Sun Cluster 2.2 ソフトウェアのインストール

システムフェイルオーバーとスイッチオーバー

Sun Cluster HA 構成でノードに問題が発生すると、そのノード上で動作していたデータサービスは、同じサーバーセット内の正常なノードに自動的に移動されます。フェイルオーバーソフトウェアは、論理ホストの IP アドレスを障害ホストから正常なノードに移動します。障害ホストによってマスターされていた論理ホスト上で動作していたすべてのデータサービスも移動されます。

システム管理者は、手動で論理ホストのスイッチオーバーを行うことができます。フェイルオーバーとスイッチオーバーの違いは、前者が、ノードに問題が発生したとき Sun Cluster ソフトウェアによって自動的に処理されるのに対し、後者はシステム管理者が手動で行うという点です。スイッチオーバーは、クラスタノードの定期的な保守またはソフトウェアのアップグレードを行うときに行います。

図 1-22 は、正常に稼働している 2 ノードの構成を表しています。それぞれの物理ホストが 1 つの論理ホストをマスターしていることに注意してください (実線で示しています)。2 つのクライアントが、この 2 つの論理ホスト上の異なるデータサービスを利用しています。

図 1-22 フェイルオーバーまたはスイッチオーバー前の対称構成

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phys-hahost1 で問題が発生した場合、論理ホスト hahost1 は、phys-hahost2 に移動されます。hahost1 の再配置可能 IP アドレスは phys-hahost2 に移動し、データサービス要求は phys-hahost2 に送信されます。クラスタの再構成が行われている間、hahost1 上のデータを利用するクライアントでは短時間の遅延が発生します。図 1-23 は、上図の、フェイルオーバーまたはスイッチオーバー後の新しい構成です。

(物理ホスト phys-hahost2 になった) phys-hahost1 上の論理ホスト hahost1 にアクセスしていたクライアントシステムが、引き続き物理ホスト phys-hahost2 上の同じ論理ホストにアクセスすることに注意してください。フェイルオーバーの場合、この引き継ぎは、クラスタの再構成によって自動的に行われます。フェイルオーバーの結果、phys-hahost2 は、hahost1hahost2 の両方の論理ホストをマスターするようになっています。関連付けられているディスクセットは、phys-hahost2 経由でのみアクセスできます。

図 1-23 フェイルオーバーまたはスイッチオーバー後の対称構成

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部分的フェイルオーバー

1 つの物理ホストが複数の論理ホストをマスターできるということは、データサービスの部分的フェイルオーバーが可能であるということです。図 1-24 は、物理ホスト 3 つと論理ホスト 5 つの星型構成を表しています。この図では、物理ホストと論理ホストを結ぶ線によって、どの物理ホストがどの論理ホスト (およびディスクグループ) を現在マスターしているかを示しています。

phys-hahost1 によってマスターされている 4 つの論理ホスト (実線で示されています) は、個別にホットスタンバイサーバーにフェイルオーバーできます。図 1-24 のホストスタンバイサーバーは、全多重ホストディスクに物理接続されていますが、どの論理ホストもマスターしていないことに注意してください。

図 1-24 複数論理ホスト構成の部分的フェイルオーバー以前

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図 1-25 は、hahost5 だけがホットスタンバイサーバーにフェイルオーバー (部分的フェイルオーバー) した後の構成を表しています。

部分的フェイルオーバーでは、phys-hahost1 が論理ホスト hahost5 をマスターする権利を放棄し、phys-hahost3 (ホットスタンバイサーバー) がその権利を引き継ぎます。

図 1-25 複数論理ホスト構成の部分的フェイルオーバー後

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同じ論理ホスト上にデータサービスを配置することによって、どのデータサービスを一緒にフェイルオーバーさせるかを制御できます。論理ホスト上のデータサービスの結合または分離に関係する問題については、第 2 章「構成の計画」を参照してください。

並列データベースに対するフェイルオーバー

並列データベース環境には、論理ホストの概念はありません。しかし、ノードで障害が発生した場合にノード間を移動できる再配置可能 IP アドレスの概念はあります。再配置可能 IP アドレスとフェイルオーバーについては 「論理ホスト」および 「システムフェイルオーバーとスイッチオーバー」を参照してください。