qmake は、標準的な UNIX make 機能の代わりとなる機能です。qmake は、適切なマシンのクラスタ上で make の各手順の分散を可能にすることにより、make の機能を拡張したものです。qmake は、よく使用される GNU-make 機能の gmake を基に構築されています。gmake の関係については、 sge-root/3rd_party の情報を参照してください。
分散 make プロセスを最後まで実行できるように、 qmake はまず、必要なリソースを並列ジョブと同じような方法で割り当てます。qmake は、次にスケジューリング機能と対話せずに、このリソースのセットを管理します。リソースが使用可能になると、qmake は -inherit オプションを設定した qrsh 機能を使用して、 make の手順を分散させます。
qrsh は、標準出力、エラー出力と標準入力の処理、およびリモートで実行されている make 手順への端末制御接続を提供します。このため、 make 手続きのローカル実行と qmake の使用との間には、明確な違いが 3 つあるだけです。
それぞれの make 手順が特定の時間を持ち、処理する make 手順がそれぞれ十分にある場合、make プロセスの並列化により処理速度を大幅に上げることができます。
リモートで起動される make 手順では、qrsh とリモート実行が原因で少しのオーバーヘッドが生じます。
qmake の make 手順の分散を利用するためには、並列化の最低レベルを指定する必要があります。つまり、ユーザーは同時に実行可能な make 手順数を指定しなければなりません。さらに、ユーザーは、有効なソフトウェアライセンス、マシンアーキテクチャー、メモリーまたは CPU 時間要件などの、make 手順に必要なリソースの特徴を指定できます。
make がもっとも一般的に使用されるのは、複雑なソフトウェアパッケージのコンパイルです。しかし、qmake はコンパイルにはそれほど使用されないこともあります。プログラムファイルは、適切なプログラミングの結果、かなり小さくなることがよくあります。したがって、1 つのプログラムファイルのコンパイル (1 つの make 手順) は、大部分の場合、数秒しかかかりません。さらに通常、コンパイルでは大量のファイルアクセスが行われます。ネスト化されたインクルードファイルは、この問題の原因となりえます。ファイルサーバーがボトルネックとなることがあるため、複数の make 手順に対してコンパイルを並行して実行した場合、ファイルのアクセス速度を速めることができない場合があります。ボトルネックは、すべてのファイルアクセスを事実上直列化するからです。したがって、満足のいく形ではコンパイルプロセスを高速化できない場合があります。
qmake は、その他の使用方法においてより効果を発揮できます。たとえば、makefile によって相互依存関係や複雑な分析処理の作業フローを管理することができます。この環境での make の各手順は一般的に、無視できないリソースとコンピュータ処理時間要件を持つシミュレーションやデータ分析処理です。この場合は、かなりの高速化を達成できます。
qmake のコマンド行構文は、qrsh の構文と同じようにみえます。
% qmake [-pe pe-name pe-range][options] \ -- [gnu-make-options][target] |
-inherit オプションは、この節の後半に説明がある qmake によってもサポートされています。
-pe オプションの使用と gmake -j オプションとの関係に特に注意してください。両方のオプションは、達成する並列化の量を表すために使用できます。違いは、 gmake は -j を使用して、使用される並列環境などを指定できないことです。したがって、qmake は、make と呼ばれる並列 make 用のデフォルト環境が構成されていることを前提にします。さらに、gmake の -j では、範囲の指定はできず、1 つの数字しか設定できません。qmake は、-j によって指定された数字を 1-n の範囲として解釈します。これと対照的に、-pe ではこれらのパラメータすべてを詳細に指定できます。結果として、次の 2 つのコマンド行例の意味は同じになります。
% qmake -- -j 10 % qmake -pe make 1-10 -- |
次の コマンド行は、-j オプションを使用して表現することはできません。
% qmake -pe make 5-10,16 -- % qmake -pe mpi 1-99999 -- |
構文以外に、qmake は 2 つの呼び出しモードをサポートしています。-inherit オプションを使用せずにコマンド行から対話方式で呼び出すモードと -inherit オプションによってバッチジョブ内で呼び出すモードがあります。これらの 2 つのモードは、次のような別の処理シーケンスを開始します。
対話型 – qmake がコマンド行で呼び出されると、make プロセスは qrsh によって、暗黙的に Grid Engine システムに発行されます。プロセスは、qmake コマンド行で指定されたリソース要件を考慮します。次に Grid Engine システムは、並列 make ジョブに関連付けられた並列ジョブを実行するためのマスターマシンを選択します。Grid Engine システムは、ここで make 手続きを開始します。make プロセスがアーキテクチャーに依存している場合もあるので、手続きはここで開始しなければなりません。必要なアーキテクチャーは、qmake コマンド行に指定されています。マスターマシンの qmake プロセスが、それぞれの make 手順の実行をジョブに割り当てられているその他のホストに委託します。手順は、並列環境ホストファイルによって qmake に渡されます。
バッチ – この場合、qmake は -inherit オプションを持つバッチスクリプト内にあります。-inherit オプションがない場合は、最初の例で説明されているように、新しいジョブが生成されます。これにより、qmake は、qmake が組み込まれているジョブに割り当てられているリソースを利用することになります。qmake は、qrsh -inherit を直接使用して、 make 手順を開始します。qmake をバッチモードで呼び出すと、リソース要件の指定、-pe オプションおよび -j オプションは無視されます。
1 つの CPU ジョブでも次のように並列環境が必要です。
qmake -pe make 1 -- |
並列実行が必要ない場合は、Grid Engine システムオプションと -- のない gmake コマンド行構文で、qmake を呼び出してください。この qmake コマンドは、gmake のように動作します。
詳細は、qmake(1) のマニュアルページを参照してください。