この章では、Sun Cluster Geographic Edition 製品を使用する上での主要な概念を挙げます。これらの概念は、Sun Cluster Geographic Edition コンポーネント間の関係を理解するのに役立ちます。
この章の内容は次のとおりです。
データ複製により、災害時に備えて、または計画的な手順の一環として、主クラスタから二次クラスタへの実運用サービスの移行を、管理された方法で行うことが可能になります。データは主クラスタから二次クラスタに継続的に複製されます。この複製は、クラスタによってサポートされているアプリケーションサービスの復旧する目標点に応じて、同期的または非同期的に、あるいは同期と非同期の組み合わせによって行われます。
Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアは、データ複製用として Sun StorEdge Availability Suite 3.2.1 ソフトウェア、Hitachi TrueCopy、および EMC Symmetrix Remote Data Facility ソフトウェアをサポートしています。Sun StorEdge Availability Suite 3.2.1 ソフトウェア はホストベースのデータ複製機能を使用します。この機能では、データがオペレーティングシステム内部のファイルシステムレベルまたはボリュームレベルで複製されます。Hitachi TrueCopy ソフトウェアと EMC Symmetrix Remote Data Facility ソフトウェアはストレージベースのデータ複製機能を使用します。この機能では、データがストレージシステムレベルで複製され、透過的なサービスがアプリケーションに提供されます。
Sun StorEdge Availability Suite 3.2.1 ソフトウェア ソフトウェアはホストベースの複製機能であり、地理的に離れた主クラスタと二次クラスタ間で、ディスクボリュームをリアルタイムに複製します。このソフトウェアでは、リモートミラー複製により、主クラスタのマスターボリュームのデータを TCP/IP 接続を介して地理的に離れた二次クラスタのマスターボリュームに複製できます。リモートミラービットマップは、主ディスク上のマスターボリュームと、二次ディスク上のマスターボリュームの差分を追跡します。
リモートミラーソフトウェアは、アプリケーションがデータボリュームにアクセスしている間、継続的にデータをリモートサイトに複製します。また、主サイトと二次サイトのボリュームの同期をとるコマンドを発行することで、二次サイトのボリューム上のデータを手動で更新することもできます。さらに、ボリュームの同期を逆方向にとるコマンドを発行することで、二次ボリュームから主ボリュームにデータを復旧することもできます。Sun StorEdge Availability Suite 3.2.1 ソフトウェア ソフトウェアについては、製品のマニュアルを参照してください。
Hitachi TrueCopy ソフトウェアは、ストレージベースの複製機能です。このソフトウェアを使用することで、地理的に離れたクラスタでホストに依存することなくデータを複製できます。Hitachi TrueCopy ソフトウェアによって主ボリュームは、読み書き双方の入出力操作時に、すべてのホストに対してオンライン状態を維持できます。災害やシステム障害が発生した場合には、データの二次コピーを復旧用に実行すると、データの損失を最小限に抑えることができます。 Hitachi TrueCopy ソフトウェアの詳細については、製品のマニュアルを参照してください。
EMC Symmetrix Remote Data Facility ソフトウェアは、災害復旧のためのリモートストレージ複製機能を提供し、リモートサイトのフェイルオーバーを通じてデータとシステムの可用性を保証します。EMC Symmetrix Remote Data Facility のデバイスはペアで構成されます。ペア間でのミラー化のリレーションシップは、EMC Symmetrix Remote Data Facility リンクがオンラインになった時点でただちに運用状態になります。EMC Symmetrix Remote Data Facility のグローバルメモリーには、運用中の EMC Symmetrix Remote Data Facility デバイスのペア状態に関する情報が格納されます。EMC Symmetrix Remote Data Facility ソフトウェアの詳細については、製品のマニュアルを参照してください。
Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアでは、リソースグループとデバイスグループを使用してクラスタ間のデータの複製とテイクオーバーを行えます。また、主クラスタから二次クラスタにデータを複製するように、保護グループを構成することもできます。データ複製の構成については、使用しているデータ複製製品のガイドを参照してください。
Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアは、Sun Cluster のリソース管理機能を拡張し、データ複製製品を統合しています。保護グループを構成する場合、Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアはデータ複製の監視と制御を行うために複製リソースグループを作成します。
デバイスグループは、Sun Cluster が管理するハードウェアリソースです。デバイスグループは、Sun Cluster ソフトウェアがボリューム管理ディスクグループを登録するために使用する一種のグローバルデバイスです。Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアでは、複製を含める Sun Cluster デバイスグループを構成します。Sun Cluster でのデバイスグループの構成については、使用しているデータ複製製品のガイドを参照してください。
Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアを実行している 2 つのクラスタがパートナー関係にある場合、これらのクラスタ間でハートビートの監視が行われます。パートナーシップ内のクラスタはハートビートを交換して、相互の存在と健全性を監視します。パートナーシップは 2 つのクラスタ間でのみ構成可能で、両クラスタ間で定義できるパートナーシップは 1 つだけです。この 2 つのクラスタには、相互に通信できるインターネット接続が必要です。パートナーシップにより、クラスタ間にハートビートが確立されます。
Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアは、ハートビートのほか、パートナークラスタ間の IP 相互接続も管理に使用します。パブリックネットワークを使用している場合は、IPsec を使用して IP 相互接続をセキュリティー保護することで、セキュリティーを高めることができます。
Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアでは、ハートビートロス通知が発行される際にコマンドが実行されるように指定できます。このコマンドの実行にはルートアクセス権が必要です。また、ハートビートロス通知が発行された際に通知する電子メールアドレスのリストも指定できます。
次の図は、2 つのクラスタ間のパートナーシップを示しています。
各クラスタはほかのクラスタ (複数) との間で複数のパートナーシップを確立できますが、同じクラスタ同士 (2 つのクラスタ) が複数のパートナーシップを確立することはできません。
保護グループを使用してサービス用のリソースグループを管理すると、クラスタ群が災害に耐え、災害から復旧できるようになります。保護グループを設定できるのはパートナーシップ内だけです。パートナーシップの保護グループを作成できるように、あらかじめパートナーシップを作成する必要があります。一方のパートナークラスタは保護グループの主クラスタで、もう一方のパートナークラスタは二次クラスタです。保護グループには、アプリケーションリソースグループと、それらのアプリケーションリソースグループのデータ複製を管理するためのプロパティーが含まれます。パートナークラスタには、アプリケーションリソースグループ構成の複製を配置する必要があります。保護グループの構成は両方のパートナークラスター上で同一であるため、パートナークラスタには、その構成で定義されている保護グループのアプリケーションリソースグループが必要です。Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアは、パートナー間で保護グループの構成を伝達します。
保護グループ内におけるデータ複製の種類を指定することにより、パートナークラスタ間でのデータ複製に使用されるメカニズムを指定できます。各保護グループがサポートするデータ複製の種類は 1 つだけです。各保護グループは、1 つ以上のアプリケーションリソースグループを管理できます。 データ複製によってサービスが災害から保護されている場合、保護グループにも複製リソースグループが含まれています。保護グループは、リソースグループ内のアプリケーションを、複製するべきアプリケーションデータとリンクします。このリンクと複製により、アプリケーションは特定のクラスタから別のクラスタに、シームレスにフェイルオーバーできるようになります。
保護グループ内のクラスタはパートナーとして定義する必要があります。保護グループは、保護グループをホストできるクラスタを定義するパートナーシップを必要とします。1 つのクラスタは複数の保護グループで定義でき、また保護グループごとにそのクラスタに個別の役割を持たせることができます。たとえば、1 つの保護グループの主クラスタは、別の保護グループの二次クラスタになることもできます。パートナーシップは、任意の数の保護グループを持つことができます。
次の図に、1 つのクラスタパートナーシップと 2 つの保護グループで定義されている 2 つのクラスタを示します。
次の図に、2 つのクラスタパートナーシップと 2 つの保護グループで定義されている 3 つのクラスタを示します。
Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアは、各クラスタ上の保護グループの状態を監視します。続いて、各クラスタのローカル状態を、保護グループ状態のグローバルビューに組み入れます。このグローバル状態は、保護グループの全体的な状態を示します。
保護グループの状態は、SunPlex Manager GUI を使用するか、あるいは CLI を介して表示できます。
保護グループの状態 については、『Sun Cluster Geographic Edition のシステム管理』を参照してください。
アプリケーションを高可用化するには、そのアプリケーションをアプリケーションリソースグループ内でリソースとして管理する必要があります。アプリケーションリソースグループは、フェイルオーバーアプリケーションまたはスケーラブルアプリケーション用に構成できます。また、アプリケーションリソースとアプリケーションリソースグループは、主クラスタと二次クラスタの両方で構成する必要があります。アプリケーションリソースがアクセスするデータは、必ずその複製を二次クラスタ上に置いてください。
アプリケーションリソースがアクセスするデータボリュームの複製は、アプリケーションと同じ保護グループ内に配置する必要があります。
データ複製をサポートすることで、アプリケーションリソースグループの構成方法が制限される場合があります。これらの要件と制限は、ユーザーが選択するデータ複製の種類によって異なります。これらの要件については、『Sun Cluster Geographic Edition のシステム管理』を参照してください。
Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアはハートビートを使用してパートナークラスタ間の状態を監視します。ハートビートはパブリックネットワークに送信され、地理的に分散した複数のサイトにおけるクラスタの障害を検出します。ハートビート監視は、パートナーシップ構成の一部です。たとえば、クラスタのすべてのノードが停止すると、クラスタ障害が発生します。Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアはハートビート状態を使用して、管理者に障害を通知するか、代替サイトの二次クラスタへのフェイルオーバーをトリガーします。クラスタがパブリックネットワークへアクセスできなくなり、パートナークラスタ間での通信が行われなくなると、ハートビートも失われる可能性があります。
ハートビートモニターは、プラグインモジュールを使用して、パートナーのハートビート状態を問い合わせます。Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアは、TCP/UDP 接続を通じた監視を行うためのデフォルトのプラグインを備えています。
カスタマイズされたプラグインを使用すると、電子メール、HTTP、人工衛星、およびマイクロウェーブタワーなどの代替通信リンクでデータパスを提供できます。