ここでは、ボリュームマネージャとして Solstice DiskSuite を使用するクラスタに対し、Solaris 2.6 または Solaris 7 で動作する Sun Cluster 2.2 を Solaris 8 で動作する Sun Cluster 2.2 にアップグレードする手順を説明します。
アップグレードを始める前に、手順全体をよく理解しておく必要があります。参照のため、ボリュームマネージャのマニュアルを手元に用意してください。
このアップグレードを行うためには、クラスタからすべてのノードを切り離す (つまり、クラスタを停止する) 必要があります。クラスタが停止している間は、データやデータサービスにはアクセスできません。
アップグレードを始める前に、すべての構成情報と重要データの十分なバックアップを取ってください。クラスタは、安定した非縮退状態でなければなりません。
scinstall(1M) アップグレード手順では、ローカル以外のすべてのプライベートリンク IP アドレスが各ノードの /.rhosts ファイルに追加されます。ただし、これは root アクセスのみ可能です。
Solaris 2.6 と Solaris 8 では、DNS の動作が異なります。これは、デフォルトの bind バージョンがそれぞれのオペレーティング環境で異なるためです。そのため、一部の DNS 構成ファイルを変更する必要があります。詳細と手順については、DNS のマニュアルを参照してください。
この例では、クラスタは、管理ワークステーションを使った N+1 構成であるものとします。
(Sun Cluster HA for SAP のみ) hadsconfig(1M) コマンドを実行して現在の構成パラメータを取得します。
SAP インスタンス構成データはアップグレード時に消去されます。そのため、hadsconfig(1M) コマンドを実行して現在の SAP パラメータを控えておく必要があります。パラメータは後で手作業で復元します。Sun Cluster HA for SAP の新しい構成パラメータについては、第 10 章「Sun Cluster HA for SAP のインストールと構成」を参照してください。
phys-hahost1# hadsconfig |
すべてのデータサービスを停止します。
すべてのノードを停止して、クラスタを停止します。
すべてのノードで次のコマンドを実行します。
phys-hahost1# scadmin stopnode |
すべてのノードでオペレーティングシステムをアップグレードします。
オペレーティング環境のアップグレードについては、適切な Solaris インストールマニュアルの詳細な手順と本書の第 2 章「構成の計画」を参照してください。
NIS+ を使用している場合は、すべてのノードの /etc/nsswitch.conf ファイルを変更します。
「service」、「group」、「hosts」の参照は、次のように、最初に files に対して行われなければなりません。
hosts: files nisplus services: files nisplus group: files nisplus |
Solstice DiskSuite 4.2 を Solstice DiskSuite 4.2.1 にアップグレードします。
Solaris 8 では、Solstice DiskSuite 4.2.1 が必要です。
pkgadd(1M) を使って、Solstice DiskSuite メディアから Solstice DiskSuite 4.2.1 パッケージをインストールします。
pkgadd(1M) の操作では、いくつかのファイルがすでに存在することを示すメッセージが表示されます。pkgadd の各プロンプトで y を入力して新しいファイルをインストールしてください。
元の構成にメディエータが含まれている場合は、新しい SUNWmdm (メディエータ) パッケージを追加するまで古い SUNWmdm を削除しないでください。削除すると、すべてのデータにアクセスできなくなります。
該当する Solstice DiskSuite のパッチをインストールします。
すべてのノードを再起動します。
この時点ですべてのクラスタノードを再起動する必要があります。
(Sun Cluster HA for SAP のみ) 次の各手順を行います。
カスタマイズした hasap_start_all_instances や hasap_stop_all_instances スクリプトがある場合は、安全な場所に保存します。
Sun Cluster 2.2 のアップグレード時には古いスクリプトが削除されるため、カスタマイズ内容を維持するためにこれらのスクリプトを保存しておく必要があります。次のコマンドを使って、スクリプトを安全な場所にコピーしてください。これらのスクリプトは、アップグレードの後に 手順 9 で復元します。
phys-hahost1# cp /opt/SUNWcluster/ha/sap/hasap_start_all_instances /safe_place phys-hahost1# cp /opt/SUNWcluster/ha/sap/hasap_stop_all_instances /safe_place |
scinstall(1M) を使ってクラスタソフトウェアを更新する前に、すべてのノードから SUNWscsap パッケージを削除します。
SUNWscsap パッケージは scinstall(1M) によって自動的に更新されるわけではないため、ここでこのパッケージを削除します。更新されたパッケージは、手順 9 でインストールします。
phys-hahost1# pkgrm SUNWscsap |
すべてのノードで scinstall(1M) コマンドを実行し、Sun Cluster 2.2 CD-ROM を使ってクラスタソフトウェアを更新します。
scinstall(1M) を呼び出し、表示されるメニューから「Upgrade」を選択します。
phys-hahost1# cd /cdrom/multi_suncluster_sc_2_2/Sun_Cluster_2_2/Sol_2.x/Tools phys-hahost1# ./scinstall Removal of <SUNWscins> was successful. Installing: SUNWscins Installation of <SUNWscins> was successful. Assuming a default cluster name of sc-cluster Checking on installed package state............ ============ Main Menu ================= 1) Install/Upgrade - Install or Upgrade Server Packages or Install Client Packages. 2) Remove - Remove Server or Client Packages. 3) Change - Modify cluster or data service configuration 4) Verify - Verify installed package sets. 5) List - List installed package sets. 6) Quit - Quit this program. 7) Help - The help screen for this menu. Please choose one of the menu items: [7]: 1 ... ==== Install/Upgrade Software Selection Menu ======================= Upgrade to the latest Sun Cluster Server packages or select package sets for installation. The list of package sets depends on the Sun Cluster packages that are currently installed. Choose one: 1) Upgrade Upgrade to Sun Cluster 2.2 Server packages 2) Server Install the Sun Cluster packages needed on a server 3) Client Install the admin tools needed on an admin workstation 4) Server and Client Install both Client and Server packages 5) Close Exit this Menu 6) Quit Quit the Program Enter the number of the package set [6]: 1 What is the path to the CD-ROM image? [/cdrom/cdrom0]: . ** Upgrading from Sun Cluster 2.1 ** Removing "SUNWccm" ... done ... |
(Sun Cluster HA for SAP のみ) 次の各手順を行います。
SAP を使用するすべてのノードに Sun Cluster 2.2 CD-ROM から SUNWscsap パッケージを追加します。
pkgadd(1M) を使って、更新された SUNWscsap パッケージを追加し、手順 1 で削除したパッケージを置き換えます。pkgadd のプロセスで表示されるすべてのプロンプトに対し y を入力します。
phys-hahost1# pkgadd -d ¥ /cdrom/multi_suncluster_sc_2_2/Sun_Cluster_2_2/Sol_2.x/Product/ SUNWscsap |
SAP を使用するすべてのノードに 手順 1 で保存したスクリプトを復元します。
これらのスクリプトを /opt/SUNWcluster/ha/sap ディレクトリにコピーします。safe_place ディレクトリは、手順 1 でスクリプトを保存した先のディレクトリです。スクリプトを復元したら、ls -l コマンドを使って、スクリプトが実行可能か確認します。
phys-hahost1# cd /opt/SUNWcluster/ha/sap phys-hahost1# cp /safe_place/hasap_start_all_instances . phys-hahost1# cp /safe_place/hasap_stop_all_instances . phys-hahost1# ls -l /opt/SUNWcluster/ha/sap/hasap_st* -r-xr--r-- 1 root sys 18400 Feb 9 19:04 hasap_start_all_instances -r-xr--r-- 1 root sys 25963 Feb 9 19:04 hasap_stop_all_instances |
Sun Cluster SNMP を使用する場合は、Sun Cluster SNMP デーモンと Solaris SNMP (smond) で使用するポート番号を変更します。これは、すべてのノードに対して行う必要があります。
Sun Cluster SNMP が使用するデフォルトポートは、Solaris SNMP が使用するデフォルトのポート番号 (ポート 161) と同じです。『Sun Cluster 2.2 のシステム管理』の付録 (SNMP) にある手順を使って Sun Cluster SNMP のポート番号を変更します。
Sun Cluster の必須または推奨パッチがある場合は、これをすべてのノードにインストールします。
必須または推奨パッチは、サービスプロバイダかパッチ Web サイト http://sunsolve.sun.com から入手できます。パッチの README ファイルの説明に従ってパッチをインストールしてださい。
クラスタを起動し、クラスタにすべてのノードを追加します。
最初のノードで次のコマンドを実行してクラスタを起動します。
phys-hahost1# scadmin startcluster phys-hahost1 sc-cluster |
各ノード (1 つずつ順番に) で次のコマンドを実行してノードを 1 つずつクラスタに追加します。ただし、クラスタの再構成が終るのを待ってから次のノードに進んでください。
phys-hahost2# scadmin startnode |
必要ならデバイス ID を更新します。
クラスタの起動時に、無効なデバイス ID を意味するエラーメッセージが表示された場合は、次の手順に従ってデバイス ID を更新する必要があります。
任意のノードで /etc/did.conf ファイルのバックアップコピーを作成します。
ノード 0 から次のコマンドを実行して、関連するすべてのインスタンス番号をリストします。
phys-hahost1# scdidadm -l |
ノード 0 から次のコマンドを実行してデバイス ID を更新します。
これによって、ノード 0 の多重ホストディスクとローカルディスクのデバイスが再び初期設定されます。このコマンドは、ノード 0 として定義されたノードから実行する必要があります。すべての多重ホストディスクのインスタンス番号を指定してください。このコマンドは、クラスタの多重ホストディスクごとに 1 度だけ実行する必要があります。
scdidadm -R コマンドの実行は、極めて慎重に行う必要があります。大文字の R の代りに小文字の r を絶対に使用しないでください。小文字の r を使用すると、すべてのディスクに対しデバイス番号の再割り当てが行われ、データがアクセス不能になることがあります。詳細は、scdidadm(1M) コマンドを参照してください。
phys-hahost1# scdidadm -R instance_number1 ... phys-hahost1# scdidadm -R instance_number2 ... phys-hahost1# scdidadm -R instance_number3 ... |
scdidadm -R コマンドではノード 0 以外のクラスタノードにあるローカルディスクの再初期設定は行われませんが、Sun Cluster はローカルディスクのデバイス ID を使用しないため、これは問題ありません。ただし、ノード 0 以外のすべてのノードに対し、これに関連するエラーメッセージが表示されます。これらのエラーメッセージは無視してください。
すべてのクラスタノードを停止します。
すべてのクラスタノードを再起動します。
クラスタを起動し、クラスタにすべてのノードを追加します。
最初のノードでクラスタを起動します。
phys-hahost1# scadmin startcluster phys-hahost1 sc-cluster |
次に、次のコマンドを各ノード (1 つずつ順番に) で実行します。ただし、クラスタの再構成が終るのを待ってから次のノードに進んでください。
phys-hahost2# scadmin startnode |
アップグレード済みのノードをクラスタに追加するごとに、端末集配信装置との通信が無効であることを示す警告メッセージがいくつか表示されることがあります。これらのメッセージは予期されたものですので、この時点では無視してください。また、この時点では、Sun Cluster HA for SAP が生成するエラーも無視してください。
(Sun Cluster HA for SAP のみ) 次の各手順を行って SAP インスタンスを再構成します。
hadsconfig(1M) コマンドを実行して Sun Cluster HA for SAP の構成パラメータを復元します。
新しい構成パラメータの説明は、第 10 章「Sun Cluster HA for SAP のインストールと構成」を参照してください。また、手順 1 で保存した構成情報も参照してください。
phys-hahost1# hadsconfig |
この時点では、hadsconfig(1M) が生成するエラーは無視してください。
構成パラメータを設定したら、hareg(1M) を使ってデータサービスをアクティブにします。
phys-hahost1# hareg -y sap |
構成ファイルをクラスタの他のノードに手作業でコピーします。
次のようにして、古い Sun Cluster 2.2 構成ファイルを新しい Sun Cluster 2.2 ファイルで置き換えます。
phys-hahost1# ftp phys-hahost2 ftp> put /etc/opt/SUNWscsap/hadsconf |
データサービスを起動します。
すべてのデータサービスに対し次のコマンドを実行します。
phys-hahost1# hareg -s -r dataservice -h CI_logicalhost phys-hahost1# hareg -y dataservice |
Sun Cluster Manager を設定してから起動します。
Sun Cluster Manager はクラスタの監視に使用されます。これについては、『Sun Cluster 2.2 のシステム管理』第 2 章の Sun Cluster Manager に関する説明を参照してください。また、『Sun Cluster 2.2 ご使用にあたって』も参照してください。
これで、Solaris 2.6 または Solaris 7 で動作する Sun Cluster 2.2 の旧バージョンから Solaris 8 で動作する Sun Cluster 2.2 の最新バージョンへのアップグレードは終りです。