
Tivoli パッケージをまだインストールしていない場合は、scinstall(1M) コマンドを使用して、マスターの論理ホストになる可能性がある各 Sun Cluster サーバーに Tivoli パッケージをインストールしてください。
サーバーと管理ノードの両方について、各ノードで hadsconfig(1M) コマンドを実行して、Sun Cluster HA for Tivoli を構成します。
サーバーおよび管理ノードのどちらも、Sun Cluster HA for Tivoli データサービスのインスタンスの作成、編集、削除には、hadsconfig(1M) コマンドを使用します。hadsconfig(1M) コマンドに対する入力については、「Sun Cluster HA for Tivoli に対する構成パラメータ」を参照してください。このコマンドは、1 つのノード上でのみ実行してください。
phys-hahost1# hadsconfig |
Tivoli サーバーと Tivoli 管理ノードのインスタンスのみ、Sun Cluster によって制御するように構成してください。検証に使用する Tivoli 管理ノードを Sun Cluster で制御する必要はありません。
hareg(1M) コマンドを実行して、Sun Cluster HA for Tivoli データサービスを登録します。
このコマンドは、1 つのノード上でのみ実行してください。
phys-hahost1# hareg -s -r tivoli |
hareg(1M) コマンドを使用して、Sun Cluster HA for Tivoli を有効にし、クラスタの再構成を行います。
このコマンドは、1 つのノード上でのみ実行してください。
phys-hahost1# hareg -y tivoli |
これで Sun Cluster HA for Tivoli の構成は完了です。
この節では、Sun Cluster HA for Tivoli 用の構成ファイルを作成するときに hadsconfig(1M) コマンドに指定する情報について説明します。hadsconfig(1M) コマンドはテンプレートを使用して、構成ファイルを作成します。このテンプレートには、デフォルト値を持つパラメータや値が明示的に指定されたパラメータ、値が指定されないパラメータが含まれています。値が指定されないパラメータに対しては、必ず値を指定する必要があります。
障害検証パラメータは特に、Sun Cluster HA for Tivoli の性能に影響することがあります。検証間隔値を小さくしすぎると (障害検証の回数の増加により)、システム性能が低下することがあり、その結果として、システムが単に遅くなっただけでも、誤ったテイクオーバーが発生したり、再起動が試みられたりすることがあります。
hadsconfig(1M) コマンドに表 9-1 で説明しているオプションを指定することによって、Sun Cluster HA for Tivoli を構成してください。
表 9-1 Sun Cluster HA for Tivoli に対する構成パラメータ
パラメータ |
説明 |
---|---|
インスタンス名 |
インスタンスの識別子として使用される名前タグ。Sun Cluster HA for Tivoli が生成するログメッセージでは、この名前タグが参照される。hadsconfig(1M) コマンドは、ここで指定された値の前にパッケージ名を付ける。たとえば、tivoli を指定すると、SUNWsctiv_tivoli が生成される。 |
論理ホスト |
Sun Cluster HA for Tivoli のこのインスタンスにサービスを提供する論理ホスト名 |
ポート番号 |
Sun Cluster HA for Tivoli 専用のポート。デフォルトのポート番号は 94。 |
構成ディレクトリ |
データベースのディレクトリ、すなわち、$DBDIR のフルパス (例: /hahost1/d1/Tivoli/<database>.db) |
ローカル検証フラグ |
クラスタを再構成したとき、あるいは Tivoli サービスを起動したときにローカル検証を自動的に開始するかどうかを指定する。指定できる値は、y または n のいずれかである。 |
検証間隔 |
障害検証を行う時間間隔 (秒単位)。デフォルトの間隔は 60 秒。 |
検証タイムアウト |
障害検証をタイムアウトにする時間 (秒単位)。ここで指定した時間内に検証が終了しなかった場合は、Sun Cluster HA for Tivoli は障害検証に失敗したとみなす。デフォルトは 60 秒。 |
テイクオーバーフラグ |
このインスタンスで障害が発生した場合に、関連付けられている論理ホストのテイクオーバーまたはフェイルオーバーのどちらを行うかを指定する。指定できる値は、y または n のいずれかである。 |
TIV_OSERV_TYPE |
指定できる値は、server または client のいずれかである。 |
TIV_BIN |
インスタンスのインストール中に指定した TME バイナリへのパス (例: /hahost1/d1/Tivoli/bin)。このパスは、接尾辞 Solaris2 を除いた $BINDIR のパスと同じである。 |
TIV_LIB |
インスタンスのインストール中に指定した TME ライブラリへのパス (例: /hahost1/di/Tivoli/lib)。このパスは、接尾辞 Solaris2 を除いた $LIBDIR のパスと同じである。 |