ビジネス要件を識別するための単純な公式は存在しません。ビジネス要件を特定する上でベースとなるのは、アイデンティティー管理ソリューションを必要としている利害関係者との共同作業、対象のビジネス領域についての知識、そして創造的な応用思考です。『Sun Java Enterprise System 配備計画ガイド』では、ビジネス分析プロセスについて詳しく説明しています。このガイドでは、ビジネス要件およびビジネス制約を定義するときに考慮すべき要因を示しています。この節では、堅牢なディレクトリサービスの必要性の動機となるビジネス要件について簡単に説明します。
ある企業では、次のような状況下で、堅牢なディレクトリサービスが必要とされています。
重要なビジネス情報およびビジネスアプリケーションをユーザーが利用できるようにする必要があります。ユーザー数は増加傾向にあり、入れ替わりも頻繁です。
ここでいう「ユーザー」には、社内の従業員だけでなく、顧客、ベンダー、その他のビジネスパートナーなどの外部ユーザーも含まれます。
ディレクトリサービスは、効果的なアイデンティティー管理インフラストラクチャーのための、高可用性、拡張性、管理性、統合性、セキュリティーを備えた基礎を提供することによってこれらのニーズに応えます。ディレクトリサービスが提供する一連の機能により、ユーザーのアイデンティティーデータや、Web サービスアーキテクチャーのための補助データを格納する集中データストアを実現できます。
ディレクトリサービスは、効果的なアイデンティティー管理インフラストラクチャーを提供することによって、企業にとって重要な要件の達成に寄与します。その要件とは、ユーザーに対して、またユーザーが各自の業務を行うために利用するアプリケーションに対して安定したサービスを提供できることです。
そのような要件には、次のものが含まれます。
大規模で入れ替わりが頻繁なユーザーのグループに対し、開かれたアクセスを提供する
セキュリティーを高め、情報の適正な利用と共有、および機密情報の保護を保証する
ユーザーおよびアプリケーションに対し、アクセス信頼性と高いサービス品質を一貫して提供する
ビジネスニーズの変化やユーザー要件の増加に左右されることなく、情報やサービスを効率的にユーザーに提供する
高可用性、信頼性、セキュリティー、パフォーマンスに優れたディレクトリサービスは、ビジネスの主たる原動力、すなわちセキュリティー、サービス品質、およびコスト効率の向上に寄与します。