この章では、パートナーシップに参加できるようにクラスタを有効にする情報について説明します。また、クラスタがそれ以降、パートナーシップに参加できなくなるように Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアを無効にする情報についても説明します。
この章の内容は次のとおりです。
Sun Cluster Geographic Edition インフラストラクチャーを有効にすると、次の Sun Cluster リソースグループが作成されます。
geo-clusterstate – ノードがフェイルオーバーされるケースとクラスタが再起動されるケースを区別するときに Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアによって使用されるスケーラブルリソースグループ。このリソースグループにはリソースは含まれません。
geo-infrastructure – Sun Cluster Geographic Edition インフラストラクチャーをカプセル化するフェイルオーバーリソースグループ。このリソースグループには、次のリソースが含まれます。
geo-clustername – Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアの論理ホスト名。Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアは、クラスタ間管理通信とハートビート通信用に、クラスタの論理ホスト名を使用します。ネームサービス内のエントリは、クラスタの名前と同じで、また各クラスタのネームスペース上で使用可能である必要があります。
geo-hbmonitor – Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアのハートビートプロセスをカプセル化します。
geo-failovercontrol – Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェア自体をカプセル化します。Sun Cluster Geographic Edition モジュールは、このリソースを使用して共通エージェントコンテナへの読み込みを行います。
これらのリソースは内部的に使用されるだけです。このため、これらのリソースは変更しないでください。
これらの内部リソースは、ユーザーが Sun Cluster Geographic Edition インフラストラクチャーを無効にする場合に除去されます。
scstat -g コマンドを使用して、これらのリソースの状態を監視できます。scstat(1M) のマニュアルページを参照してください。
Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアを有効にすると、そのクラスタは有効になっている別のクラスタとパートナーシップ関係を作成できるようになります。クラスタパートナーシップの作成には、CLI コマンドまたは GUI を使用できます。
Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアの設定とインストールの詳細は、『Sun Cluster Geographic Edition のインストール』を参照してください。
この手順では、Sun Cluster Geographic Edition インフラストラクチャーをローカルクラスタだけで有効にします。この手順は、地理的に離れたクラスタのすべてのクラスタで繰り返し実行してください。
次の条件が満たされているか確認します。
そのクラスタが Solaris オペレーティングシステム と Sun Cluster ソフトウェアを実行している。
SunPlex Manager 用の Sun Cluster 管理エージェントコンテナが動作している。
Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアがインストールされている。
クラスタが、セキュリティー証明書の使用によって、セキュリティー保護されたクラスタ通信用にすでに構成されている。つまり、同じクラスタ内にあるノード同士が同じセキュリティー証明書を共有している必要がある。この構成は Sun Cluster のインストール時に行われます。
Sun Cluster 3.1 8/05 ソフトウェアへのアップグレードを行う際は、セキュリティー証明書がクラスタのすべてのノードで同じである必要があります。したがって、セキュリティー証明書をクラスタの 1 つのノードから別のノードに手動でコピーする必要があります。共通エージェントコンテナ用のセキュリティーファイルのコピーについては、『Sun Cluster ソフトウェアのインストール (Solaris OS 版)』の第 5 章「Sun Cluster ソフトウェアのアップグレード」の手順を参照してください。
クラスタノードの 1 つにログインします。
この作業を行うには、Geo Operation RBAC 権利プロファイルが割り当てられていなければなりません。RBAC の詳細は、「Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアと RBAC」を参照してください。
論理ホスト名 (クラスタ名と同じ) が使用可能で、定義されていることを確認します。
# scconf -p | grep -i "cluster name" |
クラスタ名が望ましくない場合は、次のコマンドでクラスタ名を変更できます。
# scconf -c -C cluster=clustername |
詳細は、scconf(1M) のマニュアルページを参照してください。
Sun Cluster Geographic Edition インフラストラクチャーを有効にしたあとは、このインフラストラクチャーを有効にした状態でクラスタ名を変更しないでください。
ネームサービスファイルとローカルホストファイルに、クラスタ名に一致するホストエントリが含まれていることを確認します。
ローカルホストファイル hosts は、/etc/inet ディレクトリに入っています。
クラスタノードの 1 つで、Sun Cluster Geographic Edition インフラストラクチャーを起動します。
# geoadm start |
geoadm start コマンドは、Sun Cluster Geographic Edition インフラストラクチャーをローカルクラスタだけで有効にします。詳細は、geoadm(1M) のマニュアルページを参照してください。
インフラストラクチャーが有効であり、Sun Cluster Geographic Edition リソースグループがオンライン状態であることを確認します。
Sun Cluster Geographic Edition リソースグループの一覧は、「Sun Cluster Geographic Edition インフラストラクチャーリソースグループ」を参照してください。
# geoadm show # scstat -g |
geoadm show コマンドの出力には、クラスタ内の特定のノード上で Sun Cluster Geographic Edition インフラストラクチャーが有効であることが示されます。
scstat -g コマンドの出力には、geo-failovercontrol、geo-hbmonitor、geo-clustername の各リソースと geo-infrastructure リソースグループがクラスタの一方のノードでオンラインになっていることが示されます。
詳細は、scstat(1M) のマニュアルページを参照してください。
この例では、Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアを cluster-paris クラスタで有効にする手順を示します。
cluster-paris で、Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアを起動します。
phys-paris-1# geoadm start |
Sun Cluster Geographic Edition インフラストラクチャーが正常に有効になったことを確認します。
phys-paris-1# geoadm show --- CLUSTER LEVEL INFORMATION --- Sun Cluster Geographic is active on : node phy-paris-1, cluster cluster-paris Command execution successful phys-paris-1# |
Sun Cluster Geographic Edition のリソースグループとリソースの状態を検証します。
phys-paris-1# scstat -g -- Resource Groups and Resources -- Group Name Resources ----------- --------- Resources: geo-clusterstate - Resources: geo-infrastructure geo-clustername geo-hbmonitor geo-failovercontrol -- Resource Groups -- Group Name Node Name State ----------- --------- ----- Group: geo-clusterstate phys-paris-1 Online Group: geo-clusterstate phys-paris-1 Online Group: geo-infrastructure phys-paris-1 Online Group:geo-infrastructure phys-paris-2 Offline -- Resources -- Resource Name Resources State Status Message ------------- --------- ----- -------------- Resource: geo-clustername phys-paris-1 Online Online - LogicalHostname online Resource: geo-clustername phys-paris-1 Offline Offline Resource: geo-hbmonitor phys-paris-1 Online Online- Daemon OK Resource: geo-hbmonitor phys-paris-2 Offline Offline Resource: geo-failovercontrol phys-paris-1 Online Online Resource: geo-failovercontrol phys-paris-2 Offline Offline |
保護グループの作成については、使用しているデータ複製ソフトウェアの種類に対応した Sun Cluster Geographic Edition データ複製ガイドを参照してください。
次の手順を使用して、Sun Cluster Geographic Edition インフラストラクチャーを無効にできます。
ローカルクラスタ上のすべての保護グループがオフラインであることを確認します。
クラスタノードの 1 つにログインします。
この手順を行うには、Geo Management RBAC 権利プロファイルがユーザーに割り当てられている必要があります。RBAC の詳細は、「Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアと RBAC」を参照してください。
ローカルクラスタ上のすべての保護グループがオフライン状態であることを確認します。
phys-paris-1# geoadm status |
geoadm status コマンドとその出力についての詳細は、「Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアの実行時状態の監視」を参照してください。
アプリケーションリソースグループをオンラインに保ったまま保護グループを無効化する場合は、次のデータ複製ガイドで説明されている手順に従ってください。
Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアを無効にします。
phys-paris-1# geoadm stop |
このコマンドは、Sun Cluster Geographic Edition を有効にしたときに作成されたインフラストラクチャーリソースグループを削除します。
このコマンドの詳細は、geoadm(1M) のマニュアルページを参照してください。
Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアを無効にすると、インフラストラクチャーリソースグループだけが削除されます。データ複製をサポートするために作成されたリソースグループについては、それらのリソースグループがサポートしている保護グループを geopg delete コマンドを使用して削除しないかぎり、削除されません。
このソフトウェアが無効になっていることと、Sun Cluster Geographic Edition リソースグループが表示されていないことを確認します。
phys-paris-1# geoadm show phys-paris-1# scstat -g |
詳細は、scstat(1M) のマニュアルページを参照してください。
この例では、cluster-paris クラスタを無効にする手順を示します。
すべての保護グループがオフラインであることを確認します。
phys-paris-1# geoadm status |
Cluster: cluster-paris Partnership "paris-newyork-ps" :OK Partner clusters :cluster-newyork Synchronization :OK ICRM Connection :OK Heartbeat "paris-to-newyork" monitoring "cluster-newyork":OK Heartbeat plug-in "ping_plugin" :Inactive Heartbeat plug-in "tcp_udp_plugin":OK Protection group "tcpg" :OK Partnership :paris-newyork-ps Synchronization :OK Cluster cluster-paris :OK Role :Primary PG activation state :Deactivated Configuration :OK Data replication :OK Resource groups :OK Cluster cluster-newyork :OK Role :Secondary PG activation state :Deactivated Configuration :OK Data replication :OK Resource groups :OK
Sun Cluster Geographic Edition インフラストラクチャーを無効にします。
phys-paris-1# geoadm stop ... verifying pre conditions and performing pre remove operations ... done ...removing product infrastructure ... please wait ... |
Sun Cluster Geographic Edition インフラストラクチャーが正常に無効になったことを確認します。
phys-paris-1# geoadm show --- CLUSTER LEVEL INFORMATION --- Sun Cluster Geographic Edition is not active on cluster-paris. Cannot reach management agent. --- LOCAL NODE INFORMATION --- Node phys-paris-1 does not host active product module. Command execution successful phys-paris-1# |
Sun Cluster Geographic Edition のリソースグループとリソースが削除されたことを確認します。
phys-paris-1# scstat -g phys-paris-1# |
geoadm show コマンドは、Sun Cluster Geographic Edition インフラストラクチャーがローカルクラスタ上で有効になっているかどうか、および、そのインフラストラクチャーがどのノード上で有効になっているかを判断するのに使用します。Sun Cluster Geographic Edition インフラストラクチャーは、geo-infrastructure リソースグループの状態が Online であるノード上で有効であると判断されます。
この例では、cluster-paris クラスタの phys-paris-1ノードに関する情報を表示する方法を示します。
phys-paris-1# geoadm show --- CLUSTER LEVEL INFORMATION --- Sun Cluster Geographic Edition is active on: node phys-paris-2, cluster cluster-paris Command execution successful phys-paris-1# |
クラスタを起動すると次のイベントが発生します。
Sun Cluster インフラストラクチャーが有効になったあと、Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアが自動的に起動します。geoadm show コマンドを使用して、ソフトウェアが正常に起動したことを確認します。
ハートビートフレームワークは、どのパートナーに到達できるかを検査します。
geoadm status コマンドを使用して、クラスタの現在の状態を検査します。このコマンドとその出力についての詳細は、「Sun Cluster Geographic Edition ソフトウェアの実行時状態の監視」を参照してください。
Sun Cluster Geographic Edition システムにパッチを適用する場合は、次の手順に従ってください。
geoadm stop コマンドを使用して Sun Cluster Geographic Edition インフラストラクチャーを停止します。
インフラストラクチャーを停止することによって、一方のクラスタにパッチをインストールしても、パートナーシップの他方のクラスタは影響を受けません。
patchadd コマンドを使用してパッチを適用します。
Sun Cluster パッチを適用する場合は、両方のクラスタで Sun Cluster 方法を使用します。
エラーが主クラスタのサービスに影響を与えないように、二次クラスタから先にパッチを適用し、インストールを確認したあとで主クラスタにパッチを適用してください。
geoadm start コマンドを使用して Sun Cluster Geographic Edition インフラストラクチャーを再起動します。